行政書士の試験科目より 〜 債権総論

行政書士の試験科目より 〜 債権総論


行政書士試験の出題科目の1つである民法は、財産法と家族法に分かれています。
このうち、財産法の半身である物権は不動産や動産といった「物」に対する権利でした。
これに対して、「人」に対する権利を「債権」と言います。

行政書士試験に出題される債権では、まず、物権との相違点をはっきりさせる必要があります。
意味や概念的な視点でも、手続や制度的な視点でも、両者の何が違うのかを押さえておきましょう。
他に重要度が高いのは、当事者が複数いる場合の債権債務関係や債権消失についてですが、中でも過去5年間で毎年出題された「契約各論」はしっかり理解しなくてはいけません。
要件や効力が細かく異なるため複雑な分野ですが、確実な知識を身につけるよう心がけましょう。

民法では、債権が「総論」と「各論」に分かれています。
まず、総論から見ていきましょう。

1 債権とは

買い物、つまり売買契約を結んだとき、買い手は売り手から物を受け取る債権を持ち、売り手は買い手から代金を受け取る債権を持っています。それと同時に、売り手は買い手に対して物を引き渡すという債務を負っており、買い手は売り手に対して代金を支払う債務を負っています。

このように、ある特定の人が、特定の人に対して、特定の財産上の行為・給付を請求する権利のことを「債権」といいます(義務が「債務」)。基本的に、債権や債務は契約によって生じます。

債権の目的は給付で、債務者はこれをしなくてはなりません。
給付の内容は、

・適法であること(公序良俗に違反しない)
・実現可能、また将来は実現可能になるであろうこと
・内容が確定している(契約成立時には決まってなくてもよく、履行時までに決めればOK)

という要件を満たしていれば、契約自由の原則により好きに決められます。

債権には「特定物債権」「不特定物債権」「金銭債権」という種類があります。

(1)特定物債権

特定物とは、中古車や家、原画など、代わりがなく個性に着目できる物のことです。
もしこの特定物に何かがあっても全く同じ代替品を見つけることはできないため、債務者にはこれを相手方に引き渡すまで自分の物以上に大切に扱うべきという「善管注意義務」が課せられることになり、仮に滅失・毀損があった場合は損害賠償責任を負わされます。

(2)不特定物債権

一方、不特定物とは代替品があり、交換可能な物のことです。
「種類物債権」とも呼ばれ、リンゴ十キロやビール二十本などのように、債権目的が種類だけで明示されているという場合を指します。滅失・毀損があったとしても、同じ内容のものが市場にあれば交換できるため、履行不能になることはありませんが、約束を果たす履行段階になれば種類物債権も特定され、債務者に善管注意義務が課せられるのです。

(3)金銭債権

金銭債務はその名の通り、代金などお金に対する債権です。
お金は「この千円札」などと特定する必要がないため、履行不能という状況にはなりません。
どんなに長い間支払がなかったとしても、それは「履行遅滞」として扱われます。
その他、利息の支払に関する「利息債権」や、対象物が複数個あるうちから選ぶ「選択債権」があります。

2 債権の効力

債務は履行されなければいけませんが、民法には自分が力づくでどうにかすることを認めない「自力救済の禁止」があるため、債権者が勝手に履行させるということは出来ません。債権者を保護するため、民法はパターン別に債権者がとれる対応を規定しています。

(1)対内的効力と対外的効力

効力は「対内的効力」と「対外的効力」に分かれます。

対内的効力には、債務者に履行を請求する「履行請求権(給付請求権)」、給付され受け取ったものを保持する「給付保持力」、裁判所に訴えることで強制的に給付を実現させる「履行強制権」があります。

対外的効力は、債務者の責任財産を守るため、第三者に対する債務者の権利を代わりに債権者が行使出来る「債権者代位権」と、債務者による債権者を害する詐害行為を債権者が裁判所を通じて取り消せる「債権者取消権(詐害行為取消権)」に分類されます。

では、そういった効力をはたらかせる「債務不履行」とはどのような状態でしょうか。

(2)債務不履行

まず前提として、債務不履行とされるようなケースは、債務者側の故意過失責任によるものです。
債務の履行がされないことで債権者に損害が発生すると、「過失責任の原則」に基づき、債務者は損害賠償責任(不法行為の損害賠償とは違い、契約に基づくもの)を負うことになります。

