2020年5月「雇用調整助成金」の拡充内容とは? 限度額やオンライン申請の手順、受給条件を解説!

2020年5月「雇用調整助成金」の拡充内容とは? 限度額やオンライン申請の手順、受給条件を解説!

雇用調整助成金とは、雇用主が従業員に対して休業等をおこなった際に支払われる休業手当の一部を、国が補助する制度です。今般の新型コロナ禍で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対する助成と同時に、雇用が維持されるようにという狙いがあります。

2020年5月20日から、雇用調整助成金のオンライン申請が受付開始することが発表されました(※システムに不具合が発生している場合があります。詳しくは厚生労働省のホームページでご確認ください)。今後も制度の拡充は続く見通しで、安倍総理は雇用調整助成金の上限を15,000円に増額予定という答弁をおこないました。

この記事では、雇用調整助成金のオンライン申請と、2020年5月1日時点での拡充の内容について、分かりやすくまとめていきます。

1 雇用調整助成金オンライン申請

2020年5月20日から、雇用調整助成金のオンライン申請が受付開始することが発表されました(※システムに不具合が発生している場合があります。詳しくは厚生労働省のホームページでご確認ください)。また後述しますが、併せて小規模事業主の雇用調整助成金については、申請方法がが従来よりも簡単になりました。

(1)雇用調整助成金等オンライン受付システム

雇用調整助成金について一言で説明すると、「経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業等をおこない、労働者の雇用の維持を図った場合、事業主が労働者に支払った休業手当等の一部を、一定の要件を満たす場合に国が助成する制度」です。リーマン・ショックや東日本大震災のような有事においても、事業主と労働者を保護するための制度として活用されました。

今回の新型コロナ禍では、「三密」と呼ばれる人がひしめく状況を、役所と言えども回避する必要があるため、雇用調整助成金等オンライン受付システム(以下、雇調金等受付システム)は、満を持して発表されました。雇調金等受付システムでは、以下の助成金の申請等ができます。

①雇用調整助成金
②緊急特定地域特別雇用安定助成金
③緊急雇用安定助成金

(2)操作方法

厚生労働省ホームページには、以下の資料が掲載されています。

オンラインでの申請方法は、以下の4つのステップで完了します。申請書類のアップロードもシステム上でおこなえますので、役所で人ごみの中順番待ちをする必要もありません。

Step1 雇用調整助成金等オンライン受付システムにアクセス!

Step2 ログイン用のメールアドレスを登録
・メールアドレスがマイページのIDとなります。
・申請事業主ごと(社会保険労務士が申請代行する場合は当該社会保険労務士ごと) に1つのアドレス=IDとしていただくと便利です。

Step3 SMS認証用の携帯電話番号を登録
・マイページ開設、ログインの際に手元に用意できる携帯電話にして下さい。

Step4 マイページから申請書類をアップロード
・必要な書類はP4を参照下さい。
・ファイル形式は、原則PDF(または、画像ファイル(.jpg , .png))として下さい。WordおよびExcel(マクロなしに限る)でも可能ですが、労働局で開けないバージョンなどの場合は、追って差し替えなどを依頼します。ご協力をお願いします。

リーフレットの資料を基に作表

(3)より詳細なオンライン受付マニュアル

本システムを利用するにあたり、先ずおこなうのは「申請者のアカウント情報の登録」です。申請者のメールアドレスと携帯電話番号を、手元に準備しましょう。申請者情報を登録することで、アカウント情報登録が完了します。

その後は申請作業に入りますが、詳しい手順についてはリーフレットに掲載されています。リーフレットにはコールセンター窓口も紹介されていますので、不明な点が生じたら活用しましょう。

1 アカウントがない人は、雇用調整助成金等オンライン受付システムにアクセスし、メールアドレスを登録。
2 登録したメールアドレスに登録用URLを送付。当該ページへアクセスし、氏名、携帯電話番号、パスワードなどを登録。
3 携帯電話にSMSで認証コード(ワンタイムパスワード)が送付されたら、当該コードを入力。登録完了となるので、一旦ログオフ。

(今後、ログオフせず直接ログインできるよう改修予定)

