行政書士はリモートワークできる? 導入や補助金・助成金申請のサポートは?

行政書士はリモートワークできる? 導入や補助金・助成金申請のサポートは?

新型コロナウイルス感染拡大のニュースに併せて、テレワーク導入に関しても連日議論されています。

行政書士の業務自体は、もともとリモートワークに向くものではありますが、中には完全リモートでは難しい業務も含まれています。

そんな行政書士ですが、企業のリモートワーク導入に関しては、補助金の申請業務を請け負うことができます。「書類のプロ」として、煩雑な補助金の申請書類作成を担当します。

この記事では、行政書士自体のリモートワーク導入の可能性と、企業のリモートワーク導入をサポートする業務について紹介し、「行政書士とリモートワーク」についてまとめていきます。

1 行政書士はリモートワークできるのか?

新型コロナウイルス感染拡大を抑えるために発令された緊急事態宣言のもと、企業はできる限りテレワークを導入するよう求められています。政府や行政からの要請以前に、労働者もこのような有事にあってはできればテレワークで働きたいと思っているでしょう。

では、行政書士の業務は、そもそもリモートワークができるものなのでしょうか。

(1)行政書士には自宅開業者が多い

行政書士は、行政書士試験に合格して登録を済ませたら、自宅を事務所として開業する人が多い職種です。つまり、在宅でリモートワークが可能な業務だといえます。開業の際にも、PCやプリンター、書庫にするキャビネットなどがあれば十分で、開業に大きな出費を要するわけではありません。

(2)官公署に行かなくてはならない

しかし残念ながら、全てを在宅でこなせる仕事ではありません。

行政書士の業務の主軸である申請業務のほとんどは、役所や公証役場に直接出向かなくてはいけない仕事です。今話題となっている印鑑も、書類に押印しなくてはいけません。

とは言え、打ち合わせに関しては、新型コロナウイルス禍のテレワーク推進のツールとして注目されるZoomなども活用できます。

このように行政書士の業務には、完全リモートワーク化は難しい側面と、リモートワークに適した側面があるのです。

2 行政書士がリモートワークで行える業務とは?

行政書士の業務範囲は実に広いですが、その中でもリモートワーク向きのものを挙げてみます。

(1)市民法務

行政書士の業務の中でリモートワーク寄りなのは、相続などの「市民法務関連」だと言われています。ちなみに市民法務とは、クーリングオフ、各種契約書、示談書、協議書、内容証明書の作成などです。クーリングオフに関しては、行政書士は「街の法律家」として、悪徳商法などの相談も受けています。

また丁種封印、車庫証明などの自動車業務は、平日に警察署に出向く必要があるものの、リモートワークに適した業務であるとも言われます。

(2)補助金申請の代理

補助金申請業務も、書類提出では当該所に出向かなくてはいけませんが、基本的にはリモートワークに向いています。

①高い利率性

行政書士の学校によれば、補助金業務には利益率の高い仕事だそうです。

例えばものづくり補助金は平均の成功報酬が15%~20%ほどです。満額の1000万円が採択された場合には200万の報酬になるということです。

200万円の報酬は、産業廃棄物の施設系の許可の報酬に相当するそうです。産業廃棄物の施設系の許可は2~3年もの長い期間がかかるのに対し、ものづくり補助金の場合は、10分の1ほどの時間で十分なうえに、一人で複数件対応することも可能です。

②時期的にも補助金業務は需要が高い

同サイトは、経済産業省が発表した令和元年度の補正予算の概要に触れ、中小企業支援対策として3600億円が計上されたことを指摘しています。つまり、非常に多くの予算が中小企業のために用意されているというのです。

後述しますが、新型コロナウイルス感染症対策の成功のカギを握るといわれるテレワーク導入のためにも、政府や東京都は様々な導入補助金を創設しています。行政書士は、これら補助金の申請業務をおこなうことができるのです。

③競合が少ない

厚労省が提供する助成金の申請書の作成や、行政機関への提出などの業務は、社会保険労務士の独占業務です。そのため、行政書士が行ってはいけないことになっています。

ただし、補助金や、厚労省以外が支給する助成金の申請業務は、行政書士も書類作成のプロとして取り組むことができます。

補助金業務は、基本的にはできる人が行ってよい仕事です。前述のように、補助金のために莫大な予算が計上され、見込み客も多いのに、実は競合が少ないと言われているのです。

行政書士の業務にはスポット業が多く、許認可申請業務などを請け負ったら、そこで終わりになってしまうのですが、補助金業務であれば、過去のお客様にアプローチすることができます。

