
弁理士とは、特許、実用新案、意匠、商標といった知的財産権に関することのプロフェッショナルの職種です。
日常生活において身近な存在、というよりも、経済活動において不可欠な人、といった方がよいでしょう。
今回は、弁理士ってどんな人、ということについてお話したいと思います。
弁理士は、一般的に技術的な素養がありつつ法律もわかる、という人です。
弁理士の約8割は理系出身者で、弁理士になる前は製品の開発担当といったバックグラウンドがある方が多いです。
それでは、どんな場面で弁理士が活躍しているのでしょうか。
例えばある人が、「こんなスリッパがあったら楽にダイエット効果があるのでは」と思い立ち、小さなスリッパを開発したとします。
しかし、何ら権利を持たないまま、知り合いの町工場でこのスリッパを生産し、ネットで販売したとします。
それが、テレビに取り上げられて一大ヒット商品となったとしましょう。
このスリッパをみて、他の人はどのように思うでしょうか?
同じような商品を作って売れば、儲かるはず、と思います。
ここで、このスリッパに独占排他権である特許権や意匠権があれば、この「マネをする人」を合法的に排除できます。
しかし、何も権利がなければ、マネをされるのをじっと見守ることしかできません。
それでは、特許権等はどのようにすれば取得できるのでしょうか。
この特許権や意匠権は、ご存知の通り、例えば市役所に行ったら専用の用紙があって、必要事項を記入したら権利がもらえる、というものではありません。
法律に則って煩雑な手続を経なければこの権利を得ることはできません。
なぜこのように複雑な手続を要するかといいますと、特許権や意匠権は「独占排他権」であり、この権利を持っている人以外は、原則、同じものを製造したり販売したりすることはできない、経済活動においては甚大な影響力を持つ権利だからです。
そこで、開発過程も理解でき、かつ法律もよく知っていて、このような複雑な手続をすべてしてくれる人、つまり「弁理士」がいるわけです。
弁理士は主に、知的財産権の取得手続と管理の一切とその付随業務を行います。
弁理士の仕事のほとんどは、依頼人から委任を受け、依頼人に代わって特許庁に手続を行うことです。
もし、弁理士資格がない人が、依頼人から報酬をもらって依頼人に代わって特許庁に手続きを行った場合、弁理士法違反として取り締まられます。
最近の弁理士の仕事は、知的財産権の取得手続等だけでなく、調査業務も引き受けることもあります。
この業務は弁理士資格がなくても行える業務ですが、弁理士、という信頼性から弁理士に調査業務を依頼するクライアントが増えてきています。
例えば、これから発売しようとする製品が他社の特許権等に抵触していないか否か(特許侵害をしていないか否か)を調査したり、製品の技術がすでにある技術と同様であるか否かを調査します。
また、調査業務のほかにも、知的財産関連の契約書のチェック、模倣品調査や特許侵害の疑いがある他社製品が本当に特許権を侵害しているか否かを検討する鑑定業務があります。
企業活動が複雑になってきたことに伴い、弁理士に期待される仕事の幅も広がってきています。
弁理士は、単にクライアントから依頼されたとおりに書類を作成したり、手続きを行ったりする仕事をする人ではありません。
クライアントの中には、特許権等の取得をしたことがなく、新しい製品を開発したけれど、いったい何をすればよいのかわからない、という会社もあります。
特に小規模の企業は、特許出願をすれば問題ない、という認識のもとで特許事務所に出願業務を依頼するケースが多く、よくよく話を聞くと、ノウハウ管理ができていなかったり、先行技術調査をしていなかったり、ということがわかることがあります。
このような場合は、弁理士は、クライアントがしっかり技術開発が行えるようにアドバイスすることになります。
クライアントのWANTを見抜き、クライアントが満足する対応をするためには、知的財産権の知識だけではなく、クライアントとしっかり会話できる力、クライアントが抱える課題を掘り起こせる質問力が問われます。
クライアントに信頼される弁理士になるためには、弁理士試験に合格したら終わり、ではなく、日々前進する技術をキャッチアップし、さらにさまざまな経験を積む必要があります。