社労士・行政書士を徹底比較!~業務内容・試験の難易度・ダブルライセンスについて

社労士・行政書士を徹底比較!~業務内容・試験の難易度・ダブルライセンスについて

社会人として仕事をしていると、「新しい強みが欲しい」「資格が欲しい」と思うことがありますよね。数ある資格の中でも社会人に人気が高いのは、「社会保険労務士(社労士)」と「行政書士」です。この2つはどちらも国家資格で、一度合格すれば一生ものとなる資格です。

社労士も行政書士も、司法書士や弁護士と同じように法律の専門家です。
法律と聞くと、難しいのではないかと感じる方が多いでしょう。しかし実は、社労士と行政書士は、法律を勉強したことのない人でも、受験勉強を効率良く行えば、仕事をしながらでも十分に合格できる国家資格なのです。そして、今まで積み上げてきた社会人としてのキャリアを大いに活用することができます。

今回は、社労士と行政書士の仕事内容、難易度、合格後の資格の登録方法、両資格を取得できた場合(ダブルライセンス)について、比較しながら網羅的に解説します。

1. 社労士とは

社会保険労務士は略して「社労士」「労務士さん」などと呼ばれる、労務管理のスペシャリストです。2019年から多くの企業で実施されている働き方改革や、団塊の世代の退職にともなう年金に関する実務などにおいて、いま最も注目を浴びている存在といえます。社労士の資格を持っていると、独立開業ができるだけではなく、就職の際にも有利です。

(1)社労士の主な仕事

Ⅰ 労働保険や社会保険の手続き

給与明細の「社会保険」の欄にある「健康保険」や「厚生年金」の額を計算するのは、社労士の業務です。これは「独占業務」と呼ばれており、他の士業が報酬を得てこの業務を行うことはできません。社会保険の計算は必ず毎月発生する業務であるため、通常は月額顧問として企業と契約をします。

また、会社内で「ヒト」の異動があったときには、必ず社会保険事務所や年金事務所へ届出をしなければなりません。具体的には、新たに就職・転勤・退職した社員に関する各種届出などについてですが、社労士はこれをすべて業務として代行することができます。

他にも、業務上で事故やケガがあった場合の労災申請など、労働保険の手続きもすべて行うことが可能です。

Ⅱ 労働管理の相談指導

働き方改革によって、就業規則が変更になったり、残業時間の規制が厳しくなったりするなど、今までの労務管理体制を大きく見直さなければならない企業が増えています。

社労士は、こういった労務環境に関する総合的なエキスパートでもあります。労働管理について相談に応じ、会社が気づいていない部分に対して改善指導を行うなど、誤った法律の解釈をしないよう手助けをします。

Ⅲ 退職後の年金

社労士は、国民年金法、厚生年金保険法の専門的知識をもとに、年金手続きや需給予測を行うことができます。
厚生年金に加入できない個人事業主など自営業者の方には、情報提供やアドバイスを行うことで、将来設計の相談に応じることも可能です。

(2)社労士試験とその難易度

社労士試験の受験申し込みは、厚生労働大臣の官報公示(毎年4月中旬)が行われてから5月31日までの間です。受験料は9,000円と、別途振込手数料が必要です。

試験は8月下旬の日曜日に行われます。午前(10:30~11:50)に選択式として80分、午後(13:20~16:50)に択一式として210分の試験時間です。長時間にわたる印象があるかもしれませんが、問題のボリュームが多いため、あっという間に時間が過ぎてしまうようです。

合格率は3~8%前後です。年に1回しかない試験であることや合格率の低さを見ると、難易度の高い国家試験のように思えます。ただ、受験者の多くが社会人で、仕事をしながら受験勉強をしていることを考えると、効率良く勉強すれば合格できる国家資格であるといえるでしょう。また、仕事をしている社会人としての社会経験は、試験勉強や合格後の仕事に活かすことができるはずです。

2. 行政書士とは

行政書士は「街の法律家」と呼ばれる、親しみやすい存在です。
仕事の幅が広いため、「行政書士って何の仕事をしているの?」と思われることも多いようですが、それほどさまざまな知識を習得する必要があることを意味します。

