弁理士試験の総本山「論文式」を突破しよう!合格までの完全マニュアル

弁理士試験の総本山「論文式」を突破しよう!合格までの完全マニュアル

弁理士になるためには、弁理士試験に合格し弁理士登録を行わなければいけません。弁理士試験は一次試験短答式、二次試験論文式、三次試験口述式の3回に分かれています。論文式を受けるためにはまず一次試験の短答式を、さらに口述式を受けるためには論文式に合格しなければいけません。この3つの試験の中でも弁理士になるための最大の関門が二次試験の論文式なのです。本記事では弁理士になるための最大のヤマ場である論文式に焦点を当てて紹介していきたいと思います。

弁理士試験の論文式とは 

論文式は弁護士業務を行うに際し必要になってくる、基本的な法律の理解力・判断力・論理的思考能力・文章表現力等を有しているかどうかを判断するために実施されます。論文式を受けるためにはその年の短答式に合格しているか、又は短答式試験免除資格を有している必要があることに注意してください。

 

論文式には必修科目と選択科目があります。

必修科目:工業所有権の法令に関しての知識を問う試験

選択科目:法律や技術に関しての知識を問う試験

() 必修科目

試験日時 6月下旬~7月上旬
試験会場 東京・大阪
試験科目 特許法・実用新案法・意匠法・商標法
試験時間 特許法・実用新案法:2時間

意匠法・商標法:各1.5時間

配点比率 特許・実用新案法:意匠法:商標法=2:1:1
合格発表日 9月中旬頃
免除制度 ・論文式必修科目合格者は、2年間必修科目免除(選択科目だけ受験すればいい)

・特許庁で審判や審査の事務に5年以上従事したものは必修科目免除

 

※注意点

 ・試験日時:年に1度しか試験がありません。また短答式(平成31年5月19日)から論文式(平成31年6月30日)までの時間が1ヵ月半程度しかないことに注意してください。

試験会場:試験会場は東京と大阪の2ヵ所しかありません。遠方から試験のために遠出する人は宿の予約や航空券・新幹線のチケット購入などの準備を十分にしてください。

試験科目:試験科目は主要四法と呼ばれている、特許法・実用新案法・意匠法・商標法から出題されます。短答式では出題される下三法(著作権法・不正防止競争法・条約)からは出題されません。

試験時間:特許法・実用新案法で2時間、意匠法で1.5時間、商標法で1.5時間の計5時間の長丁場です。普段から論文を書く練習を怠らないことが合格への最短距離です。

・配点比率:特許法・実用新案法:意匠法:商標法の配点比率は2:1:1です。特に特許法から多くの出題がされるので、多くの勉強時間を特許法の勉強にあてることが必要になってきます。

合格発表日:試験日程から合格発表まではおよそ2ヵ月程度です。

 

(2) 選択科目

試験日時 7月下旬~8月上旬
試験会場 東京・大阪
試験科目 以下の6科目の中から1科目を受験願書提出時に選択します、変更不可なので注意が必要です

・理工Ⅰ(機械・応用力学)-材料力学・流体力学・熱力学・土質工学

・理工Ⅱ(数学・物理)-基礎物理学・電磁気学・回路理論

・理科Ⅲ(化学)-物理化学・有機化学・無機化学

・理工Ⅳ(生物)-生物学一般・生物化学

・理工Ⅴ(情報)-情報理論・計算機工学

・法律(弁理士の業務に関する法律)-民法(物件・債権・総則)

試験時間 1.5時間
配点比率 論文科目:選択科目=4:1
免除制度 ・論文式選択科目合格者は合格発表日から永続的に選択科目が免除される

・学校教育法第104条に規定されている修士又は博士の学位を有する方の中で、学位授与に関係する論文の審査に合格した場合、選択科目が免除される

・学校教育法第104条第一項に規定する文部科学大臣が定める学位を有する者の中で、専門職大学院が終了要件として定める一定の単位を修得し、かつ当該専門職大学院が終了要件として定める論文の審査に合格した場合、選択科目が免除される

・技術士・一級建築士・第一種電気主任技術者・第二種電気主任技術者・薬剤師・情報処理技術者・電機通信主任技術者・司法試験合格者・行政書士・司法書士の資格を有している者は選択科目が免除される

・特許庁において審判又は審査の事務に通算して5年以上従事した者は選択科目が免除される

 

