まずは国民年金法の理解を優先! 社労士(社会保険労務士)試験科目でも難解な年金制度を解説

まずは国民年金法の理解を優先! 社労士(社会保険労務士)試験科目でも難解な年金制度を解説

年金制度の存在目的とは「所得補償」であり、年を取ってからや障害を持ったときなどに支給されるものです。「国民年金」は20歳より加入義務が発生しますが、学生の間は延長したり(学生納付特例制度)、親が代わりに払ってくれたりといった関わり方をしていたかと思います。就職すると今度は「厚生年金保険」に加入し、現在も払い続けている方が多いでしょう。

この記事では国民年金の概要についてまとめ、社労士(社会保険労務士)試験科目である「厚生年金保険」との関わりを理解し、年金制度全体を把握するポイントをお伝えします。

1. 日本の年金制度の特徴と沿革

年金には国民年金と厚生年金保険があります。元々分かれていたのではなく、制度が円熟する経緯でこのかたちになりました。年金科目の勉強は、国民年金法を優先した方が良いといわれるのは、厚生年金保険は国民年金の上乗せであるため国民年金法が基礎となっているからなのです。国民年金法をしっかりと理解すれば、厚生年金保険法の理解は楽になります。

(1)2階建て年金

国民年金は対象を全国民としており、厚生年金保険は対象を民間企業の被用者としています。両者は分かれて存在するものではなく、深く結びついています。

出典:厚生労働省

(2)沿革

昭和34年11月に、無拠出制の年金が支給されたことからスタートします。無拠出制とは、保険料を払わなくてももらえるという意味で、当初は高齢者、障害者、母子家庭などに対する福祉年金でした。

昭和36年4月に、拠出制の国民年金法がスタートします。当初は自営業者のみが対象でした。この昭和36年は「国民皆年金」達成の年と呼ばれています。この頃厚生年金や共済年金なども既にスタートしており、国民全員が何らかの年金制度に入ることができるようになったことからの名称です。

昭和61年4月に公的年金制度の大改正がおこなわれました。それ以降の年金保険制度は「新法」と呼ばれ、それまでのものは「旧法」と呼び区別されるようになりました。

①「基礎年金制度」

国民年金を国民共通の基礎年金とし、厚生年金・共済年金をそれに上乗せするかたちを取る「2階建て年金」がスタートしました。

②「第3号被保険者制度」

夫の扶養に入っている妻も、届出を出せば保険料の支払いなしに被保険者になれるようになりました。
平成27年10月1日、公務員の共済年金が厚生年金保険に一元化されました。

公的年金制度の大改正までの「旧法」については、あまり出題されないと思って良いでしょう。「新法」の勉強をしっかりしておきましょう。

2. 国民年金法の頻出問題

社労士試験科目において、年金科目は大きな比重を占めます。

下表からお分かりのように、年金に関する問題は択一式だけでも20問あります。そこに選択式問題と、「社会保険に関する一般常識」から出題されることもあることを考えると、年金問題は社労士試験全体の3割かそれ以上を占めることになります。そのため、理解の基礎となる国民年金法は「時間をかけてよい科目」といわれています。

この科目が得意になれば、総得点は大きくアップしまので、国民年金法は腰を据えてしっかり勉強しましょう。

表1:国民年金法と厚生年金保険法の出題数と配点数

試験科目 択一式 (配点) 選択式 (配点)
厚生年金保険法 10問(10点) 1問(5点)
国民年金法 10問(10点) 1問(5点)

出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト

出題傾向としては、以下のようなところです。

①基本的な知識でも十分に正解できる問題も出題される

②年金財政や制度の歴史についても出題される

基本的な知識がしっかりしていれば得点できるという要素はあります。また、国民年金法は勉強時間に得点が比例する科目ともいわれています。

一方、度重なる改正で制度自体が複雑化されたため、近年の難易度は上がっているといわれます。選択式はかなりレベルが高い問題が出題されますし、択一式の問題については、従来は難易度が低く得点源となりやすいといわれていましたが、制度自体の複雑化にともない、近年の難易度は上がっています。

3. 国民年金法の攻略ポイントとは?

