知らなかったじゃ済まされない!行政書士が知っておくべきマイナンバーとの付き合い方とは?

知らなかったじゃ済まされない!行政書士が知っておくべきマイナンバーとの付き合い方とは?

年末調整のために提出を求められるマイナンバーは、「特定個人情報」として厳密な取り扱いが定められています。マイナンバーの活用は何にでも認められるものではなく、今のところマイナンバー法が認める関連業務に限定されています。

税理士や社会保険労務士(社労士)はマイナンバーの取り扱いが認められていますが、行政書士の場合はどうでしょうか。

この記事では、行政書士が自らの業務をおこなう上でマイナンバーを取り扱うことの可否とその根拠について調べ、わかりやすく解説していきます!

1 マイナンバー制度

マイナンバーは、それまであった住民基本台帳ネットワークシステムに代わるものとして、「社会保障」「税」「災害対策」の3分野で活用が開始されました。このマイナンバー制度を規定するのは、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」、いわゆるマイナンバー法です。

マイナンバー法は、マイナンバーの提供を受けることができる場合が特定されています。今のところ認められているのは、社会保障分野や税分野、災害対策分野、そして地方公共団体が条例で定めるそれらに関する事務に関してのみです。

(1)マイナンバーの目的とは?

出典:マイナンバー制度の目的と効果

内閣府ホームページによると、マイナンバー制度によって期待される効果は、主に次の3つです。

①公平・公正な社会の実現
②国民の利便性の向上
③行政の効率化

(2)マイナンバーを導入した3つの業務とは?

「社会保障」「税」「災害対策」の3分野で使用が始まったマイナンバーですが、具体的にはどのような業務で使われているのでしょうか。

マイナンバーは重要な個人的情報「特定個人情報」であることから、導入範囲は法令の定めにより限定されています。法令により認められた利用範囲は下表の通りとなり、これ以外の目的でマイナンバーを利用した場合は、法により罰則を受けることとなります。

今般の新型コロナウイルス感染拡大により支給が決定された定額給付金や、高等学校等就学支援金等の申請にも活用されています。

社会保障 年金 年金の資格取得・確認・受給の際の利用
労働 雇用保険等の資格取得・確認・受給、ハローワークなどの事務での利用
医療
福祉
医療保険等の保険料徴収等の医療保険者における手続き、福祉分野の給付での利用
生活保護の実施等の低所得者対策の事務等での利用
税務 国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書などに記載
当局の内部事務などの利用
災害対策 被災者生活再建支援金の支給に関する事務などでの利用
被災者台帳の作成に関する事務での利用
その他 上記の他、社会保障、地方税、防災に関する事務その他これらに類する事務であって、
地方公共団体が条例で定める事務での利用

2 行政書士とマイナンバー

マイナンバーは士業とどのように関わっているのでしょうか。

まず税理士は、確定申告、源泉徴収票や支払調書にマイナンバーを記載する必要があります。
社会保険労務士は、年金や雇用保険の資格取得や受給の際にマイナンバーを利用します。
税理士と社労士は、マイナンバーを業務上取り扱うことが認められています。

さて、行政書士の場合は、マイナンバーが記載された書類を取り扱うことが認められているのでしょうか?

(1)行政書士は原則としてマイナンバー記載の書類を取り扱えない

行政書士も、業務上「マイナンバー」が記載できる書類を取り扱うことがあります。

例えば住民票です。窓口で住民票を申請するとき「全部入り」で頼んだ場合は、マイナンバー入り住民票が発行されてしまいます。

税理士や社労士は、業務上依頼主にマイナンバーの提出を求めなければいけませんが、行政書士はその反対で、マイナンバー入り書類を受け取らないようにしなければなりません。

(2)もし行政書士がマイナンバーが記載された書類を受け取ったら

しかし、依頼主にマイナンバー法に関する知識がなければ、行政書士が図らずともマイナンバー入りの住民票を受け取ってしまう可能性はあります。

行政書士は法律上マイナンバーを取り扱ってはいけないのですが、危うく記載書類を受け取りそうになる局面がいくつかありますので、紹介します。

①自動車重量税の還付申請

例えば「自動車重量税の還付申請書」です。自動車重量税の還付は、車検の残存期間が1か月以上ある場合に申請することができます。還付された金額は、前回の車検で支払った「重量税」を24か月で割った金額を残りの車検残存期間で掛けた金額であり、それを「重量税額」といいます。

