司法書士試験に合格するために必要な時間は約3,000時間といわれています。それほど長い時間、モチベーションを落とさずに勉強するのは決して容易ではありません。勉強時間の時間配分を考えたり、勉強時間をできるだけ削減する工夫が必要です。
そこで本記事では、司法書士試験に必要な勉強時間の詳細や時間配分、できるだけ勉強時間を短くする工夫について詳しくご紹介します。試験勉強を始める際の参考にしてみてください。
目次
1 司法書士の合格に必要な勉強時間は3,000時間以上
司法書士試験に合格するために必要な時間は約3,000時間といわれています。ただし、この時間はあくまでも効率よく勉強できた人の最短の目安です。
そのため、大抵の人は3,000時間より時間がかかると推測されます。一方、法学部の大学生や過去に法律を勉強していた人などは、3,000時間より短い時間での合格も不可能ではありません。
したがって、3,000時間という数値はあくまで目安のひとつとして、参考程度にしておきましょう。
(1) 司法書士試験は出題範囲が非常に広い
司法書士試験は、民法、不動産登記法、商業登記法、商社(会社法を含む)、の主要4科目と憲法、刑法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、供託法、司法書士法のマイナー科目(7科目)で構成されています。さらに、基準点と呼ばれる午前中と午後の試験それぞれで最低限得点しないといけない点数も定められているため、非常に範囲が広いだけでなく、試験範囲をまんべんなく覚えなければいけません。
このため司法書士試験の学習では、それぞれの科目に対し適切に勉強時間を割り振ることが必要です。
(2) 1日当たりの勉強時間と必要準備期間
司法書士試験合格に必要とされる3,000時間を、1日当たりの勉強時間で割り振って学習計画を立てることは非常に重要です。以下では、1日あたり何時間勉強するかによってかかる勉強期間を表にまとめてみました。学習計画を立てる際の参考にしてみてください。
1日当たりの勉強時間 | 合計勉強時間(時間) | 必要な勉強期間 |
1 | 3,000 | 約8年 |
2 | 3,000 | 約4年 |
3 | 3,000 | 約2年9カ月 |
4 | 3,000 | 約2年 |
5 | 3,000 | 約1年7カ月 |
6 | 3,000 | 約1年5カ月 |
7 | 3,000 | 約1年2カ月 |
8 | 3,000 | 約1年 |
上記から、1日8時間勉強したとしても1年以上の期間が必要なことが分かります。このように試験勉強に長期間かかるため、あらかじめ適切な学習計画を立てることが重要です。
なお、専業受験生と兼業受験生どちらを選択するかによっても、学習計画は大きく変動します。ここでは、それぞれのパターンに分けて説明します。
① 専業受験生
専業受験生とは、司法書士試験の勉強だけに専念する受験生のことです。
短期間に集中して勉強することで、効率よく覚えられる・司法書士試験の勉強のみに集中できるといったメリットがあります。その反面、問題となるのは生活費です。
上記の表から1日8時間程度勉強するとしても、1年以上の勉強時間が必要になります。つまり、専業になるには1年以上の生活費を確保することが必須です。当然、勉強期間中にアルバイトなどをするのは、勉強効率の観点からあまりおすすめできません。
したがって、実家暮らしで扶養家族がいない若いうちにしか、専業受験生になるのは難しいといえます。ただし、社会人の方でも、貯金に余裕があるなら専業受験生になるのもひとつの手段です。
② 兼業受験生
兼業受験生とは、大学生活や社会人生活と両立しながら司法書士試験の勉強をする受験生のことです。兼業受験生の多くは、前述した生活費の問題のためにこの方法を選びます。
兼業のデメリットは、1日のうちにそれほど試験勉強の時間を割けないことです。そのため、おのずと勉強期間が長めになってしまいます。例えば1日2時間勉強するとした場合、上記の表から判断すると、約4年間が必要です。
ただしこの計算方法では、休日に長時間の勉強をすることは想定に入れていません。そのため、平日に2時間、休日に8時間勉強(週休2日)すると仮定した場合、約2年と3か月で合格ラインの勉強時間を確保できます。
2 科目ごとの特徴と勉強時間の配分
司法書士試験には、午前中と午後の試験それぞれにおいて基準点と呼ばれる「最低限取らないといけない点数」が設定されています。そのため、すべての科目で得点できるよう受験勉強の対策をしなければなりません。
どの科目にどれほどの勉強時間をかければいいのか、効率の面から考えても把握しておく必要があります。そこで、司法書士試験に必要な勉強時間を、配点の比率を踏まえて各科目に割り振りました。
科目 | 配点 | 配点比率 | 必要勉強時間 |
民法 | 60 | 21.4% | 720時間 |