国民年金の給付に関する基本的な知識がないと、法改正絡みの問題もあやふやになってしまいます。「被保険者」や「給付」の種類はしっかりと押さえましょう。また、老齢、障害、遺族以外の給付についても、頻出問題ですので理解しておきましょう。

表2:国民年金の被保険者

強制被保険者 第一号被保険者 自営業者やパートなど、第2号被保険者や第3号被保険者になっていない20歳以上60歳未満の方。
第二号被保険者 サラリーマンなど、厚生年金に加入している方。
第三号被保険者 第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者。国民年金にのみ加入する。
任意加入被保険者 任意加入被保険者 ①日本に住所がある20歳以上60歳未満の老齢厚生年金などを受けることができるもの

②日本に住所がある60歳以上65歳未満のもの

③外国に済んでいる20歳以上65歳未満の日本人

特例による
任意加入
65歳時点で老齢基礎年金の受給権がないもので、65歳から70歳までにもの

①老齢基礎年金

65歳から支給される国民共通の老齢年金です。納付期間等が10年以上の被保険者が、65歳から受け取れます。請求すれば、最高30%減額で60~65歳からに繰り上げ給付が可能です(任意加入被保険者以外)。66~70歳からに繰り下げれば、最高42%増の支給額になります。
年金制度は、保険料を払っている世代が年金を受給する世代を扶養するという特徴があり、「世代間扶養」と呼ばれています。

②障害基礎年金

病気やけがなどで、重い障害を負ってしまったときに受け取ることができる公的年金です。障害等級の1級、または2級に該当したときに支給されます。

③遺族基礎年金

一家の大黒柱が亡くなってしまったときに、残された遺族(配偶者又は子)が受け取ることができる公的年金です。しかし、遺族基礎年金の遺族の範囲が狭いことに注意が必要です。

④その他

寡婦年金:
夫に先立たれた未亡人に支給される年金です。婚姻期間10年以上の妻に、60~65歳まで支給されます。

・脱退一時金:
短期在留外国人の返還金制度です。被保険者期間が6か月以上の外国人が対象です。

・死亡一時金:
第一号被保険者期間3年以上の被保険者が死亡し、遺族基礎年金が支給されない場合に支給されます。

・付加年金:
第一号被保険者期間の独自給付で、老齢基礎年金のうえに上乗せになります。

⑤年金制度の3階建て構造

第一号被保険者である自営業者は、かつて年金の一階部分しか持ちませんでしたが、現在は3階建ての構造で年金に加入できるようになりました。

出典:明治安田生命

・国民年金基金:
国民年金基金ホームページによると、”国民年金基金とは、会社員等の方との年金額の差を解消するために創設された、国民年金法の規定に基づく公的な年金であり、国民年金(老齢基礎年金)とセットで、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。

以下の図は、国民年金基金に一口加入した場合の受け取りのパターンを紹介したものです。このように、自分が何口加入するかによって受け取る年金額が決まります。給付の型は、終身年金A型・B型、確定年金Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型・Ⅴ型の7種類があります。

出典:国民年金基金ホームページ

・「iDeCo+」など:

平成30年5月1日より、「iDeCo+」をはじめとする改善がありました。

Ⅰ 「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)の創設

「iDeCo+」は、企業年金を実施していない中小企業が、従業員の老後の所得確保に向けた支援をおこなうことができるように創設されました。従業員の掛金との合計が、 iDeCo の拠出限度額の範囲内である月額2.3万円相当で、 iDeCo に加入する従業員の掛金に追加して事業主が掛金を拠出することができる制度です。

Ⅱ 簡易企業型年金の創設(企業型年金関係)

