取得時効の成立要件~自主占有・平穏と公然・他人の物の占有~

取得時効の成立要件~自主占有・平穏と公然・他人の物の占有~

司法書士試験に出題される民法の総則では、時効について定めています。

新たに権利義務を獲得する「取得時効」の成立要件には、「20年の経過」「自主占有(所有の意思を持った占有)であること」「平穏」「公然」「他人の物を占有」の5つがありました。

自主占有

このうち、「自主占有」とは「所有の意思を持っていること」という意味です。
これはその人がどう思っているかという個人の主観ではなく、「権原の性質により」客観的に決まるものになります。
たとえばアパートを借りたとして、借りた人がいくら「この部屋を手に入れてやろう」「ここは自分のものであるに違いない」などと思ったり信じたりしたところで、20年占有したとしても所有権が移動するわけはありません。
この場合の「権原」は賃借権であるため、「他主占有」でしかないのです。

しかし、他人の物を盗む、泥棒による占有は自主占有にあたります。
これは泥棒の性質が利己的な物、「自分のために占有している」ことが理由です。

平穏と公然

平穏とは「強暴」の反対、公然は「隠避」の反対です。
つまり、無理やり行われた占有や、こっそり隠れてやった占有は無効というわけです。

これについては民法186条『占有の態様等に関する推定』の第1項でも触れられていて、「占有者は、所有の意思をもって、善意で、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定する。」としています。
この条文は時効取得をしやすくする1つであり、善意・平穏・公然であることが前提として用意されているため、時効取得を止めたい側はこの推定を覆せるような立証活動をしなくてはなりません。

他人の物の占有

普通に考えて、時効取得するものは「他人の物」ですから深く考える必要はありません。

「自分の物」の時効取得について定めた条文は民法には無いのですが、それを争った判例はあります。
AさんとBさんの間で売買契約が結ばれ、Bさんは購入した不動産の占有を始めました。
しかし売買後から長期間が経過した後、売主であるAさんが売買の効力を争いだし、Bさんは買主としての地位を主張せざるをえなくなりました。
しかしこの場合、Bさんの占有する不動産はBさんの物ですから、民法162条第1項をそのまま考えると「他人の物」に該当しないため、時効取得が成立しないように思えます。

これについて、判例は「他人の物が時効取得出来るのだから、自分の物を取得出来るのはなおさらのこと」として、自分の物の時効取得を認めています。
これは売買契約書の紛失など、買主が売買の事実を立証しにくくなった場合の救済措置なのです。

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