一体どうなる社労士資格!?今注目の社労士の将来性について解説

一体どうなる社労士資格!?今注目の社労士の将来性について解説

最近よく「社労士」や「労務士」という言葉を耳にする方も多いのではないでしょうか。現在、日本では国策として進められている「働き方改革」の影響で、企業は今までになかった形の雇用形態を取り入れており、労働方法の多様化が実現してきています。労働者側にとってはライフスタイルに合わせられるため、良いイメージをお持ちの方が多いようです。

その一方で経営者は頭を悩ませていることがあります。それは、今までの画一的な経営システムでは立ち行かなくなってきているという事実です。会社では、あるルールを変更するとそれに伴って様々なルールも変更せざるを得なくなります。しかし、そこには細かな法律の壁があります。

そこで活躍するのが「社労士」なのです。刻一刻と変化していく労働環境に会社が対応していくために今まさに注目されている存在。それが「社労士」です。

今回の記事では社労士について分かりやすくご説明し、その将来性について考えていきます。おすすめのダブルライセンスについても紹介いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。

1.なぜ社労士がいるの? その役割は?

(1)社労士とは

社労士とは一般的な略称で、労務士とも呼ばれ、正しくは社会保険労務士と言います。(以後は社労士とします。)社労士は労働基準法、労働契約法、労災保険法などの「労働関係の法律」を領分とする国家資格のことです。

具体的な業務内容としては、次のようなものが挙げられます。

・労働・社会保険上の手続き
・就業規則の作成
・労災や健康保険などの手続き
・雇用保険の申請
・会社の業務が労働基準法違反にならないようアドバイスや改善案の提示
・勤怠記録や給与台帳の作成、管理
・労働基準監督署の調査への立ち合い
・概算保険料申告書から保険料を算出、納付
・保険者報酬月額算定基礎届提出
・労働関係のコンサルティング
・助成金関係の申請

様々な業務があり、さすがは国家資格です。

このままでは分かりにくいので、社労士の業務をもう少し分かりやすく分類していきます。社労士の業務は一号業務、二号業務、三号業務に分類することができ、

一号業務【主に労働社会保険に関する書類の作成、申請】
二号業務【主に帳簿書類の作成】
三号業務【コンサルティング】

となっています。これらの業務は社労士にしか許されていない独占業務とされています。

以上のことから、社労士の役割を一言でまとめると「経営面などを除く労働全般のプロフェッショナル」と言えるでしょう。

(2)社労士の役割

よく弁護士との違いを質問される方がいらっしゃいますが、大きな違いは「裁判は弁護士しかできないこと」です。では弁護士の方が完全に上なのかというとそうとばかりは言えません。弁護士は労働争議については知識が豊富であることが多いです。しかし、雇用保険法や健康保険法、年金法に関しては社労士の方が詳しいことが多いでしょう。

これは資格試験内容からも分かります。社労士は年金法や雇用保険法が必修で出ますが、弁護士の資格試験には全く出てきません。弁護士の手が届きにくい部分を支えることが社労士の役割なのです。

(3)社労士のやりがい

社労士は経営者の身近なパートナーとして、共に問題解決し、事業が発展していく喜びを共有できます。顧客に感謝され、相応の報酬を受け取ることができることはこの仕事の最大の喜びであり、モチベーションの源と言えるでしょう。

また、経営者にだけでなく、まじめに働いてきた労働者が正当な権利を享受するためにも大きな手助けができます。様々な職種の人とも知り合い、時には情報共有していくため、人と人とのつながりを大切にしている人に向いていると言えます。

(4)社労士の平均年収

気になる社労士の平均年収は、

独立開業社会保険労務士:450~800万円
事務所勤務社会保険労務士:400~650万円(ハローワーク求人検索より算出)

となっています。厚生労働省の統計では、平均526万円とあり、年収がもっとも高い50代の平均年収は804万円でした。個人差がかなり大きい職種ですので、参考程度にしていただければと思います。

2.社労士の仕事は自動化されてなくなるのか?

結論から申し上げると、なくならないと言えます。

社労士に似た職種である司法書士、行政書士、税理士の仕事内容はAIとの相性が良く、単純な書類作成は近いうちにAIソフトが開発され、需要が流れてしまうことが予想されます。

もちろん、社労士の業務内容にも似た部分がありますので、AIによる自動化は進んでいくでしょう。特に上記の一号業務と二号業務の自動化は間違いなく行われてしまいます。しかし、社労士にとって、もともとこの一号業務と二号業務は実は労力のわりに実入りが少ない業務なのです。

独立して社労士を経営している方で、社労士の仕事のみで十分な収入を得られている方は大きく2パターンあります。

1パターン目は複数の会社と契約し、一号業務と二号業務を一手に引き受けているパターン。このパターンは社労士の人数も必要な上、新規獲得はかなり難しいと言われており、地盤を引き継げるなどの幸運な条件がないと困難です。

