はじめに
いざ、社労士の資格を取得したいと思っても、どんな科目をどのように勉強したらよいのか迷いますよね。
そこで、この記事では、社労士の試験科目と試験勉強について、具体的に解説していきます。
目次
1 社労士試験の受験科目とは?
社労士試験の受験勉強をするに当たって、まず知りたいのは受験科目ですよね。
たった1日で行われる試験なのに、社労士試験が難関とされる理由の一つは、多くの科目数です。
そこで、科目数と配点を表にしてみました。
社労士試験は、選択式試験と択一式試験があります。
どちらも試験の科目数は7科目と一般常識といわれていますが、労働基準法には何問か安全衛生法も含まれています。
また、一般常識は、
- 労務管理等労働に関する一般常識
- 社会保険に関する一般常識
の2科目に分けられています。
ですから、全部で10科目という考え方もあります。
(1)選択式試験
選択式試験は、一般常識が表にあるように2問に分れていますので8問80分です。
選択式試験は、1科目1問の穴埋め式で、1問に5つの空欄があり、解答欄から選択し、空欄1つが1点です。
そして、1科目5点×8科目=40点、解答時間は80分です。
(2)択一式試験
択一式は一般常識を1科目としてカウントしていますので、1科目10問で合計70問です。
1科目10問で、1問中の正解を選択する文章は5つです。つまり、350問を○×解答するようなものです。
つまり350問を210分(2時間半)で解答しなければならないのです。
単純計算で、選択肢の1文章をMAX36秒となります。
しかし、これでは見直しの時間がありません。
210分で2回問題を解く感じで、見直し時間を十分にとるには、選択肢1文章を読むのに5秒、考えるのに12秒で、解答を書くのに1秒、1選択し18秒で解いていく必要があります。
これを実行するには、読んで即解答といった感じで、考える暇も無く、どんどん解いていかないといけません。
1問のMAXの解答時間は、先にも述べたように36秒ですから、解答に長めに迷う時間はプラス20秒切っているのです。
つまり、迷わないくらい、知識を完璧にしていなければなりません。
人の脳の集中力は、2時間が限度だといわれていますが、択一式試験は、2時間半あるのです。
しかも、大学の大講義室の固い椅子に固い机ですから、快適な自室のデスクとは全く環境が異なります。
試験会場で周囲の人の解答する筆記用具の音が焦りに拍車をかけてしまうこともあります。
そんな環境の中で、集中力を維持して、一気に解いていかなければならないのです。
(3)苦手科目があってはダメ
社労士試験の受験対策には、基準点の足切り対策も重要です。
選択式試験も択一式試験も、以下の表のように各科目に基準点が設けられています。
【参考】第50回(平成30年)社会保険労務士試験についての情報|社会保険労務士試験オフィシャルサイト
基準点は、解答表の1行につき、選択式も択一式も基準点が決まっています。
選択式は、5問中3点以上、択一式は10問中4問以上です。
択一式の方が基準点が随分低いように思われるかもしれませんが、一般常識は5問ずつなので、1問以上間違ったらアウトです。
ですから、択一の一般常識対策は非常に難しくなります。
また、平成30年は救済処置が施されて、選択式の社会保険に関する一般常識と国民年金法が各2点以上とされました。
昨年の試験に比べて平均点があまりにも低すぎた場合に、このような救済処置が設けられますが、救済処置は無い事も多いので、救済処置は無いものと考えて、苦手科目が無いように勉強しましょう。
2 社労士試験の科目別難易度
社労士試験の試験科目について、難易度が高い順に並べてみましょう。
(1) 1位:労務管理その他労働に関する一般常識
(2) 2位:安全衛生法
(3) 3位:国民年金法
(4) 4位:厚生年金保険法
(5) 5位:健康保険法
(6) 6位:労働基準法
(7) 7位:労働者災害補償保険法
(8) 8位:雇用保険法
(9) 9位:社会保険に関する一般常識
(10)10位:労働保険の保険料の徴収等に関する法律
では、どうしてこのような順位となるのか、理由と対策について解説します。
(1)1位:労務管理その他労働に関する一般常識
「『労務管理その他労働法』に関する一般常識、って何?」と思う人も多いでしょう。
