推定~「一応」明確なものとして定める~

推定~「一応」明確なものとして定める~

司法書士試験で最も重要な出題科目の1つ、民法では「利益衡量」という本質に基づき、2つの利益を比べてより大きな利益をもたらす手法がとられます。

前ページに出てきた「即時取得」とは、動産を占有している無権利者の虚偽の外観を信じて取引した人に過失が無い場合、完全な権利を取得させるという制度です。
AさんからBさんへと時計の所有権が承継されていない以上、本来であればCさんへ承継されるものも無いはずなのですが、この制度により、動産取引の世界ではCさんが真の所有者となる可能性もあります。

そうなるかならないかの分け目となるのは、Cさんの過失の有無です。
裁判の結果は、CさんがBさんは権利者であると過失なく誤信していたかどうかで、Cさんに過失があればAさんの勝ち、無ければCさんの勝ちということになります。

推定

民法188条では、「占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。」と定められています。
推定とはある事項において当事者の意思や事実が明らかでないとき、それらを一応明確なものとして法的効果を発生させることですから、この場合はBさんが時計を占有しているという状態を見て、CさんがBさんを所有者であると判断してしまうのは正当であるということになります。
となると、Cさんの無過失が推定され、真の所有者はCさんとなるわけです。

Aさんが勝つためにはこの推定をひっくり返し、Cさんに過失があったとすることが必要です。
Bさんの借金の事情やAさんの時計のことをCさんが知っていれば予想はついたでしょうし、Aさんに一本でも確認の電話やメールを入れておけばこの事件は未然に防げたのですから、そうしなかったCさんの不注意を責めることで裁判官を納得させれば良いのです。

しかしその時の注意事項として、過失のタイミングがあります。
問題とされる過失は「取引の時点」のものですから、Bさんから時計を買った時点、Cさんが時計の占有を始めた時点でCさんに過失があったかどうかが争点なのです。
時計を取得した後になってAさんの事情を知ったとしても、それを争点にすることは出来ないので気をつけなくてはなりません。

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