2019年社会保険労務士(社労士)試験に影響はあった? 2019年の法改正を重点的にチェック!

2019年社会保険労務士(社労士)試験に影響はあった? 2019年の法改正を重点的にチェック!

2019年(令和元年)8月25日におこなわれた、第51回の社会保険労務士試験。今回受験者の誰もが力を入れたのは「法改正」の確認だったのではないでしょうか。

今年の焦点は何と言っても、ついに政府主導で施行された「働き方改革」による法改正でしょう。この記事では、働き方改革によっておこなわれた改正点をチェックしていきます。

1. 社会保険労務士(社労士)試験における法改正の確認

働き方改革関連法は、それぞれ施行時期が異なります。理由は、体制の整備に時間がかかる業界や中小企業に対して、猶予があたえられているからです。

(1)働き方改革関連法施行までの流れ

2019年の社労士試験の目玉「働き方改革」では、労働基準法をはじめ、労働安全衛生法、労働時間等設定改善法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等々多岐に渡って法改正がおこなわれました。しかし、施行日は平成31年4月1日と翌年平成32年4月1日に分かれるため、2019年度の社労士試験・法改正の対策としては「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働時間等設定改善法」を中心におこなった方が多いでしょう。

「働き方改革」のベースとなっている基本方針は、2016年(平成28年)8月3日に閣議決定されました。働き方改革を「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」と位置付け、労働制度の大胆な改革を押し進めて日本の労働の質を向上させることを目標としています。そのためには「多様な働き方実現」「長時間労働の是正」「同一労働同一賃金の実現」などを果たさなければなりません。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)はこの3つの目的の実現を目指しています。

図1:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の概要と施行日

働き方改革の総合的

かつ継続的な推進

公布日

(平成30年7月6日)

長時間労働の是正、

多様で柔軟な働き方の実現等

平成31年4月1日

中小企業における時間外労働の上限規制に係る改正規定の適用は平成32年4月1日、

中小企業における割増賃金率の見直しは

平成35年4月1日

雇用形態にかかわらない

公正な待遇の確保

平成32年4月1日

中小企業におけるパートタイム労働法・労働契約法の改正規定の適用は平成33年4月1日

出典:厚生労働省

平成31年に既に施行されている法律に関しては、社労士試験において法改正関連問題として出題される可能性があります。

 (2)まずは既に改正が施行された法律をおさえる

働き方改革で法改正がおこなわれるのは、「労働基準法」をはじめとして、「労働安全衛生法」「労働時間等設定改善法」「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」など、実に多岐にわたります。しかし、これらは一遍に施行されるわけではなく、施行日は企業規模や業界の状況に鑑みて、平成31年4月1日と翌年令和2年4月1日の2段階に分かれることになっています。令和2年以降施行分の法改正ももちろん大事ですが、まずは既に施行された法改正をしっかりとおさえましょう。

2. 労働基準法の改正点

時間外労働の上限規制をはじめとする、大幅な法改正があった労働基準法。年5日以上の年次有給休暇の確実な取得、高度プロフェッショナル制度の適用などは、人事・労務に携わるものに取っては避けては通れない改正となっています。

(1)労働条件の明示の方法

会社は労働者を雇うときには、事前に労働条件を明示しなければならないことが定められています。平成30年6月29日に可決された働き方改革関連法では、この労働条件の明示が、時代の流れを受けてメール・FAXなど電子的な手法によることが許されるようになりました(SNSも利用可)。

新たな明示方法は、平成31年(2019年)4月1日から利用できるようになっています。

(2)過半数代表者の要件の見直し

時間外・休日労働協定の締結等に際して、労働基準法の規定に基づき労働者の過半数を代表する者を選出するに当たっては、使用者側が指名するなど不適切な取り扱いが見られているのが現状でした。このため、過半数代表者の要件として「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」が、新労基則において明記されました。

施行時期は企業規模に関わらず、平成31年4月1日です。

(3)フレックスタイム制の見直し(清算期間上限を3か月に延長)

フレックスタイム制の清算期間の上限が、1か月から3か月に延長されました。
施行時期は企業規模に関わらず、平成31年4月1日です。

(4)時間外労働の上限規制が導入(限度時間や特別条項が法律に格上げ)

時間外労働の上限は月45時間、年360時間を原則とし、今回の法改正で、臨時的な特別な事情がある場合においても上限が設定されました。この規制は罰則付き法律に「格上げ」されました。

平成31年4月1日に大企業においては施行済ですが、中小企業においては翌年令和2年4月1日から施行されます。

(5)高度プロフェッショナル制度の創設

職務の範囲が明確で、一定の年収を有する労働者が高度の専門知識などを必要とする等の業務に従事する場合は、健康確保措置や本人同意、労使委員会決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割り増し賃金などの規定が適用除外となる制度です。少ない労働時間でありながら高い報酬が約束される可能性がある職種には、生産性が高く自由度の高い就労ができるなどのメリットがあります。