そもそも、『労務管理その他労働法』とは非常にたくさんの法律があります。
育児介護休業に関する法律、男女雇用均等法、労働者派遣法、他労働に関する法律や通達は山のようです。
そして、それに関する時事問題が出題されます。
ひとつの法律について、それに絞って出題される問題は、過去問等で対策が可能ですが、時代に即した『労務管理その他労働法』に関する内容、というと、毎年何が出題されるか予想がつきません。
一般的に、厚生労働省が毎年発表している白書や統計資料、その他厚生労働省公報が報道向けに発表している内容等から出題されます。
したがって、それらを読破し、予備校や塾や通信講座が予想する『労務管理その他労働法』の一般常識問題を一通り解いて、それらを制覇して試験に臨めば何とかなります。
また、厚生労働省の白書や統計やその他広報が報道向けに発表する情報は、毎年10月末に発表されるので、一般常識の勉強は、試験のある年の3月以降でも十分間に合います。
それに、『労務管理その他労働法』について、科目問題として、試験対策が進んでいないと、白書や統計等厚生労働省広報が発表する内容を理解できませんので、試験勉強の集大成といった感じで、最後に行いましょう。
試験範囲が広く何が出題されるかわからないといっても、受験生が勉強する手段としては、先に紹介した厚生労働省の資料と塾や予備校・通信講座の予想問題や問題集の内容に頼るしかありません。
ですから、「皆がしている勉強は自分もする」、そういう意識で、あまり深刻に考えないようにしましょう。
やるべき事をやっておけば、どんな難しい問題が出ても、そう感じるのはあなただけではないのです。
一般常識は、「皆がやるべき事(塾や予備校や通信講座が勧めること)をやっていれば問題ない」と気軽に構えましょう。
厚生労働省の広報が報道用に発表した白書・資料のトピックス的な物は、誰でも読んでいる物と出題者側は考えています。
その中でもメディアが騒いだ重要な内容が出題されるのです。
いわば、社労士となるべき人の一般常識があるかどうかです。
「社労士を志すなら興味を持つべき内容=社労士の一般常識」だともいえます。
一般常識なのですから、極端に意地悪な問題は出題されません。
(2)2位:安全衛生法
労働安全衛生法は、最も会社の業務で遠い内容かもしれません。
会社では、健康診断が労働安全衛生法で規定されている、馴染みの深い内容でしょう。
その他、防火監理者、危険物取り扱い関係、安全委員、衛生委員等々、労働者の労働中の安全を守るために定められた法律です。
職場の環境や衛生、労働者の健康状態等、そういった内容も含まれます。
試験範囲が広い上に、細かい部分が出題されますので、難解ではありますが、法改正も少なく、出題傾向も決まっていますので、過去問をしっかりと対策することで突破できます。
高得点を狙うのではなく、足切りにひっかからないよう、合格ラインに達するよう最低限の勉強をしましょう。
この分野も、受験生皆がやることを確実に制覇して、皆が正解する問題は、自分も正解できるよう、勉強すれば良いのです。
(3)3位:国民年金法
国民年金法は、消えた年金問題以降、高齢化社会突入の日本において、重要視される傾向にある法律です。
厚生年金法の基礎となるべき内容でもあるので、しっかりと勉強しましょう。
国民年金の歴史や国民保険料や国民年金1号・2号・3号、転職に伴う国民年金の加入脱退手続き、年金に支給に関わる問題、その支給資格、その他受給に関する様々な法律等々、問題が非常に多岐にわたり、細かい事例が出題されますので、過去問や問題集での対策が重要です。
過去問や問題集、模試や予想問題等、問題をたくさん解いて、繰り返して、十分な理解をする必要があります。
参考書の備考や注意書きや判例等、参考書の小さな字で書かれている内容も、漏らさず読んで理解しておきましょう。
(4)4位:厚生年金保険法
厚生年金保険法は、厚生年金と国民年金の関係と手続き、国民年金の応用にもなるので、仕組みが複雑です。
しかし、国民年金に比べると、出題傾向としては単純なので、厚生年金の仕組みについて、正しく理解し、過去問と問題集を中心に、出題内容に慣れるようにしましょう。
過去問と問題集を解くだけでなく、解答の理由や根拠をしっかりと理解できるようにする事が重要です。
(5)5位:健康保険法