2パターン目は3号業務であるコンサルティングを中心に行っているパターンです。

主なコンサルティング業務の内容は、

・就業規則の作成・見直しコンサルティング
・変形労働時間制・裁量労働制などの導入コンサルティング
・賃金制度設計や評価制度の導入コンサルティング
・退職金制度のコンサルティング
・社会保険料の適正化コンサルティング
・高齢者の定年後雇用に関するコンサルティング

などが挙げられます。

コンサルティング業務は高収入が期待でき、社労士の花形ともいうべき業務です。

しかも、会社の状態や世間の風潮などを考慮してコンサルティングしなければならないため、AIによる自動化は当分おこらないと考えられます。この三号業務を中心にしていくことで、AIによる自動化の波にも負けず、高収入を保てるでしょう。

また、社労士の方の中には本業だけでなく、講演会やセミナーを開いて講師収入を得ている方もいらっしゃいます。これも一つの社労士資格の有効活用と言えます。

3.ダブルライセンスとしての社労士の価値

(1)社労士としてダブルライセンスのメリットの有無

ダブルライセンスとは、読んで字のごとく資格を2つもつことです。ダブルライセンスをお持ちの方は意外と多く、社労士や行政書士、司法書士などを生業としている方が中心です。

では、社労士の資格を取るのも大変だったのに、さらに苦労してもう一つ資格を取り、ダブルライセンスになるメリットは本当にあるのでしょうか?

今回は社労士を中心に考えていきますので、答えは保険の意味も含めて「メリットはある」と言えるでしょう。

ただし、社労士の資格を活かして仕事をされている方は会社に雇われている方と独立開業している方とに分けることができますが、ダブルライセンスによるメリットがあるのは独立開業している社労士の方に限ります。

(2)会社に雇われている社労士について

ここでいう会社に雇われている社労士とは、社労士事務所やコンサルティング会社に雇われ、社労士としての仕事で給料をもらっている方ではなく、一般企業で総務部や人事部などに配属され、社労士としての仕事以外にも会社の仕事もしている方を指します。

会社に雇われている方にとって、ダブルライセンスは正直労力に対して報われることがほとんどないため、おすすめできません。社労士の資格取得には一年程度かかると言われていますが、社労士の資格が給料や役職に良い影響を及ぼす会社は少数であり、良くて手当てが貰える程度の様です。

(3)独立開業をしている社労士、目指している方について

ダブルライセンスがおすすめなのは独立開業をされている方、もしくはそれを目指す方です。

では、独立開業されている方にはどんなメリットがあるのでしょうか。メリットは大きく2つあります。

①差別化

社労士の顧客の中で依頼が多いのは建設業です。建設業は届け出が必要な書類が多い上、特殊なものもあるため、社労士としての手続きも特殊です。また、建設業は行政書士にも仕事を発注することが多いので、社労士と行政書士のダブルライセンスであれば建設業の方にとって利便性の高い存在となり、他の社労士事務所と差別化が図れます。ほかにも、

・運送業
・自動車販売業
・風営法関係

などでも行政書士資格は役立ちます。

企業の手続きを一手に引き受けることで信頼を得て三号業務のコンサルティングにつなげていくことも可能になってきます。

②リスクヘッジ

そもそもダブルライセンスが流行したのは社労士としての仕事だけでは行き詰った時の保険的な意味合い、つまり「リスクヘッジ」のニュアンスが強いのです。

会社勤めであれば個人経営よりも倒産の可能性は低く、労働基準法によってある程度は守られています。しかし、独立開業となるとそうはいきません。しかも今から独立開業しようとする人で独立開業経験のある人は少ないため、誰しも不安いっぱいの中でスタートしなければなりません。

だからこそ資格を複数もつことで仕事の幅を広げ、リスクを下げようと考えるのです。

以上のことから、ダブルライセンスは社労士として独立開業を目指す方にとっては一定のメリットがあると言えるでしょう。

(4)社労士とのダブルライセンスでおすすめの資格

①行政書士

独立開業社労士の方がダブルライセンスを考えるのであれば、比較的取りやすい資格な上、守備範囲が広いので活かしやすい行政書士がおすすめです。クライアントも同じ業種であることが多いため、他の社労士と差別化を図ると同時に活かしやすい資格です。

②中小企業診断士

三号業務であるコンサルティングで契約を狙っていくのであれば、中小企業診断士がおすすめです。社労士と合わせることでより会社に高付加価値なサービスを提供できるようになり、より多くの内容にコンサルティングが可能になります。

