
「君主にとっての敵は、内と外の双方にある。これらの敵から身を守るのは、準備怠りない防衛力と友好関係である。」
これは、イタリアの政治思想家マキャヴェッリが自著『君主論』の中で述べた言葉です。
この言葉は、軍事論の文脈で語られることが多いが、実は資格試験の勉強にも通ずるものがあります。
資格試験の勉強において最も重要なのはどのように勉強するか、すなわち勉強計画であると言われています。
マキャヴェッリの言葉に述べられた“準備怠りない防衛力と友好関係”とは正に、試験制度をよく理解し、それに向けてしっかりとした対策を練ることに他なりません。
すなわち、社労士(社会保険労務士)試験の制度自体について理解することが合格への戦略を練る第一歩なのです。
そこで、今回は社労士試験制度についてお話ししたいと思います。
目次
社労士(社会保険労務士)試験制度概要
社労士(社会保険労務士)試験制度を理解する上で、外せないのが受験資格・受験手数料・提出物になります。
受験資格
受験資格 | ①学歴 ②実務経験 ③(厚生労働大臣が認めた)国家試験合格 |
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社労士(社会保険労務士)試験には受験資格があります。
すなわち、誰でも受けられるというわけではなく、社労士を受けるためには複数ある受験資格の条件のうちどれか1つでも満たさなければならないのです。
社労士試験の受験資格は、大きく分けて、①学歴、②実務経験、③厚生労働大臣の認めた国家試験合格の3つがあります。
①学歴
一般的な4年制大学・短期大学・5年制の高等専門学校を卒業していれば、基本的には社労士試験の受験資格を満たしています。
大学中退ないし在学中の場合でも、卒業認定単位を62単位以上取得していれば社労士試験を受験することができます。
注意しなければならない状況なのは2つのパターンに該当するときです。
1つ目は、専門学校を卒業された方です。
専門学校の場合、どの専門学校でもよいというわけではなく、厚生労働大臣が認めているところに限られていたり修業年限・必要授業総時間数に条件があったりします。
詳細な条件については、 全国社会保険労務士会連合会試験センター―社会保険労務士試験の受験資格 をご確認ください。
2つ目は、最終学歴が中学校卒業ないし高等学校卒業の方です。
中卒・高卒の方は、学歴という点では受験資格を満たすことができません。
そのため、②実務経験または③(厚生労働大臣が認めた)国家試験合格の受験資格条件を満たすことで社労士試験を受験することができます。
②実務経験
社労士事務所や社労士関連の法人において3年以上従事した経験があれば、学歴に関係なく社労士試験の受験資格を得ることができます。
他にも、弁護士事務所や地方公共団体、独立行政法人、労働組合などで行政事務や労働社会保険諸法令に関する事務に3年以上携わっていれば同様に社労士試験を受験することができます。
学歴で受験を資格を満たすことができない場合でも実務経験を通して社労士試験の受験資格を得ることができますし、実際社労士関連の業務に日常的に触れる中で社労士資格に興味を持つようになって受験を志すケースは少なくないと言えます。
学歴及び実務経験での受験資格を満たさない場合、国家試験を受けて合格することで社労士の受験資格を満たすことを目指します。
特に、実務経験による社労士試験の受験資格の場合、少なくとも3年以上が必要ですから、その人の努力次第ではより早く社労士試験の受験資格を得ることができます。
厚生労働大臣が認めた国家試験として認めた79の資格の他、司法試験予備試験や行政書士が存在します。
資格としてよく聞く公認会計士や1級建築士、弁理士、中小企業診断士もあれば、あまり馴染みのない情報処理技術者試験や労働安全コンサルタント試験、知的財産管理技能検定試験などもあり、そのバリエーションは多種多様です。
詳しくは、 全国社会保険労務士会連合会試験センター― 〇厚生労働大臣が認めた国家試験 をご参照ください。
したがって、受験資格が設けられているとはいえ、受験資格を認める幅はかなりあり、社労士試験は十分門戸が開けている資格試験の制度であると言えます。
受験資格に関するより詳細な情報を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
受験手数料
受験手数料 | 9,130円 |
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受験手数料は9,000円です。
しかし、支払う際の払込手数料130円も自己負担のため、実際には9130円ということになります。
