法曹を目指すことを考えている方は、法科大学院への進学も視野にいれていると思います。法科大学院を修了すれば司法試験の受験資格が得られますが、他方でデメリットなどもあるので、法科大学院進学を考えている方は、色んな側面から検討してみるのが重要になります。
この記事では、法科大学院の制度内容や、選び方など、解説するので、是非参考にしてみてください。
目次
1 法科大学院とは
法科大学院について、文部科学省は、以下のように定義しています。
「高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とする専門職学位課程のうち専ら法曹養成のための教育を行うことを目的とするものを置く専門職大学院(専門職大学院設置基準第18条第1項)であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするもの(法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律第2条第1号)」
出典:文部科学省
法科大学院は、「法曹育成のための教育」を目的としていると書いてあるとおり、法曹三者である弁護士、検察官、裁判官を育成する教育機関であることが分かります。
ここで重要なのは、法科大学院を修了することで、司法試験の受験資格を取得することができるということです。
司法試験の受験資格を得るためには、大きく2通りの方法があり、一つは予備試験に合格すること、そしてもう一つは法科大学院を修了することになります。
法曹を目指す人が、法科大学院に入学し、法曹になるために必要な知識や能力を培う場ではありますが、法曹以外の進路に行く人もおり、進路を法曹だけに絞っているわけではありません。
(1) 既修者・未修者コースとは
法科大学院では、2つのコースが設けられています。
一つは、法律の基礎知識を既に学習している者を対象とする、法学既修者コースです。こちらのコースは、2年間で法科大学院を修了することができます。
もう一つは、初学者を対象とする法学未修者コースです。このコースは、3年間のコースになります。
(2) 新設された「法曹コース」とは
「法曹コース」は、2020年4月に施行された、司法試験の受験資格が緩和された新しいコースになります。
このコースについて、文部科学省のホームページでは、以下のように説明しています。
「法曹コースとは、法学部等(※)を設置する大学が、法科大学院と連携して法科大学院の既修者コースの教育課程と一貫的に接続する体系的な教育課程を編成し、法曹志望者や法律の学修に関心を有する学生に対して、学部段階からより効果的な教育を行うものです。
※法曹コースは、授与する学位が付記する分野が法学に関するものである学部において開設が可能です。
法曹コースの授業は法科大学院未修者コース1年目の内容を代替するものであり、法曹コースを修了し、早期卒業をした者は、法科大学院未修者コースの2年目(既修者コース1年目)に進学し、法曹を目指すことが想定されています。」
出典:文部科学省
これまでは、大学に入学してから、法曹資格を取得できるまで、最短でも約8年かかりました。
通常、法学部卒業までは4年かかるところ、「法曹コース」では原則3年間と早期卒業を目的とした制度のため3年で卒業することができます。
さらに、2023年より法科大学院在学中に司法試験を受験することができるようになるため、大学を3年生で早期卒業し、更に法学既修者コース(2年間)中に司法試験合格、その後司法修習(1年間)で最短で約6年で法曹資格を得ることが可能です。
2 法科大学院へ進学するメリット
法科大学院へ進学するメリットとしては、法科大学院を修了することさえできれば司法試験の受験資格が得られるため、精神的にも安心感が得られるという点です。他の受験資格を得るルートとして、予備試験に合格するルートがありますが、予備試験は合格率が約4%と狭き門であるのに対して、法科大学院は修了することができれば良いので、必要な単位を習得し、定期試験対策をしながら、司法試験対策を継続していけば修了することは難しいことではありません。
また、法科大学院では法学の研究者や実務家教員が揃っているため、学問について分からないことを聞くことができたり、受験仲間がたくさんできることで、モチベーション維持にも繋がるといった点も大きなメリットといえるでしょう。
