社労士・税理士を徹底比較!~業務内容・試験の難易度・ダブルライセンスについて

社労士・税理士を徹底比較!~業務内容・試験の難易度・ダブルライセンスについて

社会人として仕事をしながらも、法曹の世界、特に士業に興味を持っている方は少なくないでしょう。なかでも「税理士」や「社労士」を身近に感じている方は多いと思います。どちらも会社の経営に深く関わる仕事のため、会社勤めをしている方なら間接的にお世話になったことがあるはずだからです。

この記事では、社労士と税理士の仕事内容を紹介するとともに、それぞれの資格の難易度や登録方法、両資格を取得するダブルライセンスのメリットについて解説していきます。

1. 社労士とは

全国社会保険労務士会連合会ホームページは、社労士を次のように説明しています。

社労士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者です。

企業の成長には、お金、モノ、人材が必要とされておりますが、社労士はその中でも人材に関する専門家であり、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的として、業務を行っております。

社労士は、企業における採用から退職までの「労働・社会保険に関する諸問題」や「年金の相談」に応じるなど、業務の内容は広範囲にわたります。

出典:全国社会保険労務士会連合会

社労士は「人材に関する専門家」といわれ、企業における採用から退職までの多岐にわたる業務に携わります。

(1)社労士の主な仕事

社労士の主な業務は、下記の5つです。

①労働社会保険手続業務

②労務管理の相談指導業務

③年金相談業務

④紛争解決手続代理業務

⑤補佐人の業務

④と⑤はわかりにくいので、詳しく解説します。

④紛争解決手続代理業務とは、ADR(裁判外紛争解決手続)業務のことです。

ADRとは、内容が一般公開される裁判によることなく、当事者双方の話し合いに基づき、あっせんや調停、あるいは仲裁などで紛争の解決を図る手続きです。このADR代理業務は、特定社労士※がおこなうことができる業務です。特定社労士は、労務管理の専門家である知見を活かして、労働関係紛争を「あっせん」という手続きにより解決します。

※社労士が特定社労士になるには、「厚生労働大臣が定める研修」を修了し、「紛争解決手続代理業務試験」に合格後、その旨を社会保険労務士名簿に付記する必要があります。

⑤補佐人の業務とは、依頼者が訴訟を起こす際、弁護士とともに裁判所に出頭する業務のことです。

労働保険、社会保険の制度の複雑化にともない、国民と行政のトラブルも増加しています。このようなトラブルを解決するため審査請求という手続きがありますが、その結果に不服がある場合、裁判になります。社労士は、補佐人として弁護士とともに裁判所に出頭し、陳述することができます。相談の段階から依頼者をサポートしてきた社労士が、補佐人として弁護士とともに訴訟に対応できるため、依頼者は安心して訴訟による解決を選択できるようになります。

(2)社労士試験と資格難易度

【社労士の受験申込者数・受験者数・合格者数の推移(過去10年)】

出典:厚生労働省

上図は、社労士の受験申込者数・受験者数・合格者数の推移を表したものです。それぞれの数値を表にまとめてみます。

受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
平成25年  49,292 2,666 5.4
平成26年  44,546 4,156 9.3
平成27年 40,712 1,051 2.6
平成28年 39,972 1,770 4.4
平成29年 38,685 2,613 6.8
平成30年 38,427  2,413 6.3

データからも社労士試験の合格率の低さがわかると思います。

ちなみに、平成26年の合格率が9.3%と高いのには理由があります。前年にあたる平成25年4月は、労働基準法の改正が久し振りに行われた影響で、合格率が5.4%まで下がりました。その反動なのか、翌年の平成26年は問題が少し易しくなり、合格率は一気に上昇したのです。

すると今度は合格率が高すぎるということで、平成27年の問題が少し難しくなった結果、合格率は2.6%まで落ち込みました。社労士試験が、司法試験予備試験の合格率を下回るような超難関試験となってしまったのです。

察しの良い方はお気づきかと思いますが、平成29年、30年の合格率が6%台を維持しているのは、しばらく法改正がなかった影響と考えられます。出題者側、受験者側双方が過去の出題傾向を分析できたことから、合格率が上昇し、安定しました。

このように法改正があると、出題者側の試験センターは受験者の回答傾向がわからず、一方、受験者も過去問対策に難航して合格率が下がりやすいのです。法改正が及ぼす合格率、難易度の変動について参考にしてください。

2. 税理士とは

国税庁ホームページは、税理士と税理士制度について、次の様に説明しています。

税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。

税理士制度は、このような公共的使命を負っている税理士が納税義務者の援助をすることによって、納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に資することを目的として設けられたものです。