全国社会保険労務士会連合会試験センターに請求することで手に入る書類の1つが受験手数料払込用紙であり、その専用払込用紙を用いてコンビニ、郵便局・ゆうちょ銀行のどちらかで支払いの手続きを行います。
決して安い金額ではないこと、難関資格であり複数回の受験を経てようやく合格を勝ち取る人も多く存在すること、受験回数が増えればその分支払わなければならない受験手数料も比例的に増加していくことを考慮すれば、受験手数料という点から見ても当然なるべく少ない回数、できれば一発合格が望ましいと言えます。
提出物
提出物 | ①社会保険労務士試験受験申込書・社会保険労務士試験試験科目免除申請書(OCRシート) ②写真 ③受験手数料払込用紙 ④受験資格証明書or実務経験証明書用紙 |
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社労士(社会保険労務士)試験の受験時には、以下の4つのものを郵送ないし試験センター窓口にて専用の受験申込用封筒に入れて提出する必要があります。
①社会保険労務士試験受験申込書・社会保険労務士試験試験科目免除申請書(OCRシート)
社労士(社会保険労務士)試験を受験する際には必ず必要事項を記入の上、社会保険労務士試験受験申込書を提出する必要があります。
社会保険労務士試験受験申込書は、全国社会保険労務士会連合会試験センターに請求することで手に入れることができます。
また、試験科目の一部を免除する場合には同時に社会保険労務士試験試験科目免除申請書(OCRシート)も提出します。
これらの書類は、ともに郵送もしくは窓口を通して請求することができます。
②写真
申込前3ヶ月以内に撮影した方から上の正面からの写真を提出します。
写真の規格は縦4.5cm×横3.5cmで、白黒・カラーいずれも可です。
裏面に氏名と住所を記入し、受験申込書の所定欄に貼付する形で提出します。
③受験手数料払込用紙
あらかじめコンビニないし郵便局・ゆうちょ銀行を通じて受験手数料支払い手続きを済ませた上で、その証明となる受験手数料払込用紙を提出する必要があります。
受験手数料払込用紙は、払込取扱票・振替払込請求書兼受領証・振替払込受付証明書(申込者保管用)・払込受領証の4つで1セットとなっています。
④受験資格証明書or実務経験証明書
社労士試験には受験資格が存在します。
そして、自分がたとえ受験資格を持っていたとしてもそれを自己判断のみで終えてはいけません。
自分がどの受験資格を満たしているのかをその証拠とともに示さなければなりません。
それが受験資格証明書となります。学歴や国家資格での受験資格の場合は、卒業証明書やその資格を持っていることを証明する書類のコピーを提出する必要があります。
実務経験での受験資格の場合は、その業務の従事期間を証明する書類として実務経験証明書を提出する必要があります。
詳しくは 全国社会保険労務士会連合会試験センター―受験資格証明書 をご参照ください。
社労士(社会保険労務士)試験プロセス ~社労士になるには~
上記の説明で、社労士(社会保険労務士)試験制度についてその大枠を分かっていただけたと思います。
戦略=勉強計画を立てるには、試験制度の概要はもちろん、社労士試験の大まかな流れについても理解する必要があります。
流れを理解することで自分が社労士試験当日までにすべきことやそのスケジュール感が見えてくるからです。
そこで、ここでは社労士になるまでのプロセスについてお話ししたいと思います。
ちなみに、ここで紹介する社労士試験のプロセスは第49回(平成29年度)社会保険労務士試験のスケジュールに基づいています。
3月上旬~4月中旬 | 郵送請求受付 |
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社労士試験の資料請求受付は3月上旬より、試験詳細公示に先立って始まります。
請求は郵送を通じての請求と試験センター窓口での直接請求が選べるのですが、試験詳細が公示される4月中旬までは郵送のみ請求可能です。
郵送による請求に際して、準備すべきものは3つあります。それらは、往信用封筒、返信用封筒、切手(往信用82円切手と返信用140円切手の2枚)です。
まず、往信用封筒(長形3号:縦235mm×横120mm)に82円分切手を貼付して、自分の郵便番号・住所・氏名を、表面に赤字で「受験案内 請求」とそれぞれ記入します。
返信用封筒(角形2号:縦332mm×横240mm)には140円分切手を貼付して、同様に自分の郵便番号・住所・氏名を記入します。
そして、返信用封筒を折りたたんで、往信用封筒に入れて、それを試験センター宛に送付します。
