行政書士の試験科目より 地方自治法~地方自治と民主主義、地方公共団体と国~

行政書士の試験科目より 地方自治法~地方自治と民主主義、地方公共団体と国~


行政書士試験の行政法には、地方自治法が含まれています。
過去問の傾向を見ると地方自治法の登場は全体的に高く、中でも地方公共団体の種類と事務の出題が多いようです。
また、地方公共団体が国とどんな関係にあるのかということも、地方自治制度を理解するためには基盤となる事項なので、知識をしっかり整理しておきましょう。

1 地方自治の本旨

現在の日本では、日本という「国」が日本全体を直接治めているのではなく、地方ごとの自治がある程度認めています。
これは日本国憲法92条で保障されていて、地方公共団体の組織や運営に関わることは「地方自治の本旨」に基づき、法律で定めることになっているのです。

この「法律」こそが地方自治法です。
地方自治法の目的を記した1条では、地方公共団体による民主的かつ能率的な行政の確保、および地方公共団体の健全な発達の保障が目的とされています。
この根幹である地方自治の本旨には、住民自治の民主主義的要素「地方行政は住民の意思に基づいて行われるものだ」ということ、団体自治の自由主義的要素「地方行政は国から独立している期間によって行われるものだ」ということがあります。

2 地方公共団体

地方自治の役割を負う地方公共団体ですが、これは「普通地方公共団体」と「特別地方公共団体」に分類されます。

まず、普通地方公共団体は、都道府県および市町村のことで、憲法における「地方公共団体」はこれを対象としています。
しかし、特例として、人口50万人(運用で100万人)以上の、政令で指定された市は「指定都市」として、都道府県の事務の全てまたは一部を都道府県知事の監督なしに権限として行えるうえ、条例で「区」を設けることが可能になります。
また、政令で指定された人口20万人以上の市は「中核市」として、指定都市の事務の一部を政令で定め、権限として行えます。

一方、特別地方公共団体として「特別区」「地方公共団体の組合」「財産区」も認められています。
特別区は俗にいう東京23区のことで、これは市に準ずるものとして扱われています(指定都市における「区」は行政区画にすぎず、特別区とは違う)。
地方公共団体の組合は、複数の地方公共団体が事務の共同処理を目的に設立し、独立法人格を持った団体で、「一部事務組合」「広域連合」の二つに分類されます。
広域連合には、国や都道府県が権限を委譲することが可能です。
財産区は、山林や用水路、温泉といった財産や、公民館や上下水道の大明けの施設の管理・処分・廃止に関する独立法人格が与えられた、市町村や特別区の一部にしてそこから独立しているというものです。

3 地方公共団体の役割

地方分権の推進のため、地方公共団体と国がどう関わるべきかということが、地方自治法1条第2項で定められています。
地方公共団体の役割は、住民の福祉の増進を図ることを基本に地域行政を自主的・総合的に実施することですが、それに対して国は、本来国として果たすべき役割を重点的に担いながら、住民に身近な行政は可能な限り地方公共団体に委ね、地方公共団体との間における役割分担を適切なものとし、地方公共団体の自主性・自律性の発揮を十分にする必要があります。

地方公共団体のため、国は、国際社会の中での国家としての事務、全国的に統一すべきだろう国民の諸活動や地方自治に関する基本的準則の事務、全国的な規模・視点で行うべき施策や事業の展開をすることを求められています。
条例では事務処理の特例が定められており、これによって、都道府県は知事の権限に属する事務の一部を市町村に処理させることができますし、反対に市町村長の側から議会の議決を経た上で、その「事務の一部」を自分たちに処理させるよう要請することも可能です。

4 地方公共団体の仕事

以前、地方公共団体の事務として、機関委任事務という、地方公共団体の主張等が法定に基づく委任を「国の事務」として処理するものがありました。
しかし1999年、地方自治法が改正されたためにこれ廃止され、「自治事務」と「法定受託事務」という新たな仕事が地方公共団体の事務として誕生したのです。

