家族法

家族法

行政書士試験の出題科目の1つ、民法はたいへん膨大な数の法律を含んでいます。
そんな民法は大きく2つに分けることが出来、その1つが物権・債権から成る財産法でした。
では、最後は残された「家族法」について見ていきましょう。

民法の家族法は、結婚や親子関係などに関する「親族」と、人が死んだ後にその人の持っていたものをどうするかという「相続」に大きく分類されます。
親族法では夫婦・親子などの身分そのものについて、相続法ではその身分に基づく財産について定められています。
行政書士試験では、親族法の出題率が高い傾向にあるほか、相続も全体的に押さえておく必要があると考えられます。
婚姻の無効や取消し事由、遺言の効力などを重点的にチェックしていきましょう。

 

親族法

民法における「親族」は、家族や親戚の範囲を一定のものに限定しています。
親族として扱われるのは「6親等内の血族」「配偶者」「3親等内の姻族」です。
血族は血のつながりがある物、姻族は婚姻によって生じた親戚関係(配偶者の兄弟やその子どもなど)で、親等は親族関係の近さを表す言葉ですが、配偶者同士となる夫婦に対しては使わないので注意しましょう。
親族法では、この親族について、神速一般の権利・親族の婚姻および養子縁組の取消請求権・親権等の喪失および取消請求権・後見人等の選任および解任請求権を定めています。

親族関係の終了原因は、親族の種類によって異なります。
自然血族(血が繋がっている血族)は死亡または失踪宣告、法定血族(養子・養親)は離縁または縁組取消し、配偶者は死亡または婚姻取消し、もしくは離婚、姻族は離婚または婚姻が終了原因です。
配偶者が死亡した・失踪宣告されたからといってすぐさま姻族との関係が失われるわけではなく、生存している配偶者から終了の意思表示があった時点で親族関係が終了することになります。

 

 

婚姻

親族の中で、特に強い関係とされるのが婚姻関係と親子関係です。

婚姻は、婚姻届および両者の婚姻意思によって成立します。
民法では法律婚主義がとられているため、婚姻届という法定手続以外の婚姻は認められず、事実上の婚姻関係のみで婚姻届を出していない場合は「内縁」として扱われます。
もし詐欺・強迫による婚姻(第三者の詐欺・強迫も含む)の場合には、婚姻意思を欠いていると扱われるため婚姻を取消すことが出来ます。
婚姻の取消事由はその他に、「婚姻年齢に達していない(男性18歳、女性16歳)」「重婚となる内縁はカウントされない)」「再婚禁止期間中である(女性6ヶ月間)」「近親婚(直系血族または3親等内の傍系血族(自然・法定を問わず禁止、養親と養子は離縁しても不可、直系姻族間も不可))があります。
取消しを主張する際には家庭裁判所から、取消しの審判をもらう必要があります。
婚姻の取消効果は他の法律行為の取消しとは異なり、将来に向かってのみ効果を持つ「将来効」であるため、婚姻中の子どもは嫡出子のまま変わりません。
無効事由は成立要件を欠いていること、つまり「婚姻届」と「婚姻意思」のどちらかまたは両者が無い場合ですが、無効とされれば婚姻は最初から存在していなかったものとして扱われるため、他の法律行為の無効と同様のものになります。
子どもがいた場合は婚外子扱いとされます。
内縁状態にある当事者の一方、または第三者が勝手に婚姻届を提出した場合には、もう片方の婚姻意思を欠いているため本来無効とすべきなのですが、判例では例外として追認があれば届出当初に遡って有効となるとしています。
取消しとは異なり、無効は裁判所の判決がなくても当然に主張することが可能です。

婚姻が成立すると、身分上の効果として「夫婦同氏」「同居・協力・扶助の義務」「貞操の義務」「成年擬制」「契約取消権」が、財産上の効果として「婚姻費用の分担」「日常の家事債務の連帯責任」「夫婦別産制」という効果が生じます(財産上の効果に関しては、婚姻届出前に夫婦財産契約を結び特別に決めることも可能)。

