合格率が3~4%前後と非常に低く、一般的にとても難易度が高いといわれている司法書士試験。実はこの合格率、もっと高いと考えることができるのです。
司法書士試験制度の特殊な一面を知れば、難易度に関する新たな視点が持てるかもしれません。
目次
1 司法書士試験の特殊な制度
司法書士試験には受験資格がありません。学歴や年齢を問われないため、受験者の学力は一定ではないと言えるでしょう。そういった意味では、難易度が高いとはいえ、司法書士試験は「努力が反映されやすい試験」と考えられます。
(1) 筆記試験
司法書士試験は、一次の筆記試験と二次の口述試験から構成されています。
筆記試験は午前の部と午後の部に分けられています。試験の形式は、午前の部は択一式(35問)、午後の部は択一式(35問)と記述式(2問)です。
(2) 科目の配分
試験科目は下記のように配分されています。
午前の部(2時間) | 午後の部(3時間) | ||||
択一式問題 | 択一式問題 | 記述式問題 | |||
・憲法 | 3問 | ・民事訴訟法 | 5問 | ・不動産登記 | 1問 |
・民法 | 20問 | ・民事保全法 | 1問 | ・商業登記 | 1問 |
・刑法 | 3問 | ・民事執行法 | 1問 | ||
・会社法(商法) | 9問 | ・司法書士法 | 1問 | ||
・供託法 | 3問 | ||||
・不動産登記法 | 16問 | ||||
・商業登記法 | 8問 |
(3) 司法書士試験は「相対評価試験」
司法書士試験は、既定の合格点を満たす人が全員合格となる「絶対評価試験」ではなく、成績上位だった受験者の一部を合格とする「相対評価試験」です。
基準点を超えた人の中から、相対評価で合格点が算出されて合格者が決まります。下の表は過去6年間の基準点です。それぞれの満点は、択一は午前・午後とも105点、記述は70点、合計280点満点となっています。
実施年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 令和2年度 | |
基準点 | 午前 択一 | 78 | 90 | 75 | 75 | 78 | 75 | 75 |
午後 択一 | 72 | 72 | 72 | 72 | 72 | 66 | 72 | |
午後 記述 | 37.5 | 36.5 | 30.5 | 34 | 37 | 32.5 | 32 | |
基準点合計 | 187.5 | 198.5 | 177.5 | 181 | 187 | 173.5 | 179 | |
筆記試験合格点 | 207 | 218 | 200.5 | 207 | 212.5 | 197 | 205 |
出典:法務省ホームページ
(4) 基準点による「足切り」
司法書士試験の特殊な点は、筆記試験において基準点による3回の「足切り」が行われることです。午前の択一、午後の択一、記述、それぞれの基準点をクリアすることが必要となります。3つのうち、ひとつでも基準点に足りなければ、それだけで不合格となるのです。
実施年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 平成31年度 | 令和2年度 |
受験者数 | 20,130 | 17,920 | 16,725 | 15,440 | 14,387 | 13,683 | 11,494 |
午前基準点クリア | 2,525 | 3,303 | 3,144 | 3,069 | 2,897 | 3,030 | 3,643 |
午後基準点クリア | 4,759 | 3,339 | 3,960 | 3,139 | 3,461 | 2,817 | 2,234 |
記述式基準点クリア | 1,065 | 1,211 | 1,150 | 1,143 | 1,160 | 1,022 | 999 |
総合合格点クリア | 857 | 756 | 724 | 709 | 686 | 688 | 672 |
合格者数 | 759 | 707 | 660 | 629 | 621 | 601 | 595 |
(単位/人)
令和2年度を例にとると、11,494人の受験者のうち、午前の部の基準点を超えた人は3643人、午後の部の択一式の基準点を超えた人は2234人でした。
午前、午後の基準点を超えた人のうち、午後の部の記述式問題の基準点を超えた人は999人。この1000人あまりのうち、一部の成績上位者が筆記試験の合格者となります。令和2年度は、最終的に672人が二次の口述試験に進みました。
口述試験は、欠席するなどよほどのことがない限り合格できるので、筆記試験を突破した人が司法書士試験の実質的な合格者になると考えられます。
2 司法書士試験の真の合格率は30%!筆記試験の突破で決まる
一般的に言われている「司法書士試験の合格率は3%」を、一次の筆記試験の突破率と考えれば、受験者数およそ2万人の中から700人しか合格できない=合格率3%ではなく、試験の第一段階となる択一式問題の基準点をクリアした2000人あまりの中から約700人が合格できる=真の合格率は30%、ということになるわけです。
このように考えると、とかく難易度の高さがクローズアップされやすい司法書士試験でも、合格へグッと近づけた気がしませんか?
3 司法書士試験の受験者数
これは、過去7年の受験者数・合格者数・合格率の推移を表したグラフです。
出典:法務省ホームページ http://www.moj.go.jp/shikaku_saiyo_index3.html
受験者数は年々減少傾向にあり、合格率は緩やかに上昇していることがわかります。司法書士の仕事に将来性がないことの現れかといえばそうではなく、司法書士の需要は今後も拡大していくと考えられています。詳しくはこちらの記事「司法書士に将来はあるのか?そもそも司法書士とは?」をご覧ください。
↓↓↓ 司法書士について理解を深めたい方はこちら! ↓↓↓
【あらためて質問です!】司法書士のことを教えて!!
▼司法書士を目指すあなたにオススメのお役立ち動画はこちら。
4 サマリー
司法書士試験は合格率がとても低く、到底合格することはできないなんて思ってしまいがちかもしれませんが、上でご紹介したように、択一式の基準点をクリアした人の中では約30%の合格率なので、まずは基準点を超えることがとても大事な過程になります。あまり合格率を意識せずに、まずは基準点を目指して着々と勉強を進めていきましょう!
5 まとめ
- 司法書士試験には受験資格がないため、受験者の学力は一定ではない
- 難易度は高いが、努力が反映されやすい試験である
- 司法書士試験は相対評価試験
- 筆記試験では基準点による3度の足切りがある
- 択一式問題の基準点を超えた人数を、実質の受験者数と考える
- 合格率30%と考えるためには択一式問題の対策を!