社労士(社会保険労務士)登録するなら「開業」それとも「勤務」?実務経験を要するなど、意外と知られていない社労士登録について解説!

社労士(社会保険労務士)登録するなら「開業」それとも「勤務」?実務経験を要するなど、意外と知られていない社労士登録について解説!

社労士として働いて報酬を得るためには、社労士登録をしなければいけません。確かに、資格スクールの講師など、社労士登録をしなくても可能な働き方はあります。しかし、基本的には、社労士として顧客から依頼を受け報酬を頂くためには、社労士登録が必要です。

受験生は難関試験である社労士試験の勉強で手いっぱいで、意外と社労士登録について知らないものです。この記事ではそんな社労士登録について、詳しくお伝えします!

1 社労士(社会保険労務士)登録とは?

社労士法第14条の2第1項には、社労士試験に合格したら、全国社会保険労務士会連合会(以下、連合会)に備える社労士名簿に登録しなければならないと定められています。また、社労士登録をおこなうに伴い、都道府県の社労士会に入会し会員となることも定められています。

⑴ 社労士登録の条件

社労士登録をおこなうためには、以下の2つの条件を満たしていなければなりません。

① 社労士試験に合格していること

② 2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験があること

 

実務経験がない、もしくは2年に満たない場合は、連合会が実施する「事務指定講習」を修了すれば条件を満たすことができます。 

労働社会保険諸法令に関する実務経験の詳細と、事務指定講習については、詳しく後述します。

⑵ 社労士登録は勤務地で?住所地で?

社労士登録は連合会に出向かなくても、事務所、または住所地のある都道府県の社労士会でおこなうことができます。

所定の登録申請書を社労士会に提出するのですが、提出先は、後述する登録の「区分」によって変わってきます。ほとんどは、開業した事務所か勤務先の管轄社労士会に提出します。

例えば、居住地は神奈川県ですが、東京で開業して事務所を構えている場合は、東京都社労士会に申請書類を提出することになります。

⑶ 社労士登録と社労士会入会が必要

社労士登録とは、連合会の社労士名簿に登録を完了することですが、連合会に直接申請する必要はなく、管轄社労士会で入会申請をおこなえば併せて完了できます。

2 社労士(社会保険労務士)登録の流れ

社労士登録するには、大前提として、まず社労士試験に合格しなければなりません。その後は、以下の流れで登録を進めていきます。

⑴ 申請登録の流れ

申請登録は、下図の通りにおこないます。先述の通り、入会予定の社労士会に登録申請書類を提出しさえすれば、申請内容が自動的に連合会まで進達されます。

 

申請者

  ⇩ 入会予定の社労士会に登録申請書類を提出

都道府県社会保険労務士会(審査・受付)

  ⇩ 進達

全国社会保険労務士会連合会(審査・社会保険労務士名簿・証票の作成)

  ⇩ 証票を発行(登録完了後2週間程度)

申請者

⑵ 社労士登録の必要書類

社労士登録の申請に必要な書類は以下の通りです。各都道府県によって必要書類は異なるため、下記以外の書類が必要となる場合があります。 詳細については、管轄の都道府県社労士会までお問い合わせください。

 

NO. 書 類 必要数 備 考
1 社会保険労務士登録申請書(様式第1号) 1通
2 社会保険労務士試験合格証書の写し 1通
3 従事期間証明書(様式第8号)又は

事務指定講習修了証の写し

※従事期間証明書のよくある質問はこちら

1通
4 住民票の写し

(提出の日前3ヶ月以内に市区町村から交付された

マイナンバーの記載のないもの)