婚姻を解消すると、身分上の効果として「婚姻関係の消滅(再婚可能、女性は6ヶ月経過後から)」「姻族関係の消滅」「復氏(婚姻前の氏に戻る。が、離婚日から3ヵ月以内に届出をすれば婚姻中の氏を名乗れる。一方当事者の死亡は当然には婚姻前の氏に戻るわけではなく、任意による復氏)」、財産上の効果として「夫婦財産契約、婚姻費用負担義務、日常家事の連帯責任が将来効として消滅」「相続開始(死亡の場合)」「財産分与請求(離婚から2年経過すると不可に)」という効果が生じます。
解消された場合、子どもは嫡出子の身分のままですが、親権者を決定する必要があります。
原則、子どもが称する氏は婚姻中のものとされていますが、例外として復氏した父母の氏を名乗ることも可能です。

 

 

親子関係

では、もう一方の強い関係となる親子関係について見ていきましょう。

親子関係における「子」は、血が繋がっている「実子」と人為的に親子関係を作り出した「養子」に分類され、実子はさらに嫡出子・非嫡出子に分け荒れます。
嫡出子とは結婚している男女から生まれた子どものことで、婚姻中に懐胎した、または婚姻日から200日後、婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は嫡出子として推定されます。
一方これらの要件から外れた、内縁中に妊娠してその後結婚したものの結婚日から100日で誕生、などという子の場合は、推定されない嫡出子として扱われます(当然に嫡出子とされます)。
が、その期間内であっても妻が夫によって懐胎することが出来ない場合に生まれた子は、推定の及ばない嫡出子とされます。
嫡出性に問題がある場合、推定される嫡出子なら嫡出否認の訴えを(夫が出生を知ってから1年以内に提起)、推定されない嫡出子・推定が及ばない子は親子関係不存在確認の訴えを、二重推定(離婚後、妻の待機期間中に再婚して子が生まれた場合には前婚の子・後婚の子両者に嫡出推定がかかる)の場合には父を定める訴えを提起することが出来ます。

一方、非嫡出子とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子のことです。
もっとも母親は生んだ本人ですから、生まれた時点で親子関係が確定しているのですが、父親に関しては自分が父である旨を認知しないと非嫡出子との親子関係は発生しません。
認知のうち、「任意認知」では父親が認知届を出して行うものです(遺言による認知も可、嫡出子出生届によって出来る場合もある)。
任意認知においては、意思能力を有する者なら(制限能力者も単独で)認知することが可能で、認知される側の意思は原則問われませんが、子が成年である場合はその子本人の承諾が、胎児の場合には母の承諾が、死亡した子に直系卑属がいてその者が成年であればその承諾がそれぞれ必要になります。
任意認知を一度したら、それを取り消すことは出来ません。

その任意認知を父親がしない場合には、子は父に対して「強制認知」、つまり認知を求める訴えをすることが可能です。
訴えを提起するためには、子・その直系卑属またはその法定代理人に意思能力さえあればよいとされ、制限行為能力者でも単独での提起が可能ですが、子の直系卑属は子が生きている間は訴えを起こすことが出来ません。
また、胎児には権利能力が無いとされているため、その法定代理人を母親が名乗ることで訴えを起こすことも不可能です。
出訴期間は父の生存中および死後3年以内、認知がされた場合は遡及効となり、親子関係は出生時まで遡って発生します。
また、父母の婚姻により非嫡出子が嫡出子としての身分を取得することを「準正」といい、父が認知した子がその父母の婚姻により嫡出子となる「婚姻準正」と、婚姻中に父母が認知することで嫡出子となる「認知準正」があります。

