助成金申請は社労士に委託すべき?補助金との違いと共に、助成金の種類について紹介

助成金申請は社労士に委託すべき?補助金との違いと共に、助成金の種類について紹介

コロナ禍で経済の落ち込みが報じられるなか、国による公的支援の早急な設立が叫ばれました。事業者でなければあまり馴染みのない「助成金」について、この期間にニュースなどで頻繁に耳にした方も多いでしょう。「補助金」と「助成金」は、それぞれどんな内容を持つのでしょうか。

この記事では、補助金と助成金の違いと共に、助成金と社会保険労務士(社労士)の関係について詳しく解説していきます。

1 労働社会保険諸法令に基づく助成金申請は社労士の独占業務

社労士といえば「労働・社会保険」や「年金」のプロとして知られています。それと同時に、難しい助成金申請の頼れる専門家としても活躍しています。今般の新型コロナウィルス感染拡大にともなう助成金の申請にあたっても、社労士は労務の専門家として、申請基準や提出書類などの解説をおこないました。

(1)雇用保険を財源とする助成金申請は社労士の独占業務

ご存知のように、厚生労働省系の助成金の申請業務は、社労士の独占業務です。これらの助成金が雇用保険を財源とすることからも、それらの業務のプロである社労士の担当分野になるからです。

労働社会保険諸法令に基づく助成金の申請書の作成及び行政機関への提出等は、社労士法により社労士の業務と定められており、社労士又は社労士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、それらの業務を業として行ってはいけません。

※ただし、他の法律に別段の定めがある場合においては、この限りではありません。この法律に違反した場合、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

出典:全国社会保険労務士会連合会

助成金の申請条件には、法定帳簿や就業規則の整備などが求められるため、スムーズに申請・受給するためには社労士のサポートを受けるのが得策です。

(2)補助金と助成金の違い

「補助金」「助成金」という呼称は、混同されて使用される時もあります。下表にて、両方を対比してまとめました。

意味的にはあまり違いはありません。しかし「補助金」は主に経済産業省で使われ、「助成金」は主に厚生労働省で使われているという違いがあります。すると、いくつかの違いが生じてきます。

「補助金」 「助成金」
管轄省 経済産業省系 厚生労働省系
支給対象 商店街活性化、産業復興、技術開発など 雇用促進、雇用の安定、能力開発など
難易度 高い
・受給数は決まっている
・倍率が高い
易しい
(一定の条件を満たせば必ず受給できる)
審査内容 ・提案の中身が重要
・申請形式要件を満たすこと
申請形式要件を満たすこと
費用 数100万~数億円 数10万~100万円強
公募期間 年1回
公募期間は短い
通年
公募期間は長い期間
専門家 ・行政書士
・中小企業診断士
・コンサルティング会社
社会保険労務士

(3)近年、境界線は曖昧に

厚生労働省の助成金は、雇用保険に加入していることが申請の絶対条件であるため、個人事業主の中には申請できない人もいます(例えば、事業主と専従者のみの場合は雇用保険に加入できない)。厚生労働省系の助成金の財源は雇用保険なので、保険料を払っている事業者しかその恩恵にあずかれないのです。

東京都が設ける助成制度には「奨励金」というものもありますが、以下のように基本的に全制度に助成金という名称を使用しています。

・テレワーク活用・働く女性応援助成金
・働き方改革助成金
・企業主導型保育施設設置促進助成金など

また、経済産業省系の補助金の中にも、「助成金」と名付けられたものがあります。

2 主な助成金

社労士が独占して申請業務をおこなう厚生労働省系の助成金には、支給対象や内容が異なる数多くの制度があります。主なものを紹介して行きましょう。

(1)雇用関係

新たな雇用 トライアル雇用助成金
(一般トライアルコース)
「トライアル雇用」は、就職が困難な求職者を原則3か月間の試行雇用で、雇い主にその適性や能力を見極め、常用雇用への移行のきっかけとしてもらうための制度。

【助成金の支給額】
1人当たり月額最大4万円(最長3か月間)