自治事務は、早い話が法定受託事務以外の事務のことで、本来地方公共団体がするべき仕事といえるでしょう。
飲食店の開業・病院や薬局の開設許可を出したり、運転免許を交付したり、都市計画を決定したりということがこれにあたります。

一方、法定受託事務とは、国や都道府県の事務に属するものを、法令によって地方公共団体に委託したものです。
法定受託事務は第1号法定受託事務と第2号法定受託事務に分類されており、1号は国が本来するべき事務を法律、またはそれに基づいた政令によって都道府県・市町村・特別区が担うことになった事務が含まれます。
旅券の交付や国政選挙、戸籍の事務がこれにあたります。
2号も他の機関が本来すべき事務を法律、またはそれに基づいた政令によって、というところまでは同様なのですが、受託するのが都道府県、処理するのが市町村または特別区、という点が異なります。
都道府県知事選挙に関する事務や、都道府県の条例改廃請求のための署名審査に関する事務などがこの例です。

国や都道府県の仕事を代わりにやるのが法定受託事務、と考えておきましょう。
これらの事務においては、国の法令に違反しない範囲であれば条例の制定・監査委員による監査が可能です。

5 住民自治

住民自治は、民主主義の具現化といえるような制度ですが、これはどのようにして生まれたのでしょうか。

まず、そもそもの「住民」の定義を一度確認しておきましょう。
地方自治法10条第1項によると、住民とはその市町村の区域内に住所を有している者を指し、日本国民個人だけでなく、外国人や法人も一定の場合において住民として扱われます。
そして第2項によると、住民には権利と義務が備わっているということです。
法律の定めるところにより、住民であるならばその属する普通地方公共団体の役務の提供を等しく受ける権利がある一方で、その負担を分任する義務も負っています。

普通地方公共団体の住民のうち、日本国民であれば、その公共団体の選挙への参政権を持っています。
ただ、もちろん誰でもよいわけではなく、選挙権は満20歳から(平成28年6月より18歳に引き下げ)、被選挙権は都道府県知事が満30歳以上、市町村長および議会議員が満25歳以上という年齢要件を満たしてなくてはなりません。
また、選挙権と議会議員の被選挙権においては、住所要件としてその死闘村内に引き続き3ヶ月以上、住所を有している必要もあります。

このように、住民自治において選挙がなされているのですが、しかし住民の代表者たちの行政に住民が不満を覚えたままでは民主主義の意味が揺らいでしまいます。
そのため、地方自治法では住民が直接地方政治に参加できるよう、直接請求権を認め、地方自治の原則の実効性を確保しています。
直接請求権があるのは、その地方公共団体の議会・長の選挙権を有する日本国民の住民に限られます。

直接請求権を行使できる請求は5種類あり、これは混ざらないようしっかり整理しておく必要があるでしょう。
条例の制定改廃請求は有権者の50分の1以上の連署を集め、普通地方公共団体の長に請求します。
請求された長は、20日以外に議会を招集して条例の制定・改廃をするのかどうかを決定しなくてはいけません。
事務の監査請求は、同じく50分の1以上の連署により、監査委員になされます。
請求が受理されると監査委員には監査義務が生じ、監査が終わったらその結果が公表されます。
議会の解散請求をするには、有権者の3分の1以上の連署が必要です。
請求先は選挙管理委員会で、請求受理後に行われる住民投票で過半数の同意があった場合には議会が解散することになります。
長・議長の解職請求も同様に、3分の1以上の連署を集めて選挙管理委員会に請求し、受理後の住民投票で過半数の同意があれば失職となります。
役員の解職請求では3分の1以上の連署により、普通地方公共団体の長への請求が可能になり、総議員の3分の2以上の出席する議会における4分の3以上の同意があれば失職になります。

