行政書士試験で出題される行政法では、行政手続について定めた行政手続法からの出題があります。
行政から一般国民に対するお願いとして『行政指導』というものがありますが、これは法的拘束力を持っていません。
目次
1 許認可等の権限に関連する行政指導
行政手続法34条
許認可等をする権限又は許認可等に基づく処分をする権限を有する行政機関が、当該権限を行使することができない場合又は行使する意思がない場合においてする行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、当該権限を行使し得る旨を殊更に示すことにより相手方に当該行政指導に従うことを余儀なくさせるようなことをしてはならない。
より、許認可等の権限を有する行政機関が、実際には権限を行使できない、または行使しようという意思があいのに、権限を行使できることをちらつかせて行政指導に従わせようと誘導することは禁止されています。
2 行政指導の方式
行政指導の方式について、はっきりといった決まりはありません。
口頭でも書面でも、その他の方法でもよいのですが、いずれにしても行政指導の趣旨、内容、責任者を明確に示す必要があります。
また、口頭による行政指導の際に相手方から書面の交付を求められた場合、特別支障が無ければ、書面を交付しなくてはいけません。
これは35条で、
1. 行政指導に携わる者は、その相手方に対して、当該行政指導の趣旨及び内容並びに責任者を明確に示さなければならない。
2. 行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から前項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、これを交付しなければならない。
3. 前項の規定は、次に掲げる行政指導については、適用しない。
1. 相手方に対しその場において完了する行為を求めるもの
2. 既に文書(前項の書面を含む。)又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によりその相手方に通知されている事項と同一の内容を求めるもの
というように定められています。
3 複数の者を対象とする行政指導
36条では、複数の人が対象の行政指導について
同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
と定められています。
4 処分等の求め
法令違反の事実を発見した場合、書面で具体的な事実を摘示し、行政に対して誰でも法令違反の是正を目的とする処分・行政指導を求めることができるという旨の36条の2が、2014年に成立しました(2015年4月から施行)。
条文は以下の通りです。
第36条の2 法令に違反する行為の是正を求める行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)の相手方は、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと思料するときは、当該行政指導をした行政機関に対し、その旨を申し出て、当該行政指導の中止その他必要な措置をとることを求めることができる。ただし、当該行政指導がその相手方について弁明その他意見陳述のための手続を経てされたものであるときは、この限りでない。
2 前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。
一 申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所
二 当該行政指導の内容
三 当該行政指導がその根拠とする法律の条項
四 前号の条項に規定する要件
五 当該行政指導が前号の要件に適合しないと思料する理由
六 その他参考となる事項3 当該行政機関は、第1項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、当該行政指導が当該法律に規定する要件に適合しないと認めるときは、当該行政指導の中止その他必要な措置をとらなければならない。