平成31年4月1日より、企業規模に関わらず既に施行済みです。

(6)年5日以上の年次有給休暇の確実な取得

使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日について毎年時期を指定して年次有給休暇を与えなければならないこととなりました。

平成31年4月1日より、企業規模に関わらず既に施行済みです。

3. 労働安全衛生法の改正点

労働安全衛生法においても、労働者の健康確保の徹底などのために法律が強化されました。うつや過労死などの温床となっている、長時間労働など悪しき就労の在り方を是正するとともに、労働者の心身両面の健康被害を未然に防ぐための施策も設けられました。

(1)産業医・産業保健機能の強化

長時間労働やメンタルヘルスの不調などのせいで健康リスクが高い状態にある労働者を見逃さないために法改正がおこなわれました。産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるように産業保健機能を強化するとともに、産業医の在り方の見直しもはかられました。今回の改正は産業医の独立性や中立性を高め、産業医が専門的立場から労働者一人一人の健康確保のために活動しやすい環境を提供しています。
平成31年4月1日より、企業規模に関わらず既に施行済みです。

(2)面接指導(時間外労働月80時間で義務化)

長時間労働やメンタルヘルス不調などで健康リスクが高い状況の労働者を見逃さないためには、医師による面接が確実に実施されなければなりません。そのため、長時間労働の基準を設け、それを上回った場合は面接指導を義務化しました。

平成31年4月1日より、企業規模に関わらず既に施行済みです。

図2:面接指導

全ての労働者 研究開発業務従事者 高度プロフェッショナル制度適用者
対象労働者 時間外・休日労働が

月80時間超

時間外・休日労働が月100時間超 週40時間超えの
健康管理時間が
月100時間超
実施の要件 労働者からの申し出があった場合に実施 労働者からの申し出の有無に関わらず
実施
労働者からの申し出の有無に関わらず
実施
実施しなかった
場合
罰則無し 罰則あり 罰則あり

(3)労働者死傷病報告の様式の改正

労働者死傷病報告に、外国人労働者の国籍・地域および在留資格を記入する欄が設けられました。外国人労働者の労働災害発生状況を正確に把握することがねらいです。

施行日は平成31年1月8日です。

(4)健康管理手帳の交付対象業務へのオルトートルイジンの追加

「健康管理手帳制度」(労働安全衛生法第67条に基づく)とは、がんやその他の重度の健康障害を生ずるおそれのある業務に従事していた者のうち、一定の要件を満たすものについては、離職時または離職後に国が健康管理手帳を交付し、無償で健康診断を実施する制度のことです。今回の改正で、健康管理手帳の交付対象業務に「オルトートルイジン」の製造・取り扱い業務が追加され、交付対象要件として、オルトートルイジンの製造・取り扱い業務に5年以上従事した経験を有することと定めました。

改正の施行は、平成31年4月からです。

4. 労働時間等設定改善法の改正点

勤務間インターバルとは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息を確保することを意味します。どんなに忙しくても、労働者が十分な生活時間や睡眠時間を確保でき、ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にすることを目的とした制度です。

その普及促進のために、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」を改正し、勤務間インターバルを事業主の努力義務としました。

事業主の責務として、これまで労働者から十分な休息時間を奪ってきた原因と考えられる短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を、おこなわないよう配慮する努力義務規定を創設しました。

勤務間インターバル制度は、平成31年4月1日に企業規模を問わず施行されています。

5. 2020年施行予定の法改正について

「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働時間等設定改善法」など、既に適用されている法改正もありますが、令和2年以降施行予定の法改正にはどんなものがあるのでしょうか。表にまとめてみましょう。

図3:令和2年以降施行予定の法改正

労働時間の上限規制 これまでは、上限なく時間外労働が可能となっていた臨時的な特別な場合においても、上限を法で規定し罰則を設けた (中小企業では)

平成32年4月1日

中小企業における割増
賃金率の猶予措置廃止
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する。 (中小企業では)

令和5年4月1日

パートタイム労働法

労働契約法

不合理な待遇差を解消するための規定の整備と、短時間労働者・有期雇用労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。 (大企業では)

令和2年4月1日

(中小企業では)

令和3年4月1日

労働者派遣法 派遣労働者の

①不合理な待遇差を解消するために規定を整備②待遇差の内容・理由等に関する説明の義務化

③裁判外紛争解決手続きの整備など。

令和2年4月1日

このように、令和2年以降に施行される法律にも重要なものが多くあります。「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要」の3つ目の柱である「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」は、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正によって実現するといえます。これらの施行時期は令和2年から3年ですが、重要な改正です。

6. 社労士試験・法改正をどう対策するか

社労士試験の法改正には、困った問題があります。それは、法改正の時期によっては、勉強してきたテキストや問題集から漏れる法改正が生じてくることです。

(1)社労士試験・法改正は何月分まで対策したら良い?