こういった権利を持ち合わせる住民の地位を守るため、市町村は「住民基本台帳」と呼ばれる、住民たる地位に関する正確な記録を常に整備しておく必要があります。

6 住民監査請求

しかし選挙権によって選んだ代表者が、住民にとって不利益な地方政治をしていては、住民の権利は守られません。
そのため、地方公共団体の長等の違法・不当な公金の支出などといった行為について、監査委員へと監査を求める「住民監査請求」が認められています。
これは「住民」であれば選挙権の有無や納税を問わず誰でもできるため、法人による請求も可能です。

請求対象となるのは普通地方公共団体の機関等ですが、どんな行為を監査できるかは限られています。
行政活動一般に関する監査請求は認められず、違法・不当な公金の支出や違法・不当に公金の賦課・徴収等を怠る行為が対象となります。

請求の際には、当該行為の防止・是正、怠る事実の改め、当該行為や怠る行為によって当該普通地方公共団体が受けた損害の補填のために必要な措置を講じろ、ということを求めることになります。
しかし、ずっと昔のことを蒸し返されても地方公共団体だって困るでしょうから、請求は決められた期間内に行う必要があります。
正当事由がなければ、当該行為のあった日または終了した日から1年を過ぎたら、住民監査請求はできなくなります(「怠る事実」についての請求に期間制限はなし)。

請求があった場合、監査委員はどのようなことをする必要があるでしょうか。
基本的には、請求から60日以内に監査をし、違法な事務があった場合には「是正勧告」をしてその結果を住民へと伝えることになりますが、

・財務会計行為が違法だと考えることについて相当の理由がある
・当該行為によって地方公共団体に生じる回復困難な損害を回避するために緊急の必要性がある
・当該行為の停止により、生命・身体に対する重大な危害の発生の防止、その他公共の福祉が著しく阻害されるおそれがないと認められる

という要件を満たしている場合には、監査が終了するまでの間、当該行為を暫定的に停止するよう勧告することが可能です。

7 住民訴訟

監査がなされ、その結果や勧告に不服がある場合、普通地方公共団体の住民は、その請求に係る違法な行為または怠る行為について裁判所へ「住民訴訟」を提起することが可能です。
これについては監査請求前置主義がとられるため、住民監査請求をした人だけが訴えを提起できます。

監査請求については、違法・不当な行為のどちらも対象となり得ましたが、住民訴訟においては違法な行為または怠る事実が対象であるため、不当な行為は含まれません。
監査の通知等があった日から30日以内の出訴期間中に行う必要があります。

訴えを提起できる請求は、差止めの請求、取消もしくは無効確認請求、怠る事実の違法確認請求、普通地方公共団体の職員等に対する損害賠償請求、普通地方公共団体の執行機関または職員に対して不当利得返還請求をするよう求める請求になります。

8 地方公共団体の構造

原則として、普通地方公共団体には議会を置かなくてはなりません(町村は条例で、議会の代替として、選挙権を有する者による総会の設置が可能)。
選挙権を持つ住民によって選出された代表者により構成される、地方公共団体の議会はどのような仕組みになっているのでしょうか。

都道府県、市町村の議会の議員定数は条例で定められます。
普通地方公共団体の議会議員は、衆・参両議院議員、地方公共団体の議会議員、常勤職員、再任用短時間勤務職員などとの兼職が禁止されています。

議員になると議会に議案の提出ができるようになりますが、その際には議員定数の12分の1以上の賛成が必要です。
しかし議員には予算提出権がないため、予算の提出は長のみの権限となります。
議案に対する修正動議をする場合には、議案提出同様議員定数の12分の1以上の発議を要します。