※コピーは不可

1通
5 写真票 1通 貼付する顔写真は、

縦3cm、横2.5cm、背景無地、無帽、正面向の鮮明な写真(白黒でも可)、裏面に氏名記入のこと

6 a~dのいずれか1つ【コピー不可】

a)戸籍抄本

b)個人事項証明書

c)改製原戸籍

d)住民票の写し【旧氏(通称)の記載のあるもの】

※提出の日前3ヶ月以内に市区町村から交付されたマイナンバーの記載のないもの

※d)住民票の写しを添付する場合は、必要な書類4『住民票の写し』と併用可能

1通 次のいずれかに該当する者のみ必要

(ァ)合格証書または事務指定講習修了証の氏名と住民票の氏名が異なる者

(イ)通称併記を希望する者

7 通称併記願 1通 通称名の使用を希望する者のみ必要

⑶ 登録費用と入会金、年会費

社労士登録の際には登録料だけでなく、社労士会入会費や年会費の支払いも必要になります。

ですので、社労士登録の初期費用の合計は、かなり高額になります。ちなみに入会費と会費は都道府県ごとに異なり、「開業」「勤務」などの区分によっても変わります。

① 社労士登録の初期費用

下表は、社労士登録をおこない、東京都社会保険労務士会へ入会した場合の初期費用の例です。これら経費の他に、実務経験がない場合は、事務指定講習費用の77,000円が追加になります。社労士登録の初期費用として、このくらいの金額がかかってくることは知っておいた方が良いでしょう。

 

登録関連費用 登録免許税 30,000円 (収入印紙)
登録手数料 30,000円
社労士会入会費・会費

東京都社会保険労務士会の場合

<開業> 入会金  50,000円
年会費 96,000円
<勤務等> 入会金  30,000円
年会費 42,000円

東京都社会保険労務士会の資料を基に作成

② 会社が負担してくれる場合も

かなり大きな初期費用が必要となる社労士登録ですが、勤務社労士の場合は、登録費用、入会金、年会費などを会社が負担してくれる場合があります。全ての会社に当てはまるわけではないので、社労士登録をおこなう前に会社に確認しておきましょう。

3 社労士登録に必要な実務経験とは?

社労士登録をおこなうには「社労士試験合格」と併せて「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」が必要です。「実務経験」の要件は、具体的には下表のいずれかで満たすことができます。

⑴ 「労働社会保険諸法令に関する2年間の業務経験」

ご覧の通り「実務経験」は、社労士の専門業務に携わった経験を指しています。自分が「実務経験」の有無を満たしているかどうか不明の場合は、社労士会連合会に連絡し確認しておくと良いでしょう。

 

1 雇用保険、健康保険、厚生年金保険の被保険者資格取得届・喪失届
2 健康保険、厚生年金保険の被保険者報酬月額算定基礎届・月額変更届
3 雇用保険被保険者離職証明書
4 労働保険の概算・確定保険料の申告・納付
5 就業規則(変更)届
6 36協定届
7 労働者名簿

出典:全国社会保険労務士会連合会「労働社会保険諸法令関係事務従事期間証明書」

⑵ 「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」を修了

社労士会連合会が主催する「労働社会保険諸法令関係事務指定講習」を修了すれば、2年間の実務経験を積まなくても社労士登録の要件を満たすことができます。当該講習を受ければ、社労士事務所等に転職をして、そこで2年間費やす負担から逃れることができます。そのため、費用は77,000円と高額にも関わらず、定員がすぐに埋まってしまうような状況です。

 

講習内容 通信指導課程(4か月間) 教材によって自己学習し、研究課題の報告による通信教育方式により添削指導をおこなう。
面接指導課程(4日間) 講習科目について講義形式により4日間(1科目3時間)おこなう。

なお、新型コロナウイルス感染症による感染リスクの拡大と感染防止のため、eラーニング講習(1科目3時間)も認める。

講習科目 ①労働基準法及び労働安全衛生法

②労働者災害補償保険法

③雇用保険法

④徴収法

⑤健康保険法

⑥厚生年金保険法

⑦国民年金法

⑧年金裁定請求等の手続

修了認定の要件 ①通信指導課程は、課題の提出を期間内に完了すること。
②面接指導課程は、4日間の面接指導を全日程受講すること、またはeラーニング講習をすべて受講完了すること。
受講料 77,000円(税込)

全国社会保険労務士会連合会の資料を基に作表

⑶ 社労士登録の区分(種類)とは?