例えば、平成30年8月におこなわれた社労士試験の試験範囲確定は、30年4月までに法改正されたものが含まれました。つまり、法改正対策は5月からで十分であることになります。

予備校などで社労士のコースに入学し1年間勉強する場合、社労士試験が終わった直後の9月スタートになります。9月では法改正はまだ定まっていません。そこに敏感にならず、他の重要な科目の理解に努め、法改正対策は5月からおこなっても何の問題もありません。

 (2)法改正がなされるまで

法律は国会で成立します。そして時代が変われば、現在の社会経済情勢に適合させるためにアップデート(見直し)をおこなわなくてはいけない場合があります。この場合、国会において法改正が審議され、改正法が成立した後ただちに施行されるわけではありません。周知期間を要し、その後施行されることとなります。

このことを鑑みると、社労士試験のためにこれまで勉強した内容が、法改正によって変わっている可能性はあります。思わぬ法改正による知識の漏れを防ぐためにも、社労士試験の模試を受験するまでには、法改正について一通り勉強しておきましょう。

社労士試験の不合格者の敗因には、この法改正と、難関科目である一般常識についての学習不足だったケースが多いといわれています。こう考えると、法改正項目の確認は社労士試験の合否を分ける内容だといえます。法改正の確認は、やはり重要性が高いです。

 (3)社労士試験・法改正の対策の方法とは?

まず、毎年改正される法改正について勉強をすべき時期はいつでしょうか?

既に述べたように、社労士試験で出題されるその年の法改正の試験範囲は、その年の4月までに改正された法律になります。社労士試験は毎年8月におこなわれるため、4月までの法改正の確認を5月から始めたとしても、十分勉強できるといえるでしょう。

あまり早くから法改正の勉強をしても、まだ未確定ですので時間がもったいないことになります。序盤は主要の科目の勉強に集中して、間際に勉強すべき範囲が確定する法改正は最後の方に残すくらいに考えましょう。未確定な状態でその都度勉強するより、確定してから集中して効率的に勉強しましょう。

法改正された部分は、必ず出題されます。特に今回の働き方改革関連法の施行による改正点は、法改正の目玉として必ず出題されるでしょう。今回の法改正の変更部分については必ず暗記しておくようにしましょう。

①テキストを使う

社労士試験の教材で受験勉強をしているあなた。教材には、法改正専用のテキストがついているでしょう。独学で学習している場合は、自分で最新の法改正専用テキストを購入して対策しましょう。この法改正専用のテキストや問題集ですが、12月から1月には書店で販売されます。

②全国社会保険労務士会連合会発行のリーフレットを使う

社労士試験を主催している「全国社会保険労務士会連合会」では、下記のような法改正解説リーフレットをリリースしています。

▼法改正解説リーフレット「働き方改革 法改正で何が変わったの?長時間労働是正編」

出典:全国社会保険労務士会連合会

とてもわかりやすいリーフレットです。法律の変更点が分かりやすく明記され、どのような理由で法改正があったのかとあわせて、詳しく解説しています。何といっても社労士試験の主催団体が公式にリリースしている資料ですから、ぜひ試験対策の教材として活用しましょう。

法改正対策の受験勉強では、法改正の背景までしっかりと理解しておく必要があります。単に変更部分を暗記するでは不十分なのです。「なぜ変わったのか」「何のために変わったのか」まで追求して良く理解して、試験では正確なアウトプットができるようにしましょう。

①なぜ改正されたのかをテキストを読み込むことでしっかりと理解する
②練習問題にもチャレンジする

このように対策すれば、試験本番でもしっかりとした理解に裏付けされた解答ができるはずです。

7. サマリー

社労士試験の法改正について、よくわかっていただけたでしょうか。

今年は、働き方改革という大改革が施行された年です。抑えるべき大きな法改正の多い年なので、対策しやすいと感じられる人も多いでしょう。働き方改革による法改正について、今のうちにしっかりと学んでおけば、合格した後の実務でも役立つ知識を身に着けることができます。

一生物の知識になりますので、しっかりと改正点を押さえるようにしましょう。

8. まとめ

・2019年度の社労士試験における法改正部分の対策としては「労働基準法」「労働安全衛生法」「労働時間等設定改善法」が中心だった。
・働き方改革関連法の施行時期は、平成31年4月1日と令和2年4月1日の2段階に分かれている。
・労働基準法の改正点は、時間外労働の上限規制が導入や年5日以上の年次有給休暇の確実な取得などである。
・労働安全衛生法の改正点は、産業医・産業保健機能の強化や長時間労働者への面接指導の義務化などである。
・労働時間等設定改善法の改正点は、勤務間インターバルの努力義務化などである。
・社労士試験における法改正の学習については、ふさわしい教材を選び、適切な時期に行うべきである。

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