議院の任期は4年で、期間満了前に辞職するには議会の許可を必要とします(議会が閉会しているときには議長の許可)。

9 議会の権限

議会の権限としては、「議決権」と「調査権」が代表格です。
議決権には、

・条令の制定、改廃、予算、決算などの議決(予算においては承認と否決だけでなく、長の予算提出権を侵さない範囲で増額も可能)
・地方税や分担金、使用料、手数料の賦課徴収に関する事項
・財産を交換し、出資の目的とした、支払手段としての使用、また適正な対価なくしてこれを譲渡・貸し付けること
・不動産の信託
・条例で定める契約の締結
・負担付きの寄付・贈与の受け取り
・条例で定める財産の取得・処分
・不服申立て、訴えの提起、和解、あっせん、調停、仲裁に関する事項
・法律上の事務に属する損害賠償額の定め

などがあります。

調査権には、

・事務の書類閲覧・執行検査権
・「100条調査権」と呼ばれる、議会が行った当該地方公共団体の事務に関する調査により、特に必要があると認めるときは選挙人その他の関係人の出頭、および証言、ならびに記録の提出を請求でき、もしもそれがなされなかったり拒んだりという場合、また虚偽陳述には罰則が適用されるというもの

があり、その他の権限として、議長・副議長・選挙管理委員等の選挙権、国会、関係行政庁への意見提出権、請願受理権があります。

10 議会の招集

地方公共団体の長は、議会を招集します。
議会には、毎年条例で定める回数行われる定例会と、必要に応じて開かれる臨時会があり、臨時会は議長または議員定数の4分の1以上の者から請求があった場合に開かれます。
もしもこの請求があるのに長が臨時会を開かなければ、議長自ら召集をすることも可能です。
条例により、通年会期とすることも認められています。

11 議長と副議長

議長と副議長は、議員の中から1人ずつ、選挙によって選出されます。
任期は議院の任期によるため、辞職するには原則として議会の許可が必要です(例外として、閉会中の副議長の辞職は議長の許可を得ること)。

12 委員会

普通地方公共団体の議会は、条例によって、委員会を任意で設置することが可能です。
委員会は常任委員会、議会運営委員会、特別委員会に分けられ、地方公共団体の事務に関して調査や審査を行うほか、議会が議決すべき予算以外の事件について、議案を提出することができます。
議会の閉会中でも、議会によって付加された特定の事件については審査可能です。

13 地方議会と国会の違い

地方議会と国会には、どのような共通点・相違点があるのでしょうか。
定足数は、地方議会が定数の半数以上、国会が総議員の3分の1以上です。
表決数は同じで出席議員の過半数(可否同数なら議長による決定)、会議の公開も原則公開となります。
秘密会については、地方議会が議長又は3人以上の職員の発議で出席議員の3分の2以上の多数の議決、国会が出席議員の3分の2以上の多数の議決によります。
両方の会議に会期不継続原則が適用され、その会期中に議決されなかった案件はもちこされず、次の会期でまた最初から、ということになります。

14 地方公共団体の執行機関

地方公共団体の議会は議決機関ですが、その対になるのが「執行機関」と呼ばれる、地方公共団体の事務を、自分の判断・責任において誠実に管理および執行する義務を負っている機関です。
地方自治法における執行機関には、独任制の地方公共団体の長と合議制の委員会が含まれます。

住民の直接選挙によって選任された都道府県知事や市町村長は、普通地方公共団体の首長として、

・普通地方公共団体の統括・代表権
・普通地方公共の事務管理・執行権
・担任事務(条例案を含む議案の提出権、財産の取得・管理、処分、公の施設の設置・管理・廃止、予算の調製・執行権、証書・公文書類の保管、決算の議会への認定付託、地方税の賦課徴収や使用料等の徴収、会計の監督、)
・補助機関の職員の指揮監督権
・補助機関の任免権
・行政庁の処分の取消・停止権
・支庁・支所等の行政機関の設置権
・規則制定権
・条令交付(条例の送付を受けた日から20日以内)

といった権限を持っています。

このように様々な権限を持っている長を立てている普通地方公共団体は、首長制(アメリカの大統領制のようなもの)を採用していますが、議院内閣制に似た制度も採用しています。
首長制の制度としては、長から議会に対しての拒否権があり、議院内閣制的制度としては長から議会への議案・予算の提出、議会から長への不信任決議と議会への出席要求権があります。