債務不履行には「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」という三種類があります。

①履行遅滞

まず、履行遅滞は「債務者に責任があって」、「履行可能なのにしていなくて」、「遅滞が違法である」という要件を満たしているものです。

履行遅滞が起こった場合、債権者は損害賠償(遅滞賠償・填補賠償)請求か契約解除という手段を取れます。うっかり電気料金の支払期日が過ぎたため、債権者の電力会社に電気を止められるなどの場合ですね。履行遅滞の場合、履行期がいつであるかということが問題になります。「何月何日に支払う」など、確定期限のある債務である場合、それを過ぎると履行遅滞とみなされます。

原則としては「持参債務」、つまり相手方に対して債務者が自分からはたらきかけて履行する(相手の家に行ってお金を返したり銀行の口座に振り込んだり)という債務なので、期限が過ぎると履行遅滞となりますが、例外として、新聞の集金のように家に債権者側が来る、相手方から取立てがある債務の場合は、期限が過ぎても取り立てない債権者が悪いということになるため取立てがあるまで履行遅滞にはなりません。

「自分が死んだとき」など期限が不確定の場合、その期限が到来し、かつ債務者がそれを知った時点、また期限到来後に債権者が催告をした時点から遅滞がスタートします。

では、本などを友人に貸すときなどのように「返すのはいつでもいい」と債権者が示した場合はどうでしょう。このときには債権者が「返して」と請求(催告)した時点から遅滞になるのですが、消費貸借契約の場合と不法行為に基づく損害賠償債務の場合は時期が異なります。

期限の定めのない消費契約は、相当期間が経過すると遅滞に陥るとされています。これは、突然「金返せ」と言われた債務者が履行遅滞の責任を負うのは理不尽である、という考えに基づく決まりです。

そして、不法行為に基づく損害賠償債務も期限の定めがない債務なのですが、不法行為者を保護する必要はないため、催告という段階は踏まず不法行為時点からすぐに履行遅滞となります。

なお、債権債務の消滅時効起算点となるのは、確定期限債務・不確定期限債務が期限到来時、期限の定めのない債務は債権発生時、期限の定めのない消費貸借債務は催告があったときは催告時から、なければ契約成立時から、不法行為に基づく損害賠償債務は損害および加害者を知った時点からになります。

②履行不能

履行遅滞は「本当は履行できるのにしない」というケースですが、できない状態を「履行不能」といいます。

履行不能の要件は「債務者に責任があり」、「契約時には出来た履行が債権発生後に履行出来なくなり」、「不能が違法」であることで、債権者は損害賠償(填補賠償)請求、契約解除をすることができます。

物権のところで、1つの物に対して2人の買主と契約を結んでしまう二重譲渡がありましたが、このときどちらか一方の買主への目的物の引渡し債務は履行不能にあたります。

③不完全履行

リンゴ10kgを頼んだけれども5kgしか来なかった、などのように、一部分は債務が履行されたものの不完全という場合は「不完全履行」です。

「債務者に責任があり」、「履行が不完全」で「不完全な履行は違法である」という要件を満たせばこれにあたるため、債権者は完全な給付「追完」の請求、損害賠償(遅滞賠償・填補賠償)請求、契約解除をすることができます。基本的に追完してもらえば解決するのですが、もしも追完ができない場合には損害賠償をすることになるでしょう。

(3)損害賠償請求

債務不履行があった場合、債権者は「履行の強制」「契約の解除」「損害賠償請求」をすることが可能ですが、行政書士試験では損害賠償請求が重要になります。

当事者は損害賠償額を事前に決めておくという「損害賠償額の予定」ができますが、これをした場合、公序良俗違反レベルの非常識な金額でない限りは、実際の損害がどれだけであろうと賠償額の変更を裁判所がすることはできません。

損害賠償債権の時効消滅は10年です。債務不履行では原則として金銭賠償がとられます。

なお、何らかの理由で債権者側が代金を受け取らないなどという理由によって履行ができない場合は「受領遅滞」とみなされ、債務者の債務不履行責任は生じません。ただし、債務者による、受領遅滞を理由とした契約解除や損害賠償請求は認められません。

