最近よく聞く企業におけるフレックスタイムについて徹底解説!

最近よく聞く企業におけるフレックスタイムについて徹底解説!

働き方改革として注目されているフレックスタイム。

このフレックスタイムを導入している欧州やアメリカでは、これまでの定時出社・定時退勤という勤務形態を変えたことによって、働き方の幅が広がり、作業効率が上がった企業も少なからず存在しているようです。

日本の企業でも、この制度を採用するところが増えてきていますが、ただ制度を導入すれば、よい成果が得られるワケではありません。

政府による法改正で、これまで1ヵ月だったフレックスタイム制が3ヵ月に変更されたため、制度を導入する際はより慎重に行わなければなりません。そこで知ってるようで、意外と知らないフレックスタイムという制度について徹底解説したいと思います。

1、フレックスタイムとは?

(1)そもそもフレックスタイム制ってなに?

フレックスタイム制とは、労使協定によって労働者に始業時間と終業時間を委ねることとで、清算期間を通じて週平均40時間まで勤務させることができる制度です。

通常、1日8時間以上の労働や、週40時間を超えた場合には時間外労働(残業)となってしまいます。しかし、このフレックスタイム制を導入することによって、1日や週の労働時間が1日8時間以上・週40時間以上であっても、清算期間を通じての週平均労働時間が40時間を超えなければ、時間外労働とは認められません。

(2)それって労働者には不利益な制度では?

フレックスタイムの導入によって時間外労働が減れば、当然、残業代も減ります。

それだけ見ればフレックスタイムという制度は労働者に不利益な制度に見えます。しかし、労働者の方は、このフレックスタイム導入によって、自分の都合や業務の繁閑にあわせて効率的に時間配分を行なうことができるようになります。

つまり、都合の悪い時の残業がなくなったり、働きやすさが向上したりしてワークライフバランスの改善が期待できるということです。

(3)ある意味変形労働時間制の1つ

フレックスタイムという制度のことがいまいちわからないという方は、フレックスタイム制は変形労働時間制の1つだと考えればわかりやすいでしょう。

労働時間の管理方法が異なるので、実際には フレックスタイム制と変形労働時間制はまったく別の制度ではありますが、労働と労働時間に関する考え方は酷似しています。

変則労働時間制とは、 繁忙期と閑散期がはっきりしている業種や職種などで導入されている制度で、あらかじめ定められた一定期間の週の平均労働時間が40時間(10人未満の事業場では44時間)以内 になっていれば、特定の日や週に法定労働時間を超えての労働が認められるという制度です。

(4)法改正によって何がかわった?

フレックスタイムは政府の法改正によって清算期間に関するルールが大きく変わりました。

これまで最大1ヵ月だった清算期間が最大3ヵ月まで認められるようになったのです。つまり、法改正でフレックスタイムの清算期間が最大3ヵ月となったことで、従来はできなかった月をまたいだ繁閑への効率的な業務配分ができるようになりました。

それにより、制度をうまく活用することで、繁忙月の労働時間を多くして、子供が長期休みとなる月の労働時間を少なくするなどの、より柔軟な働き方が実現できるようになりました。

①3ヶ月のフレックスタイム制の配分例

例えば6月1日から8月31日までを期間とした場合、3ヶ月の日数は92日です。月々の週平均40時間を当該清算期間における総労働時間に換算すると40時間×92日÷7日という計算で約525時間という計算になります。

3ヶ月フレックスタイム制となったことで、労働者は3ヵ月の期間で約525時間という労働時間を、フレキシブルタイムやコアタイムというのを守った範囲で自由に配分することができます。

②ただし時間外労働の計算は各月で注意が必要

最大1ヵ月から最大3ヵ月となったフレックスタイムの清算期間ですが、清算期間を通じて週平均40時間を超えた時間が時間外労働となることについては、法改正前と変わっていません。

また、清算期間を1ヶ月ごとに区分した各月において、週平均50時間を超えた労働時間は、その月の時間外労働として取り扱われます。 つまり、清算期間の終了時に、労働時間が週平均40時間を越えたり、各月の終了時に週平均50時間を越えてたりした場合は、企業側が労働者に残業代を支払わなければならないということです。

2、コアタイム、フレキシブルタイムとは?

(1)コアタイム・フレキシブルタイムってなに?

フレックスタイムによって、労働者は労働時間を自由に配分することができるようになりましたが、それは、フレキシブルタイムやコアタイムを遵守した範囲です。

フレックスタイムについてよく知るには、フレキシブルタイムやコアタイムのことも知っておかなければなりません。

①コアタイムとは?