中に入れた返信用封筒で受験申込書などの資料が自分のもとへ試験詳細公示後に届きます。
【平成30年度社労士試験最新情報にアップデート済!!】
参考:第50回(平成30年度)社会保険労務士試験 郵送宛先
〒103-8347 東京都中央区日本橋本石町3-2-12 社会保険労務士会館5階 全国社会保険労務士会連合会 試験センター
4月中旬 | 試験詳細公示&資料発送開始 |
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4月中旬に「社会保険労務士試験の実施について」の厚生労働大臣の官報公示が行われます。
この公示によって、日程や科目など当年度の試験に関する詳細な情報が明らかになります。
また、試験詳細公示が行われた翌営業日から資料の発送が開始します。
4月中旬~5月下旬 | 窓口資料請求受付開始&受験申込 |
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試験詳細公示日より、郵送に加えて窓口での資料請求も可能になります。
窓口としては、試験センターと都道府県社会保険労務士会があり、全国48か所に設置されています。
窓口へ直接行き、その場で資料を受け取ることができます。
都道府県社会保険労務士会は、それぞれ営業日・営業時間が異なるため、あらかじめ確認の上訪れる必要がある点は注意する必要があります。
また、試験詳細公示後に発送される資料に基づいて、期日までに受験申込手続きを行い必要書類を提出する必要があります。
受験申込締切日まで資料請求もできますが、それでは間に合わない可能性が高いため時間に余裕をもって受験申込の手続きを進める必要があります。
提出物 で示した書類をすべてそろえ、郵送ないし試験センター窓口を通して提出します。
郵送の場合、専用の封筒に必要な書類をすべて入れて試験センターへ郵送します。
ここで、注意すべきなのは、郵便局の有人郵便窓口から「簡易書留郵便」で郵送することです。
すなわち、ポストに投函したり普通郵便として郵送したりしてはならないのです。
試験センター窓口を通して提出する場合、必要な書類をそろえた上で専用の封筒に入れ、それを直接試験センターへ持っていくことになります。
試験センターの営業時間は土日祝日を除く平日の9:30~17:30と決まっていますから、その点も念頭に置いた上で受験申し込みを行う日時を決める必要があるのです。
8月上旬 | 受験票交付 |
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試験まで1ヶ月をきっている8月上旬に受験票が交付されます。
試験センターから直接郵送の形で届きます。
受験票が届くことでいよいよ試験が近づいていることを実感できますし、緊張感が出てきます。
その一方でラストスパートをかけた追い込みが始まる時期でもあります。
8月末 | 社会保険労務士 本試験 |
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全国津々浦々に用意された各会場(平成29年度社会保険労務士試験では19都道府県31会場)において、8月末の同日一斉に社労士試験が行われます。
社労士試験には選択式と択一式がありますが、共に同日に行われます。
午前の80分で選択式が、午後の210分で択一式がそれぞれ行われます。
【平成30年度社労士試験最新情報にアップデート済!!】
参考:平成30年度社会保険労務士試験 日程
・本試験日 :平成30年8月26日(日)
・合格発表日:平成30年11月9日(金)
11月 | 合格発表&合格証書郵送 |
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本試験が終わってからおよそ2ヶ月強で合格発表となります。
合格した者には合格証書が郵送され、晴れて社労士試験合格者になります。
また、合否に関わらず受験者には成績が通知されます。
【平成30年度社労士試験最新情報にアップデート済!!】
参考:平成30年度社会保険労務士試験 合格発表日
平成30年11月9日(金)
11月中旬~12月上旬 | 事務指定講習申込 |
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ここからは、社労士試験合格者から実際の社労士になるまでのプロセスとなります。
社労士になるためには、社労士試験合格に加えて実務経験も必要とされます。
社会保険労務士法第3条第1項によれば、「労働社会保険諸法令事務について2年以上の実務経験」ないし「厚生労働大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めるもの」が社労士になるための要件とされています。