自動車重量税の還付申請をおこなう申請書には、申請者のマイナンバーを記載する欄が新設されたため、この場合行政書士は、マイナンバー記載書類を受け取ることになってしまいます。当業務は国税の還付なのでマイナンバーが入るのは当然なのですが、お分かりのように原則的には、行政書士はマイナンバー記載の書類を取り扱えません。

しかし、当該提出行為は「代行業務」なので、行政書士には番号法12条に定める安全管理措置義務は生じないと考えることもできます。

「安全管理措置義務」とは:
特定個人情報であるマイナンバーを扱うにあたって講じなければいけない措置のことで、内容としては以下の4つです。①人的安全管理措置
②物理的安全管理措置
③組織的安全管理措置
④技術的安全管理措置

この場合どのような方法で自動車重量税還付申請業務をおこなえば、マイナンバー法違反にならないのかを考えてみましょう。

Ⅰ 依頼者の「代理人」となる

「個人番号関係事務実施者」以外の者が、合法的にマイナンバー記載書類を取り扱うためには、本人の「代理人」となる必要があります。この場合の提出先は運輸支局ですが、申請書を受理するときにおこなう本人確認で、以下の書類や書面が必要となりますので注意しましょう。

・「代理人」となる行政書士(あなた)宛の委任状
・行政書士の身元確認書類(マイナンバーカードの原本、または運転免許証など)
・依頼者本人の番号確認書類(マイナンバーカード、写しでも可)

Ⅱ マイナンバー記載欄のみ空白で依頼者に渡す

もし依頼された書類がマイナンバー記載書類でなければ、これまでと同じように行政書士業務をおこなえますよね。書面上にマイナンバーの記載がなければ、マイナンバー法上の規制を受けないからです。

申請書類作成を請け負う際にマイナンバー記載欄を空白にしておけば、取り扱ったとしてもマイナンバー法上何らの問題となりませんので、覚えておきましょう。しかし実務上は、Ⅰの「依頼者の代理人となる」の方法をとるほうが、好ましい方法かもしれません。

②建設業などの許可申請では?

建設業許可申請手続も行政書士の主要業務の一つです。この場合の必要書類の中には、経営業務の管理責任者の経営経験を裏付ける書類として、依頼者が過去に個人事業主だった場合は「所得税の確定申告書(B)」の写しを役所に提出する必要があります。確定申告書などの税務書類にはマイナンバーの記載欄が義務付けられているため、行政書士は取り扱いができなくなるのでは? と思われるかもしれません。

確かに平成28年分より「所得税の確定申告書(B)」には、マイナンバー記載欄が新たに設けられています。しかし控えに関してはマイナンバーは複写されない様式となっているため、行政書士が提出を求めても大丈夫です。

しかし、なかには提出用の確定申告書をコピーして保存する人もいます。その場合はしっかりとマイナンバーが記載されていますので、これを建設業許可申請書の添付書類として役所に提出することはできません。そもそも行政書士は、マイナンバーの写った「所得税の確定申告書(B)」のコピーの提供を、依頼者に対して求めることはできません。役所も同様に、これを受け取ることができないのです。

③マイナンバーが記載された住民票の写しは?

マイナンバーが記載された住民票の写しも同様で、行政書士も役所の人も取り扱いできません。この内容に関するQ&Aを抜粋してみました。

Q3-7 個人番号を利用できない事務で住民票の写しを提出してもらう必要がある場合に、個人番号の記載された住民票の写しが提出された場合は、どうすればよいですか?

A3-7 個人番号を利用できない事務では、個人番号の記載された住民票の写しを受け取ることはできませんので、その旨をあらかじめ申請者などに十分に周知してください。また、個人番号の記載された住民票の写しが提出された場合には、個人番号の部分にマスキングをすることにより、処理することも考えられます。〔2014年7月回答〕

「内閣官房 地方公共団体向けFAQコーナー」

このように「所得税の確定申告書(B)」コピーのマイナンバー部分や住民票のマイナンバー部分に対して、依頼者にマスキングしてもらってから受け取ることも、時として可能になるようです。

マイナンバーの収集・保管に関しては、マイナンバー法で厳密に定められています。公務員はマイナンバーの収集・管理を禁止されていますし、特定個人情報であるマイナンバーが漏えいすると、厳罰が課されることになっています。

特に住民票に関しては、一般の方は抜けている項目があると困るとして、全部入りを頼みがちですので注意が必要です。

④マイナンバーを消してもよい?