コアタイムとは、フレックスタイムを導入している企業において、労働者全員に出勤義務が生じる時間帯のことです。つまり、労働者全員が必ず働かなければいけない時間帯といえます。

②フレキシブルタイムとは?

一方、フレキシブルタイムというのは、労働者が自ら働く時刻を自由に選択できる時間帯のことです。つまりフレキシブルタイム内であれば、労働者はいつ出勤してもよいですし、いつ退勤してもよいということです。

③コアタイムは必須ではない

コアタイムは、労働者全員に出勤義務が生じ、その時間帯は必ず働かなければなりません。しかし、フレックスタイムという制度を採用する場合に設定するのは企業側ですが、制度においてコアタイムの設定は必須にはなっていません。そのため、すべての時間をフレキシブルタイムにすることも可能です。

(2)コアタイムはどうして必要?

フレックスタイムを導入すれば、労働者は働く時間を自由に配分することができるようになりますが、すべての労働時間を自由にしてしまうと、業務に支障が出てしまうことがあります。

例えば、会議がある時間に出社していなかったことで、一緒に業務するのに意思疎通が図ることができなくなってしまう可能性があります。

そのため企業側としては、ある程度は、管理できる労働者の働く時間を設けておかなければなりません。そうしたことから、フレックスタイムを取り入れる際には、労働者が必ず就業していなければならない時間帯であるコアタイムを設定しておくことが重要です。

(3)コアタイムとフレキシブルタイムのバランスが大事

コアタイムは必ず設けなければならないというわけではありませんが、コアタイムを設定せずにいたり、わずかな時間で設定していると業務に大きな支障が出てしまう可能性があります。

逆にフレキシブルタイムを極端に短くしてしまうと、労働者側が自由に労働時間を配分できなくなってしまうので制度を取り入れた意味がなくなってしまいます。

そのため企業がフレックスタイムの制度を採用する際は、コアタイムとフレキシブルタイムをバランスよく設定する必要があります。

(4)どれぐらいのバランスが理想的か

フレックスタイムを導入するのであれば、コアタイムとフレキシブルタイムの両方を設けておく必要があります。

フレックスタイムの制度を取り入れた企業の多くがフレキシブルタイムよりコアタイムを長くなる設定をしているようですが、制度を採用した意味を考えた場合に、フレキシブルタイムの時間を長くとるほうがよいでしょう。

具体的な時間は、企業によって1日の労働時間が異なるため、はっきり何時間が理想的とはいえませんが、1日の労働時間が8時間程度の企業だと、休憩時間を除いて半分の4時間程度をコアタイムとし、残りをフレキシブルタイムとするのが理想的です。

また、フレックスタイム制度を採用していても、深夜帯での労働や法定休日の労働には残業代が発生してしまいます。そうした線引きを明確化するためにも、コアタイムとフレキシブルタイムの設定はきちんとしておく必要があります。

3、フレックスタイム制の清算期間が3か月に延長された趣旨・目的

これまでフレックスタイム制の清算期間は最大1ヵ月だったのが、法改正に最大3ヵ月となったことはすでに前述していますが、ここではさらに詳しく解説していきます。

(1)清算期間が最大3ヵ月となったらどう変わる?

これまでのフレックスタイムでは、必ず1ヵ月以内の総労働時間が週40時間×30~31日÷7を超えていれば、割増賃金の対象となります。逆に、総労働時間が満たしていなければ欠勤として扱われていました。

それが、今回の改正により、清算期間を3ヶ月まで延長することができるようになりましたので、40時間×91~92日÷7を超えていれば割増賃金の対象となり、満たしていなければ欠勤として扱われます。

(2)具体的にはどう変わった?

清算期間が最大3ヵ月に延びたことで、労働者は最大1ヵ月だったときより、労働時間を自由に配分できるようになりました。

これまでは1ヵ月以内で清算しなくてはいけなかったため、3週目に労働時間を少なくしたいのなら、1週目や2週目の労働時間を多くするといった労働時間配分しかできませんでした。

しかし、法改正後は3ヵ月以内で清算すればよくなりましたので、例えば、子供の夏休期間中にどこか旅行に連れて行いきたいと思った場合に、6月と7月の労働時間を多く設定して、8月の労働時間を少なくすることもできるようになりました。つまり、フレックスタイムを導入している企業で働く多くの労働者が、レジャーなどの余暇時間を確保するため多く働く時期と少ない時間で働く時期を考慮しながら、月をまたいでの労働時間の配分ができるようになったのです。

(3)3ヵ月に延長された趣旨・目的は

月をまたいで働く時間の配分ができるため、2ヵ月多めに働いておけば1ヵ月短時間勤務にしても欠勤扱いにはなりません。

こうした柔軟な働き方ができるようになることで、子育てや介護といった生活上のニーズに合わせた働き方ができるようにすることが、フレックスタイムの清算期間を最大3ヵ月に延長した趣旨・目的です。