そして、それがない場合は、実務経験の代替として事務指定講習を受けることで社労士資格要件を満たすことができるのです。
したがって、実務経験のない者が実際に社労士として業務を遂行したり社労士と名乗ったりするためには必ず事務指定講習に申し込む必要があります。
社労士試験の合格発表から程なくして1ヶ月弱の申込期間が始まりますから合格した安堵から事務指定講習の申込期間を逃すことのないよう注意しなくてはなりません。
参考:平成29年度 労働社会保険諸法令関係事務指定講習 受付申込期間
平成29年11月17日(金)~12月7日(木)
2月~5月 | 事務指定講習 |
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事務指定講習は、①4ヶ月間の通信指導過程と②4日間の面接指導過程で構成されています。
①通信指導過程では、教材を用いて学習し研究課題を報告するという通信教育方式を用いて添削指導を行います。
決められた期間内に研究課題の提出を完了することが修了要件となります。
②面接指導過程では、講習科目について1科目あたり3時間の講義を受けます。
4日間の面接指導を全日程受講することが修了要件となります。
両過程共に修了要件を満たし、事務指定講習修了証を受け取ることで社労士登録が可能となり、社労士登録を経て晴れて社労士と名乗ることができるのです。
参考:第37回(2018年)労働社会保険諸法令関係事務指定講習 日程
・通信指導過程:平成30年2月1日(木)~5月31日(木)
・面接指導過程:平成30年7月10日(火)~7月13日(金)……東京A
平成30年7月31日(火)~8月 3日(金)……大阪
平成30年8月14日(火)~8月17日(金)……東京B
平成30年8月28日(火)~8月31日(金)……愛知
平成30年9月11日(火)~9月14日(金)……福岡
社労士(社会保険労務士)試験内容
上記の説明で、社労士(社会保険労務士)になるまでの大まかな流れについて理解していただけたと思います。
そのプロセスの中においてもとりわけ重要なのは言うまでもなく本試験そのものです。
そこで、ここでは社労士試験の内容について考えていきたいと思います。
詳細
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試験日時
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8月末
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試験会場
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全国各地
(平成30年度試験は19都道府県29会場) |
試験科目
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-労働基準法
-労働安全衛生法 -労働者災害補償保険法 -雇用保険法 -労働保険の保険料の徴収等に関する法律 -労務管理その他の労働に関する一般常識 -健康保険法 -国民年金法 -厚生年金保険法 -社会保険に関する一般常識 計10科目 |
出題形式
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選択式:空欄補充
択一式:五肢択一 |
試験時間
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選択式:80分
択一式:210分 |
問題数・配点
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選択式:8問・40点満点
択一式:70問・70点満点 |
合格基準点
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選択式:総得点28点(満点の7割)以上+各科目3点以上
択一式:総得点49点(満点の7割)以上+各科目4点以上 ※各年度毎の試験問題に難易度の差が生じることから、試験の水準を一定に保つため、各年度において、総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正が行われる |
社労士試験は大きく分けて2つの試験で構成されています。
それは、選択式と択一式です。
午前と午後に分けて、選択式と択一式の試験が同日に行われます。
すなわち、どちらかに受からないともう一方を受けることができないといったような足切り制度のようなものはなく、1日で合否が決まる一発勝負の試験となります。