役所には、書類に記載されたマイナンバーを消去するための特殊なスタンプが備えられている場合があります。しかしそうでない場合は、マイナンバー入り書類は受領を拒否されます。しかし、住民票を自分で黒塗りして消すと、今度は公文書偽造罪にあたります。

通常は役所の窓口で住民票を1通発行してもらうと、マイナンバーなしの住民票が発行されることがほとんどですので、そんなに心配はいりません。

この他にも、行政書士が図らずとも、マイナンバーが記載された書類を受け取る可能性は有ります。行政書士がマイナンバー入りの書類を受け取ってしまった場合はどうするか、また受け取らないようにするにはどうするか、よく知っておくことが大切です。

3 行政書士業務とマイナンバー記載書類の取り扱い

それでは、行政書士が取り扱う業務で、マイナンバー制度が関わってくると思われるものを以下に挙げていきます。

(1)許認可申請

行政書士の独占業務である許認可申請を代理でおこなう場合、依頼主の住民票が必要な場合があります。その場合は、住民票発行時に「マイナンバーの省略」を頼まなくてはいけません。住民票の全部入りを申請すると、マイナンバー入りで発行されてしまいます。

税理士や社労士は、業務上依頼主にマイナンバーの提出を求めなければいけませんが、行政書士はその反対です。マイナンバーなしを発行してもらいましょう。

(2)マイナンバーカード代理申請

行政書士は、行政に対して代理申請をおこなったり、そのための書類を作成することを主幹業務としています。そのため、マイナンバーカード申請の添付書類の選定や、代理提出をおこなうことができます。

(3)出入国管理業務とマイナンバー

行政書士の取り扱い業務である在留資格取得など、出入国管理に関する業務は、マイナンバーが利用可能な行政手続きの対象外です。入国管理局はマイナンバーが記載された書類を取り扱うことはできません。出入国管理の手続きでは、マイナンバーカードは本人確認に使用できます(通知カードは不可)。

(4)相談、アドバイス

行政書士の独占業務は「官公署提出、権利義務、事実証明に関する書類の作成」です。そのほかでは、コンサルティング業務をおこなって書類作成の相談にのったり、アドバイスをすることで報酬を受け取ることができます。中小企業支援として、以下のような内容も取り扱い可能です。

・企業がマイナンバー対応の就業規則を作成する場合の相談、アドバイス
・マイナンバーの収集、保管、利用、提供、破棄等を従業員が適切におこなうための相談、アドバイス
・医療機関や介護施設運営者・管理者からの入院・入所者のマイナンバー通知カードの取り扱いについての相談、アドバイス

4 行政書士には、源泉徴収を支払わなくてもよい?

これまでと話が逸れるようですが、行政書士に報酬を支払う際に、源泉徴収は不要であることをご存知でしたか?

「源泉徴収」とは、簡単に説明すると、会社から支払われる給与に課税される所得税をあらかじめ給与から天引きする仕組みのことをいいます。行政書士に支払う報酬には、実は源泉徴収というものが存在しません。

(1)源泉徴収が不要のため、マイナンバーの収集も不要

社労士や税理士など他の士業に仕事を依頼して、その後に請求書が送られてくるとしましょう。請求金額は所得税が天引きされた額になっているはずで、この場合源泉徴収がおこなわれていることが分かります。

一方で、行政書士に仕事を依頼した場合には、請求金額から所得税が差し引かれていません。このため依頼人のなかには、行政書士には所得税の天引きをしないで報酬を払ってよいのか悩む人が多いようです。

結論からいえば、行政書士には源泉徴収をおこなわなくてもよいのです。つまり、行政書士に報酬を渡す企業は、その行政書士に対して「支払調書」を発行する必要もないことになります。

支払調書を作成する際は、報酬を支払った相手にマイナンバーの提出を求める必要がありますが、行政書士には支払調書を作成する必要がないため、マイナンバーを収集する必要ももちろんありません。