実子とは異なり、親子関係を法的に発生させた場合の子を「養子」といいます。
養子のうち、「普通養子縁組」は養子縁組をするという当事者の意思および届出によって成立します。
縁組においては当事者の意思が尊重されるため、意思能力があれば制限能力者でも可能ですが、15歳未満の場合は本人の代わりに法定代理人が縁組の承諾をすることになります(真実の親でない戸籍上の親の代諾は無権代理とみなされ無効だが、養子が15歳になった後に追認すれば有効)。
縁組の届出をしていない、または縁組意思が無い場合は要件を欠いているため、無効です。
縁組が成立すると、その日から養子の身分は養親の嫡出子となり、実質的に実子同様の状態とみなされる(法定血族の一員となる)ため、互いに相続権を持つと同時に扶養義務を負うことになります。
未成年の養子は養親の親権に服し、その氏は原則養親のものになります(養子が婚姻によって氏を変えていれば、婚姻中はその氏のまま)。
が、「養親が未成年」「尊属養子・年長者養子(養子が養親よりも年上)」「家庭裁判所の許可がない(後見人が被後見人を養子にする場合のみ)」「養子が15歳未満なのに法定代理人の代諾がない」「配偶者のある者が養子縁組をする場合、相手方配偶者の同意がない(原則)」「家庭裁判所の許可を得ていない(未成年者を養子とする場合、原則)」「詐欺・強迫による養子縁組」という事由があるときには取消しが可能です。
養子縁組の取消は将来効で過去に遡及しませんが、氏は縁組前のものに復氏します。
養子・養親のどちらかが死亡した場合でも、実親・実子同様養子縁組は当然に解消されず、解消する場合は家庭裁判所の許可が必要です。
解消する場合は通常、協議離縁か裁判離縁のどちらかによって行われますが、裁判離縁の訴えを提起するには「当事者の一方から悪意で遺棄された」「当事者の一方の生死が3年以上不明」「その他縁組の継続が困難な事由がある」といった事由が必要です。
縁組解消され、離縁が成立すると養子は嫡出子の身分の一切を失います。
親族関係はすべて消滅し、養子の氏は原則として縁組前のものに戻ります。

一方、この普通養子に対してあるのが「特別養子」です。
特別養子縁組制度は普通養子に比べ、実子同様に養子を扱うよう配慮されているため、養子になる年齢は原則6歳未満(6歳未満のときから監護者が養親となる者なら例外として8歳未満)という、養親に慣れやすい幼少期に限られています。
特別養子縁組は家庭裁判所の審判によって成立し、原則として実父母の同意が必要です。
普通養子縁組における養親の条件は20歳以上で単身者もよいとされているのに対し、特別養子縁組では25歳以上で配偶者のある者(片方が25歳ならもう一方は20歳以上であればOK)と限られており、かつ両者がともに養親とならなくてはいけません。
特別養子縁組が成立すると、実父母との親族関係は原則的に断絶され(普通養子縁組では親権のみが養親に移るため親族関係は実父母やその血族と継続)、法戸籍上でも長男、次女などと記載し養子であることが一見してわからないようにします。
離縁も原則として禁止されている(裁判所の審判で、養親による虐待・悪意の遺棄等養子の利益を著しく損害する事由がある、かつ実父母が相当の監護が出来ると認められれば例外として離縁可能。離縁後は実父母との親族関係が回復)ため、6ヶ月の試験養育期間が設けられています。

実子にしろ養子にしろ、法律上「親」とされた者には「親権」が付与されます。
親権とは、未成年の子の監護教育や財産管理といった親の権利義務で、夫婦は共同で親権を行使することになります(離婚した場合にはどちらか一方のみが親権者)。
財産管理において重要なのは法律の代理権で、親と子の利益が相反している場合には、親権者は特別代理人の選任を家庭裁判所に求め、子の利益を守る必要があります。
もしも親権が濫用されたときには、子の親族または検察官の請求により、家庭裁判所が親権喪失宣告を下すことも可能です。
子が成年に達すると、親権は消滅します。
親権は子の利益を守るためにあるため、家庭裁判所が認めた場合には審判に酔って親権者の変更が命じられることがあります。
養父母が死亡した場合には、実親の親権が復活するわけではなく、後見開始となります。