行政書士になると、同業の行政書士仲間だけではなく、他の専門家の士業との繋がりを多く持つようになります。そのため、自身で解決できるものは行政書士として対応し、他の士業の専門性が求められると判断すれば、そちらへと繋ぎます。

行政書士が「街の法律家」と呼ばれるのは、こうしてさまざまなコネクションを使って解決へ導くところからきているのです。

(1)行政書士の主な仕事

Ⅰ 各官公署に提出する書類の作成及び提出代行業務

多岐にわたる行政書士の仕事ですが、中心となるのは官公署に提出する書類作成と、その提出代行業務です。

例えば、どんな商売でも始めるためには官公署から「許可」や「認可」をもらわなければなりません。そのための調査、書類作成、官公署への提出を、業として代行することを認められているのが行政書士なのです。

Ⅱ 書類作成に関する相談業務

前述のような書類作成だけではなく、行政書士は遺言の作成業務などの依頼を受けることもあります。行政書士は争いごとに関与することは認められていませんが、争いごとのない相続であれば相談にのることができます。具体的には、自筆遺言証書や遺産分割協議書の作成のための相談です。

法律のルールを知らずに書いて無効になることや、争いの種になることを避けるため、行政書士は事前相談を受けることで、法律のルール通りの文書作成方法をアドバイスします。こういった業務も、行政書士の書類作成に関する相談業務の一つです。

Ⅲ 契約書等の代理作成業務

会社間や個人間、また、会社と個人の間で契約を結ぶ際、事前に取り交わす契約書の作成を、行政書士が作成することも多くあります。契約書の書き方は自由なので、出回っているひな型を参考にすることはできるのですが、内容に不備があると、後で「言った、言わない」の争いになってしまうことが考えられます。そんな事態を招かないためにも、行政書士による契約書などの代理作成業務が認められています。

(2)行政書士試験とその難易度

行政書士試験は、国籍、年齢、学歴を問わず受験することが可能です。受験料は7,000円で、社労士試験と同様に試験は年に1回しか行われません。試験日は毎年11月中旬の日曜日で、試験時間は午後1時から4時までの3時間です。途中休憩はありません。

試験科目は「行政書士の業務に関し必要な法令等」の46題と、「行政書士の業務に関連する一般知識等」の14題が出題されます。前者で5割、後者で4割以上の得点ができなければ足切りで不合格となり、さらに全体の合格基準点は6割と定められている絶対評価の試験です。

合格率は年によってバラつきがありますが、おおよそ10%前後で推移しています。絶対評価の試験であり、高めの足切り点が設定されていることを考えると、効率良く勉強を進めるためにはある程度のメリハリが必要になるといえるでしょう。

3. 社労士・行政書士の比較

(1)社労士・行政書士はもともと同じ資格だった

社労士は、行政書士の派生として誕生しました。つまり、社労士と行政書士は、もともと同じ資格だったのです。

戦後、高度経済成長に伴って急速に経済が発展し、企業数は増加、続々と規模も大きくなってきたため、社会保険の手続きや申請、給付業務が複雑化していきました。1968年になって社会保険労務士法が制定され、より専門性のある資格として社会保険労務士が生まれたというわけです。

(2)社労士・行政書士はどちらがおすすめ?

社労士は、勉強したことがそのまま実務でも活用できる、即戦力の高い資格です。試験でも実務的な問題が多く出題されるため、試験勉強で学んだ内容が意味のないものになってしまうようなことはありません。働き方改革が推進されている昨今、企業内の労務管理が一斉に見直されています。労務管理のスペシャリストである社労士は、引く手あまたであることも大きなポイントでしょう。

一方、行政書士が試験勉強で得た知識は、実務でそのまま使うものではありません。官公署への書類提出業務では、試験で学習しなかった事柄が発生するでしょう。もちろん、行政庁を相手にするため、法令知識が全く活かせないということはありません。試験勉強で得た知識を持っていることを前提として、応用的にあらゆる業務を行うことになるわけです。

4. 社労士・行政書士の登録について

社労士も行政書士も、国家試験に合格しただけでは「社労士」「行政書士」と名乗ることはできません。いずれも、連合会と都道府県単位の会に登録する必要があります。登録料・入会金・会費は都道府県によって異なりますので、確認しておくとよいでしょう。