(2)行政書士に対する源泉徴収が不要である根拠

なぜ行政書士だけが源泉徴収を受けずに済むのか、不思議ですよね。それには明確な法的理由があるのです。行政書士の対する源泉徴収が要らないという根拠は、「所得税法」にあります。所得税法204条第1項第2号には、その根拠となる記載があるので以下に引用します。

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。

所得税法204条第1項第2号

この内容の対象となる士業に関して、以下のように記載があります。お分かりのように、この中には行政書士は含まれていません。

弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金…

所得税法204条第1項第2号

ご覧のように、これら「法律上源泉徴収をおこなわなければならない対象者」に、行政書士は含まれていないことが、行政書士に報酬を支払うときは源泉徴収をおこなわなくてもよいことの根拠になっています。

しかし、行政書士は基本的には源泉徴収を受けなくてもよいこととなっていますが、例外に徴収されるケースも存在するので、例を挙げてみましょう。

・建築基準法関係の申請や届出のための書類作成をおこなった場合
・セミナー・講演会など、行政書士本来の業務外の仕事をおこなった場合

(3)行政書士に対する源泉徴収が不要である理由とは?

なぜ、行政書士が所得税の源泉徴収を受けなくてもよいのでしょうか。これについては諸説あるのですが、理由として囁かれているものの中から代表的なものを、2つ紹介します。

1つめは「行政書士は案件当たりの平均報酬額があまりにも低いので、税金を徴収しなくてよい」となったという説です。2つめは「所得税法を作ったときに『行政書士は昔からある信頼できる資格だから、税金徴収する必要はない』と判断された」という説です。

正解は、所得税法を作った時に「報酬が少額でクライアントが細かく多不特定多数、仕事は枚数主義のため把握しきれない」といった、行政書士独特の業務事情が考慮されたためです(このことは、1992年の北海道行政書士会による調査によって明らかとなりました)。このように、行政書士の例外的扱いには根拠があったのです。この内容については、国税庁のホームページにも掲載されていますので、以下に引用します。

行政書士に報酬を支払った場合

【照会要旨】
当社は行政書士に対し、官庁への提出書類作成料として報酬を支払っていますが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出は必要ですか。

【回答要旨】
原則として、提出する必要はありません。

一般的に行政書士の業務に関する報酬については、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しませんので、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する必要はありません。
しかし、例えば、依頼した業務が建築基準法第6条等に定める「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成のような場合には、その業務が建築代理士の行う業務に含まれるため、支払調書の提出が必要になります。

【関係法令通達】
所得税法第204条第1項第2号、第225条第1項第3号、所得税法施行令第320条第2項

出典:国税庁

※令和元年10月1日現在の法令・通達等に基づく一般的な回答であり、この回答内容と異なる課税関係が生ずることもある。

5 サマリー

行政書士の業務はマイナンバーの関連業務外です。しかし、場合によっては図らずともマイナンバー入り書類を受け取ってしまう事態が起こり得ます。

そんな場合にはどう対処すれば違法行為にならないか、事前によく調べておくことが必要です。

6 まとめ

・行政書士は原則としてマイナンバー記載の書類を取り扱うことができない。

・自動車重量税の還付申請書には、申請者のマイナンバーを記載する欄が新設されたため、行政書士は依頼者の「代理人」となってこれをおこなう。

・またはマイナンバー記載欄のみ空白で依頼者に渡す。

・建設業許可申請手続には「所得税の確定申告書(B)」の写しを提出する場合がある。提出用をコピーしたものの場合マイナンバーが入るので、行政書士は提供を依頼者に求めることはできない。

・役所にはマイナンバーを消去する特殊なスタンプがある場合もある。そうでない場合、住民票を自分で黒塗りして消すと公文書偽造罪にあたる。

・行政書士には源泉徴収をおこなわなくてよく「支払調書」を発行する必要もなく、マイナンバー収集の必要もない。

・行政書士が例外的に源泉徴収されるのは、建築基準法関係の申請や届出のための書類作成をおこなった場合、セミナー・講演会などをおこなった場合。

・所得税法を作った時「報酬が少額で顧客が多不特定多数」の行政書士の業務事情が考慮され、所得税の源泉徴収が不要になった。

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