話題のリモートワークを導入したら勤怠管理はどうする?休憩や時間外労働、休日についての疑問も解決!

話題のリモートワークを導入したら勤怠管理はどうする?休憩や時間外労働、休日についての疑問も解決!

2020年に入って世界中が新型コロナウイルス感染症対策に追われる中、通勤の必要のないリモートワークが改めて注目されています。政府もリモートワーク導入助成金に特例を設け、これを追加実施しました。

しかしリモートワークの導入にあたり、一番の懸念は勤怠管理をどのようにおこなうかということです。この記事ではまずその疑問にこたえ、リモートワークで採用できる労働時間制や勤怠管理に関する法令を紹介し、リモートワークの現在の在り方をまとめていきます。

1 リモートワークとは?

リモートワークとは「会社から離れて仕事をする」ことを意味しますが、正確な定義はありません。一方テレワークは、「ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」を意味します。こちらは厚生労働省が柔軟な働き方推進の公的資料などで、一貫して使っている言葉です。「在宅勤務」はテレワークの種類の一つです。

本記事では「リモートワーク」という言葉を、「在宅勤務」も含めた意味合いで使わせて頂きます(公的資料からの引用箇所では「テレワーク」を使用)。

(1)テレワークの分類

雇用型テレワーク

企業に雇用されている労働者による働き方

在宅勤務 自宅を就業場所とするもの
モバイルワーク 施設に依存せず、
いつでも、どこでも仕事が可能な状態なもの
サテライトオフィス勤務 サテライトオフィス、テレワークセンター、
スポットオフィス等を就業場所とするもの
自営型テレワーク個人事業主・小規模事業者等による働き方 SOHO 主に専業性が高い仕事を行い、
独立自営の度合いが高いもの
内職副業型勤務 主に他のものが代わって行うことが容易な仕事をおこない、独立自営の度合いが薄いもの

総務省資料を基に作表

テレワークには、常時テレワークと随時テレワークがあります。随時テレワークは週1~2日や月数回、または1日の午前中だけなどに限られる働き方です。実際テレワークは、様々な形態で導入されています。

(2)働き方改革とリモートワーク

働き方改革は、日本の労働環境の長年の課題であった「長時間労働の常態化」にメスを入れ、時間外労働の上限規制に法的拘束力を持たせました。この改正は、リモートワーク勤務者であってももちろん対象になります。

また、これまで厳密でなかった労働時間管理が、「適正把握の義務化」により客観的な方法で管理されなければいけなくなりました。使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録することが義務付けらました。

①改正内容

労働時間の適正把握が義務化されることで、適正把握の対象者と労働時間の把握方法、また、医師による面接指導の対象者を押さえることが重要となりました。

適正把握の対象者 管理監督者・裁量労働制が適用される者を含むすべての従業員

(高度プロフェッショナル制度適用者を除く)

労働時間の適正な把握方法 タイムカード・IC カードによる記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な方法。
医師による面接指導の対象者 労働時間が週40時間を超えた時間数が、休日労働を含む月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる従業員(面接指導を申し出た場合)。

厚生労働省資料を基に作表

②労働時間の適正把握のために必要となる実務

また働き方改革によって、「医師による面接指導」の必要が加わりました。従業員の働き方にあわせて労働時間の記録と把握をおこない、時間外労働時間が80時間を超えた従業員に対しては、面接の希望を確認する必要があります。

STEP-01 適正把握 自社の従業員の働き方に合った記録方法で、始業から終業までを1分単位で正確に記録。
STEP-02 勤務状況のリアルタイム把握 社外からでも上司が部下の勤務状況を把握できるようにし、サービス残業や虚偽報告を未然に防止できる環境を整える。
STEP-03 面接指導対象者の把握 週40時間を超えて労働した時間数が、休日労働を含めて月80時間を超過した従業員をリアルタイムに把握し、面接指導の希望を確認。

厚生労働省資料を基に作表

(3)「雇用型リモートワーク」の労務管理はどうする?

