
AI(人工知能)は私たちの生活のなかで、少しずつ大きな影響を持ち始めています。自動運転車やボードゲームのソフトなど、利用されるシーンはさまざま。
そして金融や経済といった分野においても例外ではなく、株式市場にAI(人工知能)が利用されるケースが増えてきました。
今回は経済市場を大きく変えつつある、株式取引へAI(人工知能)を応用する事例についてご紹介します。
大手証券会社である「ゴールドマンサックス」が、株式トレーダーのほとんどを削減してAI(人工知能)に代替したという事例が話題を呼びました。同社は2000年時点では600人ものトレーダーを抱えていたものの、2017年には2人のトレーダーしか残っていないと発表。
こういった既存の常識を塗り替える事例は、ゴールドマンサックスだけではありません。事実として、金融ビジネスの中心地であるウォール街では、ビジネスの自動化が進められる一方。高収入層であったトレーダーたちはAI(人工知能)に置き換わり、金融取引の半分ほどが電子化されていると言われるほどです。
AI(人工知能)の導入による大きなメリットは2つ。取引の高精度化と人件費削減による低コスト化<です。
AI(人工知能)が持つ特徴の1つに「ディープラーニング」がありますが、これは膨大なデータ分析が必要である株式取引において最適な能力です。また株式市場は各国の経済事情とシンクロするため、いち早く正確な情報を取引に組み込まなければなりません。
こういった情報の反映能力も人間より優れているため、先述した優秀なトレーダーたちの削減を招いたとも言えます。ときに感情的になる生身のトレーダーとは異なり、AI(人工知能)は感情を挟まずデータ通りに取引を行えるということもポイントでしょう。
AI(人工知能)が株式取引をどのように学習・予測しているのか、国内の大手企業である「みずほ証券」を例にご紹介します。
みずほ証券は銀行や資産運用の会社を対象に、株価が今後どのように変動するのか予測するAI(人工知能)技術を提供。AI(人工知能)には、各銘柄ごとに5000種類前後のデータがインプットされています。
これにより相場の情報やニュースはもちろん、為替や石油の価格動向を参考に法則を発見。みずほ証券のAI(人工知能)技術を利用する企業に、市場での優位性を与えるように設計されています。
AI(人工知能)の株式市場参入が珍しくなくなった昨今、いくつかの証券会社が「ロボアドバイザー」というシステムを導入しました。これは、ファンドマネージャーに資産運用を任せる投資信託に近いシステムを採用しています。
投資信託は投資家から集めた資金を、投資のプロであるファンドマネージャーに運用を任せる金融商品です。株式市場の知識が少ない投資初心者が、より多くの利益をあげることを目的として利用しています。
そしてロボアドバイザーは、ファンドマネージャーではなくAI(人工知能)に資産運用を任せる金融商品です。ロボアドバイザーは「投資アドバイス型」と「投資一任型」の2種類が存在し、投資スタイルに応じて使い分けられます。
「投資アドバイス型」のロボアドバイザーは、投資家のリスク許容度に合わせて最適なポートフォリオを提案。提案された株式の購入決定権は投資家にゆだねられ、AI(人工知能)の行動自体は株式購入までのサポートのみです。
あくまで補助的な立ち位置でしかなく、自己判断で投資を行うことはありません。
一方「投資一任型」のロボアドバイザーは、ポートフォリオの提案だけでなく自動買付を行います。相場の変化によってポートフォリオの組み換えも行うため、当初に設定したリスク水準を自動で保持し続ける仕様。
自動で処理を任せるため手数料が発生するものが多いですが、知識が少ない投資初心者に適した画期的な投資方法だと言えます。
今回は株式市場に利用されるAI(人工知能)の、事例やメリットをご紹介しました。
ゴールドマンサックスの優秀なトレーダー数百人をリストラに追いやったことから、AI(人工知能)の株式市場参入がショックの大きい出来事だったと分かります。
そして、それほどまでに優秀なAI(人工知能)の利用が低コストで実現するなら、私たちも注目しないわけにはいきません。
年金問題や失業率増加が懸念される昨今、いまから投資におけるAI(人工知能)の有効活用を調べておくことは賢明な判断と言えるでしょう。