司法書士試験とは

司法書士試験とは


はじめに
司法書士とは登記・供託業務を行う国家資格であり、司法書士試験に合格し、司法書士会に登録することで司法書士を名乗ることができます。

登記・供託の専門家といえる司法書士はしばしば弁護士と混同されてしまうこともあります。
少しその違いを説明しておきましょう。
実は本来、登記などを含め法律関係の業務は弁護士の仕事でした。
しかし、日本における弁護士の人数が少なかったために、登記業務を行う資格として司法書士制度がもうけられたのです。

司法書士と同じような立場として、文書作成の専門家である行政書士、税務申告の専門家である税理士、知的財産の専門家である弁理士などがいます。
そして、これらの上に君臨するのが法律のスペシャリストである弁護士というわけです。
日本における弁護士の人数はまだまだ足りておらず、司法書士などの制度は弁護士が行き届いていない部分を補完する意義を持っています

ここでは、そんな司法書士になるための司法書士試験とその対策方法、そしてその合格後まで詳しく解説していきます。

1 司法書士を受けるのはどんな人?

司法書士試験は一体どんな人が受験しているのでしょうか。
ここでは法務省の公開している統計データをもとに、司法書士試験の出願者、合格者、最近の傾向を分析していきます。

(1)出願者

ここでは年度別の出願者数と前年度と比べた増減数増減率を見ていきます。

上の表を見てわかるように司法書士試験の出願者はここ数年減ってきているのが分かります。
平成30年は前年に対して1,163人減少し、増減率でいうと6.2%減っています。

司法試験の出願者が減ってきている理由として考えられるのは、3つあります。

①司法書士の需要の低下

1つ目は、以前、借金の不当金利の返済の問題が騒がれ、その時に司法書士の需要が急激に増加したということです。
司法書士試験が始まってから長いスパンで出願者数を見てみると、平成17年以前までは出願者数が上昇し、平成23年には出願者数が3万人を超えているという状況でした。
現在は借金返済問題が収まり、該当案件が減ったことで、司法書士自体の需要が低下していることが原因の1つといえるでしょう。
借金返済問題が騒がれていた当時は「司法書士の資格を取れば人生安泰」だと勘違いする人もいたようですが、現在は司法書士の廃業者も出てきており、注意が必要です。

②不動産取引の減少

2つ目は、不動産取引の減少です。
バブル期は不動産の取引が活発に行われていましたが、現在はそうではありません。
司法書士の大きな仕事の一つとして不動産の登記がありますので、不動産の取引減少は司法書士の需要減少にも直結するでしょう。

③時間と費用がかかる

3つ目は時間と費用が掛かりすぎるということです。
司法書士試験は1か月くらいちょっと勉強して合格できるような生易しいものではありません。
1~2年しっかり勉強して合格できるかどうか、という勝負です。
また、多くの人が専門学校に通って勉強しており、学費も高額なものとなっています。
時間と学費を賄えるほどの余裕のある人が減っていることも、出願者の減少理由の一つとして挙げられます。

(2)合格者

ここでは司法書士試験合格者に関して、年代別の受験者数とその割合、男女比を詳しく分析していきます。

①年代別の受験者数とその割合


上の表を見てわかる通り、30代、40代の合格者数が圧倒的となっています。
司法書士は弁護士などに比べるとマイナーであることもあり、若いうちにしっかり勉強して10代、20代で資格を取ってしまうというよりは、社会に出て働き始めてから、司法書士の資格を取ろうとする人が多いことが分かります。

②男女比


弁護士など他の国家資格と比べて、この男女比は一般的なものといえるでしょう。
多くの国家資格が、男性7割、女性3割の比率になっています。

2 司法書士試験の概要

ここでは例として平成30年度の司法試験概要を記載します。
▶︎参照:法務省(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00321.html

(1)受験資格

年齢、性別、学歴などの制限はありません。

(2)試験場

試験場は全国に50か所あり、受験票に指定の試験場が記載される形となっています。
詳しい試験場の所在地を知りたい方はこちらを参照ください。
▶︎http://www.moj.go.jp/content/001253230.pdf

(3)試験日程と時間割

①試験日程

②試験日の時間割

集合時刻 : 午前9時
午前の部 : 午後9時30分~午前11時30分
午後の部 : 午後1時~午後4時

(4)受験手数料

8,000円

(5)持ち物

・筆記試験 受験票
・BまたはHBの鉛筆
・黒インクの万年筆またはボールペン(インクが消せるものは×)
・プラスチック消しゴム

3 試験科目・出題形式について

(1)試験科目

司法書士試験は筆記試験と口述試験にの2つの試験で構成されています。では、順番に見ていきましょう。

①筆記試験

筆記試験に関しては、試験時間が午前の部と午後の部に分かれています。
出題形式、科目、問題数、配点をまとめた下表を参照してください。

②口述試験

口述試験は上の2つの試験と違って、実務知識や礼儀を確認するといった目的で行われており、毎年口述試験の合格率はほぼ100%となっています。

口述試験は面接形式となっており、部屋に案内されると、2人の面接官を相手に質問を受け、それに口頭で答えていくという流れになっています。

試験科目は以下の3つとなっています。

・不動産登記法
・商業登記法
・司法書士法

口述試験では筆記試験に比べて、明解な論理的思考を問われます。

(2)合格基準

ここでは筆記試験の合格基準点について見ていきます。

筆記試験合格点:満点280点中212.5点以上

※午前の部の多肢択一式問題に関しては満点105点中78点に、午後の部の多肢択一式問題に関しては満点105点中72点に、記述式問題に関しては満点70点満点中37点にそれぞれ達しない場合は、合計点が212.5点以上でも不合格となっています。

