目次
はじめに
2019年12月、中国武漢市で発生し世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症。日本でも2020年4月に緊急事態宣言が発令されるなどの措置がとられました。
その後、一度は収束を見せたかのように思えますが、第2波、第3波と感染者の数は増え続けています。
この記事では、万一ご自身やご家族が新型コロナウイルス感染症に罹患してしまい、会社を休まざるを得ない場合に備えて、各保障制度について解説していきます。
1 新型コロナウイルス感染者数の推移
2020年11月24日までに、陽性者は累計 134,811 人となりました。
日本の総人口が1億2577万人(総務省統計局令和2年概算より)ですから、
人口のおおよそ0.1%が感染しているという計算になります。
また、重傷者は376 人にのぼり過去最多数を更新しています。
陽性者数
重症者数
※出典:厚生労働省 新型コロナウイルス国内の発生状況より
2 新型コロナウイルスで会社を休む場合
ここまでの数字を見ていると、「怖い」「外出したくない」と思われる方も多いでしょう。
しかし、会社勤めとなるとそうはいかないのが現実です。
withコロナと言われている今、大切なのは「正しく恐れ、備える」ということではないでしょうか。
ここからは、3つのケースで「会社を休む」となった場合、受けられる保障について解説していきます。
(1) 陽性判定が出て会社を休む場合
PCR検査などで「陽性」の判定が出て、新型コロナウイルスの感染が認められた場合、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられ、休業手当は支払われません。
つまり、新型コロナウイルスに感染してしまったとしても、会社の都合ではないため休業中の手当については支払われません。
休業手当とは会社の都合により従業員を休業させた場合に支払われる手当となりますので
この場合は当てはまらないというのが一般的です。
但しながら、被用者保険に加入しており、要件を満たした場合は傷病手当金の支給対象になる可能性があります。
(2) 症状(発熱や咳など)があり自主的に会社を休む場合
新型コロナウイルスに感染しているかどうかはわからないが、発熱などの症状で会社を自主的に休む場合は休業手当の支給対象にはなりません。
病欠と同様の扱いになりますので有給を充てることが一般的ですが、各社の就業規則によっては病気休暇制度などがあれば活用すると良いでしょう。
会社によってはコロナ休暇などを設けている会社もあります。
詳細はご自身の所属されている会社でご確認ください。
(3) 会社からの指示で休む場合
会社からの指示で、「発熱があった際は休むように」という指示があった場合、①のケースとは異なり会社の都合とみなされるため休業手当が支払われます。
この場合は傷病手当金の対象外となります。
※出典:TJK 新型コロナウイルス感染症に係る傷病手当金の請求について キャプチャ
3 新型コロナウイルスで会社を休むときの休業手当、傷病手当金の給付について
新型コロナウイルスで会社を休む場合、「休業手当」と「傷病手当」があることがわかりました。
ではそれぞれ何が異なりどのような条件で支給対象になるのでしょうか。
(1) 休業手当
休業手当とは
休業手当とは使用者の責任により休業が発生した場合に、使用者から労働者へ支給される手当のことを指します。
従業員への自宅待機命令や帰宅命令も同様に休業手当の支給対象となります。
上述、2-③のケースにおいては会社からの指示で休業をすることを指しますので
休業手当の対象となります。
では、どれくらいの手当が支払われるのか。
法律等に基づかない使用者の独自の判断により、従業員への休業を命じた場合には 労働基準法に基づき、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の 100 分の 60 以 上)を支払わなければならないとされています。
休業手当の申請方法
この場合の休業手当は賃金に相当するので申請は不要です。
(2)傷病手当金
傷病手当金とは
健康保険の傷病手当金とは、業務外の傷病のため仕事ができず、収入が減少したときに支給されます。
他の疾病に罹患している場合と同様に、療養のため労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、直近 12 か月の標準報酬月額を平均した額の 30 分の1に相当する額の3分の2に相当する金額(※)を、傷病手当金として支給されます。
(※)被保険者期間が 12 ヶ月に満たない者については、①当該被保険者の被保険 者期間における標準報酬月額の平均額、又は②当該被保険者の属する保険者の 標準報酬月額の平均額、のいずれか低い額が算定の基礎となります。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金を申請するには傷病手当金支給申請書が必要です。
手順
①加入している保険者(協会けんぽや保険組合)へ傷病手当金支給申請書を取り寄せ、「被保険者記入用」の2枚を作成します。
②医師に「療養担当者記入用」の記入を依頼します。
休職期間中に「働けない状態」であったことを証明してもらうためです。
医療機関によっては時間がかかったり、費用がかかることもあります。
③会社に「事業主記入用」の記入を依頼します。
休職期間中に給与が支払われていないことを証明してもらう書類となります。
④傷病手当金の支給申請をします。
一般的には会社を通じて保険者への支給申請を行うことが多いですが、
直接郵送しても問題ありません。
