債権者主義と債務者主義~特定物に関する物権の設定~

債権者主義と債務者主義~特定物に関する物権の設定~

司法書士試験に出題される民法では、債権について定められています。

前ページの「危険負担の問題」は、双務契約における債権者、債務者のどちらにも帰責事由が無い場合に生じるものでした。
AさんがBさんに家を売る契約を結んだものの、引渡し前に建物が地震で倒壊してしまったという事例は、その典型的なケースと言えます。

債権者主義と債務者主義

この時、両者の間で問題となるのは「建物が倒壊した」ことの損害をどちらが負うかというものになります。
売主のAさんからしたら、家が壊れたのは自分のせいではないのですから、Bさんに危険を負担させてお金を払ってほしいところです。
しかし買主のBさんとしても、自分が家を壊したわけではないため、お金だけとられるのはたまりません。
危険をAさんに負担してもらい、お金を払わず済ませたいでしょう。

このとき、買主、つまり債権者であるBさんが代金を支払うべきだという考え方を「債権者主義」といいます。
売主のAさん、債務者が代金をもらわず諦めろという考え方を「債務者主義」といいます。

民法では原則、危険負担の問題に対しては債務者主義をとっています。
となるとこの場合、Aさんはお金をもらうことが出来ないということになります。

しかし注意してほしいのが、「特定物に関する物権の設定、移転」のケースです。

特定物とは、「これ」とはっきり決まったものを指す言葉で、たとえば「リンゴを10キロ」と言えば世界中に存在するどのリンゴでもいいから10キロ、ということなので不特定物ですが、「この10キロのリンゴ」というように指定すると特定物となります。
AさんとBさんの間で結ばれた契約は当然、どの家でもよいわけではなく、Aさん所有の家という特定物を巡るものです。

特定物に関する物権の設定、移転における危険負担の問題では、債権者主義がとられるのです。
民法534条『債権者の危険負担』1項では、「特定物に関する物権の設定又は移転を双務契約の目的とした場合において、その物が債務者の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。」とされています。
ということは、BさんはAさんに対し、建物を引き渡されなくても代金を払わなくてはいけない、ということです。

 

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