 

注意点

試験日時:必修科目と選択科目は日程的に近いですが別の日に行われることをチェックしておきましょう。

試験会場:必修科目と同じで試験会場は東京と大阪にしかありません。宿の予約や飛行機・新幹線のチケット購入は十分に準備しておいてください。

試験科目:試験科目は理系科目5科目と法律科目1科目の計6科目の中から1科目選択します。

・試験時間:必修科目は合計5時間の長丁場ですが、選択科目は1.5時間です。

 

POINT

・論文式試験は必修科目と選択科目2種類ある

・短答式試験合格者だけが論文式試験を受験できる

・論文式試験には免除がある

 

論文式(弁理士試験)はどれくらい難しいか?

ここからは論文式(弁理士試験)がどれくらいの難易度があるのか、あらゆる角度から探っていきたいと思います。

難易度を図る尺度は以下の4点です。

・合格率

・勉強時間と受験回数

・合格者出身大学

・弁理士数の推移

 

合格率 

Ⅰ. 弁理士試験の合格者数(受験者数)と合格率

実施年度 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年
受験者数 6216 5340 4679 4352 3977
合格者数 385 319 296 255 260
合格率 6.9 6.6 7.0 6.5 7.2

 受験者数は毎年減少傾向にありますが、合格率は毎年7%前後を推移しています。

難関資格と言われている、弁護士・公認会計士・司法書士と合格率を比較してみると弁理士資格の難易度が分かります。

弁護士 3%

公認会計士 10%

司法書士 3.5%

弁理士 7%

弁護士と司法書士という2大法律関係の資格の合格率は3%前後と非常に低いのですが、公認会計士と弁理士はそれに次ぐ合格率の低さです。

Ⅱ 各試験形式の合格率(短答式・論文式・口述式)

実施年度 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年
短答式 14.1(%) 15.5 8.9 20.1
論文式 24.4 25.3 24.2 23.9
口述式 93.6 93.9 98.4 94.0

合格率から判断すると、短答式が一番難しく口述式が一番簡単に一見すると見えます。

でも、短答式は勉強時間などまだ短い人も試しで受けてみようという人も少なからずいることと、論文式を受験できる人は皆短答式を合格した人であることから判断すると、短答式が一番難しいとは単純に言えません。口述式に関しては、短答式、論文式を合格した人なら大部分の人が合格できると言うことができます。

  •  勉強時間と受験回数
資格名 勉強時間(目安) 難易度
司法書士 約3000時間 ★★★★★
公認会計士 約3000時間 ★★★★★
弁理士 約3000時間 ★★★★★
税理士 約2000時間 ★★★★
不動産鑑定士 約2000時間 ★★★★

 

難関資格の勉強時間の目安は上記の図の通りです。

弁理士試験は超難関資格と言われる司法書士と公認会計士試験と同じ約3000時間の勉強時間が必要になってきます。

 

弁理士試験合格者の特徴は一発で合格する人はあまり多くありません。何年も時間をかけて合格を勝ち取る人が大部分を占めています。

 

2018年弁理士最終合格者の受験回数

 

受験回数 比率
初めて 11.5%
1~5回 68.1%
6~10回 13.8%
11~15回 6.2%

 

 

  •  合格者出身大学

 

 

順位 出身大学 受験者数 短答式 論文式 口述式 合格率
東京大学 435 76 76 70 16%
京都大学 385 81 57 55 14%
東京工業大学 308 69 47 48 15%
大阪大学 343 66 51 48 13%
早稲田大学 328 62 48 39 11%

 

最終合格者(口述式)の人数の多い順に並んでいます。

東京大学・京都大学出身の人であっても合格率は100人に15人程度しか合格できません。弁理士試験の難易度がお分かりになるかと思います。

  • 弁理士数の推移 

2008年の弁理士の受験者数は10,492人でしたが、2018年の受験者数は3977人と3分の1程度になりました。通常なら受験者数が低下すれば、それに伴って合格率があがってきます。しかし合格率自体は横ばいです。

 

弁理士就業人数の増加していることが大きな原因です。

 

「知財立国」という国の政策方針によって、毎年弁理士合格者を意図的に増加させていました。その結果、弁理士数が2008年には7,806人だったのが2018年には11,369人と大幅に増加しました。一時期供給過多になり弁理士業界は飽和状態になりました。

ただ最近の傾向としては、中国等との国際特許が多くなりその飽和状態も影をひそめつつあります。

論文式の問題の出題方法はどんな感じ?