仕事以外の怪我や病気の医療費の補助を目的とした法律です。
健康保険料、健康保険の仕組み、会社と労働者の支払い利率や計算方法をしっかりと理解しましょう。
健康保険法は、高額医療等、実際に計算問題が出題されることもあります。
健康保険の保険料とその仕組み、また、傷病手当の資格や手続き、手当の料金等々、さまざまな問題に対応できるよう、過去問と問題集で理解を深めましょう。
(6)6位:労働基準法
労働基準法は、労働者が人間らしい生活を送れるよう定められた、労働者の権利を明記した法律です。
労働条件や労働契約等、範囲は広いですが、難易度はそうでもありません。
ただし、2019年からは政府の働き方改革によって、大規模な法改正が行われます。
そのため、法改正の対策をしっかりと行いましょう。
だいたいの内容は、昨年辺りから政府の指導でさまざまな通達が発表されていますが、法改正の施行が実際に行われるのは、2019年4月からです。
細かい法案や通達については、4月にならないとわからないので、3月までに過去問や問題集で、今までの労働基準法をしっかりとマスターして、4月以降は、法改正によって、どこがどのように変更されたのか、そして、そのためにどのような手続きが必要か、さらには、法改正によって生じる課題においても、しっかりと理解しておきましょう。
(7)7位:労働者災害補償保険法
労働者災害保険法は、労働者が業務中の労災・通勤災害に遭ったときの病気や怪我の補償内容について多く出題されます。
また、保険料やその支払い方法について出題されます。
労災と通勤災害の事例や判例等、参考書に書いてある事は、備考覧や注意書きのような小さな字でも、しっかりと目を通しておきましょう。
労災法は、問題は複雑であるにも拘らず、事例問題が多く、過去問による対策がしっかりなされていれば、高得点を狙いやすい科目です。
(8)8位:雇用保険法
労働者が失業したときに、再就職するまでの間の生活の保障のための手当や、育児・介護保険の支給等、比較的身近な法律です。
手続き方法や手当の受給資格、手当の金額、そういった比較的基礎問題が多いので、内容も身近で難しくありません。
受験勉強開始時からじっくりと法律の仕組みを理解し、地道に過去問や問題集で、しっかりと対策すれば突破しやすい問題ばかりです。
選択問題では、手当の利率や期間、受給資格についてなど、数字が問われる問題が多いので、しっかりと過去問を制覇しておきましょう。
(9)9位:社会保険に関する一般常識
社会保険に関する一般常識は、労働法の一般常識に比べて、社会保険関係の科目の勉強をして、積み上げてきた知識が役に立つ事も多い比較的得点しやすい科目ともいえます。
過去問や問題集で対策をすることで、比較的簡単に解答できる得点しやすい問題でしょう。
(10)10位:労働保険の保険料の徴収等に関する法律
最も簡単な問題ともいえます。
労働保険料の徴収方法、労働者や事業主から徴収する割合や保険料の計算方法、端数の処理の仕方等、非常に狭い範囲の問題です。
その狭い範囲から6問の出題で、過去問と問題集で、ほぼ制覇できる問題ともいえます。
確実に獲得できるよう、しっかりと勉強しましょう。
3 試験当日は・・・?
上記表でわかるように、退出禁止時間と退出可能時間があります。試験は、上記のような時間配分で行われます。
午前中の選択試験は、80分でどうにか頑張れると思いますが、午後の択一の270分は、腰が痛くなったり、集中力が途切れがちです。
そんな時は、我慢して試験に打ち込むよりも、一旦試験官と一緒に外に出て、身体を伸ばしたり、ラジオ体操してみたりした方が、その後の集中力が維持できます。
もしも退出するなら、退出可能時間のどの辺で退出するか、そして退出時間を解答スケジュールに入れておくと良いでしょう。
また、問題は初めから順番に解いていかなければならないわけではありません。
得意な科目から片付けていって、苦手な科目を最後に取り組むのがお勧めです。
とくに苦手な科目がある場合は、そこに時間をかけないといけないので、得意科目を多少短めの時間で解いて行く必要があります。
先述した時間配分が目安ですが、得意科目は少し短めの時間配分で解いて、見直し時間も考慮に入れて、問題を解答していくようにしましょう。
4 科目別の勉強時間はどれくらいだろう?
