司法書士の試験科目より 条文の例外~法律は理屈じゃ割り切れない~

司法書士の試験科目より 条文の例外~法律は理屈じゃ割り切れない~

司法書士試験で最も重要な出題科目の1つ、民法では「利益衡量」という本質に基づき、2つの利益を比べてより大きな利益をもたらす手法がとられます。

前ページでは、Cさんに時計の占有が承継されているというところまで話が進みました。
Cさんの占有が認められれば民法の条文上、Cさんは所有権を取得できることになります。

1 条文通りにいかない場合

しかし、実際の裁判では、そのままの流れでCさんが勝つということにはなりません。
判例によるとこの場合、Cさんが時計の所有権を取得するためには「一般外観上従来の占有状態を変更する占有を取得」することが求められており、Cさんは現実に時計を引き渡してもらうことが必要とされています。
つまり、時計がBさんの手元にあるままではCさんの所有権即時取得は不可能ということで、裁判で所有権を主張することはできないのです。

判例では「占有改定による占有取得に民法192条は適用されない」としています。
しかし本来、条文通りに解釈するのであれば占有改定でも占有が認められるため、裁判ではCさんが勝てるはずです。
にも関わらず、裁判所は「占有改定によっては、Bさんに対するAさんの信頼はまだ裏切られていない」「外観上の占有状態に変化がないのに即時取得を認めてしまうと取引の安全が害される」などという理屈で、Cさんの主張を退けました。

なぜ、このような理屈が出てきたのでしょうか。

2 法律は理屈じゃ割り切れない

法律は、人と人の関係に深く関わるものです。
人間関係や人の心というのは理屈で割り切れるものではなく、時には筋をねじ曲げるといったことも起こり得ます。
裁判というのは現実の事件を解決するためにやるものですから、妥当な解決のためには、裁判官はいくらでももっともらしい理屈をつけてくるのです。

裁判も、法律も、理屈だけでどうにかできるものではありません。
裁判官の本心にまでさかのぼり、民法を考えなくては民法を理解することはできないでしょう。

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