選択式
社労士(社会保険労務士)試験における選択式は、空欄補充の問題です。
各問で5つの空欄(=□の部分)が含まれた長文と20程度の語群が与えられます。
空欄に当てはまる語句を語群から選び回答していく形式となります。
問題数は8問、試験時間は80分であるため、問1つにつきおよそ10分かけることができます。
また、1つの問に対して回答しなければならない空欄は5つあるため、1つの空欄を埋めるのにかけることができる時間はおよそ2分となります。
問題文を読む時間や選択肢群から正しいものを吟味する時間を考慮すると時間的に余裕がある試験ではないことが分かります。
ただ、時間的に常に逼迫しているというわけではなく、正解の選択肢が選択肢群の中に必ず存在するため、落ち着いて対処できれば十分合格点に到達できるものとなっています。
選択肢群の中には、類似の語句や混同しやすい語句も混ざっていますので、条文の内容や重要な論点を正確に理解し、ミスを減らし確実なところで点を重ねていくことが必要です。
例)第48回(平成28年)社会保険労務士試験 選択式 問3(雇用保険法)
次の文中の〔 〕の部分を選択肢の中の最も適切な語句で埋め、完全な文章とせよ。
1 雇用保険法第1条は、「雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する職業訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の〔 A 〕を図るとともに、〔 B 〕を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の〔 C 〕を図ることを目的とする。」と規定している。
2 雇用保険法第58条第2項は、「移転費の額は、〔 D 〕の移転に通常要する費用を考慮して、厚生労働省令で定める。」と規定している。
3 雇用保険法第67条は、「第25条第1項の措置が決定された場合には、前条第1項第1号の規定にかかわらず、国庫は、〔 E 〕を受ける者に係る求職者給付に要する費用の3分の1を負担する。」と規定する。
択一式
※1「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」の科目の中で出題されます。それぞれの科目の10問の内、問8~10で「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」が問われます。
社労士(社会保険労務士)試験における択一式は、五肢択一の問題です。
各問で問題文と5つの選択肢が与えられます。
問題文に沿う最も正しい選択肢を選び回答していく形式となります。
問題文の中には、
「~~~に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。」というような正しい選択肢を選ばせる問題もあれば、
「~~~に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。」というような誤った選択肢を選ばせる問題や
「~~~に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。」というような正しい選択肢の数を選ばせる問題、
「~~~に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。」というような正しい選択肢の組み合わせを選ばせる問題もあります。
ですから、“問題文で何が問われているか”のか意識して問題をつく必要があります。
問題数は70問、試験時間は210分であるため、問1つにつきおよそ3分かけることができます。
1つの問題に対して2~7行(70~250字)の長文選択肢があり、すべての選択肢を吟味しなければ正解に辿り着けない問題もあるため1つの問題に対して3分という時間はかなり大変であると言えます。
時間的に逼迫している状況下にあること、選択肢が長文であり正確な知識が必要であること、210分という長期戦であること、配点が選択式より高いこと、を考えると、社労士試験のヤマ場は択一式にあると言ってもよいかもしれません。
例)第48回(平成28年)社会保険労務士試験 択一式 健康保険法 問2
健康保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 養子縁組をして養父母を被扶養者としている被保険者が、生家において実父が死亡したため実母を扶養することとなった。この場合、実母について被扶養者認定の申請があっても、養父母とあわせての被扶養者認定はされない。