ここからは昨年度の論文式(特許・実用新案法)の問題をいくつか紹介します。

平成30年度 特許・実用新案法 問題Ⅰ

【問題Ⅰ】 1 日本国籍を有し日本国内に居住する甲は、平成 29 年5月1日に、願書に添付した明 細書及び図面に自らした発明イ及びロを記載するとともに、特許請求の範囲に発明イを 記載して、日本国において特許出願Aをした。 以上を前提に、以下の各設問に答えよ。ただし、各設問はそれぞれ独立しているもの とし、各設問に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。

 

(1)甲が、平成 30 年(2018 年)6月1日に、パリ条約の同盟国であるとともに特許 法条約の締約国であるX国において、出願Aを基礎としてパリ条約による優先権を 主張して特許出願Bをした場合、出願Bについての優先権主張が認められることは あるか。特許法条約の趣旨及び規定に言及しつつ説明せよ。ただし、X国は、特許法条約に準拠した国内法を整備しているものとする。

 

(2)出願Aは外国語書面出願であった。乙会社は、平成 29 年7月に独自に装置αの開発を開始し、平成 29 年 12 月に当 該装置αの製造及び販売を日本国内において開始した。当該製造及び販売は、発明 イの実施に該当する。甲は、平成 30 年1月にこの事実を知り、乙に対して、発明イに係る特許権の設 定の登録があった後に、発明イの実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金 員の支払いを請求するために、当該特許権の設定の登録前に警告しようと考えた。この場合、当該警告を可能な限り早期に行うために、甲がとるべき特許法上の手 続はどのようなものか、乙に対する警告の方法もあわせて説明せよ。

 

(3)甲は、平成 30 年2月1日に、出願Aについて、拒絶をすべき旨の査定の謄本の 送達を受け、同年3月1日に、発明ロを明細書、特許請求の範囲及び図面に記載し て、特許法第 44 条第1項の規定による新たな特許出願Cをした。その後、出願Aは、出願公開されることなく拒絶をすべき旨の査定が確定した。また、出願Cは、出願公開された。丙が、平成 29 年7月1日に、自らした発明ロを明細書、特許請求の範囲及び図 面に記載して、日本国において特許出願Dをした場合、出願Dが、特許法第 29 条 の2の規定により拒絶されることはあるか、説明せよ。

 

2 甲会社の従業員Xと乙会社の従業員Yは、それぞれの上司の命を受けて勤務時間中に 共同で研究を行って、甲会社及び乙会社の業務範囲に属する発明イを完成させた。   甲とXとの間で定めた勤務規則には、従業者がした職務発明についてはあらかじめ使 用者に特許を受ける権利を取得させる旨(以下「原始使用者等帰属」という。)が定め られている。乙が、発明イに係る出願Aをするために必要な特許法上の手続について、乙とYとの間で定めた勤務規則における原始使用者等帰属の定めの有無に応じて、特許を受ける権利の帰属との関係に言及しつつ、説明せよ。なお、甲及び乙は、平成 28 年4月1日以降に設立された、日本国内に営業所を有する法人であり、甲が、当該特許を受ける権利を他者に譲渡すること及び放棄することは考慮しないものとする。また、設問に示されていない事実をあえて仮定して論じる必要はない。

【100点】

 

昨年の問題Ⅰは簡潔に

1(1)特許法条約(PLT)に関しての理解の深度を問う。

(2)早期に補償金請求権を発生させるための手続きに関して理解の深度を問う。

(3)法 29 条の2と特 44 条2項の関係についての理解の深度を問う。

2 職務発明における予約取得と共有に関係する特許を受ける権利の譲渡に関しての理解の深度を問う

の4点が聞かれているということができます。

ここでは特許・実用新案法の問題だけを紹介しましたが、意匠法・商標法・選択科目

も論文問題があります。

 

各科目の問題数は

・特許・実用新案法:毎年問題数4~5問

・意匠法:毎年問題数2~3問

・商標法:毎年問題数3~4問

以上の通りです。

論文式試験に合格するための勉強方法 

基本的な勉強法 

・インプット⇒アウトプット⇒反復

 