しかしリモートワークの観点から見ると、新型コロナウイルス対策のテレワーク導入の補助金も、フォームをダウンロードはできるものの、申請書類の提出は当該の役所に行かなくてはなりません。もちろん、顧客から印鑑登録印を押印してもらう必要もあります。

(3)顧客との面談

人との距離を取らなければならない新型コロナウイルス対策において、Skype、ChatWorkLIVE、ZOOMなどのビデオチャットツールが急速に普及しています。今やその用途はビジネスシーンだけでなく、オンラインレッスンや飲み会にまで広げられています。

行政書士の中には、顧客との面談に、対面だけでなくこういったビデオチャットツールを使いこなしている人もいます。

3 行政書士がリモートワークで行えない業務とは?

繰り返しますが、行政書士業務には申請書類の提出をはじめ、リモートワークでは対応が難しいものがあります。

(1)役所に書類提出

以下が行政書士の業務のオーソドックスな分類です。

「官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類」の作成とその代理、相談業務
・主に許認可等に関する書類の作成、代理、相談業務。

・国の平成19年3月31日現在の許認可等の総数は12,786件。

・弁護士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法、弁理士法、海事代理士法、土地家屋調査士法等において独占されているものは、行うことはできない。

「権利義務に関する書類」の作成とその代理、相談業務
・契約書や協議書、念書、示談書など、権利・義務の発生、存続、変更、消滅に係る書類を指す。

・主なものは、遺産分割協議書、各種契約書(贈与、売買、交換、消費貸借、使用貸借、賃貸借、雇傭、請負、委任、寄託、組合、終身定期金、和解)、念書、示談書、協議書、内容証明、告訴状、告発状、嘆願書、請願書、陳情書、上申書、始末書、定款等。

「事実証明に関する書類」の作成とその代理、相談業務
・社会的に証明を要する事項について自己を含む適任者が自ら証明するために作成する文書(証明書の類)を指す。

・主なものは、実地調査に基づく各種図面類(位置図、案内図、現況測量図等)、各種議事録、会計帳簿、申述書等。

・他の法律において制限されているものは、業務を行うことはできない。

これらの書類は官公署に提出されるので、行政書士の業務は完全にリモートワークとはいきません。また、外回りで書類を収集することもあります。

今回のコロナウイルス禍で、郵送申請などに切り替わっている窓口もあるかもしれないので、事前に問い合わせましょう。

また、日本行政書士会連合会は、令和2年4月13日、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、各種許認可申請の有効期限等の伸長に関する要望書を提出しました。例えば、建設業許可、宅地建物取引業免許、産業廃棄物収集運搬業許可などの申請の有効期限を、5年から延長することを要望したのです。

また、行政書士は下記の業務も業とします。

④作成した書類を官公署に提出する手続きや聴聞手続き・弁明手続きについて代理すること
⑤契約書などを代理人として作成すること
⑥書類作成について相談に応じること

そして、特定行政書士であれば、以下の業務もおこなえます。

⑦一定の行政に対する不服申し立てについて依頼者に代理すること

特定行政書士とは、研修過程を終了した行政書士のことで、一定の行政に対する不服申し立てについては依頼者に代理することができます。

行政庁の処分を受けたものが処分に不服がある場合、裁判所に処分の取り消しを求めるほか、行政に対して不服を申し立てることが認められています。本来、弁護士のみがおこなうことができる業務でしたが、2014年の行政書士法の改正により、新たに行政書士の業務に加えられました。

役所への書類提出や裁判所に出向くことなど、リモートワークではできない内容も含まれます。将来的にはオンライン申請の可能性が見えてこないと、これからの時代においては難しいかもしれません。

(2)現地調査

行政書士の業務の中には、「現地調査」もあります。これもリモートワークで遂行するのは難しい仕事です。

①飲食店営業許可申請

行政書士は建設業をはじめ、飲食店などの許認可申請に関わります。保健所により店舗の設備に関して、衛生状態・管理に関する厳しい現地調査がおこなわれますが、そこで不備や問題点があれば営業開始できません。事前に問題点を探してあげるのが行政書士の業務です。

②不動産現地調査

行政書士のおこなう不動産調査には、事前・現地・法令調査があります。

事前調査は、顧客が事業を計画している場所に行って、現地の情報確認をします。業種によっては100~200m程度の範囲まで調査します。法令により病院や学校などの施設が、保護の対象となっている場合があるからです。