(4)債権者代位権

債権には対外的効力という、債務者が自由にできるはずの財産行為に債権者の干渉が許されるという「債権者代位権」「債権者取消権」制度があります。
対外的と呼ばれるのは、債務者・債権者以外の第三者にも効力が及ぶことからです。

債権者代位権は、債務者の責任財産(強制執行の対象)を守るために債権者が債務者の権利を代わりに行うというものですが、本来財産権は他人が干渉出来ない領域であるため、

・債務者の財産が少なく、放置しておくと債権回収が出来なくなる「債務者の無資力」のおそれがある
・債務者がその権利を行使していない
・原則として、(被保全)債権が履行期にある
(履行期前でも、すぐに債務者の権利を行使しなければ債権の保全が不可能になるという場合は例外として、「裁判上の代位」で裁判所の許可を得た上で代位可能)

という要件を満たす必要があります。

また、「保存行為の代位」と呼ばれる、未登記の権利を登記したり消滅時効を中断したりといった、財産の保存行為は裁判所の許可が無くても履行期前にできます。

原則として、被保全債権は金銭債権とされていますが、登記請求権、債権譲渡の通知請求権なども判例で認められました。債権者代位権の対象は、代金請求権や貸金請求権等を強制執行出来るような金銭債権ですが、一定の給料債権や国民年金受給権など、差押えが法律上禁止されている財産や、親権や夫婦間契約取消権といった一身専属権への行為はできません。

債権者代位権を債権者が行使した場合、代理行為のように、その効果は直接債務者に帰属しますが、代理行為とは異なり債権者は債務者の名ではなく、自分の名でその権利を行使することになるので注意しましょう(裁判上、裁判外両方で行使可能)。なお、債権者代位権は消滅時効にはかかりません。

(5)債権者取消権

では、債権者取消権はどうでしょう。

この権利が行使される場合には、債権者に害を与える法律行為である「詐害行為」の取消を目的としているため、詐害行為取消権とも呼ばれることがあります。詐害行為とはいえ有効な法律行為の取消しであるため、裁判所が必ず関与し、権利の行使は裁判上に限られます。

原則として被保全債権は金銭債権ですが、将来的に金銭債権になることが見込まれる特定物債権でも例外として認められます。債権者取消権が生じる要件は、

・債務者が、債権者の権利が侵害されるとわかった上での詐害行為
・詐害行為による受益者(債務履行のアテになりそうな土地をもらった人など)や転得者(さらにその人から土地を譲渡された人など)が、債権者が害することを知っていた悪意者である
・詐害行為が債権取得日以降のものである(契約行為において履行日が契約日より後という場合は、債権取得日は契約日よりも前でないといけない)
・債務者は詐害行為によって債務超過となり、弁済不可能となること

です。

詐害行為に該当する事例は、不動産の相当価格での売却(例外として、債務者に害意がなかったり弁済費用を別途用意していたら該当しない)や、債務者が複数人いるうち1人の債権者と通謀し、他の債権者に対する害意を持って行った弁済です。

債権者取消権の対象はあくまでも財産権を目的とした法律行為であるため、結婚のような身分行為は取り消せない、と判例はしています。行使した場合の効果は総債権者のために生じ、消滅時効は債権者が詐害行為の事実を知ってから2年、詐害行為から20年です(債権者代位権と違って消滅時効にかかります)。

3 多数当事者間における債権債務関係

債権者と債務者が一対一の関係でなく、複数人いる場合には「分割債務」「分割債権」というものが生じます。

たとえば、不動産屋のAさんから1000万円の別荘をB、C、D、Eさんが共同で購入した場合、Aさんはあとの4人に対して分割債権を持っている(4人からすればAさんに対し分割債務を負っている)ということになります。

分割債権・債務は同額ずつでないといけないわけではなく、契約によってそれぞれの額を決めることができます。しかし債権を分割しないで「4人全員で1000万払ってくれればよい」などの連帯債務や、新たに保証人のFさんをつれてきて債務を保証させる保証債務といったものが、行政書士試験においては重要です。

(1)連帯債務

では、連帯債務から見ていきましょう。

連帯債務は、複数人の債務者が各自で債務全額を支払わなくてはならないというものです。上記の例において、Aさんが4人全員にまとめて1000万円の支払を求める、といった感じですね。