・インプット

まず最初にしなければいけないことは知識を蓄積していくことです。何を始めるにしても、基礎となる知識という土台をつくらなければいけません。専門学校の講義を聞いたり教科書を何度も読んだりして知識を吸収していきましょう

 

アウトプット

インプットだけでは知識は定着しません。重要な箇所をノートに書いたり、問題演習を繰り返すことで、吸収した知識を使うことによって頭の中に定着させていきましょう。

問題演習で解けなかった問題からインプット不足を確認してインプットとアウトプットの繰り返しを行うことで知識を自分の中で確実なものにしていきましょう。

 

ちなみにインプットとアウトプットの時間配分は1:3程度が最適だと言われています。

 

反復

最も大切なことは反復練習です。新しい場所に行くときは地図を片手に探さなければいけませが、何度も同じ場所に行くうちに人間はその場所までの道筋を意識することなしに通ることができます。反復練習も同じで、何度も何度も同じことを繰り返すことで、自分の中で当たり前というぐらいまでの状態にもっていくことが大切です。

 

勉強の際の重要なポイント

勉強の進め方

よく完璧主義な方にありがちなのですが、最初から最後まで完璧に理解しようとすることは良い方法とは言えません。

弁理士試験の特に論文式では全体像を把握しているかどうかが最も重要です。

よって細部からつぶさに理解しようとするのではなく、まずは全体的な枠組みを理解してから細部への理解に落としていく勉強法が最適です。

教材の使い方

あれこれと色んな問題集や教科書に手を出してしまう人がいます。これはご法度です。基本的な勉強法の中にも記載しましたが、何度も同じものを繰り返すことで人間は知識を定着させ確実なものにすることができます。教材も同じように、一つ又は二つほどの教材・問題集に絞りそれを何度も繰り返すようにしてください。よって質の良い教材・問題集を選択することは非常に重要になってきます。

過去問の使い方

過去問はただの演習問題ととらえてないでしょうか?弁理士試験には多くの試験と同じように傾向があります。過去問は試験の傾向を分析する最高のアイテムです。過去問から敵を知りましょう。

科目別の勉強法 

特許法

全科目の中でも最も重要なのが特許法です。特許法が重要な理由は3つあります。

 

・知的財産法の中で基幹となる法律

・試験の中で最も高い配点

・意匠法や商標法と重なる部分が多い

 

結果、特許法を苦手としてしまうと、弁理士試験全体に波及してしまいます。苦手科目にしないように多くの時間を割く必要性があります。

 

特許法の勉強の仕方はまずは全体像を把握してから細かい部分を詰めていく感じが最適です。また勉強する際に重要なことは、特許法の法目的を見失わないことです。

 

特許法は特許権の付与自体に目がいきがちですが、実際は発明の公開が本質です。「公開」することにより、その代償として出願人は特許権により「保護」されます。そして、その公開によって第三者が発明を「利用」することができるようになります。つまり「保護」「利用」のバランスを保ち、「産業の発達」を実現しようとしていることが、特許法の本質なのです。このように法律の本質をきちんと理解しながら勉強していくことが大切です。

意匠法

意匠法の勉強で大切なことは特許法との違いを意識しながら勉強することです。意匠法は勉強量は特許法と比較した場合かなり少ないです。理由として挙げられるのは、手続き等が特許法と変わらないからです。

商標法

商標法も意匠法と同じく特許法との違いを意識しながら勉強することが大切です。商標法を勉強するにあたって重要なことは特許法や意匠法とは本質が違っている点です。本質が違う故に同じ制度であったとしても、その制度が適用される背景が異なってきます。

そういった特許法・意匠法・商標の各々の異なる点を把握することがとても重要です。

サマリー 

弁理士試験は非常に難しい試験です。そして短答式・論文式・口述式とある弁理士試験の中でも、最も重要なのが論文式であり天王山です。知識を組み立ててアウトプットしないといけない論文式に合格すれば、後の口述式はそれほど難しくありません。最適な勉強法を選択することで合格を勝ち取ってください!

まとめ 

・論文式には必修科目と選択科目があり試験日程・試験会場・試験科目などは要チェック。

・弁理士試験は難関の資格であり、短答式・論文式・口述式と3つある試験形式の中でも論文式が天王山です。

・基本的な勉強法・科目別の勉強法を自分の中に取り入れ合格に一歩近づきましょう。

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