また、企業側にも清算期間の最大3ヵ月への変更はメリットがあります。それは、3ヵ月間の平均が法定労働時間以内に納まっていれば、労働者が多めに働いた月があっても割増賃金の支払いの対象にならないため、余計な残業代を支払わずに済みます。

(4)3ヵ月となったことで各月の時間外労働の計算に注意が必要

労働者側にも企業側にも3ヵ月のフレックスタイム制への変更は大きなメリットがありますが、一方で、清算期間が3ヵ月となったことで気を付けなければならないこともあります。

それは、もともと複雑だった時間外労働の計算か、さらに複雑になってしまったということです。

清算期間が1ヵ月だったときは、月の週平均労働時間だけ考えれば時間外労働の計算ができましたが、清算期間が3ヵ月となったことで、今月多く働いたので、翌月と翌々月はどれぐらい働けるのか・働いたらいけないなど、計画的に計算しなければならなくなりました。

4、フレックスタイムの注意点

(1)かえって「業務効率が低下」してしまうケースがある

フレックスタイムでは、労働者側が始業時刻や終業時刻を選択できますが、そうすることによって、社員同士のコミュニケーション不足に陥り業務効率が低下してしまう可能性があります。

それどころか、労働者が出社してくる時間が一定になっていないと、取引先から連絡があっても担当者が不在で対応がおろそかになってしまい、取引先からの信用を失ってしまうことも考えられます。

さらに、企業としては労働者が必ず出社するコアタイムに、打ち合わせや会議を集中させやすくなってしまうので、自身の担当業務に集中できないといった事態に陥ってしまう可能性もあります。

特に、自己管理ができない労働者だと制度を取り入れたことで、労働意欲が低下してしまう恐れがありますので、そうした労働者がいる企業は、フレックスタイムの導入には注意が必要です。

(2)3ヵ月とはいえ「時間外労働の計算」は各月でも注意すべき

法改正によって3ヵ月制となったフレックスタイムですが、3ヵ月制となったことで時間外労働の計算を、今まで以上に注意しなければなりません。

フレックスタイム制における時間外労働とは,清算期間の実労働時間のうちの法定労働時間の総枠を越えた部分です。

清算期間が1ヵ月以内であれば現行通りのため、あまり気を付ける必要はありませんが、清算期間が1ヵ月を越えてしまう場合は、清算期間全体の労働時間とは別に、1ヵ月ごとの労働時間が平均週50時間を越えないようにしないと、越えた部分が時間外労働となり、割増賃金等の義務が発生してしまいます。

これは、3ヵ月中に労働者が一部の期間に労働時間が集中させることを防ぐための措置です。

企業側がフレックスタイムという制度を利用するのは残業代を減らしたいという目的もあります。しかし、労働者が特定の期間に業務を極端に増大させてしまうと、企業が支払う残業代を増やしてしまうことになってしまいます。

つまり、労働者が労働時間をある程度自由に決めることができるフレックスタイムだからこそ、企業側の意図を考慮する必要があるということです。

(3)「時間外労働の上限規制」への注意

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」によってフレックスタイムが3ヵ月制に変更されましたが、この法改正によって「時間外労働の上限規制」も変更されました。

これまでは36協定の特別条項を締結することで、時間外労働の上限規制を超えて労働させることができました。さらに、この特別条項には時間外労働の上限について、明確な法律の定めがなかったため、長時間労働を指摘されても行政指導を受ける程度でした。

しかし時間外労働の上限規制が変更されたことで、基本的には月45時間・年360時間に収める、特別条項を締結しての時間外労働は年間720時間以内・月100時間未満・複数月平均80時間以内(休日労働も含む)・時間外労働45時間超えは年6カ月以内という条件をすべて満たさなかった場合は、罰則が科せられることになったのです。

違反した場合の罰則は、30万円の罰金か6ヵ月以下の懲役。これはフレックスタイムで労働時間を月をまたいで分配していても、一部の期間に極端に労働時間が集中させてしまい、時間外労働に違反していた場合にも罰則が科されてしまうので注意が必要です。

5、フレックスタイム制導入にあたり必要となる手続きとは?

