国家賠償法~公の営造物は、常に瑕疵を無くさなくてはいけない? 自然公物の安全は?~

国家賠償法~公の営造物は、常に瑕疵を無くさなくてはいけない? 自然公物の安全は?~

行政書士試験に出題される行政法では、国会賠償について定められています。

公の営造物に瑕疵があったために国民が損害を被った場合、国や公共団体はその賠償をしなくてはなりません。
瑕疵とは「当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」で、その有無は国や公共団体の過失ではなく、個別具体的な判断になります。

 

安全策を講じる余地が無い場合

しかし、営造物の安全性が欠けていたからといっても、必ずしも国家賠償が請求出来るわけではありません。
判例では、設置または管理の瑕疵を単なる物理的安全性の欠如ではなく、安全対策を講じる時間的余裕の有無も考慮すべきであるとしています。
つまり、被害があったその瞬間だけ見れば安全性が欠けていても、その安全性を補うにあたって必要な時間が国や公共団体にあったかどうか、というのも判断基準になるということです。

これについては、「赤色灯破損事件」という判例が有名です(行政書士試験はじめ、資格試験にもよく出現します)。
これは、赤色灯など道路工事の標識板が通行車によって夜間に倒され、その車は走り去ったものの直後、倒れた標識にぶつかって後続車が事故を起こしたという事件です。
結果的に同乗者2人のうち運転手ではない1人が死亡したため、その関係者が国家賠償を請求しました。
しかし判決ではその主張が認められず、「道路の安全性に欠陥があったのは確かだが、それを補うことは時間的に不可能であるため道路管理に瑕疵があるとは言えない」とされたのです。
標識が倒された直後、しかも夜間に、すぐさま元通りにするというのはとても不可能な話ですから、それを国家の責任には出来ないということです。
なお、一番迷惑だと言える、標識を倒した張本人の車については、この裁判で触れられていません。

このように、瑕疵を補うために必要な時間があったかどうかというのも判断基準になり得ます。
もちろん、時間があったのだから損害賠償をしなさい、というケースもあります。

「87時間事件」と呼ばれる判例では、国道に放置された故障大型車が原因で起きた事故において、道路上の瑕疵の有無を巡って裁判が繰り広げられました。
赤色灯破損事件のように、大型車が放置された直後に事故が起こったというのならば、瑕疵とするのは不適切だったかもしれません。
しかしこの事件では、なんと87時間もの間大型車が放置されていたのです。
流石に87時間もあれば、撤去なり交通規制なりで何らかの対策が出来たはずですから、これは道路上の瑕疵に他ならないとされました。

どのくらいの時間を以て道路上の瑕疵とすべきかどうか、というのは個々の事例によって異なります。
直後は瑕疵じゃなくて87時間は瑕疵で、じゃあ10時間ならどうなのか、というのは一概に言えることではなく、様々な事情を考慮しながら決められていくものなのです。

 

自然公物である河川の瑕疵

河川はもともと自然のものですから、人工のものと全く同じように判断することは出来ません。
自然公物の安全性については、2つの分類があります。

改修中の河川に管理上の瑕疵がある場合、つまり今まさに改修している河川の『未改修部分』から豪雨によって水害が発生したとき、河川管理者の管理の瑕疵が問われるような安全性について、判例は格別不合理なものでなければ未改修を理由に瑕疵とは出来ないとしています。
河川の改修には財政的にも技術的にも、そして社会的にも諸々の制約が伴うため、今まさに改修工事が終わっていないことが瑕疵にはならないということです。

では、改修が終わった河川の管理上の瑕疵はどうでしょうか。
判例では、その改修に伴うレベルの安全性が求められています。
改修工事をしたのですから、その分は安全性を持っていなくてはなりません。
それが満たされていないがための被害は瑕疵となる、ということです。
ただ、予測不可能なレベルの災害のように、想定していなかったほどに大きな被害があった場合はこの規定に当たらないこともあります。

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