労働時間の適正把握の義務化は、オフィスなどで通常業務に従事する者だけでなく、「雇用型リモートワーク」をおこなうものも対象となります。この事態に合わせ、これまで在宅勤務に限定されていた雇用型リモートワークのガイドラインが、改正されました。

今回「労務管理に関するガイドライン」の刷新をおこない、在宅勤務だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイル勤務を追加しました。またリモートワーク勤務者が長時間労働を招かないよう、労働時間管理の仕方が整理されました。

他にも以下のような変更点が加わりました。

・育児や介護などで仕事を途中で抜ける場合の労働時間の取り扱いについて整理する
・フレックスタイム制、通常の労働時間制度における中抜け時間や移動時間の取り扱い
・事業場外みなし労働時間制度を活用できる条件などを具体的に整理する
・長時間労働の防止のため、深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制を推奨する

2 リモートワーク導入の課題は勤怠管理とコミュニケーション

雇用型リモートワークとは、働く場所が違えど会社勤務であることは変わりません。そうなると、トラブルを生み出しやすいところは自ずと決まってきます。

(1)リモートワーク導入の実態

分類 内容 企業での導入率
在宅勤務 自宅でのリモートワーク 29.9%
モバイルワーク 営業活動など、外出先で業務をおこなうリモートワーク 56.4%
サテライト
オフィス勤務
・本来の勤務先以外のオフィスでおこなうリモートワーク

・企業が整備した専用の拠点や支店を利用する「専用型」と、
共用のサテライトオフィスを利用する「共用型」の2つに細分される

12.1%

平成30年版 情報通信白書を基に作表

平成30年度の情報通信白書調べによると、在宅勤務の導入率は30%を切る程度です。モバイルワークはその必要性の高さからか、56.4%という導入率です。このようにまだまだリモートワーク導入が難しい理由には、どのような問題があるのでしょうか。

(2)リモートワーク導入が難しい理由

雇用型テレワークの現状と課題から、リモートワーク導入の問題・課題をさぐってみましょう。同調査に寄せられた企業からの回答から、多かった回答を引用してみます。

・進捗管理が難しい:36.4%
・労働時間管理が難しい:30.9%
・コミュニケーションに問題あり:27.3%

この他、情報セキュリティの問題も挙がりましたが、リモートワーク導入の課題の2本柱は勤怠管理とコミュニケーションの問題といえそうです。

(3)リモートワークの勤怠管理への対策

総務省のおこなった「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」も、リモートワーク導入の課題についての回答トップは、「会社のルールが整備されていない」(49.6%)であったと明らかにしています。

リモートワークの適正な勤怠管理をおこなうためには、まずそれについての就業規則を作成しなければならないことが分かります。

(4)リモートワークにおけるスムーズコミュニケーションのための対策

同調査によると、リモートワーク導入における課題の次点は、「リモ―トワークの環境が社会的に整備されていない」(46.1%)でした。ここには勤怠管理とともに、業務を円滑に遂行するためのコミュニケーション環境の未整備が含まれています。

3 就業規則、勤怠管理

前述の通り、リモートワークをもっと導入するためには、フレックスタイム制採用、通常の労働時間制度における中抜け時間や移動時間の取り扱いなど、労働時間制度を充実させなければいけません。また、事業場外みなし労働時間制度を活用するならば、その条件を具体的に理解する必要があります。

(1)労働時間制度と労働管理

下表は、通常勤務と違って労働時間の管理が難しい場合に導入が考えられる、労働時間制についてまとめたものです。ただし「専門業務型裁量労働制」は法定の19業務の専門業務に従事する労働者にのみ適用される上、その他にも条件があるなど、導入のためのチェック項目が多く設けられています。全てのリモートワーク勤務者に適用されるわけではないので、注意が必要です。

労働時間制 時間管理
通常の労働時間制 1日8時間、1週40時間(※)の法定労働時間以内の所定労働時間とするもの

みなし労働時間制 事業場外みなし労働制 事業場外で労働に従事し労働時間の算定が困難な場合には、

①所定労働時間を労働したものとみなす

②当該業務を遂行するために、通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、その通常必要となる時間(労使協定が締結されている場合は当該協定書で定める時間)を労働したものとみなす制度