社労士試験の勉強時間は、1000時間ほどといわれています。
社労士の受験者は、40代以上が6割を占め、社会人受験者が9割を占めていますので、仕事と勉強の両立を日常生活にしていかなければなりません。
会社に出勤する日の勉強時間は、1日3時間。
会社がお休みの日は5時間くらい勉強するとします。
週休2日制の人の場合を例に挙げると以下のようになります。
{(3×5日+5×2日)×4週}×12ヶ月=1200時間
ビデオ講義や参考書を読破するのに、300時間程度かかります。
一通り知識をインプットしたら、あとは、過去問や問題集を解きながら、解答の解説と、そこに関係する参考書を隅から隅まで読みましょう。
そうすることで、解答の根拠を頭の中に叩き込み、理解を深めるのです。
このやり方で、問題集にかける時間は、初めのうちは理解重視で時間を気にせず解いていきます。
7割以上解けるようになったら、今度は試験時間に慣れるまでに、徐々にスピードを上げる訓練に移行していきます。
3月以降は、本番のつもりで、過去問や模試を中心に問題に慣れることに専念しましょう。
各科目の勉強時間の目安を表にしてみました。
先述した科目の難易度を参考に作って見ましたが、個人差がありますので、参考にしつつ、自分の勉強スタイルを作り上げて下さい。
勉強はスポーツと同じで、1日お休みすると取り戻すのが大変です。
だから、毎日勉強するモチベーションと体力を維持するために、健康第一なのです。
そのためには、規則正しい生活と、食事、良質な睡眠が必須です。
また、記憶の定着には、良質な睡眠が必要ですので、勉強しすぎの夜更かしの毎日よりも、夜勉強して、朝の通勤時に復習をするとか、朝型生活に切り替えるのがお勧めです。
資格スクエアでは、受験勉強にかける時間や仕事と勉強の両立や、家事と勉強の両立等、さまざまな生活スタイルの人の勉強が紹介されています。
ぜひともお読みくださいね!
※合格者の6割が30〜40代!社労士試験に合格に必要な勉強時間はどのくらいか。|資格スクエア
5 社労士の試験免除対象者とその条件とは?
社会保険労務士試験には、実務経験により、試験科目の一部免除を受けることができる人もいます。
それは以下の人達です。
もしもあなたが該当していたら、社労士試験オフィシャルサイトで確認してみてくださいね。
※注:1~4の他にも試験科目ごとに免除資格があります。詳細は「試験科目の一部免除資格者一覧 (PDF)」をご覧ください。
【引用】社労士試験オフィシャルサイト
6 サマリー
いかがだったでしょうか?
社労士の試験科目や試験問題の難易度や勉強の仕方、試験問題への取り組み方等、だいたいどんな感じかは、ご理解頂けましたでしょうか。
社労士試験は、科目数が多いのと、全科目に基準点(足切り)が設けられており、さらに、試験時間が短く、追い立てられるように一気に問題を解いていかなければなりません。
その集中力の持続と体力も、社労士試験を難解にしている一つの要因です。
しかし、地道に勉強して、過去問や模試で試験環境の時間帯に身体を慣れさせていくことで、この難点は突破できます。
そもそも国家試験は、獲得試験です。
一定の解答ができるように作られている試験なのです。
だから、過去問に取り組み、仕事と同じように、受験勉強もライフスタイルの一つにして、毎日規則正しい生活を送るようにしましょう。
国家試験は、夢を持ってがんばり続けた人が合格できる試験なのです。
社労士試験もその中の一つです。
7 まとめ
- 社労士の受験科目は、7科目と一般常識である
- 社労士試験は、午前中に選択式試験80分、午後に択一式試験210分の長丁場。1日で一気に行われる試験である
- 基準点(足切り)があるので、苦手科目があっては命取り
- 社労士試験の科目別難易度は、何といっても労働管理その他労働に関する一般常識である
→対策としては、厚生労働省が毎年発表する白書や統計資料等、また厚生労働省公報の報道用資料としての、白書や統計資料のトピックスを読破して、過去問や予想問題等を制覇するくらいしか、勉強方法がないので、皆がやるようなことをぬかりなくこなし、後は天に任せよう - 一般常識以外の科目は、過去問と問題集の繰り返しで、インプットとアウトプットの両方からアプローチし、自分の理解を深めるよう努力しよう
- 試験本番は、得意な科目から解いていき、見直しを含めた時間配分を決めて、解答スピードを身につけよう
- 社労士試験には、経験職務によって、試験科目一部免除される職種もある。あなたの職種がそれらに該当しないかを確認してみよう。一部試験科目免除のメリットは、自己申告しなければ獲得できない
- 社労士試験を突破し合格を勝ち取る人は、受験勉強をライフスタイルの一つに組み込めた、健康的でバランスの良い食生活と短時間でも良質な睡眠を確保できている人である