4 あらためて、①のページから①で登録したメールアドレス、②で登録したパスワードを入力し、③のSMS認証を行い、申請用マイページにログイン。
5 ログインすると一覧画面が表示される。上段左側の「新規申請」ボタンをクリックすると、申請情報入力画面が開くので、必要事項を入力。入力項目はP3を参照。入力後「確定」ボタンをクリックし、申請情報確認画面を確認。

※途中で処理を中断したい場合は、申請情報入力画面の「保存」ボタンをクリックすると、その状態が保存され、一覧画面上では「作業中(申請前)一覧」に表示される。終了する時は、「ログオフ」ボタンをクリックして終了。

6 申請情報確認画面の右上にあるクリップマーク欄の歯車をクリックし、申請書類、添付書類をアップロード。

(ドラッグ&ドロップかファイル選択後に「確定」ボタンをクリック)

※添付書類の容量が大きすぎて一定以上の時間がかかった場合は、タイムアウトエラーが発生。その場合は、別途事業所所在地を管轄する労働局かハローワークへ郵送にて申請すること。なお、添付できる容量は1ファイル100MB、20ファイルまで。

郵送先労働局またはハローワークの所在地はこちら

7 アップロードが終わったら、申請情報確認画面下段の「申請」ボタンをクリック。これで、申請は終了。申請が問題なく行われた場合は、自動で①で登録いただいたメールアドレスに受け付けた旨のメールが届くので、確認すること。一覧画面では「申請中一覧」に表示される。
8 審査に当たって確認事項がある場合は、労働局またはハローワークから電話・メールで連絡。書類に不足があるような場合は、一旦戻しすことになるため、⑥の手順で追加アップロードをおこなう。一覧画面では「差戻し一覧」に表示される。
9 審査終了後、支給決定通知書を申請事業主に郵送。(通知発送 から入金までに4日程度要する)

リーフレットの資料を基に作表

2 小規模事業主の申請が簡素化

今回、小規模の事業主(概ね従業員20人以下の会社や個人事業主)の雇用調整助成金申請についても簡素化されました。本件に関しては緊急雇用安定助成金支給申請マニュアルが作成され、雇用保険被保険者でない従業員を休業させた場合の助成金申請をガイドしています。

また、「実際に支払った休業手当額」から助成額を算定できるようになりました。

3 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)について

「雇用調整助成金」は、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対する支援であるとともに、「雇い止め」や「解雇」を防ぎ従業員の雇用を維持することも目的としています。

休業、教育訓練または出向など雇用調整をおこない、雇用の維持を図った場合には休業手当、賃金等の一部が助成されます。支給対象は「雇用保険の適用事業主」ですが、そうでない場合のためには緊急雇用安定助成金が設けられています。

新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例は、通常時の雇用調整助成金とは違い、特例として設けられました。雇用調整助成金の特例措置は、4月1日~6月30日の緊急対応期間中、全国で全業種の事業主を対象に実施されます。

(1)令和2年5月1日からの特例

令和2年5月1日には、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う雇用調整助成金の特例を、さらに拡充しました。どのような制度の充実が図られたのか、確認していきましょう。

①拡充1

今回の拡充その1は、「一定の要件を満たす場合は、休業手当全体の助成率を10/10とする」というものです。手厚い拡充のように聞こえますが、助成の上限金額は依然として8,330円のままである点に、注意が必要です。

出典:厚生労働省

②拡充2

2つめの拡充点は「休業手当の支払い率60%超の部分の助成率を、特例的に10/10にする」という点です。60%までの部分は90%の助成ですので、休業手当100%支給の場合は、結果に94%の助成になります。しかし留意して頂きたいのは、雇用調整助成金の支給限度額の上限は、そのままの8,330円だという点です。

出典:厚生労働省

助成金の上限額が8,330円というのは安すぎるのではないか、という議論が当然あります。このままでは、休業手当を従業員に支払う雇用主の持ち出しが、大きすぎるのです。また、支給対象となるのは、休業要請のあった企業のみと定められているのですが、この点にも批判の声があります。休業要請がなくても、休業に追い込まれた企業は少なくないからです。

しかし、何と言っても批判が集まっているのは、やはり助成額の上限が8,330円であることです。この額では、日給が高い人に対する休業手当の補助にはほど遠いのです。

例えば日給18,000円の人の場合を例として考えてみましょう。この額の94%は、16,920円という計算になります。しかし、国からの休業手当の補助の上限は8,330円だけ。雇い主は、不足分を持ち出しにしてこの従業員に休業手当を支払うことになるのです。

(2)雇用調整助成金上限が、15,000円に上がる?