法令等の規制によっては、そもそも、事業が禁止されているケースもあります。何かしら他の法令等に違反している場合は、営業許認可がおりません。すると、せっかく購入又は賃貸借した不動産が活用できなくなってしまうのです。時にはその法令違反を理由に、金融機関からの融資や補助金・助成金の支給がなされなくなってしまうこともあります。このようなコンプライアンスの観点からも、不動産調査はこれからますます重要になってくるでしょう。

③家系図現地調査

家系調査とは、調査で知り得た最も古い先祖ゆかりの地に赴き、さらに図書館や歴史博物館、市役所、お寺などもめぐりながら依頼者の先祖を追っていく作業です。事前に入念な下調べをして、訪れる土地の歴史も調べ、依頼者と先祖のつながりがないか探っておきます。そして戸籍などの資料は全て持参します。

しかし、現地調査では、戸籍・文献調査から遡ることのできなかった先祖に巡り合えることは稀です。これらで辿ることのできなかった場合、記録が残っていない可能性が高いのです。現地調査は、先祖探しの最後の手段だといえます。

④農地転用現地調査

農地転用現地調査では、農地法の規定に従い申請書と添付書面を事前に提出し、農業委員と農業委員会事務局員がおこなう農地転用する土地の確認に立ち合います。申請書類で詳細について既に確認されているため、現地調査にはそれほど時間を要しません。

周囲の状況や土地の境目、公図との整合性などが質問されます。その土地の昔の歴史についても同様です。

農地に住宅を建築するケースなどは、電気・上下水道・雨水排水・道路幅・道路接地寸法など、多くの事項について確認されます。

⑤風俗営業許可申請時の現地調査

風俗店営業申請においては、現地調査が非常に丁寧におこなわれるため、それ相応の時間を要します。現地調査で地域的規制を満たすには、

Ⅰ 用途地域からみた営業制限地域(住居が多数集合している地域を保護するためのもの)

Ⅱ 保全対象施設からみた営業制限地域(施設の種類によって距離制限が異なる)

のいずれにも該当しないことが重要です。

(3)“紙ベース”の仕事

「書類のプロ」と呼ばれる行政書士には、書類(紙)での仕事が多いです。また、膨大な数の参考資料も、書類(紙)であることが殆どです。

書類作成業務には、今話題の「ハンコ(実印など)」を押印してもらう必要性が生じます。そうなると、押印箇所の間違いや訂正印の必要なども出てくるため、リモートワークに適しているとはとても言えません。

4 行政書士がリモートワーク補助金申請業務を担当する

最後に、行政書士自身がリモートワークするのではなく、企業のリモートワーク導入を支える業務について、まとめていきます。

前述の通り、補助金には政府による莫大な予算が準備されています。補助金申請業務は、見込み客も多い上に競合が少ない業務です。そのうえ補助金・助成金には返済義務がないため、企業の注目度はとても高いのです。

今回の新型コロナウイルス感染症対策としてのテレワークの新規導入には、様々な補助金・助成金が創設されています。まだまだIT環境の整わない中小企業にテレワーク導入をサポートする業務には、大きな社会的意義があります。以下、紹介していきましょう。

(1)新型コロナウイルス感染症対策のための テレワークコースの概要

本助成金は、令和2年度より「時間外労働等改善助成金」から名称変更しています。

新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコースの概要
対象事業主 新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規(※)で導入する中小企業事業主
(※試行的に導入している事業主も対象となります)
助成対象の取組 ・テレワーク用通信機器(※)の導入・運用
・就業規則・労使協定等の作成・変更 等
(※シンクライアント端末(パソコン等)の購入費用は対象となりますが、シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象となりません。)
主な要件 事業実施期間中に
・助成対象の取組を行うこと
・テレワークを実施した労働者が1人以上いること
助成の対象となる事業の実施期間 令和2年2月17日~5月31日
計画の事後提出を可能にし、2月17日以降の取組で交付決定より前のものも助成対象とします。
支給額 補助率:1/2
1企業当たりの上限額:100万円

出典:厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース

(2)事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

東京都が東京オリンピックのスムーズな運営を目的に創設したテレワーク導入補助金です。都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等を対象に、テレワークの新規導入だけでなく拡充にも使えます。