債権者は債権全体の回収が目的ですから、1人の債務者だけに請求しても順番に請求しても、一部の債務者には一部の債務履行だけを求めても、請求方法は債権者の自由とされています。

連帯債務の場合、Bさんがまとめて1000万円を出すというように、債務者のいずれかが債権全体を支払うことで債務は消滅します。BさんはC、D、Eさんの分も支払ったため、債務消滅後に各250万円を請求するなど、内部負担分の求償が可能です。

連帯債務においては、連帯債務者の1人に何かが生じると他の連帯債務者に影響がある「絶対効」と影響のない「相対効」がありますが、連帯債務者ごとに債務が独立している連帯債務では原則として相対効とみなされます。

相対効にあたるのは、債務者の一部に対する「無効・取消し」「時効中断」「時効の利益の放棄」「債権譲渡通知」ですが、例外として「弁済」「履行請求」「更改」「相殺」「免除」「混同」「時効完成」は絶対効です。

(2)保証債務

これに対し、保証債務では債務者とは別に、第三者である「保証人」が関係してきます。

物権に出てきた抵当権が物的担保であるのに対し、こちらは保証人という「人」的担保です。債権者は保証人と保証契約を結び、主債務者(直接の債務者)がお金を返せなくなると、保証人に対して返済を請求することができるようになります。

保証債務には、保証債務は主たる債務と独立している「独立性」、保証債務と主たる債務の内容が同様である「同一内容性」、主たる債務の無効・変更・消滅に従って保証債務も無効・変更・消滅する「附従性」、主たる債務が譲渡されると保証債務も譲渡される「随伴性」、主たる債務が履行されないときに補うための保証債務であるという「補充性」という性質があります。

補充性により、債権者は第一に責任を負う主たる債務者よりも先に保証人への請求をすることはできません。

保証人には、主たる債務者への請求を先にするよう主張する「催告の抗弁権」と、主たる債務者に支払えるだけの財産があることを証明することで主たる債務者への請求をするよう主張出来る「検索の抗弁権」があります。

検索の抗弁権が行使出来るのは、債権者が主たる債務者への請求をした上で、保証人に請求したという場合です。「分別の利益」に基づき、負担額をバラバラに決める特約が無い限り、各保証人は債務を頭割りで分割した額の分だけ責任を負います。

この、催告・検索の抗弁権と、分別の利益が無いのが連帯保証です(それ以外は保証債務と同じ)。連帯保証では主たる債務者を通さなくても、いきなり保証人への求償が認められるため、より確実に債権の回収が可能なのです。

4 債権譲渡

債権が他の人に移るシステムを「債権譲渡」といいます。

債権は財産であるため自由な譲渡が認められており、中身が全く変わらない状態で譲渡することができます。利息や担保、保証などといった債権に付随する権利や抗弁権も共に移動します。しかし、性質上譲渡出来ない債権や、特約で譲渡を禁止していた場合、法律で譲渡が禁止されている場合は譲渡することはできません(譲渡禁止の特約にういて、債権の譲受人が善意の第三者であれば有効)。

第三者が関わってくると、自分の権利を主張する対抗要件が必要になります。物権における登記の役割を負うのは、債権ではどのようなものになるのでしょうか。これは、貸金債権や代金債権などのように債権者が特定されている「指名債権」と、手形などの「指図債権」によって異なります。

指名債権では、元の債権者である譲渡人が、債務者に対して譲渡の事実を「通知」するか、通知前に債務者が債権譲渡の事実を知った場合に債務者が譲渡を「承諾」すると、対抗要件になり得ます。

指図債権では、支払を受ける人を指定し、その旨を記した「裏書」およびその証書を「交付」することが対抗要件となります。対抗要件を扱うのは、物権と同じように、債権の二重譲渡がなされた場合です。対抗要件があれば権利を主張できますが、もしも確定日付の通知が複数あったら、その証書の通知の到達が早い方が優先されます。

確定日付のある証書による通知や承諾がないと、「債権の二重譲受人」「債権上の質権者」「債権譲渡人が破産したときの破産債権者」「譲渡債権を差し押さえた譲渡人の債権者」に対抗できません。