【以下のいずれかを満たす】
紹介日時点で
①就労経験のない職業に就くことを希望している② 学校卒業後3年以内で安定した職業に就いていない

紹介日の前日から
③過去2年以内に2回以上離職や転職を繰り返す
④ 離職している期間が1年を超えている
⑤ 妊娠、出産・育児を理由に離職し、安定した職業に就いていない期間が1年超
⑥ 就職の援助を行うに当たり特別な配慮が必要

特定求職者
雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)

ハローワークなどの紹介により、以下の就職困難者を、長期間雇用する場合に助成される。

・高齢者
・障害者
・母子家庭の母親や父子家庭の父親など

【支給額】(1年間)
60万(障害者の助成期間は重度か軽度かによる)

(生涯現役コース)

・ハローワークなどの紹介で65歳以上の人を1年以上雇用できることが確実な場合に助成される。

【支給額】(1年間)
・短時間労働者50万円
・それ以外は70万

上記のような雇用創出を目的としたものだけでなく、雇用維持に努めた企業に対する助成金もあります。特に「雇用調整助成金」は新型コロナウィルス感染拡大で社会問題となった解雇・雇い止め抑制のために、制度拡充されました。

雇用維持 雇用調整助成金
(通常時)
経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度。

【受給条件】
①雇用保険の適用事業主である
②売上高など事業活動を示す指標が、その最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少している。

【支給額】
1人あたり8,330円が上限
※教育訓練実施の場合は1人1日当たり1,200円加算

(コロナ対応型拡充制度) ※次章で詳細に解説
雇用関係整備 65歳超雇用推進助成金 まだ働く意欲のある人を積極的に雇用する環境を整えた企業に助成。例えば次のような施策が対象。

・定年を65歳以上に引き上げ
・定年を廃止する
・有期契約雇用の高齢者を無期契約に変更など

【令和2年4月1日改正の内容】
・機器、システム、ソフトウェア等の導入経費も支給対象に
・対象経費が50万円を超える場合は50万円を上限に

(2)キャリアアップ

「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用労働者の方の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化などの取組を実施した事業主に対して助成金を支給する制度です。全部で8コースがあり、そのうち4つのコースについて拡充がおこなわれました。

令和2年度に拡充など制度の変更がおこなわれたものは、厚生労働省資料を基に赤字で表しました。

正社員化コース(支給要件の緩和) 有期雇用労働者等を正規雇用労働者等に転換、または直接雇用した場合に助成(1人当たり57万円)。
賃金規定等改定コース(加算措置の拡充) 全てまたは一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成。
健康診断制度コース 非正規雇用者に対する健康診断以外の一定の健康診断制度を新たに規定。
賃金規定等共通化コース 非正規雇用者・正規雇用者の賃金規定の共通化。
諸手当制度共通化コース 非正規雇用者・正規雇用者の諸手当制度の共通化。
選択的適用拡大導入時処遇改善コース(助成内容の拡充) ・非正規雇用者の社会保険の適用拡大
・基本給の増額
短時間労働者労働時間延長コース(経過措置の延長) 有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成。

(3)働き方改革

働き方改革関連の助成金も数々あります。

特に「職場意識改善助成金」は、日本の労働環境でなかなか改善が進まなかった「労働時間の削減」「有給休暇の積極的な取得」等に、取り組んだ企業を対象としています。例えば、平均有給休暇取得が4日以上増加し、月の平均労働時間が5時間以上減少した場合、最高で100万円の助成金が支給されます。

労働時間
賃金
健康確保
勤労者福祉など
職場意識改善
助成金
勤務間インターバルコース

勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設け、労働者のの生活時間や睡眠時間を確保し健康保持や過重労働の防止を図る制度。

時間外労働等改善助成金

週労働時間60時間以上の雇用者の割合5%、年次有給休暇取得率70%の達成を目指す制度。

テレワークコース

テレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成する制度。

受動喫煙防止対策助成金 ・職場での受動喫煙を無くすためにかかった費用の約半分が助成される。
▼こちらの記事も合わせてご覧ください。
働き方改革 助成金の種類・支給額から探し方まで徹底解説!