B 合併により設立された健康保険組合又は合併後存続する健康保険組合のうち一定の要件に該当する合併に係るものは、当該合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5か年度に限り、1,000分の30から1,000分の130までの範囲内において、不均一の一般保険料率を決定することができる。
C 毎年3月31日における標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の被保険者総数に占める割合が100分の1.5を超える場合において、その状態が継続すると認められるときは、その年の9月1日から、政令で、当該最高等級の上に更に等級を加える標準報酬月額の等級区分の改定を行うことができるが、その年の3月31日において、改定後の標準報酬月額等級の最高等級に該当する被保険者数の同日における被保険者総数に占める割合が100分の1を下回ってはならない。
D 高齢受給者証を交付された特例退職被保険者は、高齢受給者証に記載されている一部負担金の割合が変更されるとき、当該被保険者は5日以内に高齢受給者証を返納しなければならないが、そのときは事業主を通じて保険者に返納しなければならない。
E 一般の被保険者は、その住所を変更したときは、速やかに、変更後の住所を事業主に申し出るとともに、被保険者証を事業主に提出しなければならない。事業主は、その申出を受けたときは、遅滞なく、変更後の住所を被保険者証を添えて厚生労働大臣又は健康保険組合に届け出なければならない。
過去の社労士(社会保険労務士)試験データ
社労士(社会保険労務士)試験は紛れもなく難関資格の1つで、試験に合格して実際に社労士になるにはかなりの労力と時間が要されます。
社労士合格までの戦略には実際にどれくらいの難易度なのかという情報も重要であるかと思います。
そこで、過去の社労士試験データを参考にしながら、社労士試験の実際の難易度について考えていきたいと思います。
受験者数
社労士(社会保険労務士)試験受験者数は近年減少傾向
上記のグラフは、社労士試験の受験者数の推移を表しています。
グラフからわかるように、社労士試験の受験者数は平成22年度をピークに減少傾向にあります。
近年においては特に減少傾向が顕著で、ここ20年で最も多かった平成22年度の受験者数から平成29年度までの7年間でおよそ30%も減少しています。
年あたり5%の受験者数減少であり、これは日本の総人口減少を上回るペースで減っていることを意味します。
合格者数
社労士(社会保険労務士)試験合格者数は年によってばらつきが大きい
ここ3年で合格者数が一気に減少
上記のグラフは、社労士試験の合格者数の推移を表しています。
グラフからわかるように、年度によって合格者数がかなり異なっています。
ばらつきの大きさを比較する変動係数(=標準偏差÷平均値)を計算してみると、社労士試験受験者数の変動係数は0.161であるのに対して、社労士試験合格者数は0.304でありばらつきが大きいことが分かります。
また、ここ3年においては社労士試験合格者に急激な減少が見られます。
これは、社労士試験が相対評価試験であることによります。
すなわち、「基準点に達した者全員を合格とする」絶対評価ではなく「上位〇%を合格とする」相対評価であり、その数値は状況に応じて変化させうるのです。
そう考えると、ここ数年の急激な社労士試験合格者数の減少は社労士の絶対数を減らそうとする動きと捉えることもできるのです。
合格率
社労士(社会保険労務士)試験は合格率10%を切る難関資格
近年は年によって大きく異なる
上記のグラフは、社労士試験の合格率の推移を表しています。
グラフからもわかるように、平成19年度試験(10.6%)を除く全ての年度で合格率が10%下回っており、これは社労士資格が難関国家資格の1つであることを示す強力な証拠です。
また、ここ5年においては、年によって合格率に大きなばらつきがあることも分かります。
実際、平成9~29年の社労士試験合格率の変動係数は0.233であるのに対してここ5年の社労士試験合格率の変動係数は0.398であり、ここ5年の合格率は例年以上に大きなばらつきがあると言えます。
終わりに
今回は、社労士(社会保険労務士)試験制度そのものについて話してきました。
すでに理解していることもあれば、“初めて知った”・“頭になかった”ような注意事項・気づきもあったことと思います。
社労士になるまでのプロセスは長いですし、大変なことや犠牲もあるとは思います。
試験制度について十分理解した上で、“準備怠りない防衛力と友好関係”をもって社労士までの歩みを進めていってほしいと思います。