出典:国税庁 

税理士は税金の専門家として職務上知り得た秘密を守り(守秘義務)、相談者との信頼関係を揺るがすことなく、時代に適合した透明な税務行政がなされるよう活動しています。

(1)税理士の主な仕事

税理士の仕事も多岐にわたっています。

第一に「税務代理」があります。相談者に代わって確定申告、青色申告の承認申請、税務調査立会い、申立て、書類作成や税務相談などをおこなうものです。また、税理士業務に付随して財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行などの会計業務もおこないます。社労士と同様に、補佐人としての業務も税理士が担当します。ほかにも社会貢献として、子どもたちに対する「租税教育」や、申告支援各地で「無料税務相談」をおこなっています。

(2)税理士試験と資格難易度

 

出典:CareerGarden

国税庁ホームページによると、平成30年度の税理士試験受験者数、合格者数、合格率は下記の通りです。

受験者数:30,850人(延べ42,063人)

合格者数:4,716人(うち、一部科目合格者数:4,044人)

合格率:15.3%

社労士試験に比べて税理士試験の合格率が高い理由は、全5科目の試験を1科目ずつ受験することが可能だからです。1年に1科目ずつ受験することもできるので、非常にボリュームが多い税理士試験においては、1回で5科目すべてに合格する人はほとんどいないといわれています。

3. 社労士・税理士の比較

社労士・税理士になるには、いずれも難易度の高い試験に合格しなければならないことがわかりました。出題範囲だけを比較すると、社労士試験よりも税理士試験の方が圧倒的に広いといえます。ここではさらに、2つの資格にはほかにどのような違いがあるのか比較していきます。

(1)社労士と税理士の需要

社労士は企業におけるヒト(人的リソース)の専門家ですので、労働問題など、人を大切にするための業務を依頼されます。働き方改革の施行により、ヒトを大事にするための施策が多くの企業でおこなわれているため、社労士の需要はさらに高まりを見せると予測できます。

対して税理士は、税務という利益に直結した業務を依頼されます。そのため、企業からの需要は安定して高いと考えられます。

(2)社労士と税理士の転職

転職(就職)のケースでも、社労士・税理士の資格を比較してみましょう。

いずれも実務経験が5年以上ある場合、社労士は人事・労務部門で、税理士は経理・財務部門で優遇される可能性が高いと考えられます。税理士に限っては、合格科目を履歴書の資格欄に記入できるため、「簿記論」「財務諸表論」「法人税」の3科目に合格していれば、それだけで有利になる場合もありそうです。

4. 社労士・税理士の登録

晴れて国家試験に合格しても、それだけでは社労士、税理士にはなれません。それぞれ、然るべき組織に登録を完了しなければいけません。登録時には、実務経験が求められることや、事務指定講習を修了している必要があることにも注意が必要です。

(1)社労士の登録

社労士になるためには、社会保険労務士法第25条の29において、登録と同時に社労士会へ入会することが規定されています。社会保険労務士試験に合格した後に、「全国社会保険労務士会連合会」に備える社会保険労務士名簿に登録する必要があります。

登録のためには、2年以上の実務経験が必要です。具体的には、労働・社会保険諸法令に関する実務経験を指します。

この実務経験の内容について確認を希望する場合は、問い合わせれば連合会が対応してくれます。従事期間証明書に必要事項を記入し、連絡先を明記のうえ、連合会登録課あてに問い合わせれば、後日回答してくれます。

実務経験が2年以上ない場合は、連合会が行う労働社会保険諸法令関係事務指定講習を修了することにより、登録要件を満たすことができます。

(2)税理士の登録

まず、税理士になる資格を有するためには、下記のうちの1つに当てはまらなければなりません。

①税理士試験に合格した者であること

②税理士試験を免除された者であること

③弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む)

④公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む)

平成29年4月1日以降に公認会計士試験に合格した者について:

上記の者は、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した公認会計士が、税理士になる資格を有することとなる

出典:日本税理士連合会ホームページ

上記にあてはまった場合は、「日本税理士会連合会」に備える税理士名簿に登録しなければなりません。税理士は税理士法人を設立することができますが、税理士法人を設立した際には、日本税理士会連合会に届け出なければならないとされています。

続いて、登録調査・審査があります。登録適当と認められた場合には、税理士名簿に登録されるとともに官報に公告され、税理士会を経由して「税理士証票」が交付されます。

登録に際しては、社労士と同様、税理士にも実務経験が求められます。

①税理士試験に合格した者

②税理士試験を免除された者

については、税理士法第3条により、2年以上の実務経験が必要とされています。

この実務経験の内容は、「租税に関する事務」または「会計に関する事務で政令で定めるもの」と規定されています。実務経験に該当するか否かの判断ですが、税理士の場合は「登録申請書」及び「在職証明書」等が提出された後、税理士会による面接などの調査の段階で、個別に判断することとされています。