4 司法書士試験の対策方法

国家資格である司法書士。その試験の合格率は約4%となっています。

「こんな自分でも合格できるのかな……」という不安は誰もが持っています。
ここでは、そんな司法書士の合格を志す悩める人たちへ、合格するための勉強法を解説していきます。

ズバリ、司法書士試験合格のポイントは2つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

(1)敵を知る

司法書士試験に限らず、何かに挑戦しようとするときは、まず敵を知らなくてはいけません。
どんな相手がいるのかも知らず、ただがむしゃらに突き進んでは、勝てるものも勝てなくなってしまいます。
まず敵を知り、分析をすることで勝つための戦略が立てられるようになり、そしてその戦略を実行するために努力をするのです。

ではどうやって敵を知るのでしょうか。
それは「過去問の分析」。これにつきます。

まず過去問の分析すべきポイントとしては、科目別の問題数と問題形式があります。
「3 試験科目・出題形式について」の表をもう一度見てみましょう。

これを見ることでどの科目に特に力を入れればいいのかわかるようになります。

まず、民法、不動産登記法の問題数が圧倒的であることがわかります。
この2科目だけで36問あります。
そしてそれに続くのが、商法、商業登記法、民事訴訟法です。
これら5科目を極めるだけでも、択一式に関しては合格点に近い点数をたたき出すことができます。

さらに、不動産登記法と商業登記法は配点が70点もある記述式の問題と被っているので、重要度はとても高いものとなっています。
このように、科目によって重要度が異なるため、それを知らずに、例えば1問しか出ない民事執行法ばかりに時間を費やしてしまってはもったいないのです。

また、過去問を解くタイミングというのも大事です。
過去問には、勉強を始めた頃の序盤に取り組みましょう。
「過去問は、自分の実力をチェックするのに使うんだ」という人もいますが、それは大きな間違いです。
過去問は敵を知るツールであり、これからの勉強計画に役立てるものなのです。
試験間近まで過去問を解かないで取っておくのは、とてももったいないことです。

ここで少し司法書士試験の問題の傾向を見ておきましょう。

司法書士試験には、択一式と記述式の問題がありますが、択一式に関しては基礎レベルの問題がほとんどです。
また、問題の出題形式や切り口は毎年変えられています。
そのため、基礎レベルの知識をきちんと理解し、包括的に記憶しておくことが重要です。

記述式に関しては、具体的な事案を迅速かつ正確に処理する問題解決能力が問われる問題が出されています。
問題集の回答を暗記するだけでは、本番の問題に対応するのは厳しいです。
早期に記述対策を行うことで、問題の解き方や思考プロセスを身につけましょう。

このように過去問を分析し、自分の勉強スケジュールを立てていきましょう。

(2)繰り返し学習

ここでは勉強の取り組み方について解説していきます。
法律の勉強というのは、特に法律にあまり触れこなかったような初学者にとっては、非常にとっつきにくく理解が難しいものとなっています。
さらに、ただでさえ理解しにくいのに、司法書士試験の科目をすべて網羅しようとすると、その量は莫大なものとなっています。1度読んだくらいで覚えられるとは思わないでください。

人間がある物事を記憶するときの脳の仕組みというのは、下の図のようになっています。まず全体像を把握し、それに分岐するような形でピラミッドを作るように記憶をしているのです。

まずは大まかな全体像の把握を、どれだけ早くできるかが重要になってきます。
そして、細かい部分も、全体像やその下にある要約に関連させて、記憶を定着させていきます。

また、人間の脳には短期記憶の場所と長期記憶の場所があります。
初めから長期記憶に知識を入れたいですが、脳の構造上そうはいきません。
何度も何度も同じ情報を短期記憶に入れ込むことによって、長期記憶に移っていくのです。

このことから、繰り返し学習が大事だということがわかっていただけたのではないでしょうか。

◉コラム◉ 独学で合格は可能か

世間で言われているように「独学は不利になる」ことは間違いありません。
特に、法律などの勉強をしたことがない初学者にとっては、法律の学習は理解が難しく、とても厳しいものといえるでしょう。

しかし、独学にももちろんメリットはあります。

まずは費用面です。
資格の専門学校の講義費用は非常に高額です。
独学でそれを削減できるのは、とても大きなメリットといえるでしょう。

また、自分のペースでできるというのもメリットといえるでしょう。
しかし、学習ペースを自分で構築しなければならない側面では、デメリットにもなりえます。

これらを踏まえ、覚えるべき重要なポイントや、さらっと流すべきポイントなどを教えてくれるような合格者の知り合いなどを持つことが、独学には必要不可欠といえるでしょう。

5 司法書士試験に受かると?