さらに、先に合格した法科大学院出身の先輩から直接アドバイスや添削を受けることができることも、司法試験対策にとって大きな利点となります。
3 法科大学院へ進学するデメリット
法科大学院へ進学するデメリットとしては、高額な授業料がかかってしまうという点です。
私立であれば、年間およそ100万円の授業料がかかってしまいます。
もっとも、法科大学院によっては、成績優秀者に対する授業料免除制度を設けているところや、給付型奨学金による経済的支援をしているところがあります。
法科大学院独自の経済的支援を行っているところがあるので、検討している法科大学院のホームページなどで確認してみてください。
4 法科大学院の選び方
法科大学院への進学を検討している方は、どのような基準で法科大学院を選べばよいのか、迷うと思います。
一つの基準としておすすめしたいのは、司法試験合格率の高い法科大学院を選ぶということです。
例えば、令和3年度司法試験の合格率の高い法科大学院は以下のとおりでした。
▼令和3年度 司法試験実績(法科大学院別)※合格率順に表示
法科大学院名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
愛知大学 | 3 | 2 | 66.7% |
京都大学 | 185 | 114 | 61.6% |
一橋大学 | 110 | 64 | 58.2% |
慶應義塾大学 | 227 | 125 | 55.1% |
東北大学 | 39 | 20 | 51.3% |
東洋大学 | 2 | 1 | 50% |
山梨学院大学 | 4 | 2 | 50% |
早稲田大学 | 231 | 115 | 49.8% |
岡山大学 | 33 | 16 | 48.5% |
東京大学 | 199 | 96 | 48.2% |
国立や、有名私立が多数並んでいます。
司法試験の合格率が高い法科大学院を選ぶことで、司法試験対策に関する手厚い支援を受けることが期待できます。
また、多数の合格者を輩出していることで、合格者から直接指導を受ける機会があるということも重要になります。
5 予備試験ルートとの比較
これまで、法科大学院について、説明してきましたが、司法試験を目指す場合、他の受験資格ルートである予備試験ルートとどちらが良いのか、気になりますよね。
予備試験に合格することで受験資格が得られる予備試験ルートについても、メリットはたくさんあります。
まず、法科大学院ルートでは高額な授業料がかかってしまいますが、予備試験ルートではそのような費用がかからないという点です。
仮に予備校を利用するとしても、約100万円で受けられる予備校が多いため、法科大学院の授業料に比して安いといえます。
また、法科大学院に入学すれば、授業や課題など時間の拘束がありますが、予備試験ルートでは、予備試験対策を自分のペースで進めることができるため、可処分時間が足りない社会人の方にとっては最適なルートになります。
さらに、予備試験と司法試験は科目や形式が共通しているため、予備試験対策がそのまま司法試験対策にも活きます。
実際に、予備試験を突破した人の司法試験合格率は法科大学院を修了した人よりも断トツで高く、令和3年度司法試験においては、合格率が93.5%でした。
以上のような予備試験ルートのメリットとデメリットを比較して、自分にあった選択をしてみてくださいね。
6 サマリー
法科大学院は、法曹コースの設置などによって、制度の変化を遂げており、これまでよりも司法試験を受験しやすくなることは間違いないといえます。これから法曹を目指す方は、まずは法科大学院入学に向けて、頑張ってください!
7 まとめ
- 法科大学院は、「法曹育成のための教育」を目的とした教育機関
- 法科大学院には、法学既修者コース(2年)と、法学未修者コース(3年)がある
- 最近では、「法曹コース」といわれる、最短6年で法曹資格を取得できるコースが設置された(2023年から法科大学院在学中に司法試験が受験できるようになる)
- 法科大学院へ進学するメリットとしては、修了さえできれば司法試験の受験資格が得られること、受験仲間ができ、モチベーションの維持ができること、合格者の先輩から指導を受けられる
- 法科大学院へ進学するデメリットとしては、高額な授業料がかかること
- 法科大学院の選び方としては、司法試験の合格率の高い法科大学院を選ぶこと
- 予備試験ルートは、費用がかからないこと、自分のペースで学習が進められること、予備試験対策が司法試験対策に活きることなどがメリットである