詳しくは、日本税理士連合会ホームページをご覧ください。

5. 社労士・税理士のダブルライセンスについて

ダブルライセンスとは、文字通りいずれの資格も取得することです。相当な努力がなければ達成できないことですが、ダブルライセンスを持った場合のメリットなどについてまとめました。

(1)ダブルライセンスの有用性

社労士と税理士のダブルライセンスの有用性は大いにあります。一例を挙げると、税理士が社労士の資格も取得した場合、社労士の独占業務1号(必要書類の手続代行)や2号業務(帳簿書類作成)も合わせて行えるようになるため、依頼をまとめて広く受けられることに繋がります。

Ⅰ 仕事の幅が広がる

先述の通り、ダブルライセンスがあれば相談者の依頼についてより広く対応できます。例えば、税理士は顧客から「労働問題」や「社会保険・労働保険」の相談を受けることも多々あります。そんな時、ダブルライセンスで社労士の資格も持っていれば、その場で対応できるだけでなく、「就業規則のチェック・改定」「助成金の申請」など、新たな業務を請け負うこともでき、業務の版図が広がります。

社労士は、税理士の紹介で顧客を得ることも多いといわれます。ダブルライセンスの税理士は、顧客が他の社労士に相談していた仕事を、今後は自分に回すことができるのです。顧客にとっても、税理士に相談した後に、改めて社労士に同じことを相談しなおすよりも、ダブルライセンスを持つ税理士/社労士に相談するだけで、まとめて問題解決できるのはメリットになります。

Ⅱ 社労士・税理士資格の親和性により知識が広がる

どんな業務をおこなう場合でも、他の分野の知識を持つことは大きなアドバンテージになるはずです。関連する他分野の知識があることでもう一歩深い判断ができるため、提供するサービスの質も上がります。実際に、社労士と税理士の資格には親和性があるため、それを知る人はダブルライセンスに挑戦することが多いようです。

ここに、両資格の親和性を証明する記事があるので、引用して紹介します。

昨日とある顧問先を訪問しましたが、その時の内容ってこんな感じなんです。

・試算表等の財務に関する話(税理士業務)

・今月分の給与明細書等を渡す。(社会保険労務士業)

・雇用保険の手続きが終わったでその書類を渡す。(社会保険労務士業)

・助成金の申請書類が完成したので押印してもらう。(社会保険労務士業)

・設備投資を考えているとのことで、それに使える助成金や減税制度、財源等(自己資金、リース、銀行借り入れなど)の話。(両方)

・雑談

(中略)、いずれの顧問先に伺っても、税理士・社会保険労務士の両方に関わる話題が出てくることがほとんどです。顧問先も一回の話し合いで両分野のことが解決できてメリットを感じていただいているようです。

引用:山本哲平税理士事務所 社会保険労務士法人TEPPEI

ダブルライセンスのメリットを、客先で実感している様子が伝わってきます。顧問先からの信頼も厚いはずです。

Ⅲ デメリットもある

そんなダブルライセンスにもデメリットはあります。

1つ目は「専門性が落ちる」ということです。社労士、税理士は、それぞれ広い範囲にわたる膨大な知識を身につけていることを要求されます。そのため、どちらにも精通するのは至難の業であるという問題が出てきます。

2つ目は「業務をこなせない可能性」です。二足の草鞋を履くことで、当然依頼は増えるでしょう。するとキャパシティーを超える依頼が舞い込む可能性が出てきます。依頼の内容によっては、仕事をこなすのに時間がかかるでしょう。ダブルライセンスを持つがゆえに、1つ1つの仕事に時間がかかるという事態を招くかもしれません。

(2)試験の相性について

社労士試験と税理士試験、いずれも受験することを考えた場合の、勉強内容についての相性は良いのでしょうか。

実は、あまり良くありません。なぜなら、試験範囲・内容にほとんど重なる部分がないからです。先ほど、社労士・税理士の資格には親和性があると申し上げましたが、資格取得のための勉強の相性はあまり良くありません。

試験の制度もかなり違います。

難易度が高いのは税理士試験です。出題範囲が広く、11科目の中から必修科目を含む5科目に合格しなければなりません。1度合格した科目は永久保証されるため、年に1回だけの試験を数年かけて5科目に合格し、税理士資格取得を目指す人がほとんどです。1回で5科目に合格する可能性は低く、少なくとも2年以上はかかるでしょう。

6. サマリー

いかがでしたでしょうか。社労士と税理士について、さまざまな角度から比較しながらお伝えしました。これから資格取得しようとしている方は、まずは情報収集した上で準備を始めることをおすすめします。

7. まとめ

・社労士も税理士も難易度の高い資格である

・働き方改革で注目される社労士、安定して需要が高い税理士

・試験の相性は良いとは言えないが、ダブルライセンスの有用性は高い

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