しかし、新型コロナ禍による減収や休業に対する国からの補償は、徐々に拡充されています。そんななか、8,330円という雇用調整助成金の上限額を、15,000円に増額するという案も浮上しました。現に、5/11の国会答弁において、安倍首相もこの内容に触れ「助成金の上限額を15,000円程度に増額する」考えがあることを述べました。

もし一日15,000円の休業補償が実現すれば、月の休業手当として30万円が従業員に支給できることになります。これなら、ずっと充実した補償になり、雇用主の「持ち出し」の負担が少なくなります。そうすれば、この制度はより多くの企業で活用されるのではないでしょうか?

助成金に関する情報は日々更新されていますので、厚生労働省のホームページを常にチェックし、最新の情報に触れることをおすすめします。

4 支給までの流れ

オンライン申請の手順については、既にご紹介しました。次に雇用調整助成金を申請して受給するまでの全体の流れを説明していきます。

この申請手順もどんどん簡素化されており、今回は更に申請を簡略化するため、初回を含む休業等計画届の提出を不要とし、支給申請のみの提出になりました。

雇用調整助成金申請は、原則として休業の実施前に「計画届」を提出し、実施後に「支給申請」をおこなうのが通常の流れです。新型コロナウイルス感染症に伴う特例では、計画届の6月30日までの事後提出が可能とされ、2回目以降の提出も不要とされていました。

(1)本来の申請の手順

今回の特例措置で許されていた「休業届」の事後提出(期限は6/30まで)は、手続きの更なる簡素化により、提出自体が不要になりました。

休業等計画・労使協定 休業等の具体的な内容を検討します。
労使間で休業に係る協定を締結します。

休業等の実施 計画届に基づいて休業等を実施します。

支給申請 休業等の実績に基づき、支給申請をします。
※「支給対象期間」ごとに申請します。申請期限は支給対象期間の末日の翌日から2か月以内です。
※支給対象期間の初日が5/31以前の休業等について申請するときは、申請期限は令和2年8月31日です。

労働局の審査 支給申請の内容について労働局で申請がおこなわれます。

支給決定 支給決定額が振り込まれます。

(2)必要書類

繰り返しますが、雇用調整助成金を受給するには「計画届」と「支給申請」を提出しなければなりませんでした(契約届は事後報告可能で期限は6/30まで)。しかし今回の申請の簡素化で、支給申請のみの提出でよくなり、計画届の提出は不要になりました。

①計画届に必要な書類(提出不要に)

書類名 備考
様式第1号(1)
休業等実施計画(変更)届
様式特第4号
雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
【添付書類】
生産指標の低下が確認できる書類
「売上」等がわかる既存書類の写しも可
(売上簿、営業収入簿、会計システムの帳簿、客数のデータ、客室等の稼働率など)
休業協定書
労働組合等との確約書等でも代替可
【添付書類】
(労働組合がある場合)組合員名簿
(労働組合がない場合)労働者代表選任書※
※実績一覧表(様式特第9号又は12号)の署名または記名・押印があれば省略可
事業所の規模を確認する書類 既存の労働者名簿及び役員名簿で可
※中小企業の人数要件を満たしている場合、資本額を示す書類は不要

②支給申請に必要な書類

書類名 備考
様式特第6号
支給要件確認申立書・役員等一覧
計画届に役員名簿を添付した場合、別紙の役員等一覧は不要
様式特第9号または12号
休業・教育訓練実績一覧表
自動計算機能付き様式
様式特第8号または11号
助成額算定書
自動計算機能付き様式
様式特第7号または10号
(休業等)支給申請書
自動計算機能付き様式
労働・休日の実績に関する書類 出勤簿、タイムカードの写しなど
(手書きのシフト表などでも可)
(必要に応じ、就業規則または労働条件通知書の写しなど)
休業手当・賃金の実績に関する書類 賃金台帳の写しなど(給与明細の写しなどでも可)
(必要に応じ、給与規定または労働条件通知書の写しなど)