(4)その他

再就職やライフワークバランス実現のための施策をおこなった場合に、支給される助成金です。

離職者の円滑な労働移動を図る 労働移動支援助成金

(再就職支援コース)

離職を余儀なくされる労働者が再就職しやすくする為の制度。次のような行為が対象。

・斡旋業者に依頼
・求職活動のために休暇を取得
・再就職のための職業訓練を委託

【助成額】
・再就職の斡旋企業に委託した場合:10万円
・休暇取得:1日5,000円

仕事と家庭の両立に取り組む 両立支援等助成金 ① 出生時両立支援コース
② 介護離職防止支援コース
③ 育児休業等支援コース
④ 再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
⑤女性活躍加速化コース
⑥事業所内保育施設コース【助成例】
男性の育児休暇取得のための施策をおこない、実際に育児休暇を連続5日(大企業は14日)取得した場合:57万円
その他の施策に対しても30万前後を助成。

3 社労士に依頼するメリットとは?

これらの助成金の申請自体は、社労士を通さなくてももちろん可能です。それでも社労士に依頼すべき理由とは何でしょうか。そして、社労士に依頼する場合、デメリットがあるとすればそれは何でしょうか。

(1)メリット

厚生労働省系の助成金は、受給要件として労働関係法令を遵守しているかどうかがポイントになります。例えば労働保険料の未払いがあると申請できなくなります。助成金を受給できるということは「きちんとした会社」である証明だといえます。

①法定帳簿や就業規則を整備できる

助成金によって求められる提出書類は違いますが、雇用に関する助成金は、法定帳簿(賃金台帳など)が必要になることが多いです。また勤怠管理の内容も同様です。就業規則に関しては、従業員数が10名以上であれば、法的に作成・届出する義務が生じます。

例えば、テレワーク助成金では、テレワーク勤務規程の作定や社労士への相談が申請条件の一つになりました。

これまで帳簿や規則を整備できなかったのなら、それはどの様にすれば良いか分からなかったからではないでしょうか。それならば、労務の専門家・社労士に相談することをおすすめします。

②スムーズな申請のために

必要書類に不備があると、再提出になることがあります。実際、新型コロナウィルス感染拡大による助成金では、提出書類への記入の誤りなどで、なかなか支給に至らない現状が繁く報じられました。「手続きが煩雑だ」という不満が多かったため、ここでも社労士が解説をおこなうなどして活躍しました。

コロナ関連の助成金は特に支給を急がれ、提出書類や手順が徐々に簡素化されましたが、通常時のトライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の申請は、複雑だといえます。提出要件は26にも及びますし、支給額も離職の理由が会社都合か自己都合かで違ってきます。一般的に、助成金の支給要件は複雑です。

③本業に専念できる

大企業であれば人事・労務に従事する人員は十分に確保されているでしょう。しかし、中小企業では、社長が総務や経理、労務関係の事務をこなす場合もあります。

助成金の申請業務を社労士に委託すれば、社長は本来の使命である経営に専念できます。そうすれば売上アップのために尽力できると同時に、助成金も確実に受給出来ます。慣れない助成金申請で本業が疎かになり、「二兎を追う者は一兎をも得ず」になってしまっては本末転倒です。

(2)デメリット

社労士に申請業務を委託する場合のデメリットも、敢えて挙げてみましょう。

①助成金がもらえない場合も

助成金は必要書類が揃い、申請形式要件を満たしていれば原則的にはもらえます。しかし時には、受理されない場合もあります。その場合は、申請にかけた時間と労力は無駄になります。

例えば、トライアル雇用助成金の申請の場合です。実施計画書を提出した後で、該当の従業員が辞めてしまったり、解雇をする事態になることもあるでしょう。その場合は助成金は受給できません。これ以外にも、細かいところで引っかかって受給できないことがあるのです。

②助成金をもらうための「取組み」が必要

助成金をもらうためには、要件を満たすために新たな「取組み」を実施しなくてはなりません。それが負担になってしまい、本業が疎かになっても本末転倒です。例えば、雇用関係の助成金を受給したいがために、あまり適切ではない人をトライアル雇用したりする場合です。

適切な人材を見つけられなかったのに、助成金目当てで人を雇っても長続きしないでしょう。障害者や65歳以上の雇用も、思い付きで出来るものではありません。まずは会社に合う制度かどうかをしっかり検討しましょう。

