行政事件訴訟~取消訴訟の要件になる『訴えの利益』の有無とは?~

行政事件訴訟~取消訴訟の要件になる『訴えの利益』の有無とは?~

行政書士試験で最も多く出題されるのは、出題数・配点ともに行政法です。
なかでも行政争訟制度の出題率が高く、また難易度も上位のものとされているため、重点的に学習することが必要でしょう。

行政争訟制度のうち、行政事件訴訟の分野では特に取消訴訟が重要となります。
行政書士試験に出される問題はこの取消訴訟を中心に構成されているため、ここを押さえておかなくては全体の成績に響いてしまうかもしれないのです。
取消訴訟の要件がどのようなものか、何を満たせば取消訴訟が認められるのかをしっかり理解しておきましょう。

 

訴えの利益

取消訴訟の要件は、「処分性」「訴えの利益」「被告適格」「裁判管轄」「出訴期間」「訴えの形式」です。
では、訴えの利益とはどのようなものでしょうか。

これには広義と狭義があり、上記の要件は広義の「訴えの利益」です。
広義の訴えの利益については行政事件訴訟法で定められており、裁判をするためには「訴えることによる実益」が必要になり、正当な当事者として訴訟を起こし、判決を求められるという資格が無くてはなりません。
行政事件訴訟は裁判所の管轄ですが、裁判所も無限に時間があるわけではないため、どんなことでも裁判を出来るのではなくある程度の制限を設けているのです。

広義の訴えの利益には、どのような人なら訴訟出来るのかという「原告適格」と、その人には裁判で救済する必要がある利益はあるのかという「狭義の訴えの利益」が含まれます。

原告適格は、取消訴訟の原告になり得るという資格で、行政事件訴訟法9条1項では「処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。」、つまり取消を求めることで法律上の利益を有するとされれば、取消訴訟が出来るとしています。
判例では「当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害されたかあるいは必然的に侵害されるおそれのある者」がこれにあたるとされ、「反射的利益」と呼ばれる、法律による公益保護の結果として間接的に受ける利益はここに含まれません。
一方、処分の相手方となる当事者以外の第三者でも、法律上の利益があるならば原告適格が認められますが、第三者に原告適格が認められた際には、裁判所は法令の文言だけでなく、法律の趣旨、目的、当該処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮しなくてはならない、と同条2項で定められています。

狭義の訴えの利益は、上記の条文にある()内の「処分又は~ができる。」にあたることです。
そもそも裁判を行うのは、国民の権利利益を救済するためであり、救済すべき利益がすでに失われているときには勝訴したところで裁判が無意味になってしまいます。
国民の利益が得られないのに裁判だけしても、国民・行政庁・裁判所全ての時間が無駄になるだけでしょう。
そのため、狭義の訴えの利益である「回復すべき利益」がなければ裁判は出来ず、原告適格が認められたとしても却下されるのです。
高校の授業でも習うであろう有名な判例の朝日訴訟でも、変更決定の取消請求をしていた最中にその生活保護を受け取っていた原告が死亡したため、回復すべき利益が存在しなくなったとされ、裁判は終わりとされました。

しかしそれは同時に、訴えの利益がある限り裁判をしてもらうことは可能になるということでもあります。
裁判をやることによって原告、つまり国民に利益があるのかどうかということが、訴えの利益の有無を見分けるポイントです。

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