不動産登記法 | 48 | 17.1% | 513時間 |
不動産登記法(記述) | 35 | 12.5% | 375時間 |
商法(会社法) | 27 | 9.6% | 288時間 |
商業登記法 | 24 | 8.6% | 258時間 |
商業登記法(記述) | 35 | 12.5% | 375時間 |
民事訴訟法 | 15 | 5.4% | 162時間 |
民事執行法 | 3 | 1.1% | 33時間 |
民事保全法 | 3 | 1.1% | 33時間 |
司法書士法 | 3 | 1.1% | 33時間 |
憲法 | 9 | 3.2% | 96時間 |
刑法 | 9 | 3.2% | 96時間 |
供託法 | 9 | 3.2% | 96時間 |
人によってそれぞれ得意・不得意があるため、上記の表はあくまでひとつの目安ですが、計画を立てて勉強することは、司法書士試験の合格にとって非常に重要です。ぜひ上記の表を参考にし、学習計画を立ててみましょう。
学習計画を立てる際に1点注意したいことがあります。それは、科目ごとまとめて勉強しようとしないことです。
科目ごとに勉強していくと、試験を受験する頃には、最初に勉強した科目に長期間触れていない状態になってしまいます。そのため、1週間ごとにスケジュールを組み、全科目まんべんなく勉強することが大切です。
以下で各科目の特徴を見ていきましょう。
(1) 民法
先述した表に基づくと、司法書士試験の民法で必要な勉強時間の目安は720時間です。民法は、非常に範囲が広く配点も一番高いので、勉強時間を多めに取る必要があります。
そんな民法のおすすめの勉強法は、古い過去問から最新の過去問まで繰り返し解くことです。司法書士試験の民法では、古い過去問から出題されることも珍しくありません。そのため、古い過去問まで解いておくことで、取りこぼしを極力減らすことができます。
(2) 不動産登記法
司法書士試験の不動産登記法で必要な勉強時間の目安は、888時間です。不動産登記法は、記述も含めると民法より配点が多く、最重要科目といえます。
不動産登記法のおすすめの勉強法は、民法同様過去問をひたすら解くことです。過去問から出題される傾向が強く、重要な問題は繰り返し出題されています。
また、記述問題に備え、テキストをしっかり理解しておくことも重要です。細かい部分も問われる傾向にあるので、不動産登記令や不動産登記規則についてもチェックしておきましょう。
(3) 商法(会社法)
司法書士試験の商法(会社法)で必要な勉強時間の目安は、288時間です。商法(会社法)は配点が高いうえ、今まで出題されたことのない問題が出される可能性も高い科目なので、勉強時間は多めに取る必要があります。
商法(会社法)のおすすめの勉強法は、とにかくテキストを理解することです。会社法は2005年に作られた法律のため、2006年度以降の過去問しかありません。そのため、今まで出されたことのない問題がよく出題されることを踏まえ、テキストの理解が必要不可欠です。
ただし、商法は範囲も広くなく、毎年1問しか出題されないため、過度に対策する必要はありません。主に会社法の対策が重要だということを覚えておきましょう。
(4) 商業登記法
司法書士試験の商業登記法で必要な勉強時間の目安は、633時間です。商業登記法も不動産登記法と同じく、記述式と択一科目とに分かれています。そのため、配点も高く重要な科目のひとつです。
商業登記法のおすすめの勉強法は、テキスト中心の勉強になります。その理由は、会社法と商業登記法のつながりが非常に強いためです。過去問をあてにすることはできず、テキストをこと細かく理解する必要があります。会社法が出題された2006年度以降の過去問以外は参考にできない点に注意しましょう。
(5) 民事訴訟法
司法書士試験の民事訴訟法で必要な勉強時間の目安は、162時間です。配点自体はそこまで多くないものの、民法や民事執行法、民事保全法とのつながりが強く、重要な科目のひとつになります。
民事訴訟法のおすすめの勉強法は、テキストと過去問の両方を繰り返し読んで解くことです。民事訴訟法は、出題数の割に勉強する範囲が広く、複雑な問題も多数出題されます。そのため、一見すると割りの合わない科目かもしれません。
しかし先述したように、民事訴訟法は、民法や民事執行法、民事保全法とのつながりが強いため、勉強することで他の科目の理解も深まります。時間をかければしっかりと結果につながるので、諦めずに勉強しましょう。
(6) 民事執行法
司法書士試験の民事執行法で必要な勉強時間の目安は、33時間です。毎年1問しか出題されず配点も少ないため、勉強時間は最小限に抑えてよいでしょう。
民事執行法のおすすめの勉強法は、過去問だけをひたすら解くことです。司法書士試験では、民事執行法の頻出論点を繰り返し問う傾向にあるため、過去問の勉強で十分に対策できます。
(7) 民事保全法