(1)社労士の登録

社労士の資格を取得後は、全国社会保険労務士連合会へ登録することで「社労士」と名乗ることができるようになります。

すでに一定の実務経験があれば、すぐに登録することが可能ですが、そうでない場合は指定の講習を受講する必要があります。申し込みから受講修了、登録完了までは約1年かかると考えておいた方がいいでしょう。

登録の際には「開業型」と「勤務型」のどちらかを選択します。
開業型は独立開業する人向けです。自身で事務所を構え、中小企業などを中心に顧客を獲得していく必要があるため、人脈作りや営業活動の必要が出てきます。

勤務型は、企業に所属し、企業内社労士として雇用されて活躍する人向けです。開業型の社労士とは異なり、顧客獲得の営業活動などはせず、自社の労務面で力を発揮することになります。

ちなみに、開業を目的として社労士登録をしている方がほとんどのようです。

(2)行政書士の登録

行政書士の場合は、試験合格後に、都道府県の行政書士会に書類を提出して入会後、日本行政書士会連合会の審査を受けるという流れです。書類の提出から登録の完了までは約1カ月かかります。

社労士とは異なり、実務経験などは必要ありません。合格後に登録手続きが完了すれば、行政書士を名乗ることができます。

5. 社労士・行政書士のダブルライセンス

複数の資格を持つことは、決して珍しいことではありません。中でも、社労士と行政書士の資格は、非常に相性の良い組み合わせであると考えられます。

(1)ダブルライセンスの有用性

社労士も行政書士も、独占業務を持っているため、「労務関係なら社労士」「官公署へ提出する書類作成は行政書士」というように、ジャンルが分かれています。双方の強みを持つことによって、仕事の幅を大きく広げることが可能となるでしょう。

例えば、

・新規の建設業許可申請の仕事を行政書士として受任し、その後の労務管理を社労士として顧問契約する
・会社設立の手続きを行政書士として行い、労働保険や社会保険の届出を社労士として行う
・会社設立の手続きを行政書士として行い、助成金の申請を社労士として行う

などの事例があります。自分の収入になることはもちろん、クライアントは担当を変えずに幅広く頼れるメリットが生まれます。

ダブルライセンスを目指すには、勉強しなければならないことも増えるでしょう。とはいえ「行政書士として仕事を獲得し、社労士として長く付き合う」という関係性が作れることは、将来的にとても大きな強みになります。

(2)試験の相性

社労士試験と行政書士試験は、法律系の資格試験であるにもかかわらず、ひとつも同じ出題科目がありません。同時並行での学習を行い、いわゆるダブル受験を目指すことは、相当難しいといえます。ダブルライセンスを取得したい場合は、1年に1資格ずつ、確実に合格する方が効率が良いでしょう。

もちろん、法律の基本的な知識・考え方は、どちらにも共通しています。

行政書士試験に合格してから社労士試験の勉強を始めると、憲法と民法の知識、行政不服審査法や行政事件訴訟法の分野における考え方が出てきます。混乱せずに覚えられるため、得点源にすることが可能となります。

もし「どちらの資格もなるべく早く取得したい」ということであれば、11月に行政書士試験を受験し、翌年8月に社労士試験を受験することが、無理のない一番の最短ルートと考えられます。

6. サマリー

いかがだったでしょうか。
今もっともニーズの高い社労士の資格と、行政書士の資格は、相性の良い資格の組み合わせとして知られています。社労士も行政書士も、取得できれば一生ものの国家資格です。

受験者層は、10代や20代よりも、30代以降の方が多くなっていることから、「なりたい」と決めてから勉強しても決して遅くないことがわかります。活躍している社労士や行政書士の中には、社会人としてのキャリアを大いに活用している人が多いのです。

7. まとめ

・社労士と行政書士は、法律初学者の社会人でも十分に合格できる国家資格である
・社会人としてのキャリアを生かして活躍している社労士や行政書士は多い
・社労士と行政書士のダブルライセンスは有用性が高い
・ダブル受験は難しいため、ひとつずつ取得していくのが効率の良い方法である

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