行政書士の試験科目「憲法」より ~ 裁判所と司法権② 司法権とは・司法権の限界

行政書士の試験科目「憲法」より ~ 裁判所と司法権② 司法権とは・司法権の限界

行政書士試験で出題される科目のひとつである「憲法」。憲法では権力分立の考え方がとられており、「立法権」「行政権」「司法権」に分散された権力を、それぞれ「国会」「内閣」「裁判所」に与えています。今回は「司法権」とその限界について解説します。

1. 司法権

司法権は、憲法で下記のように定められています。

憲法76条第1項
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

憲法76条第2項
特別裁判所は、これを設置することができない。行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。

明治憲法下では、通常裁判所は民事と刑事の事件のみを扱い、行政事件は特別裁判所である行政裁判所が扱っていたのですが、現行憲法は上述の通り特別裁判所の設置を認めていません。

そのため、すべての訴訟は通常裁判所で処理されることになります。国会に設置される、裁判官を裁く弾劾裁判所は憲法が認めている唯一の例外なのです(判例上、家庭裁判所は特別裁判所にはあたりません)。

また、第1項にあるように「すべて司法権は裁判所に属する」とはいえ、日本にある争いごと全部を裁判所が解決するというわけにはいきません。司法権には、その効力が及ばない限界もあり、扱えるのは法律的な具体的事件(法律上の訴訟)だけなのです。

法律上の訴訟とみなされるためには、

・当事者間の具体的権利義務、または法律関係の存否に関する紛争であること
・法律を適用して終局的に解決出来るものであること

という2つの要件を満たさなくてはなりません。

法律上の訴訟に当たらない、裁判所が裁判できないとしたケースには、具体的事件性がなく法令の解釈・効力を抽象的に争っているだけのもの、宗教上の教義に関する判断自体を求める訴えであるものがあります。

教義や信仰の内容は法律によって左右されるものではないため、法律上の訴訟にはできないのです。しかし、宗教的な問題に触れず解決できることもありますから、宗教が関係すると裁判にはできない、ということがいつでも当てはまるわけではありません。

法律上の争訟に当たらないその他のケースには、単なる事実の存否、個人の主観的意見の当否、学問上・技術上の論争などがあります。国家試験の合否の判定は裁判の対象になるのか、という判例も残っています(国家試験の合否の判定は裁判の対象にはならないとされています)。

2. 司法権の限界

他にも、法律上の争訟であっても司法審査の範囲外にある、「司法権の限界」と呼ばれるケースがあります。

司法権の限界となるのは、下記の通りです。

・議院の資格争訟の裁判
・裁判官の弾劾裁判
・治外法権、条約による裁判権の制限
・国会ないし各議院の自律権に属する行為
・行政機関ないし国会の自由裁量に属する行為
・統治行為
・団体の内部事項に関する行為

自律権に属する行為

自律権に属する行為とは、国会、または各議院の内部事項について自主的に決定できることで、議員の懲罰や議事手続などがこれにあたります。

統治行為

統治行為は「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」なので、法律上の争訟ではあるのですが、あえて裁判しない行為です(判例の砂川事件)。
日米安保条約の合憲性と衆議院の解散の効力については、両方とも統治行為であり、司法審査は及ばないとされています。

団体の内部事項に関する行為

団体の内部事項に関する行為は「部分社会の法理」として扱われます。これは、団体内部という部分的な社会で起きた揉め事は、仮に「法律上の訴訟」であってもその外の一般社会に関係のないもの(関係があれば司法審査の範囲内)であれば、その団体内で処理すべきだという考え方です。

判例では、地方議会や大学、政党の内部での揉め事がこれにあたり、議員の懲戒処分には原則的に司法審査が及ばない、政党の除名処分には原則的に司法審査は及ばないなどの判決が下されています。

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