では、その「後見」とはどのようなものでしょう。
これは親権者がいない未成年者などを守るための制度で、親権者がいない未成年者の場合は遺言で指定された、または申立人(未成年者被後見人・親族・利害関係人)により選任された後見人が後見を務めます。
判断能力を欠く成年の場合、家庭裁判所による後見開始の審判の申立て、もしくは申立人(本人・配偶者・4親等内の親族など)によって後見人が選任され、後見開始が決定します。
未成年者、家庭裁判所で法定代理人・保佐人または補助人を免ぜられた者、破産者、被後見人に対して訴訟をし又はした者ならびに配偶者および直系血族、行方が知れない者は、後見人になることが出来ません。
後見人は正当な事由があり、家庭裁判所の許可を得れば辞任可能です。
また、後見人に不正な行為、著しい不行跡、任務に適しない事があった場合には、後見監督人・被後見印もしくは親族・検察官による請求または職権に酔って解任することが出来ます。

親族法のラストは「扶養」、すなわち自分以外の他者を養うことです。
これは自分で生活出来ないものに対して経済的援助を与えるという制度ですが、民法では一定の親族間に扶養義務があります。
扶養義務者は直系血族及び兄弟姉妹とされていますが、特別の事情がある場合は、家庭裁判所が三親等内の親族間に扶養義務を負わせることが可能です。
扶養を受ける権利(扶養請求権)は一身専属権で、この処分は禁止されており、債権者代位権の行使・受働債権としての相殺も認められません。

 

 

相続法

遺産相続、という言葉は一般的に使われますから、どのようなことなのかはイメージしやすいでしょう。
法律的に説明すると、死亡した自然人(死んだら何も出来ませんから、権利能力も失われます)が生前有していた権利義務を、一定の範囲の親族へ承継するということが「相続」です。
死んだからといって権利義務が消えてしまったら、その相手方が困るため、親族に負わせるということです。

人が死亡する、あるいは失踪宣告で死亡とみなされると、相続がスタートします。
これは相続人が相続開始の事実を知っているか否かは問われず、相続開始から被相続人の権利義務すべてが移動します。
相続財産に含まれるのは、相続開始時に被相続人に帰属していた現金・不動産などの所有権・占有権・財産的損害における損害賠償請求権・慰謝料請求権などで(生命保険金請求権は被相続人の死亡によって発生するため相続財産ではない)、被相続人の「一身専属権」、たとえば行政書士資格や医師免許などのようにその人個人に与えられたものや、被相続人が画家の場合に絵を描く仕事が残っていてその債務など、その人以外の代わりがきかないものは含まれません。
また、個人的な人間関係によって存続する身元保証契約も原則として相続しません(相続時に発生した具体的な債務は例外)。

上記のような権利のように、お金や不動産などといった、自分の利益になりそうな財産(積極財産)なら相続したいところですが、しかし権利義務には借金など(消極財産)のように嬉しくない負の財産もありますから、トータルして借金のほうが多ければ相続せず「限定承認」することも可能ですし、相続したくない、また親類間での相続問題に巻き込まれたくない、などの場合は「相続放棄」することも出来ます。
限定承認とは、相続する財産の中から被相続人の借金などの分を支払うことで、自分の財産による責任を負わないことを条件に相続を承認することです。
トータルで利益が大きくなったら相続出来るという点では相続人にとってありがたいシステムですが、相続人が複数いる際は共同相続人の全員が限定承認する必要があります(相続放棄した人がいる場合、残りの相続人だけの限定承認でOK)。
一方、相続放棄は「自分は最初から相続人にはなりません」ということを申し出ることで、一度したら取り消すことは出来ません(詐欺や錯誤によって放棄した場合は取消可能)。
限定承認にしろ相続放棄にしろ、する場合には相続人が相続開始を知った時点から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出る必要があり、もしもそれがなかった場合または相続人が遺産を処分した場合には、一切の財産を無条件に相続するという「単純承認」とみなされます(相続開始前の放棄は不可能)。

相続争いを防ぐため、被相続人は遺言による贈与(遺贈)や、死因贈与(死亡によって効力が生じる贈与契約)をすることが出来ます。
こういったものを用意しておかなければ、相続人には原則親族しかなれませんが、遺言によって相続権のない友人などに財産を贈与することも認められています。