簡易企業型年金は、制度運営の負担を最少化し、中小企業向けにシンプルに制度設計とした企業型年金です。設立条件のパッケージ化とで、設立時に必要な書類等を削減。設立手続きを緩和しています。

Ⅲ 確定拠出年金及び確定給付企業年金におけるポータビリティの拡充

制度間における「ポータビリティ」とは、携帯電話のナンバーポータビリティーのように、転職時等に制度間の資産移換を可能とするものです。

例えば、企業DBで積み立てた資金を、転職時に転職先の企業年金(DC等)に資産を移換でき、当該移換資金も合わせたかたちで転職先の企業年金を実施することができます。

2019年6月3日に金融庁の「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」は、公的年金以外に「老後資金2000万円(を貯蓄から取り崩すこと)が必要」だと発表して物議を醸しました。超長寿社会を迎えている分、老後に必要なお金も増えています。同報告書は「(現役期であれば)長期・積立・分散投資による資産形成の検討を」と述べたことでも注目されました。
年金問題は、高齢化社会では必ずや議論となる内容です。近年登場した「iDeCo+」「簡易企業型年金」の制度は押さえておきましょう。

⑥総則

総則とは「基本となるきまり」のことで、国民年金法 であれば第一章のことです。(第一条から第六条まで)この条文をよく読んで理解しておきましょう。総則には、以下のような多岐にわたる事柄への規定がまとめられています。

国民年金制度の目的
国民年金の給付
管掌
年金額の改定
財政の均衡
財政の現況及び見通しの作成
用語の定義
権限の委任
事務の区分

⑦その他の年金用語

・国庫負担

現在、老齢・障害・遺族基礎年金の給付は、半分を国保負担(国が事業に対して補助すること)としています。基礎年金の国保負担金の財源は、主に消費税です。

・不服申し立て

年金の決定に不服がある場合は、決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に、文書または口頭で、審査請求することができます。その決定に対してさらに不服がある場合は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に、再審査請求できます。

4. 国民年金法のその他のチェックポイント

(1)経過措置について

国民年金法対策を語るうえでは言及しておかねばならないのが「経過措置」です。

経過措置とは「特定の法律・制度が新しいものに移行する際に、移行中や移行後に発生する不利益や不都合などを極力減らすために取られる一時的な措置や対応」のことです。

年金制度の変遷を学んでいくと、年金関連の法令には刷新の際にとられた多くの経過措置が残っているのですが、これが年金科目が複雑な理由の一つです。時が経つとどうしても古くなる法律・制度を、その時代の社会状況に合わせて改正すると、新法では損をする人が出てきます。

年金においては特にこういうことが起こりやすいため、「経過措置」で徐々に段階を踏んで実施するなどの処置を取るのです。重要な部分なのでよく理解しておきましょう。

(2)今後の年金の展望

老齢厚生年金の支給開始は、現在65歳からとなっています。それにともない「高年齢者法」の改正があり、会社は65歳まで継続して雇用することが義務化されました。

しかし今、高年齢者の継続雇用と年金支給開始を、更に68歳まで引き上げようという議論がなされています。それどころか、年金支給開始を70歳からにしようという動きもあることは、新聞等で報道されたためご存知の方も多いでしょう。これらは近い将来、法改正の出題に必ず関わってきますし、基礎知識として知っておいた方がよい内容です。

5. サマリー

国民年金法の内容は、全体の問題の1/3を占めるだけあって膨大な内容数があります。

既に国民年金法は「時間をかけてよい科目」であると申し上げましたが、全体に占める割合からいっても、厚生年金保険法とのつながりからいっても、しっかり理解すべき科目です。

6. まとめ

・日本の年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建て年金であることが特徴。
・社労士試験では年金科目の比重が大きいため、国民年金法は時間をかけて勉強すべき科目である。
・国民年金の「被保険者」「給付」の種類は頻出問題である。
・国民年金法は、今後の法改正の可能性も踏まえて、基礎知識として知っておくべき内容である。

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