行政作用~取消し・撤回の自由と制限~

行政作用~取消し・撤回の自由と制限~

行政書士試験で出題される行政法には、行政行為についての定義があります。

取消しと撤回

行政庁の職権により、公益上不適当と判断された行政行為は、一度有効に成立していてもあとから効力を消滅させられることがあります。
災害予防を目的とした立ち入り禁止処分などがその例で、危険性が解消すれば効力を維持する必要がなくなるため、処分が消滅するのです。

職権による効力には、『取消し』と『撤回』の二つがあります。

取消しとは、行政行為の成立当初から瑕疵があった場合、それを理由に処分庁・上級監督庁がその効力を最初からなかったことにする意思表示です。
時間をさかのぼって効力が消えるため、遡及効となります。
法律の根拠や損失補償は不要で、手続は申立てか職権です。

撤回は、瑕疵なく有効に成立した行政行為の効力を、その後の事情変化によってそれ以上の効力維持が妥当ではないと判断された場合、処分庁が将来に向かって効力を失わせるという意思表示です。
時間はさかのぼらない将来効で、法律の根拠は不要ですが損失補償が必要なときがあります。
権限がある機関は原則処分庁のみ、手続も職権だけです。

取消し・撤回の自由

伝統的な見解では、行政庁にはもともと『取消し・撤回の自由』が認められていることになっています。
瑕疵ある行政行為は法治行政の原則に反するため、処分庁や上級監督庁はそれを取り消す責務や権限を当然に有しており、たとえ瑕疵なく成立した行政行為だとしても、その後の事情変化で効力維持が公益に反すると判断された場合ならば、処分庁による自由な撤回は可能であると考えられていたのです。
ですが今日、行政庁による取消しや撤回を無制限に認めてしまうと、行政行為の相手方となる国民の地位がたいへん不安定になってしまいます。
また、行政に対する国民の信頼も揺らぐと考えられるため、現在は原則として取消し・撤回の自由を認めつつも、一定の制限が加えられています。

取消し・撤回は、侵害的行政行為の場合には自由に行えます。
授益的行政行為・複効的行政行為は制限が加えられ、争訟裁断行為の取消し・撤回は出来ません。

侵害的行政行為とは、国民の権利や利益を制限したり義務を課したりすることで、これが取り消された場合には国民にとっての利益となるため、原則自由に取消し・撤回が可能です。
授益的行政行為は国民に権利や利益を付与することであるため、この効果が消滅するということはすなわち国民の既得権益・利益が失われることになり、取消し・撤回が制限されます。
つまり、取消しや撤回は、それをすべき公益上の必要性が相手方となる国民の既得権益の保護の必要性を超えないと出来ない、ということです。
その条件が満たされれば、法律の根拠がなくても取消し・撤回が可能です。

問題になりやすいのは、公物の占用許可の撤回のように授益的行政行為が撤回される場合です。
こういったときに生じてしまう国民の損失に対して損害賠償は必要か、ということがポのイントで、公用収用に準じて、授益的行政行為の撤回が財産権に対する特別の犠牲を課すような場合には損失補償が必要と解されており、それを明示した法律もあります。

行政行為の内容が相手方に対しては受益的でも、第三者にとっては侵害的では侵害的であるという行為を複効的行政行為といいます。
これは侵害的行政行為と授益的行政的行為が合わさったもので、それぞれの意見を聞いていてはいつまでたっても話が進みません。
たとえば、家を改築して広くする場合、建築確認は建築する人にとっての授益的処分ですが、広くなった部分によって日当たりが悪くなるなど隣の家の人にとっては侵害的効果を持った処分になりかねないでしょう。
一方、侵害的効果を受けている第三者にとっては取消し・撤回が利益となり得ますが、授益的効果を受けている相手方はそれが制限されるため、取消し・撤回には制限が課されることがあるのです。

争訟裁断行為は、異議申立てに対す決定や審査請求に対する裁決のような争訟裁断行為に働く不可変更力によって、取消や撤回が自由に認められると法的安定性が害されるため、処分庁による自らの取消し・撤回は認められていません。

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