③受給までに時間がかかる、など

助成金を申請する企業の殆どは、すぐに経済的サポートが欲しいからこそ申請します。しかし、助成金は支給までが長く、申請してから支給までに1年以上かかるものもあります。場合によっては、1年後では遅いこともあるでしょう。

また、支給決定から5年間は書類の保管義務があったり、実施調査や提出後労働局からの問い合わせに応じなければならないことも、煩わしい場合もあるでしょう。それで時間と労力を奪われるくらいなら、助成金は要らないという会社があってもおかしくありません。

④社労士への報酬が生じる

社労士に申請業務を委託すれば、報酬が生じます。社労士に依頼するメリットは多いですが、その対価として報酬は発生します。

4 新型コロナウイルス感染拡大による特例措置および拡大

新型コロナウィルス感染拡大による失業者は、食い止めなければならない深刻な問題です。そのため、国は「雇用調整助成金」を拡充して、雇用維持を図る事業者の休業手当の支払いを補助しました。また、全国的に施行された臨時休校のために、休業を余儀なくされた労働者に対する休業補償も設立され、段階的に拡充されました。

(1)雇用調整助成金の特例措置

出典:厚生労働省

本特例措置は、コロナ禍により休業を余儀なくされた従業員の雇用維持のために「雇用調整(休業)」を実施する事業主に対して、休業手当などの一部を助成するものです。現在、対応期間は令和2年4月1日から9月30日までです。

本制度は、度重なる制度内容の拡充を繰り返しました。当初は、国が事業主に助成する金額の上限が8,330円と少なく、補償として不十分であると批判を受けた制度でした(月22日勤務に換算すると、183,260円)。その後上限額が変更され、日額15,000円、最高支給額33万円に引きあげられました。

(2)小学校の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援

コロナ禍による臨時休校で、休業を取ることを余儀なくされた保護者を雇う事業主に対しては「小学校休業等対応支援金」が設立されました。なお、「雇用調整助成金」と併用はできません。

①労働者に休暇を取得させた事業者向け

対象を拡大したり度重なる改善を繰り返しながら、最終的には以下の概要にまとまりました。

・対象は正規雇用・非正規雇用を問わない。
・有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業を対象とする。
・期限が延長され、令和2年2月27日から9月30日までの間に取得した休暇が対象に。

本助成金も事業主に対して支払われるため、休業した保護者が直接国に申請できるものではありません。当初、雇い主である事業者からは「手続きが煩雑すぎるため申請できない」などの不満も噴出しました。

本制度も上限額が引き上げられ、令和2年4月1日以降に取得した休暇については、1日あたりの上限額が8,330円から15,000円にアップしました。

②委託を受けて個人で仕事をする人向け

出典:厚生労働省

その後、委託を受けて個人で仕事をするフリーランスも対象に加わりました。こちらの上限額は、令和2年4月1日から9月30日までの期間については、7,500円まで引き上がりました。

受給の要件として、締結した業務契約等の内容が問われており、具体的には発注を確認できる書面と、報酬が発生する契約であることが必要条件です。また、臨時休業の開始前に既に業務契約を締結していたことも必須であるなど、クリアすべき条件がいくつか存在します。

5 サマリー

厚生労働省系の助成金は、雇用保険を支払ってきたならぜひ活用して頂きたい制度です。しかし、会社制度が未整備である場合はまずそこから着手しないといけません。その場合は、労務のプロである社労士の力を借りることをおすすめします。

6 まとめ

・雇用保険を財源とする厚生労働省の助成金の申請業務は、社労士の独占業務である。

・「補助金」という名称は主に経済産業省で使われ、「助成金」は主に厚生労働省で使われているという違いがある。

・最近は境界線が曖昧になってきている。

・厚生労働省系助成金には雇用創出、雇用維持、キャリアアップ、働き方改革などの目的で作られたものがある。

・厚生労働省系の助成金を受給するには、労働関係法令を遵守しているかがポイントになり、労働保険料の未払いがあると申請できない。

・助成金を受給できることは、法定帳簿や就業規則を整備した「きちんとした会社」である証明である。

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