フレックスタイム制を導入するためには手続きが必要です。ここでは、その手続きについて解説していきます。

(1)これまでの1ヵ月制で必要だったこと

法改正前のフレックスタイムでは、制度を導入するために2つの手続きをする必要がありました。

その手続きとは、「就業規則その他これに準ずるものにおいて始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を定めること」と「必ず記載が必要なことを定めて労使協定を結ぶこと」です。

①始業及び終業時刻の両方を労働者の決定に委ねることが必要について

例えば、終業時刻のみ労働者の決定に委ねていても、企業側が始業時刻を決めていればフレックスタイムにはあたりません。

そのため、制度を導入するためには、両方の決定を労働者に委ねる必要があります。また、労使協定を締結するために定めておかなければならないことのなかに、労働者の始業・終業時刻に関する項目もあるため、就業規則でも規定しておく必要があります。

②必ず記載が必要なことを定めて労使協定を結ぶことについて

結んだ労使協定は労働基準監督署への提出は基本不要ですが、必ず記載しなければならない項目が複数あります。その必ず記載しなければいけないことは
Ⅰ、対象となる労働者の範囲
Ⅱ、清算期間
Ⅲ、清算期間における起算日
Ⅳ、清算期間における総労働時間
Ⅴ、標準となる1日の労働時間
Ⅵ、コアタイムとフレキシブルタイム
の6つです。

Ⅰ、対象となる労働者の範囲とは?

対象となる労働者の範囲とは、要するに、誰にフレックスタイムを適用するかという範囲のことです。

フレックスタイムを導入しても、全て労働者に適用する必要はないので、制度の対象となる労働者を個人ごと、課ごと、グループごとなど定める必要があります。

Ⅱ、清算期間とは?

清算期間とは、フレックスタイムを適用する期間のことです。

これまでは最大1ヵ月しか定めることができませんでしたが、法改正によって清算期間が最大3ヵ月となりましたので、1ヵ月以内~3ヵ月以内で定めておく必要があります。

Ⅲ、清算期間における起算日とは?

定めた清算期間を始める日もきちんと定めておかなければなりません。

分かりやすいのは暦の1日からですが、賃金の計算のための締め日を20日にしている企業は、21日を決算日にしておいた方が様々な手間を省くことができます。

Ⅳ、清算期間における総労働時間とは?

清算期間における総労働時間とは、労働者と企業側との契約上、労働者が清算期間内で定められている労働すべき時間のことです。フレックスタイムの清算期間は、所定労働時間の上限時間が定められており、その所定労働時間は法定労働時間(法定労働時間の総枠)を越えてはいけません。

また、法定労働時間より所定労働時間を短く設定してい場合は、所定労働時間が法定労働時間が越えるまでは、企業は残業代の支払い義務は発生しません。

Ⅴ、標準となる1日の労働時間とは?

清算期間における総労働時間とは別に、フレックスタイムの対象となる労働者が年次有給休暇を取得した際の賃金を計算をするために、標準となる1日の労働時間も定めておかなければなりません。

Ⅵ、コアタイムとフレキシブルタイムとは?

コアタイムとフレキシブルタイムについては、必ず定めなければならないというルールはありませんが、仮に定める場合は記載しなければなりません。

(2)法改正で変わった必要となる手続き

これまでの1ヵ月制では、締結した労使協定の監督署への提出は基本的には不要でしたが、法改正によって清算期間が1ヵ月を越えた場合は、労働基準監督署に労使協定を必ず届け出なければならなくなりました。

これは、企業側がフレックスタイムを乱用することを防ぐためですが、法的にきちんと手続きをしていれば、フレックスタイムの導入が禁止されることはありません。

しかし、コアタイムを定めている場合に、それが適正でなかったり、労使協定が適正に締結されていなかったりすると制度の導入が無効となることもありますので注意が必要です。

今回は、フレックスタイムについて解説しましたが、いかがだったでしょうか?
働き方改革で注目されているフレックスタイムのことが少しでも分かっていただければ幸いです。法改正によって、フレックスタイムは労働者にも企業側にも多くのメリットが得られるようになりましたが、一方で法改正前と異なることもありますので、導入する際には十分注意が必要です。

6、まとめ

最後に、フレックスタイムをまとめます。
フレックスタイム制とは、

フレックスタイム制は労使協定によって労働者に始業時間と終業時間を委ねる制度

フレックスタイムの導入は労働者と企業のどちらにもメリットがある

コアタイム・フレキシブルタイムの設定は大事だが定めなくてもいい

法改正によってこれまで最大1ヵ月だった清算期間が最大3ヵ月まで認められるようになった

清算期間が最大3ヵ月となったことで月をまたいでの労働時間の配分ができるようになった

3ヵ月となったことで各月の時間外労働の計算にさらに注意が必要になった

フレックスタイム導入にはデメリットもある

時間外労働の上限規制を違反すると罰則が科せられることも

フレックスタイム制導入には手続きが必要

法改正で結んだ労使協定の監督署への提出が必要になった

という制度です。
少しでもこの解説が参考になれば幸いです。

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