健 深

康 夜

確 労

保 働

の ・

た 休

め 日

に 労

必 働

要 の

専門業務型裁量労働制 法定の19業務の専門業務に従事する労働者について、業務遂行手段及び時間配分の決定に関し具体的指示がおこなわれない場合は、労使協定で定めた時間を労働したものとみなす制度
企画業務型裁量労働制 企業の事業運営に関し企画、調査、分析をおこなう労働者について、業務遂行手段及び時間配分の決定等に関し具体的指示がおこなわれない場合は、労使の委員会で定めた時間を労働したものとみなす制度
変形労働時間制 1か月単位の変形労働時間制 1か月以内の期間を平均して1週当たりの労働時間が法定労働時間(※)を超えないことを条件として、特定の日や週について法定労働時間を超えて労働させることができる制度
1年単位の変形労働時間制 1か月を超え1年以内の期間を平均して1週当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、特定の日や週について法定労働時間を超えて労働させることができる制度
フレックスタイム制 1か月以内の一定期間(清算期間)を平均して1週当たりの労働時間が法定労働時間(※)を超えない範囲で総労働時間を定め、その総労働時間を超えないことを条件として、各労働日の労働時間を労働者が決定する制度
1週単位の非定型的変形労働時間制 規模30人未満の小売業、旅館、料理、飲食店の事業において、1週当たりの労働時間が40時間を超えないことを条件として、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることが出来る制度

(※)特例措置対象事業場は44時間となる

厚生労働省「テレワークモデル就業規則」から作表

(2)事業場外みなし労働時間制導入の注意点

「労働時間の適正把握の義務化」は、在宅勤務でも、日々の始業及び就業の時刻を把握した上での労働時間管理を原則としています。しかし、以下の場合に限って、事業場外みなし労働時間が適応されます。

①情報通信機器が常時通信可能な状態におかれていないこと
②業務が使用者の随時具体的な指示に基づいておこなわれていない場合

また、在宅時に事業場外みなし労働時間制が適用できる要件は、次の通りです。

Ⅰ 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅でおこなわれること。
Ⅱ 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態にしておくこととされていないこと。
Ⅲ 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいておこなわれていないこと。

※Ⅱの「使用者の指示により常時」とは、労働者が自分の意志で通信可能な状態を切断することが、使用者から認められていない状態を意味します。

※Ⅱの「通信可能な状態」とは、使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて電子メール、電子掲示板等により随時具体的支持をおこなうことが可能であり、かつ、使用者から具体的指示があった場合に、それに即応しなければならない状態(即ち、具体的な指示に備えて手待ち状態で待機しているか、又は待機しつつ実作業をおこなっている状態)の意味であり、これ以外の状態、例えば単に回線が接続されているだけで労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合は「通信可能な状態」に当たりません。

※Ⅲの「具体的指示に基づいておこなわれる」には、例えば、当該業務の目的、目標、期限等の基本的事項を支持することや、これらの基本的事項について所要の変更の指示をすることは含まれません。

(3)フレックスタイム制導入の注意点

フレックスタイム制を導入する場合、就業規則などにおいて始業及び終業の時刻をその従業員の決定に委ねる旨を定めるとともに、以下の事項を労使協定で定めなければなりません。(労働基準法第32条の3)

①対象となる従業員の範囲
②清算期間(1か月以内)
③清算期間における総労働時間(清算期間を平均し1週間当たりの労働時間が週の法定労働時間の範囲内)
④標準となる1日の労働時間
⑤コアタイムを設ける場合は、その開始及び終了の時刻
⑥フレキシブルタイムを設ける場合は、その開始及び終了の時刻

4 リモートワーク導入時のその他の勤怠管理について

リモートワークといえど、休憩や休日は認められて然るべきです。リモートワークの導入に躊躇する声の中に「リモートワークは長時間労働化しやすい」というものがありましたが、働き方改革による長時間労働化防止のための抜本的な改革は、リモートワークにも反映されて然るべきです。

(1)リモートワーク勤務時の休憩

「在宅勤務だから、仕事中に手を休めているだろう」
「ちょっとした家事や雑用をしているだろう」

このような考えから、リモートワーク勤務者には、既に休憩を与えているものとみなしてよいのではないかという考えも、これまではありました。

しかし、労働からの離脱がしやすい環境に置くことと、労働から離れることを権利として保障していること(休憩)とは、別に考えなければいけません。事実、オフィスなどで通常勤務をおこなう者にも、仕事中に喫煙したりドリンクを買いにいったりする権利は認められていますし、ある程度は雑談も許されています。労働基準法により、リモートワーク勤務者に対しても、次のような休憩を与えることが定められています。