長は、議会の権限に属する事項を「専決処分」として代わって行うことが可能です。
専決処分には、議会が成立しないことや議会の議決がないことを理由とした、法律の規定に基づく専決処分(後日、議会に報告して承認を得なくてはならず、また、議会が不承認とすれば必要な措置を講じて議会へ報告する必要がある)と、議会が議決すべき軽易な事項において、その議決によって特に指定したものの処理を長に委任する、議会の委任による専決処分(議会への報告が必要、承認は不要)があります。

また、長の職務を助けることを目的として、普通地方公共団体には「副知事(市町村の場合は副市町村長)」「会計管理者」の補助機関が設けられています。

15 行政委員会

普通地方公共団体は、長のほかに、法律の定めるところによって長から職権行使の独立性が保障されている委員会もしくは委員を設置する必要があります。
議会における委員会とは違い、こちらの委員会は地方公共団体に設置することになります。

委員会には教育委員会や選挙管理委員会、監査委員などがあり、基本的には規則制定権を持った、合議制の執行機関かつ行政庁です(監査委員には規則制定権はなく独任制)。
また、委員会は予算の調製・執行権、議案の提出権を持っていません。

16 地方公共団体の立法権

地方公共団体の条例制定について、憲法94条および地方自治法はこれを認めています。
この「条例」は地方議会で制定される自主立法を指しますが、長の制定による「規則」も含まれるとされます。

条例は、法令に違反しない範囲で、自治事務および法定受託事務に関しての制定が可能です。
判例では、法令の趣旨が条例の上乗せ規制を許容していれば、上乗せ条例の制定も認められました。
罰則は行政刑罰か秩序罰がとられますが、制定の際には憲法31条との兼ね合いにより個別具体的な法律の授権の必要性が問題となるため、判例による「相当程度に具体的であり限定され」ていることが求められるでしょう。

規則は、法令に反しない限りで、長の権限に属する事務に関して制定できます。
罰則は5万円以下の過料という秩序罰を長の行政処分として科すことになります。

17 地方公共団体の財政

地方公共団体の会計には「会計年度独立の原則」があり、各会計年度(毎年4月1日~翌年3月31日)の歳出はその年度の歳入からしなくてはならない、と決められています。
そのため、長は毎会計年度予算を調製したら年度開始前に議会の議決を経て、一会計年度中の全ての収入・支出を予算に編入する必要があります。
また、予算が超過した場合の支出や予算外の支出に充てるための予備費も計上しておかなくてはなりませんが、特別会計については予備費を計上しないことにしても構いません。
また、この予備費を議会が否決した用途に使うことはできません。

普通地方公共団体の収入は、住民から賦課徴収する地方税および、徴収する分担金、使用料、加入金、手数料から成り立っています。
徴収については条例で定める必要があり、その際5万円以下の過料を定めることも可能です。
使用料と手数料に関しては、証紙による徴収もできます。

会計管理者による支出は、長の命令がなくてはできません。

金銭給付が目的である普通地方公共団体の権利が5年間行使されなかった場合、時効によって消滅します。
これについて援用の必要はなく、時候の利益の放棄も不可能です。

売買、賃借、請負その他の契約は一般競争入札・指名競争入札・随意契約またはせり売りによるものとなります。

金融機関の指定について、都道府県と市町村で相違点があるため気を付けましょう。
都道府県は指定した金融機関に、公金の出納または支払事務を「取り扱わせなくてはならない」のに対し、市町村は「取り扱わせることができる」のです。

18 監査制度

地方公共団体の運営のため、税金を納めている住民には、その使い道が適正であるかを把握する権利があるでしょう。
そのため設けられているのが監査制度で、これには地方公共団体の執行機関にあたる監査委員による内部監査と、外部の専門家によって行われる外部監査があります。