(1)新人研修

司法書士試験に受かったら、すぐに司法書士として働けるわけではありません。
1年以内に司法書士の登録をしたい資格者は、日本司法書士会連合会が開催する「新人研修」を受けなくてはいけません。これは法律によって定められている義務です。

新人研修は「司法書士として業務を行うために必要な、法律家としての執務姿勢と実務能力を身につけること」を目的として作られています。

研修には、中央研修、ブロック研修、司法書士研修(配属研修)の3種類があります。それぞれ見ていきましょう。

①中央研修

中央研修には前期と後期があり、それらの全過程を受講することで修了となります。
ここでは平成30年度の司法書士新人研修について紹介します。

・前期日程

前期日程はeラーニング研修です。インターネット配信により、受講者が自宅や事務所のパソコンやモバイル端末から受講するようになっています。

前期日程はブロック研修の会場、もしくは自宅住所地を基準として3グループに分けられ、グループごとに視聴する期間が定められています。

第1グループ : 平成30年12月1日(土)~平成30年12月17日(月) 中部ブロック・中国ブロック・四国ブロック・九州ブロック
第2グループ : 平成30年12月18日(火)~平成31年1月3日(木) 北海道ブロック・東北ブロック・近畿ブロック
第3グループ : 平成31年1月4日(金)~平成31年1月20日(日) 関東ブロック

・後期日程

日程:平成31年1月22日(火)~平成31年1月24日(木)
会場:
【北海道会場】 ホテルノースシティ
【東北会場】  宮城県司法書士会館
【関東会場】  フォーラムエイト
【中部会場】  愛知県産業労働センター
【近畿会場】  天満研修センター
【中国会場】  RCC文化センター
【四国会場】  香川県司法書士会館
【九州会場】  天神ビル

②ブロック研修

ブロック研修とは全国8つの地域(ブロック)に分かれて実施する、より実務に即した研修です。
・ブロックごとの日程と会場

③司法書士研修(配属研修)

司法書士研修(配属研修)は、先輩の司法書士事務所で実務を学ぶ研修であり、全国50の司法書士会で行われています。
司法書士研修を受ける司法書士会は自分で選ぶことができますので、登録を希望する司法書士会で受講するのがよいでしょう。

研修期間・申込方法等は司法書士会によって異なります。詳細については、登録を希望する司法書士会に問い合わせましょう。

(2)進路

新人研修を経ることで、やっと司法書士を名乗って働くことができます。
では、司法書士にはいったいどんな就職先、働き方が待っているのでしょうか。

①司法書士事務所

司法書士試験の合格者の中で、最も多い就職先が司法書士事務所です。
司法書士事務所への就職は、見習い司法書士がベテラン司法書士の補助として経験を積むという意味合いを持っています。
まず、司法書士事務所で経験を積み、その後一般企業で働きビジネスを学び、自分で独立開業をしていくという流れが一般的です。
司法書士事務所での主な仕事内容は、個人や企業から依頼を受けて、法律に関する書類作成や法律上の手続きを代行するといったものです。
具体的には、不動産の売買や相続の際に、土地や建物の所有権を明確にするための不動産登記や、会社を設立する際に必要な商業登記などがあります。

②弁護士事務所

司法書士事務所ではなく、弁護士事務所で働く司法書士も少なくありません。
弁護士事務所での司法書士の仕事は、司法書士としての登記業務などの特性を生かしながら、弁護士の下で法律業務を行うことによって、弁護士の業務を補助するものです。

③一般企業の法務部門

司法書士として一般企業に就職する場合、その会社の法務部や総務部などの従業員として、司法書士の専門知識を生かし、契約書のチェックや、登記所に提出する書類の作成を行うなどの仕事をします。

④独立開業

独立開業を目的として司法書士試験に挑む人も多いのではないでしょうか。
独立して開業する人は主に2つのパターンに分けられます。

1つ目は、開業してすぐに継続的に仕事を受託できる環境にあるパターンです。
このパターンは開業するする前に、人脈がある程度築かれていて、開業後すぐに仕事を継続的に仕事を受託できる目途が立てられる場合や、親や兄弟などの身内がすでに司法書士事務所を経営しており、その事務所で開業するという場合が多いです。

2つ目は、一定の事務処理能力を持っているパターンです。
開業する前に、司法書士事務所などの補助者として十分な実務経験を積んでいる場合や、配属修習で十分な実務経験を積むことができた場合に多いです。

⑤他資格取得へ

司法書士試験に合格したらすぐ、あるいは、司法書士試験の勉強と並行して他資格の勉強をする人も多くいます。
ダブルライセンスという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
近年、国家資格の所持者が増えすぎて、飽和状態となっている資格も多くあります。
そのため、自分の可能性を広げ、就職で有利になるために複数の資格を持つ人が増えているのです。
司法書士の他に取得する資格の例としては、土地家屋調査士、測量士、行政書士、宅建士などがあります。
また、司法試験に合格するため、司法書士試験合格後すぐに法科大学院に就学したり、司法試験予備試験の勉強を始めたりする人もいます。

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