5 債権の消滅

行政書士試験において、債権の消滅は出題率が高めの分野です。

7つのパターン「弁済」「代物弁済」「供託」「相殺」「更改」「免除」「混同」のうち、特に重要なのは弁済と相殺です。

(1)弁済

弁済は、債務者が債権の内容を実現することで、つまり普通に契約が履行される場合です。

物を買ったらお金を払い、店員は物を引き渡すというのはごく当たり前のことですが、これを弁済という、債務者が債権者に弁済の提供をし、債権者がその提供を受領することで完成する行為としてみなします。

弁済には、実際に債務者が債務の内容を給付し、債権者が受け取ることで履行完了とする「現実の提供」(原則)と、履行の準備が出来た旨を債務者が債権者に通知する「口頭の提供」(例外)があります。

口頭の例外が認められるのは、債権者が事前に受領を拒否した場合と、履行のために債権者の行為が必要な場合のみです。提供が行われると、債務不履行にならない、担保実行されない、遅延利息の不発生、債権者による同時履行の抗弁権の消滅、供託可能になるという効果が生じます。

弁済の主体には債務者自身だけでなく、原則として債務者以外の第三者も含まれますが、特定の芸術家の作品を頼むなど代わりが効かないといった「給付の性質から許さない場合」、「当事者が反対する場合」、債務者の身内や友人など「利害関係の無い第三者の弁済を債務者の意思で許さない場合」には、第三者弁済ができません。

弁済の相手方となり、弁済を受領するのは原則として債権者と、代理人などのように弁済を受ける権利を与えられている者です。例外として、盗んだ預金通帳と印鑑を持った泥棒のように、債権者ではなくても債権者のような外観を備えている「債権の順占有者」は、弁済の相手方となることができます。

このような泥棒に騙されて銀行がお金を渡してしまったとしても、銀行からして「真の債権者と信じさせる外観がある」相手で、また銀行が「善意無過失」であれば順占有者の弁済の成立要件となるため、泥棒に渡した分のお金を返すよう被害者に請求されたとしても、銀行には応じる必要はありません。

弁済は特約がない限り、特定物の引渡債務では債権発生時にその物があった場所で、その他の給付では弁済時点の債権者の住所にて行われます。また、特約が無ければ弁済費用は債務者の負担となりますが、債権者が途中で引っ越したりしたなどで交通費が余分にかかる場合には、その分は債権者の負担になります。

債務者以外の者が弁済することで消滅した債権者の権利が、求償権の範囲で弁済者へ移転することを「代位弁済」といいます。保証人が債務者の代わりに債権者に債権を弁済すると、債権者にあった債権は消滅するけれども保証人は債務者に同額の求償権を持つ、ということです。これは第三者弁済にも適用され、債権の全額でなく一部弁済のときにも認められます。

代位弁済が成立するには、任意代位では「債権者の承諾」という要件を満たす必要がありますが、法定代位においては、弁済がない場合法律上不利益を被るのは債権者に代位するのが当然なので、債権者の同意は不要です。

(2)相殺

では、もう1つ「相殺」について見ていきましょう。

これは、債権者と債務者の間で同種の債権が2つ相対立している場合、対等額で消滅させるというシステムです。

たとえばAさんがBさんに対して1000万円の代金債権があり、同時にBさんがAさんに対して500万円の代金債権があるときに、お互いその額を支払うよりも500万円分を相殺して、AさんがBさんに500万円払えばよいことにした方が合理的である、ということです。

相殺をするときにはその旨を相手方に伝える必要があります(承諾は不要で、一方的な意思表示でもよい)。相殺するよう働きかけた人の側にある債権を「自働債権」、それを受けた側の債権を「受働債権」といいます。

相殺の要件は「債権が対立している」「対立する両債権の目的が同種」「両債権が有効に存在している」「両債権が弁済期(必要最低限として自働債権の弁済期)」「債権の性質上相殺が許される」「抗弁権がついていない」(以上が満たされている状態が「相殺適状」)「債権の消滅」といったものがありますが、もしも要件が満たされている場合でも、特約で相殺を禁止していたり、法律上相殺が禁止されていると相殺はできません。

法律では、抗弁権付き債権・弁済期前の債権の自働債権側の相殺、差押禁止債権・不法行為による損害賠償請求権の受働債権側の相殺、質権が設定されている債権・支払が差し押さえられた債権の自働債権側・受働債権側両者の相殺が禁止されています。

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