内部監査では監査委員制度に基づき、普通地方公共団体の長が議会の同意を得て、議員、および執権を有する者(この場合は都道府県・政令で定める市では少なくとも1人以上が常勤である必要)から選任した監査委員が監査を行います。
監査委員の任期は、議員の場合はそのまま議院の任期、執権を有する者から選任された場合は4年です。
内部監査のうち、財務調査と事業監査では、普通地方公共団体の財務に関する事務の執行および普通地方公共団体の経営に係る事務の管理の監査が行われ、これは毎会計年度、最低1回条の期日を定めてしなくてはなりませんし、必要に応じていつでも監査することができます。
また、監査委員が必要だと認めれば、普通地方公共団体の自治事務・法定受託事務の執行の監査もできます。
これについては、長から監査の要求があった場合は監査しなくてはいけません。
補助金や交付金の交付を行っている団体に関する監査など、財政的援助を与えている者に対する監査は、監査委員が必要だと認めた、また長の要求があったときにすることができます。

外部監査制度には、包括外部監査契約と個別外部監査契約があります。
包括外部監査契約は、包括外部監査対象団体が外部の専門家による監査結果を受け取るという契約で毎年度締結するもので、都道府県と政令で定める市には必ず、その他市町村は条例で任意に設置されます。
長は毎会計年度、あらかじめ監査委員の池園を聴いて議会の議決を経、そして監査契約を締結します。

個別外部監査契約は、事務の監査請求等の請求があった場合に行われるもので、監査委員の監査の代わりに外部の専門家が監査するという契約です。
これを締結できる旨の条例がある場合のみ設置が可能で、包括外部監査対象団体も条例によって個別外部監査契約の締結ができます。

外部監査人には誰でもなれるわけではなく、弁護士、公認会計士、税理士、国の行政機関で会期検査に関する行政事務に従事した者という条件があります。
外部監査人は補助者の使用もできますが、その場合にはあらかじめ、監査委員と協議が必要です。
なお、外部監査契約の締結で、監査委員を廃止することはできません。

19 地方公共団体への国による関与

国が地方公共団体の事務に関与については比例原則の採用が明示されており、その目的を達成するために「必要最小限度の」関与としなければならない、とされています。
特に自治事務に関しては、国はその処理に対して代執行やその他の関与をできるだけ設けないようにする必要があります。

関与をする場合、「是正の要求」と「是正の勧告」に分かれます。
各大臣がする是正の要求では、都道府県の自治事務が法令に違反していると認める、または著しく適正を欠いていて、かつ、明らかに公益を害していると認めるときに、都道府県に対して違反の是正もしくは改善の為に必要な措置を講ずべきことを求めることになります。
市町村の自治事務に法令違反などがあれば、基本的には都道府県の執行機関(知事、教育委員会、選挙管理委員会など)に是正もしくは改善のため必要な措置を講ずべきことを市町村に求める旨の指示をするのですが、緊急を要するときやその他特に必要があるときには、当該市町村に対して是正の要求を直接することが可能です。

是正の勧告は、市町村の自治事務処理に法令違反等があるときに、違反の是正等改善のために必要な措置その他を講ずべきことを、都道府県の執行機関が当該市町村に対して勧告するというものです。
こちらは勧告であるため、強制力は伴いません。

法定受託事務に関する関与ではどうでしょうか。
市町村の第1号受託事務について、各大臣は都道府県の執行機関に対し、その処理基準に関して必要な指示をすることが可能です。
さらに、特に必要があると各大臣が認める場合は、市町村の第1号法定受託事務の処理についての処理基準を定めることもできます。