既に初期費用で触れましたが、「社労士登録」には区分があります。「開業」「勤務等」の2つに、勤務等登録の一部である「その他」が加わります。実務に携わらなくても登録可能である点は、社労士登録の特徴です。

社労士登録するにあたっては、独立開業するのか、企業内社労士として働くのか、事前にしっかりと考える必要があります。

それでは、各区分について紹介します。

① 開業社労士

自らの社労士事務所を独立開業するために必要な登録です。一人で事務所を運営する場合も、事務員を雇用する場合も、社労士事務所を構えるなら開業登録を完了した社労士が1人は在籍していないといけません。

その他には、以下のような場合に開業登録をおこないます。

・税理士事務所など他士業事務所のなかで開業する場合。

・社労士法人の法人社員となる場合(個人の開業登録が必要となる)。

・企業をクライアントとして仕事を請け負う。

・主に1号業務(書類作成提出代行・事務代理)、2号業務(帳簿書類作成)を中心に請け負う。

 

開業社労士の方が一般的に高収入であるため、開業登録の社労士会年会費は、最も高いことが多いです。

② 勤務社労士

勤務社労士登録をおこなうと、開業登録と違い、勤務先以外の仕事を引き受けることはできません。仮に依頼があっても、顧客と直接契約することはできません。

勤務社労士登録は、その他、以下のような場合におこないます。

・社労士事務所や社労士法人に雇用されて、内部で社労士業務に携わる場合。

・一般企業の人事部、総務部などに所属して、社内で社労士業務に従事する場合。

・いわゆる「その他」登録者も含まれる。

・社内で人事部門の業務などに携わるので社労士資格は必要ないが、対外的に社労士を名乗るために登録する場合。

・企業内で、労務専門家として認知されやすくするため。

勤務登録の場合、開業登録よりも年会費は安いことが多いです。

③ 社労士の「その他」登録

「その他」登録とは、「その他」という区分があるわけではありません。先述の通り勤務等登録の一部であり、登録時に勤務先を指定しなければ、自動的に「その他」登録となります。その他登録の場合は、社労士業務に携わることはできないので注意が必要です。

その他登録は、以下のような場合におこないます。

・社労士の実務はおこなわないが、社労士会や支部の集まりや研修に参加したい場合。

・将来的に開業社労士や勤務社労士になるために準備をしている場合。

・開業社労士や勤務社労士だったが、事情があって休業している場合。

・社労士の実務はおこなわないが、社労士会に在籍したい場合。

・資格スクール講師などが、著書を執筆するために社労士を名乗りたい場合。

 

「その他」登録の年会費は、勤務社労士と同額の場合が多いです。

④ 社労士登録をしない人もいる

社労士試験に合格しても、敢えて社労士登録をしない人もいます。登録初期費用、年会費はかなり高額なので、試験に合格しても社労士として働く予定がない場合は、登録をおこなわないことも可能です。

しかし、社労士登録すれば、会合や会報などで最新の情報が提供されるというメリットがあります。そのような恩恵にあずかりたいなら、社労士登録しておいた方が良いでしょう。

4 サマリー

試験に合格するだけでは、社労士登録の要件を満たさないことがお分かり頂けましたか。その場合は然るべき実務経験を積むか、実務指定講習を受ける必要があることを、覚えておきましょう。

5 まとめ

社労士として顧客から依頼を受け報酬を頂くには、社労士登録が必要である。

・社労士法は、社労士試験合格後に社労士名簿に登録し、都道府県の社労士会に入会することを定めている。

・登録には社労士試験の合格と、2年以上の労働社会保険諸法令に関する実務経験が必要。

・連合会主催の事務指定講習を修了すれば、2年間の実務経験を積まなくても登録が可能。

・社労士登録の際は登録料、社労士会入会費、年会費の支払いが必要になる。

・社労士登録には「開業」「勤務等」、勤務等登録の一部である「その他」の区分がある。

・「その他」登録では、社労士業務に携わることができない。

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