司法書士試験の民事保全法で必要な勉強時間の目安は、33時間です。民事執行法と同じく勉強時間の取りすぎに注意してください。
民事保全法のおすすめの勉強法は、民事執行法とセットで勉強することです。似ている部分が多くあり、効率的に勉強することができます。
(8) 司法書士法
司法書士試験の司法書士法で必要な勉強時間の目安は、33時間です。比較的簡単な科目なので、ある意味重要な科目になります。
司法書士法は条文通りに出題されるため、過去問とテキストをひと通り勉強しておくだけで十分得点につながるのです。そのため、確実に得点できる程度の勉強はしておきましょう。
(9) 憲法
司法書士試験の憲法で必要な勉強時間の目安は、96時間です。配点は少なめですが、判例・学説問題は苦手とする受験生が多くいます。、差をつけるにはもってこいの科目なので、しっかりと対策を取ることが必要です。
そんな憲法のおすすめの勉強法は、行政書士試験や公務員試験の憲法関連の過去問を解いておくことです。司法書士試験における憲法の出題は2003年度から始まったため、過去問の量は決して多くありません。行政書士試験などから似たような出題がされているのもポイントです。
このため、2003年度以降の過去問に併せて他試験の憲法関連の過去問を解くことで、十分な対策につながります。
(10) 刑法
司法書士試験の刑法で必要な勉強時間の目安は、96時間です。刑法は、出題数、配点ともに憲法と同様になります。ただし、憲法に比べて試験範囲が膨大なため、全問正解は目指差ないのが得策です。
刑法のおすすめの勉強法は、過去問を繰り返し解くことです。先述したように、刑法は出題範囲が広範囲になります。しかし、出題数や配点はさほど多くないため、しっかり時間をかけて勉強するのは非効率です。
そのため、過去問を繰り返し解いて、過去問の類題には対応できるようにしておきましょう。
(11) 供託法
司法書士試験の供託法で必要な勉強時間の目安は、96時間です。供託法の出題数は3問とさほど多くありません。しかし供託法は、頻出論点が繰り返し出題される傾向にあり、全問正解しやすい科目です。
そのため、供託法を勉強する際は過去問中心の勉強をおすすめします。
3 できるだけ勉強時間を短縮するためには?
司法書士試験合格には膨大な勉強時間が必要になります。そのため、少しでも勉強時間を短縮したいと思うのは当然です。
そこで、少しでも勉強時間を少なくするための工夫についてご紹介します。
(1) 短期合格を目指す
少しでも勉強時間を短縮するためには、短期間での合格を目指すのが重要です。長期間にわたる受験勉強は、初期に勉強した内容を忘れやすいだけでなく、モチベーションの維持も難しくなります。
そのため、兼業受験であってもできる限り勉強期間が短くなるように意識しましょう。受験までの2年間は一切遊ばないというような覚悟も、ときには必要です。
そういった厳しい覚悟を持つことが、最短の勉強時間での合格につながります。
(2) 学習計画をきちんと立てる
司法書士試験は勉強量が膨大なため、やみくもに勉強していても合格は期待できません。合格を実現するには、しっかりとした現実的な学習計画を立てることが重要です。
その結果、効率的な勉強ができ、最短での合格が可能になります。また、学習計画を立てる際は、前述の必要勉強時間を参考にしてみましょう。
(3) 可能な限り多くの問題を解く
どの試験勉強にも言えることですが、テキストだけで勉強するのは不可能といえます。いくら知識を蓄えてもアウトプットする場がないと、知識が定着しにくいためです。
そのため、試験勉強する際は、できるかぎり問題を解くように心がけてください。テキストで得た知識が問題を解くことで定着しやすくなります。
(4) 試験内容をしっかり理解したうえで試験対策に取り組む
司法書士試験で必要な知識量は、尋常な量ではありません。その量をすべて丸暗記するのは、現実的に難しいでしょう。
そのため、どんな知識求められどんな問題が出題されるのか、試験当日の時間配分など、試験内容をきちんと理解して試験対策に取り組むことが重要です。その結果、効率的な試験勉強ができるようになります。
(5) 予備校・通信講座を利用する
ここまで説明してきた勉強時間は独学での話になります。効率重視で合格を目指すのなら、予備校や通信講座を利用することもひとつの手段です。
予備校や通信講座を利用すれば、独学に比べ非常に効率よく勉強できます。結果的に最短の勉強時間で合格することも可能でしょう。もちろん、コスト面では独学よりもかかりますが、それに見合う価値はあるといえます。
4 まとめ
司法書士試験合格に必要な総勉強時間と各科目それぞれの特徴や掛けるべき勉強時間、勉強時間を短縮する工夫について詳細にご紹介しました。
司法書士試験を受験するにあたって、できるだけ効率よく短時間で合格したいと思うのは当然です。
試験内容を理解したうえで、必要な科目に必要な時間をかけて勉強しましょう。