準備する書類が少し多いように見受けられる助成金ですが、厚労省の助成金がビギナー向けだとすれば、こちらはテレワーク中級者向けです。

助成対象事業者 1.常時雇用する労働者が2名以上999名以下で、都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等
2.都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」(外部サイトへリンク)に参加していること
※その他にも要件があります。詳細については募集要項をご確認ください。
助成事業の実施期間 支給決定日以後、令和2年6月30日までに完了する取組が対象です。
助成対象経費 1.機器等の購入費(例:パソコン、タブレット、VPNルーター)
2.機器の設置・設定費 (例:VPNルーター等機器の設置・設定作業費)
3.保守委託等の業務委託料(例:機器の保守費用)
4.導入機器等の導入時運用サポート費 (例:導入機器等の操作説明マニュアル作成費)
5.機器のリース料(例:パソコン等リース料金)
6.クラウドサービス等ツール利用料(例:コミュニケーションツール使用料)※助成対象となる機器等には指定がありますので、募集要項をご確認ください。一部メーカー等が、自社製品が当該助成金利用でお得に導入できると謳っているようですが、財団として個別に認めているものではありませんのでご注意ください。
助成金上限額 250万円
助成率 10/10

出典:東京しごと財団 事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

(3)テレワーク活用・働く女性応援助成金

テレワーク活用・働く女性応援助成金から、以下のテレワーク活用推進コースを紹介します。この制度ではテレワーク対象者は男女ともに対象になります。他に、女性の働く環境を整備するための助成金もあります。

令和2年3月31日で一旦締め切られた助成金ではありますが、おそらくもう一度受付が始まると考えられています。

助成対象事業者 常時雇用する労働者が2名以上かつ999名以下で都内に本社または事業所を置く中堅・中小企業等。※他要件あり。
助成対象事業 テレワーク機器導入事業 在宅勤務、モバイル勤務等を可能とする情報通信機器等の導入によるテレワーク環境の整備
サテライトオフィス利用事業 サテライトオフィスでのテレワーク導入に伴う民間サテライトオフィスの利用
助成の対象となる費用の例 テレワーク機器導入事業 ・モバイル端末等整備費用
・ネットワーク整備費用
・システム構築費用
・関連ソフト利用料
・上記環境構築を専門業者に一括委託する経費
サテライトオフィス利用事業 民間サテライトオフィス利用に係る経費
助成金上限・助成率 テレワーク機器導入事業 限度額:250万円・助成率:1/2
サテライトオフィス利用事業 限度額:250万円・助成率:1/2

出典:東京しごと財団 テレワーク活用・働く女性応援助成金

(4)テレワーク導入促進整備補助金

こちらの助成金も、東京オリンピック開催時に企業にテレワーク活用を促し、大会の運営をよりスムーズにする狙いで創設されたものです。こちらも令和2年3月31日に一旦締め切られていますが、おそらく再開されるでしょう。

補助対象事業者 1.東京都が実施するテレワーク導入に向けたコンサルティングを受けていること(※)
2.都内に勤務している常時雇用する労働者を2人以上999人以下、かつ6か月以上継続して雇用していること
3.就業規則にテレワークに関する規定がないこと
4.東京都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」このリンクは別ウィンドウで開きますに参加していること※その他詳細な要件については、募集要項をご確認ください。
補助対象費用 テレワーク環境の構築 在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務を行うための環境構築費用

①東京都が別途管理・提供する「テレワーク導入プラン」ホームページこのリンクは別ウィンドウで開きますより選定したテレワーク環境を構築するための機器・関連ソフト等導入費用
②モバイル端末等整備費用

就業規則へのテレワーク制度整備 テレワークに関する規定を就業規則に定めることに要する専門家への委託費
補助金上限額 従業員数300人~999人の企業  110万円
従業員数100人~299人の企業  70万円
従業員数100人未満の企業    40万円
いずれも制度整備費10万円を含む。
補助率 10/10

出典:東京しごと財団 はじめてテレワーク(テレワーク導入促進整備補助金)

5 サマリー

行政書士はその業務のほとんどがリモートワークで対応可能です。

しかし、申請書類の提出業務や押印を必要とする提出書類の作成は、リモートでは難しく、手間がかかるものです。制度の抜本的な改革がおこなわれて電子化しない限り、リモートワークで完全に対応するのは難しいでしょう。

そして、行政書士は「書類のプロ」として、企業のテレワーク導入補助金の申請書類作成で活躍できることを覚えておいてください。

6 まとめ

・行政書士は、自宅を事務所として開業する人が多くリモートワークが可能な業務である。

・しかし業務の主軸である申請業務では、役所や公証役場に直接出向く必要がある。

・補助金業務は利率性の高い仕事で、申請以外はリモートワークが可能な業務である。

・顧客との面談は対面だけでなくビデオチャットを使いこなす行政書士もいる。

・役所への書類提出は、将来的にはオンライン申請の可能性が見えてこないと難しい。

・押印の問題もある。

・現地調査もリモートワークでは難しい。

・新型コロナウイルス感染拡大防止対策として設立されたテレワーク導入補助金申請を、行政書士はサポートすることができる。

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