「居酒屋でのぼったくりは防げるのか」弁護士さんに聞いてみた

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先日インターネット上で、新宿のとある居酒屋での“ぼったくりっぷりがひどい”ということで話題になりました。料理3品強制注文に加え、高額なチャージ料と週末料金が加算されたレシートがTwitterにアップされ、「これはひどい」と話題になりました。

この例に限らず、忘年会の1次会が終わり2軒目に移動しようとしたときに、路上の客引きに

「飲み放題つきで2時間1500円になります」

と言われ、席に案内されると

「1500円のプランは、お一人さま一品ずつお食事を頼んでいただくことになってます」

などと当初客引きが言っていた条件とは違うという経験ありませんか? いったんお店に入ってしまった以上他のお店を探すのも面倒ですし、渋々うなずいてしまいますよね。

今回はこのような悪質なぼったくりについて、弁護士の中澤 剛先生に解説していただきました。

 

■客引きとお客の間にあるのは「店に入るかどうか」の意志決定

店に入る前に客引きが言っていた条件と、店に入った後で違う条件だった場合、詐欺にあたるのでしょうか?

「結論として、詐欺罪(刑法246条)にはあたりません。ただし、いわゆるぼったくり条例違反の可能性があります」

意外な回答が返ってきました。どうして詐欺に当たらないのでしょうか?

「まず状況を見てみましょう。今回の店側の行為は、

(1)路上での「2時間1500円」と告げた客引きの行為

(2)店で、「一品ずつ食事を頼むことになっている」という店員の行為

の2つに分けることができます。

客引きの発言は、当初は「2時間1500円」と言われたのに、実際は1500円では済まなかったのですから、嘘であり、客は騙されています。しかし、その後、店員が本来のプランを告げていることからすると、客引きの行為は、客を店内に呼び込むことを意図した嘘であると考えられます」

「たとえ人を騙しても、財産をだまし取ることを意図している場合以外は、詐欺罪は成立しません。

客引きの発言によって、客は、騙されて店に入ることになりましたが、ここでの行為は“騙されて店内に足を踏み入れただけ”ということになります。つまり財産を失ったわけではないので、詐欺罪は成立しません」

「詐欺罪とは財産罪であり、個人の財産を保護するために規定されている点にあります。とはいえ、客は、当初は1500円と言われていたのに、店内で1500円以上の支払をしています。

やはり騙されたのではないか、と思われるかもしれません。しかし、入店後、店員は“本来の料金プランを提示”しています。そして、客は話が違うと思いつつ、(渋々ながらも)了承の上で注文をしています。

要するに、このような事例で客が騙されたのは、客が“店に入るか否かの意思決定”に関してだけなのです。入店後は、代金額について、話が違うと思いつつも事後的に了解の上で、勘違い・誤解なく支払っているのです。財産を騙し取る行為がない以上、詐欺罪が成立する余地はありません」

「詐欺罪は成立しませんが、いわゆる『ぼったくり条例違反』(各都道府県ごとに名称が異なります)に該当します。

実際の料金よりも著しく安い料金であると客を誤認させるような勧誘行為をした場合には、その行為自体が当該条例に違反するとして、営業禁止等の行政処分や、罰金・懲役などの刑罰の対象となり得ます。例示したような客引きの行為も、ぼったくり条例違反の可能性があります」

 

■入ってしまったらまずは「ぼったくり条例違反である」ことを伝える

悪質な客引きによって入店したら、どのようにお店側に伝えるのが効果的でしょうか?

「今回の例示の場合なら店側に、客引きに1500円以上かからないと言われた、と伝えます。

それでも店側が納得しないのであれば、客引きの行為自体が、ぼったくり条例違反であると告げると良いでしょう。大概の誠実な業者であれば、ここで対応してくれます」

「ただし、あくどい業者であれば、「その客引きはウチとは関係ない」などと白を切る可能性があり、その場合非常に面倒です。今回の設例のように、違うプランを提示されたケースで、交渉しても埒が明かない場合であれば、本来ならばその店をやめて他の店を探すのが無難です。

このような消極的な対応では納得がいかないのであれば、ボイスレコーダー等を持って客引きの声を録音する、その客引きを尾行して証拠写真を残す、等して証拠を固めます(いったん店とトラブルになった後であれば、証拠作りには、顔の割れていない友人等にお願いするのも良いでしょう)。

その上で、証拠があることを告げて店舗と交渉し、なお不誠実な対応であれば、警察への通報もありうるでしょう」

悪質な居酒屋につかまってしまった場合、証拠を提示するのは難しそうです。冒頭に挙げた新宿の居酒屋のようなところは、インターネットの反応でも見受けられたように、事前に口コミなどをチェックして予防するのがよさそうです。

 

■“悪”と“刑罰による処罰”は別物である

最後に、と中澤氏は続けます。

「この結論には釈然としない思いをする方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、人を騙すことは悪いことです。しかし、悪いことと刑罰で処罰することは別なのです。

人を騙せばどんな場合でも犯罪になるとすると、刑法の処罰範囲が広すぎて、ギスギスした生きにくい社会になってしまいます。

(1)だけで詐欺罪が成立するなら、例えば、道を聞かれて嘘の行先を教えたり、異性に構って欲しくて「高熱が出た」などと嘘を言って異性に看病に来てもらったりするだけでも詐欺罪になりかねないのです(こういう嘘をつく奴はけしからん奴ですが、詐欺罪で処罰するのは行き過ぎでしょう)。

刑法は、騙す行為により財産的な損害が生じた(あるいは生じる危険があった)場合に限って詐欺罪が成立することとしているのです」

いかがでしたか? 楽しいお酒に水を差さないよう繁華街での居酒屋選びは注意してくださいね!

 

【画像】

photo by : Ryosuke Sekido

 

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