5 雇用調整助成金が申請できない場合も

助成金の申請・受給が簡単で手早いのは理想的ですが、その分不正受給者が現れるリスクは高くなるため、申請方法の決定には時間がかかります。また、支給対象に該当するかどうかも、初めに見極めなければなりません。

(1)虚偽の申請は許されない

当たり前のことですが、虚偽の申請は許されるものではなく、刑罰が下されることもあります。助成金の虚偽申請が発覚すると以下のペナルティが下されるので、間違ってもそのような考えを持たないようにしましょう。

不正受給が判明した場合・・・

① 不正発⽣⽇を含む判定基礎期間以降に受けた助成⾦は、全額返還を命じます

② ⼀度でも不正受給すると、以後3年間は雇⽤保険2事業を財源とする助成⾦(ハローワークで扱うほぼすべての助成⾦)が受給できません

③ 平成22年11⽉以降の申請に不正があった場合事業主・事業所の名称などを公表しています

④ 特に悪質な場合などは、刑事告発を⾏います

※ 実際には教育訓練を⾏っていないにもかかわらず、実施したように偽り、中⼩企業緊急雇⽤安定助成⾦約370万円を不正に受け取った事業主が、詐欺罪で懲役1年6か⽉(執⾏猶予3年)の有罪判決を受けたケースもあります。

出典:厚生労働省

(2)以下のケース

本来助成金とは、必要書類が揃い要件を満たせば原則的に受給できるものです。しかし、以下のような場合は違います。せっかく準備をしても無駄になってしまわないように、先ずこれらの項目をチェックすることも重要です。

・不正受給歴がある
・労働法令に違反がある
・労働保険料を滞納している

(3)その他の受給できないケース

雇用調整助成金FAQ(※厚生労働省 雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)ページ内にて随時更新)から、その他の雇用調整助成金を受給できないケースについてピックアップしましたので参考になさってください。

労働者を解雇しても4/5の助成は受けられますか。

解雇者等を出している場合の助成率は4/5(中小企業)となります。なお、解雇予告した労働者の休業については、以後、助成対象外となります。

事業所内で研修を行う場合、講師が自社の従業員でもその者も含め助成金の対象になりますか。

事業所内で行う教育訓練において、自社の従業員が講師として研修を行う場合は、その者は通常の勤務となるため、助成金の対象とはなりません。

労働者に休業手当を支払わないと助成金は受給できませんか。休業手当を支払う前に助成金を受給できませんか。

雇用調整助成金は、事業主が休業させた従業員に支払った休業手当を助成するものです。休業手当をお支払いしていない場合、助成金の支給対象になりません。

労働基準法第26条(休業手当)の適用を受けない場合であって、休業手当を60/100未満しか支払わなかった場合には助成金は支給されますか。

雇用調整助成金の支給対象となるためには 60%以上の休業手当をお支払いいただくことが必要です。

6 サマリー

数回にわたり拡充が発表されてきた雇用調整助成金の特例ですが、助成金の上限に関しては今後更に上乗せされるそうなのでチェックしていきましょう。

また、助成金は受給の対象に該当するかどうかの判断も重要です。まずは社労士などの専門家や、コールセンターに相談することをおすすめします。

7 まとめ

・雇用調整助成金は、雇用主が従業員に対して休業等をおこなった際に支払われる休業手当の一部を、国が補助する制度である。

・今般の新型コロナ禍では特例がしかれ、事業主に対する助成と雇用の維持という狙いがある。

・2020年5月20日に雇用調整助成金のオンライン受付が開始されると発表されていた。

・2020年5月1日、新型コロナ禍に伴う雇用調整助成金の特例を拡充し「要件を満たす場合、休業手当全体の助成率を10/10に」などと改善された。

・助成の上限金額は依然として8,330円のままである。

・「計画届」と「支給申請」のうち計画届は、申請の簡素化で、提出不要になった。

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