行政書士の試験科目より 居住移転・国籍離脱の自由~財産権・正当な補償~

行政書士の試験科目より 居住移転・国籍離脱の自由~財産権・正当な補償~


行政書士試験で出題される憲法の三大原則の1つ、「基本的人権の尊重」の中には自由権の保障が含まれています。

自由権をさらに分化すると「精神の自由」「身体の自由」「経済の自由」となります。
このうち、「経済の自由」は「職業選択の自由」「居住移転の自由」「財産権の保障」から成り立っています。

1 居住移転・国籍離脱の自由

憲法22条『居住移転・国籍離脱の自由』では、第1項

何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。

および第2項

何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

と定められています。

居住移転の自由には、どこにでも店を開いて商売ができるという経済的自由の側面と、旅先で人との出会いがあったり知的接触があったりという精神的自由の側面、2つを持ち合わせています。

2項で定められている海外移住の自由では、海外に引っ越すだけでなく渡航(旅行)する自由という意味も含まれています。
もっとも公共の福祉に基づき、海外旅行にはパスポート(旅券)が必要かつ一定の場合は外務大臣が発給拒否をすることもある、と旅券法13条で定められています。

2 財産権

憲法29条『財産権』では、第1項

財産権は、これを侵してはならない。

および第2項

財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

および第3項

私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

とされています。

第1項は、国家による個人の財産権の保障および私有財産の制度的保障を意味しています。
ただし、第2項ではその規制が可能であると定められていて、営業の自由で出てきた積極目的規制や消極目的規制がなされることが認められています(財産権の規制には、営業の自由に適用される違憲審査基準のパターンは一概に通用しないので注意)。
条文中では「法律で」とされていますが、条例による財産権の制限も、「奈良県ため池条例事件」などの判例で合憲となりました。

しかし規制ばかりでは国民が財産上の損害を負ってしまいます。
そのため第3項では、正当な補償を国がしてこそ、私有財産の収用や制限が可能だとしているのです。
基本的には、道路や空港を作る時に国民の私有地に引っかかってしまった、などという際にその土地が国を買い取る形で保障する「損失補償」がこれにあたります。
補償規定がない場合の法律は、第3項を根拠に補償の請求をすることができます(収容・制限のみの法律自体は違憲ではない)。

では、その「正当な補償」とはどれくらいされるべきなのでしょうか。
前述のような土地収用の場合、買い取られる土地が使っていない空地ならまだしも、そこに住んでいて引っ越さなくてはならない場合には、市場価格での土地購入に加えて新たな家の代金、引っ越し費用まで負担してもらわないと困ってしまいます。
こういった補償を「完全補償」といいます。

これに対してあるのが「相当補償」です。
戦後、GHQは自作農を増やすべく農地改革を行い、地主の土地を廉価で収容して小作人に与えるということをしました。
この時、地主に支払うのは市場価格(完全な補償)にすべきか、それを下回っても合理的に算出された額であればよい(相当補償)のかが争われましたが、結果的に、正当な補償は相当補償であるとされました。

道路拡張のための土地収用などは完全補償が望ましいと考えられているのですが、農地改革のようにある種の財産権に対して社会的評価が根本から変わっているという場合や、公共のために用いられる場合には相当補償でよいとされています。

なお、「正当な補償」がいつ行われるべきかというところまで憲法は定めていません。
収用と損失補償が必ずしも同時に履行されなくてはならないわけではなく、交換的であるべきだという定義はないのです。

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