是正を「支持」することも認められています。
これは、「その所管する法律またはこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令違反であると認めるとき、もしくは著しく適性を欠いており明らかに公益が害されていると認められる」場合と、「市町村の法定受託事務の処理が法令に違反している場合など」に分かれます。
前者では、各大臣が当該都道府県に、当該事務の処理について違反の是正または改善のために講ずべき措置に関する必要な指示を、後者では都道府県の執行機関が当該市町村に、違反の是正または改善のために講ずべき措置に関する必要な指示をすることができます。
さらに、必要であれば、各大臣は市町村の第1号法定受託事務の処理については、都道府県の執行機関の指示に対する指示もできますし、緊急を要するときには大臣自ら直接市町村に指示をすることも可能です。

この、是正の要求や指示があったにも関わらず、地方公共団体がそれに応じた措置を講じないなどの場合は、各大臣は高等裁判所に不作為の違法確認訴訟を起こすことができます。
これは市町村長の法定受託事務に対する知事においても同様です。

また、知事が法定受託事務を違法に管理・執行していたり、執行に怠慢があったりするときには、各大臣は高等裁判所に職務の執行を求める裁判を提起し、判決に従い「代執行」、つまり知事の代わりに当該事務を行うことも認められています。

20 係争処理制度

しかし、こういった関与も度が過ぎると、地方自治の本旨が失われてしまう可能性があります。
そのため普通地方公共団体長その他の執行機関は、国の関与に対する不満があるときには、国地方係争処理委員会に文書で審査を申し出ることが認められています。
さらにその審査結果・勧告にも不満があれば、さらに国の行政庁を被告とし、高等裁判所に訴訟を起こすことも可能です。

また、市町村長が都道府県の関与に対して同じように不満を抱いたときも同じような方法がとられています。
しかし違う点としてこちらは、都道府県知事を相手方とした自治紛争処理委員の審査を、総務大臣に対して要求できるということがあるので注意しましょう(委員会の審査結果・勧告に不満がある場合の手続は同じです)。

21 普通地方公共団体間の協力

地方公共団体が相互に協力・連携しあえるよう、

・連携協約
他の普通地方公共団体と連携して事務を処理するにあたり、基本方針・役割分担を定める協約の締結
・協議会
事務の一部を共同で管理・執行、またはその連絡調整や広域で総合的な計画の共同作成のために協議によって規約を定めて設ける
・機関等の共同設置
効率の良い行政運営維持のため、地方公共団体の機関等の簡素化を図り、協議によって規約を定め共同で執行機関等を設置
・事務の委託
協議によって規約を定め、事務の一部を他の普通地方公共団体にに委託
・事務の代替執行
事務の一部を当該普通地方公共団体の名において、他の地方公共団体の長に管理・執行させる
といった制度が設けられています。

22 地縁による団体

地域の町内会・自治体といったものは権利能力がない社団とみなされていたため、町内会で所有するはずの町内会間等の不動産は、町内会名義で登記できず、やむを得ずに町内会長が個人名義で登録していました。
この対策として、こういった「地縁による団体」が不動産または不動産に関する権利を保有できるようにするため、規約を定め一定の要件を満たして市町村長の許可を受ければ、これらの団体には法人格が付与され、権利能力が認められるようになりました。

しかし、認可を受けた団体が認可の要件を欠いた場合や不正手段で許可を受けた場合などは、市町村長は認可を取り消すことができます(取消は認められますが、一般的監督権限は有していません)。

地縁団体に法人格は付与できるものの、これを公共団体その他の行政組織の一部とみなすことはできず、民法の一般社団法人および一般財団法人に関する規定が準用されることになります。
また、認可を受けた場合には、地縁団体は正当な理由なしにその区域に住所を有する個人の加入を拒否すること・民主的な運営の下にある自主的な活動に反するような、構成員に対する不当な差別的取り扱いをすること・特定の政党のための利用は認められません。

以上が、行政書士試験で問われる、地方自治法の概要です。
地方自治はどのような考え方を基盤として成り立っているのかを明らかにした上で、その独立性に対して国・都道府県はどうあるべきか、どんなことが認められ、どんなことは認められていないのかといったことをきちんと整理しておきましょう。

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