占有~承継されているかどうかが問題~

占有~承継されているかどうかが問題~

司法書士試験の出題科目の1つ、民法の本質に「利益衡量」がありました。
裁判は2つの利益を量ってより大きい方を選ぶことになります。

利益衡量の際には帰責事由や過失の有無など、様々な要素を判断の根拠にしていくのですが、要素となるものの1つに「占有」があります。

Aさんが大切にしている時計を親切心からBさんに貸し、CさんはBさんが真の所有だと過失なく信じて時計を買い取ったとします。
ここまでは1つ目の事例でCさんの無過失が証明されているのと同じことです。
しかし、この事例ではCさんが仕事の都合で忙しいため、買った時計をそのままBさんに預けておきたいと言っていて、Bさんもそれを了承しているということになっています。

この場合はどうなるのでしょうか。

☆占有

民法192条、即時取得の部分をもう一度見てみましょう。
「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」ということです。
Cさんの無過失、善意は証明されているので、ポイントはCさんの占有になります。

Cさんが勝つためには、Cさんが時計の占有を始めているということが必要です。
Aさんから時計を借り受けたBさんが時計を占有していたことは明らかですが、その占有をCさんが「承継」したのかどうかが問題です。
占有移転のためには、

  • ・現実の引渡し(民法182条1項)…時計を実際に手渡す
  • ・簡易の引渡し(民法182条2項)…時計をもともとCさんに預けていてそのまま売る
  • ・占有改定(民法183条)…Bさんが、今後はCさんのために時計を所有するという意思を表示
  • ・指図による占有移転(民法184条)…倉庫業者に預けてある時計をCさんの承諾がある上で、Bさんが倉庫業者に対し今後Cさんのために時計を占有するよう命じる

 

というような方法があります。
売買契約は目的物の引渡しがなくても効力が生じますが、売買契約だけでは占有の移転はなされません。
しかしこの事例では、多忙なCさんがBさんに時計を預け、Bさんもそれを了承しているため「占有改定」があったことになります。
となると、占有は移転されているため、Cさんの占有が始まっているということからCさんは裁判に勝てるということになるはずです。

しかし、実際の裁判ではそうならないことがほとんどです。
なぜ、Cさんは負けてしまうのでしょうか。

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