1日の労働時間が6時間を超える場合 45分以上
1日の労働時間が8時間を超える場合 60分以上

また、休憩は一斉に与えなければならないと定められているため、リモートワーク勤務者の休憩時間帯は、通常勤務者の時間帯と合わせる必要があります。ただし商業、保健衛生業など一定の事業(運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業及び官公署)を除き、労使協定を締結すれば一斉に与えないことが可能となります(労働基準法第34条)。

労使協定を締結すれば、リモートワーク勤務者は通常勤務者と異なる時間帯に休憩時間を取ることができます。

(2)リモートワーク勤務時の所定休日

リモートワーク勤務者に対しても、労働基準法第35条に則り、原則として週1回以上の休日を与えなければなりません。

多くの企業がおこなうように、リモートワーク勤務者の所定休日を就業規則の本文通りとするのが最も一般的です。

(3)リモートワーク勤務時の時間外労働等

リモートワーク導入を検討する際に、問題とされる時間外労働です。長時間労働化を避けるためには、リモートワーク勤務者の時間外労働、休日労働及び深夜労働については、所属長の許可制とするとよいでしょう。

リモートワーク勤務者の時間外労働、休日労働及び深夜労働は原則認めないと明記しつつ、「やむを得ない事由がある場合は所定の手続きを経て所属長の許可を受けなければならない」などと記すとよいでしょう。

(4)リモートワーク勤務時の出退勤管理

リモートワーク勤務は、従業員が通常の勤務と異なる環境で就業することになるため、労働時間の管理方法や業務管理方法についてルールを決めておくことが必要です。リモートワーク勤務時の労務管理には、始業及び就業の時刻の記録・報告をおこなう勤怠管理、労働時間中のプレゼンス管理(在籍管理)、業務遂行状況を把握するといった業務管理の観点があります。

【勤怠管理の方法の詳細】

リモートワークをおこなう従業員の勤怠状況を管理するため、どの方法を採用して、始業及び就業の時刻の報告・記録をおこなうかを事前に決めておきましょう。

Ⅰ 電子メール

リモートワーク実施企業で最も多く利用されています。電子メールなら誰でも使い慣れており、報告を業務と同時におこないやすい、担当部署も一括で記録を共有できるなどの利点があります。

Ⅱ 電話

電話での報告は、リモートワーク実施企業で電子メールに次いで利用されています。電話こそ最も使い慣れているツールであり、時間がかからない、報告業務のついでにコミュニケーションの時間が取れるなどのメリットがあります。

Ⅲ 勤怠管理ツール(始業及び就業の時刻などを管理することが出来るシステム)

勤怠管理ツールは、新規導入することになるツールですが、使用する利点は多くあります。

・電子メール、電話で通知しなくてもよい
・管理者が大人数を一括管理しやすい
・人事労務担当部署も、勤怠記録を共有できる

その他にも以下のような特徴から、業務のペースを落とさずに済むのでおすすめのツールです。

・業務中に常時通信可能な状態にできる
・上司、同僚などに個別に報告する手間がかからない

5 サマリー

いかがだったでしょうか?リモートワークには多くの利点があり、通勤などの疲弊を軽減し、育児や介護への従事が必要なものにも働く機会を広げてくれます。しかし導入に当たっては、勤怠管理方法の決定や、就業規則を作成・変更するなどの手間が生じるのも事実です。リモートワーク導入にあたっては、部署間が横断的に連携して状況を把握し、組織的におこなうことが重要です。

6 まとめ

・リモートワークとは「会社から離れて仕事をする」こと。一方テレワークは「ICTを利用し時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」で政府はこちらを使用する

・働き方改革は時間外労働の上限規制を法的格上げしたが、この改正は、リモートワーク勤務者、もちろん対象になる

・労働時間の適正把握の義務化され、リモートワーク勤務者も対象と労働時間の把握方法、医師による面接指導の対象か押さえるなどの対象になった

・今回「労務管理に関するガイドライン」の刷新でリモートワーク勤務者が長時間労働を招かないよう、労働時間管理の仕方を整理した

・リモートワーク導入の課題の2本柱は勤怠管理とコミュニケーションの問題といえる

・リモートワーク勤務者に事業場外みなし労働時間制が適用するには、寝食をおこなう自宅で勤務するなど条件がある

・フレックスタイム制導入には、就業規則などにおいて始業及び終業の時刻をその従業員の決定に委ねる旨を定めるとともに、労使協定締結が必要である

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