行政書士試験の出題科目である民法には、契約に関する規定が詳しくされています。
前ページまでは、契約の締結に伴って生じる効果について見てきました。
債権・債務の発生や所有権の移転がありましたが、しかしこの効果が適切に作用するためには、それぞれが必要とされる行動をとらなくてはいけません。
中でも債務の履行は必ず確保しなくてはならないほど重要ですから、民法はそのために多くの手段を用意しているのです。
目次
1 債権者平等の原則
契約締結後に債権者が債務を弁済しない時には、担保を持っていない債権者(一般債権者)は債務者の所有財産に対して強制執行をし、自分の債権を回収することが可能です。
この、債権回収において引当てとなり得る債務者の財産を「責任財産」といいます。
しかし、そもそも債務者が責任財産を持っていなければこの制度は意味がありません。
また、責任財産があったところで債務者が複数いて、債権の総額に対して責任財産が足りないこともあるでしょう。
こういった時、一般債務者たちは自分の持っている債権学に応じた分配を平等に受けることになるのです。
これを「債権者平等の原則」といいます。
2 按分比例
不動産業者Aさんが、買主Bさんと建物○○の売買契約を締結しました。所有権移転登記を完了させ、鍵も引渡したのですがしかし、Bさんは売買代金の5,000万円を支払う前に無資力状態になってしまったのです。
Aさんへ5,000万円が払えないだけではなく、Bさんには他にも金銭債権を有する債権者であるCさんとDさん、Eさんがいました。しかし、Aさんも含め彼らのいずれも担保を持ち合わせておらず、加えてBさんの責任財産は債権の総額に満たないのですが、こういった場合はどうするのでしょうか?
この時こそ、上記にある「債権者平等の原則」が適応されるのです。
債権額に応じた額を回収するように責任財産を分けることを「按分比例」といい、Aさんは5,000万円という債権額に応じて按分した分の債権を回収することになります。つまり、Aさんは5,000万円全額を回収することができないということです。