※詳しくは加入している保険者へご確認ください。
傷病手当金は審査が通り給付されるまでに早くて2週間、長いと2~3ヶ月かかりますので迅速に申請をするように心掛けるとよいでしょう。
4 もしかしたら私も?濃厚接触者とは
新型コロナウイルスが蔓延している中で、私たちは生活していかなければなりません。新型コロナウイルスに感染しないために、日々対策をしていても、ワクチンが市場に出ていない現状においては、感染を完全に避けることはできません。
現在では、厚生労働省が提供している、新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」をスマホにダウンロードすることで、濃厚接触者に該当すれば通知が来るような仕組みになっていますが、もし、自分の周りにいる家族や知人が新型コロナウイルスに感染し、自分が「濃厚接触者」に該当してしまった時、どのような行動をとればよいか、紹介しましょう。
(1)厚生労働省が定める濃厚接触者の基準
厚生労働省は、濃厚接触者について、以下の基準に従い、総合的な判断をしています。
1.距離の近さ
2.時間の長さ
距離の近さと時間の長さは、濃厚接触者に該当するか否かの判断において重要な要素となっています。
必要な感染予防策をせずに手で触れる、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合には、濃厚接触者に該当すると考えられています。
新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」も、陽性者と1m以内、15分以上の接触がある場合には通知がいきます。
もっとも、これらに該当する場合でも、陽性者と接触があった方々について、関係性、接触の程度など保健所がさらに個別的に調査をし、濃厚接触者に該当するかどうかの判断をします。
したがって、新型コロナウイルス感染者と接触があった方が必ず濃厚接触者にあたるというものではありません。
ただ、濃厚接触者に該当するかの判断は保健所に委ねることになるので、接触があった方は自分で判断せず、すぐに保健所に連絡するようにしましょう。
(2)自分が濃厚接触者と言われた、若しくは疑いがあるとき
保健所の調査によって、濃厚接触者に該当すると判断された場合には、保健所でPCR検査が受けられます。
濃厚接触者にあたる場合でも無症状で体調に問題がない場合もありますが、無症状の場合でも感染している可能性はありますので、PCR検査を受けることになります。
また、濃厚接触者の疑いがある場合でも、PCR検査を受けることができます。
5 やっぱり大事なのは新型コロナウイルス「感染対策」
新型コロナウイルス感染者の数が日々更新しており、いつ自分が感染するか不安な方も多いと思います。
しかし、感染しないためには、なんといっても毎日感染対策をしっかり行うこと尽きます。
(1) 三密を避ける
「三密」とは、密閉、密集、密接のことをいいます。
緊急事態宣言が発令されて以来、毎日のように三密という言葉をニュースなどで聞いていますが、特に、これから冬にかけて、密閉を避けることが重要になってきます。
どうしても寒くて窓を閉めてしまいがちですが、換気しなければ、飛散したウイルスが残ってしまうので、窓を開けて換気するなど、徹底して参りましょう。
(2) 手洗いうがい、消毒など個人でできる対策
手洗い・うがいも引き続き毎日行うことが重要です。アルコール消毒液を持ち歩く方も増えていると思いますが、手洗いができない場合には、アルコール消毒をしましょう。
個人でできる対策をしっかり行うことで、少しでも感染リスクを避けることが大事です。
(3) 在宅勤務、リモートワークの活用
緊急事態宣言が発令されて以来、国の在宅勤務の推奨により、在宅勤務に移行する会社が増えてきました。
在宅勤務に移行することにより、朝の通勤ラッシュが避けられ、密集にならずにすみます。
リモートワークを上手く活用し、少しでも感染リスクを下げるように工夫しましょう。
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6 サマリー
いつ新型コロナウイルスに感染してもおかしくない現状において、会社で働いている方々は、万が一のことを考えておく必要があります。もしもの時のために、様々な手続きを事前に知っておくことで、現実に感染してしまっても、パニックにならずにすみますね。
ただ、上述のように、休業手当が支給されない場合もあるので、新型コロナウイルスに感染しないための対策を徹底することに尽きます。
7 まとめ
・令和2年11月に入ってから新型コロナウイルスの感染者及び重症者の数は最多を更新しつづけている
・新型コロナウイルスに感染した場合、会社から休業手当は支払われない
・発熱や咳によって会社を休む場合でも、休業手当は支払われない(※会社に就業規則によってはコロナ休暇などがある)
・会社の指示によって休む場合、休業手当が支払われる
・休業手当とは使用者の責任により休業が発生した場合に、使用者から労働者へ支給される手当のこと
・健康保険の傷病手当金とは、業務外の傷病のため仕事ができず、収入が減少したときに支給される手当のこと
・傷病手当金を申請するには傷病手当金支給申請書が必要
・濃厚接触者の該当性については、①距離の近さ、②時間の長さが重要な要素となっているが、保健所の調査に従い、総合的に判断される
・無症状でもPCR検査が受けられる
・新型コロナウイルスに感染しないためには、三密(密閉、密集、密接)を避けましょう
・個人でできる対策(手洗い・うがい・消毒)を徹底しましょう
・在宅勤務やリモートワークを活用して、感染リスクを下げましょう