では、遺言が何もなかったとして、相続開始した場合です。
遺言が無いときに相続人となれるのは、配偶者と子、直系尊属、兄弟姉妹で、複数の相続人がいる際には相続順位によって相続します(配偶者は常に相続人となります)。
相続順位は、第一順位が子、第二順位が直系尊属、第三順位が兄弟姉妹ですが、基本的には相続順位の上位の者がいれば下位の者には相続されません。
相続分の計算は、第一順位が配偶者2分の1と子2分の1、第二順位が配偶者3分の2と直系尊属3分の1、第三順位が配偶者4分の3と兄弟姉妹4分の1です。
配偶者がいなければ相続分は全て該当順位の者となり(たとえば被相続人の配偶者がすでに死亡していれば、財産は全て子に相続)、また、配偶者の他に相続人がいないならば、配偶者がすべてを相続します。
もちろん、これはあくまで遺言が無い場合に適用される法的なルールなので、遺言次第でこの取決め以外の相続をすることは出来ます。

さて、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹に相続権があるということですが、場合によってはその資格がなくなることもあります。
これには「相続欠格」と「相続廃除」のケースがあり、相続欠格は不当な行為によって相続を図った人から相続権を失わせるというものです。
たとえば、財産目当てで親を殺した、兄弟を殺したなどの場合、その殺人犯に財産を相続させるのはおかしい、ということですね。
相続欠格となり、法律上当然に相続人の資格が剥奪されるのは「先順位・同順位の者を殺害して自分の相続順位を上げようとした」「被相続人に対する詐欺・強迫によって遺言の作成・変更・取消をした」「遺言の偽造・変造・隠匿をした」「被相続人が殺されたと知っていながら告訴・告発をしなかった」という場合です。
一方、相続廃除とは、放蕩癖があるなどのように「こいつには財産を渡したくない」と被相続人が考えた場合、家庭裁判所に請求することで、推定相続人の相続権を剥奪出来るシステムです。
生前にやっておくことも可能ですし、遺言にその旨を記すことで廃除することも出来ます。
相続廃除が認められるのは、「推定相続人に著しい非行があった」「被相続人に対して虐待・重大な侮辱を加えた」場合ですが、その後推定相続人が反省したり、被相続人の気が変わったりなどしたときには、被相続人の意思次第でいつでも相続廃除を取り消すことが可能です。
相続欠格と違い、取消しによって相続権が回復する可能性が残されているのです。

また、相続人となるべき子・兄弟姉妹が相続開始前にすでに死亡していたり、また相続欠格・相続廃除によって相続権を失っている場合、その人の親族の一部がその人に代わって相続分を相続することも認められています。
これを「代襲相続」といい、相続人が子の場合はその直系卑属に、相続人が兄弟姉妹ならその子のみ、相続人の代わりに相続出来ます。
代襲者からさらに代襲する「再代襲」も、代襲者の子のみ認められています。
相続放棄は代襲原因とはならないので注意しましょう。

相続人が複数いる場合には、相続財産は相続開始によって相続人の共有財産となり、その後それぞれに分割されます。
遺産分割には「現物分割」「代償分割(自分が遺産を相続する代わりに他の相続人に金銭を与える)」「換価分割(相続財産の全部または一部を売って、その代金を分配する)」があります。
遺産がすべて現金ならば法定の計算方法に基づきスムーズに分配出来るでしょうが、大抵の場合には家や土地といった不動産、車、宝石や各種債権など、物理的に分けられない財産も相続されます。
そのため、遺産分割には、遺言に従う「指定分割」、遺言がないときに相続人が協議して決める「協議分割」、家庭裁判所の審判によって分割方法を決める「審判分割」というルールが用意されています。
遺産分割は原則いつでも出来ますが、遺言・協議・審判による分割禁止の取決めがあると分割出来なくなります(遺言による分割禁止は5年以内のみ)。

相続人ではないのにも関わらず、相続財産を占有している「表見相続人」に対し、本当の相続人である「真正相続人」は「相続回復請求権」を行使して相続財産の回復を求めることが出来ます。
この権利は裁判だけでなく、裁判外でも行使出来ますが消滅時効にかけられる対象でもあるため、相続人またはその法定代理人が相続財産の侵害事実を知ったときから5年、相続開始から20年が経つと権利が消滅します。

 

 

