「指紋押捺を拒否する自由」~予備試験・司法試験のためのおはなし~

「指紋押捺を拒否する自由」~予備試験・司法試験のためのおはなし~

入国した外国人と日本国籍を有する者との大きな違いは戸籍があるか否かです。

戸籍は行政が個人を管理し、特定する機能を果たしています。
戸籍の代わりとして、在留する外国人に情報提供(指紋押捺)を強制することは、憲法でどのように問題になるのでしょうか。

指紋押捺制度と違憲審査基準

予備試験・司法試験論文の練習として手順を書いていきます。
まず、指紋押捺制度により外国人が制限される自由を特定し、外国人に指紋押捺(採取)を強制されない自由が保障されるかについて論じます。
正当な理由なく自己の指紋押捺(採取)を強制されない自由は、プライバシー権指紋押捺を拒否する自由(13条)に含まれ、プライバシー権の性質上、外国人にも指紋押捺を強制されない自由が保障されると解することができます。

憲法13条によって保障されるとして、公共の福祉による制限があると述べ、違憲審査基準を設定します。

外国人の指紋押捺制度の合憲性について判断します。
在留外国人を公正な管理下におくとの立法目的は正当であり、戸籍制度のない外国人の人物を特定するにつき最も確実な制度であることから、合憲であると解すべきとするのが判例です。

これに対し、違憲とする見解も有力です。
外国人に指紋押捺を強制されない自由が保障されるとしたうえで、厳格な基準(LRAの基準)で審査すべきであるとし、在留外国人を一定の管理下におくとの立法目的は正当であるが、同一性の確認としては代替手段として写真撮影の方法があり、指紋押捺は刑事被告人と同様の不快な扱いであることからその手段は不相当であるとします。

指紋押捺拒否事件(最判平7.2.15)

事案
アメリカ人である被告人が、新規の外国人登録の申請をした際、外国人登録原票などへの指紋押捺を拒否したところ、外国人登録法違反により起訴された事件です。

判旨
憲法13条の「個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有する」…在留外国人の指紋押捺制度は、外国人登録法1条の「本邦に在留する外国人の登録を実施することによって外匡1人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ、もって在留外国人の公正な管理に資することを目的とする」という目的を達成するため、戸籍制度のない外国人の人物特定につき最も確実な制度として制定されたもので、その立法目的には十分な合理性があり、かつ、必要性も肯定できるとしました。

この判例で問題になったのは、(1)指紋押捺拒否の自由(13条)を侵害しないか、(2)平等原則(14条)に反しないか、(3)適正な科刑(31条)に反しないか、の3点でした。
事案をよく比較し、同様の問題が、予備試験・司法試験に出題された場合には、この3つについて言及する必要があります。

本判決は、指紋押捺制度について、憲法13条のプライバシー権を侵害しない、憲法14条に反しない制度としています。
なお、1992年外国人登録法改正によって、永住資格の定住外国人の指紋押捺制度は一度廃止され(1999年には非永住者も)、署名と写真提出に変更されました。

しかし、2007年11月から出入国管理及び難民認定法改正によって、再び指紋採取等の制度が採用されているのが現状です。

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