遺言

先程から各所に登場する「遺言」ですが、遺言をするにも条件があります。
まず、遺言は意思表示であることから、意思能力が無い者がした遺言は無効ですし、精神状態が正常であることが前提です。
とはいえその条件を満たしていれば遺言能力を有しているとみなされるため、未成年者でも満15歳以上であれば単独で遺言出来ますし、被保佐人・被補助人の単独遺言も認められています。
成年被後見人の場合は、事理弁識能力が一時的に回復しているときならば、2人以の意思の立会いで単独の遺言が可能です。
しかしいくら遺言能力があっても、民法上で決められた方式に則っていなければ遺言として効力を持ちませんし、複数の者が同一の遺言書を作るという「共同遺言」も禁止されているため、これにあたるものは無効とみなされます。

民法上有効とされている方式は、普通方式と特別方式に分けられ、普通方式には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」があります。
自筆証書遺言では、遺言者が全文・日付(「吉日」などの書き方は無効、正確な日付を)・指名を手書きして押印することが条件とされ、他人が代筆したり、ワープロや録音で作成したりというものは無効とれます。
公正証書遺言は、証人二人以上の立会いのもと、公正証書によって作られる遺言で「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授(話せないときは自署でも可)」「それに基づく公証人の筆記」「遺言者、証人がそれを承認し、公証人含め各自が署名押印」という厳格な手続きを踏む必要があります。
秘密証書遺言は作成した本人が、遺言書(ワープロや代筆でも可)に署名押印し、それと同じ印で封印した遺言書入りの封筒に遺言者・証人・公証人が署名をして封をしたものを指します。
特別方式とは、病気などによって死期が迫っていたり(臨終遺言・危急時遺言)、伝染病などを理由に隔離されていたり(隔絶地遺言)する場合に認められるものです。
これはやむを得ない状況における遺言であるため、遺言者が普通方式の遺言を作成出来る状態になって6ヶ月間生存した場合には、特別方式でなされた遺言の効力は失われます。

法的に有効な遺言は、身分上の行為、相続行為、財産処分事項における効力を持ちます。
身分上の行為には「後見人の指定」「後見監督人の指定」「認知」、相続行為には「相続人の廃除(生前でも可)」「廃除の取消し(生前でも可)」「相続分の指定およびその委託」「特別受益者の相続分の指定」「遺産分割禁止」「遺産分割方法の指定およびその委託」「遺言の執行者の指定およびその委託」「遺留分減殺方法の指定」、財産処分事項には「財団法人設立の寄附行為(生前でも可)」「遺贈(生前でも可)」という効力があります。
これらの効力は遺言者の死亡時に生じますが、方式を欠いている、公序良俗に反している、といった遺言では無効ですし、詐欺・強迫による遺言ならば遺言者・相続人による取消しが認められます。
遺言の効力が生じる前ならば、撤回を自由に、いつでもすることが出来ます。
内容が異なる遺言が複数存在するときには新しい遺言を優先して扱います。

 

 

遺留分

相続分と混同しやすいものに「遺留分」というものがあります。
これは、被相続人が生前・死後に自分の財産を処分しても相続人に確実に残されるべきとされる財産です。
たとえば遺言によって「自分が死んだら財産は全て友人に」などと言われてしまうと、遺された親族は何ももらえないということになりますが、それはやはりおかしいということで、当然留められるべき分の財産は遺留分権利者のものになるとされているのです。
遺留分権利者となれるのは、配偶者・子・直系尊属です。
相続とは違い、兄弟姉妹に遺留分は無いため注意しましょう。

遺留分の割合は、直系尊属だけが相続人の単独相続なら3分の1、その他は2分の1とされています。

もしも生前贈与や遺贈が行われ、遺留分に相当する財産が相続人に残されなかった場合には、相続人は生前贈与・遺贈を受けた人に対して、生前贈与・遺贈から遺留分に満たない分を減殺するよう請求することが出来ます。
この請求がなされると、遺留分を侵害する部分の生前贈与・遺贈は無効となります。
が、減殺請求権は、相続の開始・減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ってから1年、相続開始から10年で時効によって消滅します。

 

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