また、社労士と中小企業診断士は試験内容に関連性があることも大切なポイントです。中小企業診断士の一次試験には、組織論というジャンルが存在し、労災や雇用といった労働保険関係などの法律問題が1問~4問程度出題されます。少しでも安定した得点源があることは大変有利なので、合格可能性が一般の受験生より高くなると言えます。

③ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーと社労士では、少し畑違いでは?と思われるかもしれませんが、実は注目されている組み合わせなのです。実際、ファイナンシャルプランナーとのダブルライセンスの方は多くいらっしゃいます。

社員のための「社会保険料」に関して社労士とファイナンシャルプランナーの両方の知識から解説していくことで説得力をもった提案ができます。また、会社の社会保険や労働保険の新規適用の依頼を受けるとともに、事業主個人の年金相談を受けることもあるそうです。

どんな形であれ、頼りにされることはやりがいにも収入にもつながります。様々な相談を通じて長く付き合っていくことで安定した契約先と喜びを同時に得られるのです。

④日商簿記検定

企業の活動を数字で分析し、経営状況や財政状態を明らかにすることを簿記と言います。

日商簿記検定は簿記の技能に関する検定試験であり、言わずと知れたメジャーな事務系資格です。簿記をダブルライセンスとしてもつことで、経理を担当しないとしても会社全体のお金の流れを把握しやすくなります。

ひいては給与から控除された社会保険料がその後どのような形で納付されるのかといったことを掴むことで、経理との共通理解がスムーズになり、社労士としての仕事がやりやすくなります。

1級は難易度が高いですが、2級と3級の難易度はそれほど高くないので、社労士を取得できた方ならば現実的な組み合わせではないでしょうか。

4.社労士を活かして企業で働くこともできる!

(1)社労士資格者を企業が雇いたい理由

社労士の有資格者のうち、3人に1人は独立開業をせずに企業に就職している「勤務社労士」だと言われています。

近年、ブラック企業撲滅が叫ばれ、「働き方改革」という国の方針まで打ち出されています。そのような風潮の中で、従業員の労働環境の整備や旧態依然とした長時間労働の中止、十分な給与の保証などが企業に求められており、対応できていない企業には有望な人材が集まらない事態となっています。

社会保険を完備し、人事評価や就業規則、労働契約書を正しく管理し、快適な労働環境を用意することは、従業員のやる気を起こさせ、ひいては企業の収益を保証することにつながります。

以上のことから、社労士が社内にいることで、労働環境はより改善されていくと考える企業経営者は多くおり、必要とされています。また、外部の社労士事務所に顧問契約を結ぶよりコストがかからないと考える経営者もおり、社内社労士を求人している会社もあります。

(2)企業での社労士資格の活かし方

企業では、社労士資格者は主に人事部や総務部に配属されることが多いです。

せっかく取得した社労士資格を活かすには、企業内での自分の得意とする領域を開発するとキャリアにつながります。例えば助成金申請代行の専門家になれば、企業内の評価も高まるでしょう。最近は社労士に注目が集まっていることもあり、労働法関係担当ということで役員になられる方も出てきています。

また、健康保険に詳しくなり、保険業界に転職という方もいらっしゃるようです。

仕事内容が純粋に社労士のものばかりではなくなりますが、資格を活かすという意味では企業内で活躍するのも大きな選択肢の一つなのではないでしょうか?

5.社労士の将来性

(1)社労士の不安な点

社労士の資格を取ろうという方が一番気になるのは社労士という資格の将来性ではないでしょうか。

上記の「社労士の仕事は自動化されてなくなるのか?」でも申し上げた通り、一号業務と二号業務は近い将来、AIによる自動化で需要は減少していくでしょう。この風潮は行政書士でも同じです。行政書士の仕事の中心は自動車の登録関係と建築業の申請書類ですが、これらの業務も近いうちに誰でもソフトで作成できるようになってしまうでしょう。

しかも実はAI以外にも社労士の需要減少要因があるのです。

英語圏の先進国では、AIによる自動化に関らず、実はすでに需要が減ってきています。原因は海外へのアウトソーシング(外部委託)です。資格を持っているインドなどの発展途上国のオフィスに仕事を発注することで、コストを抑えられるからです。電話やネットを通じて書類作成ができるのであれば、賃金の安い国に依頼した方が合理的と考えるのは当然です。一号業務と二号業務を中心に活動している社労士の方は方向転換が必要かもしれません。

(2)社労士に将来性がある理由

不安になる点ばかり挙げましたが、ご安心ください。社労士は発展の可能性も大いに含んでいます。

社労士は専門的な知識を活かし、書類の作成・申請や企業の労働契約とその遵守ができていくようにすることが主な仕事です。

大企業は総務部や人事部に担当の社員がおり、手続きを行っているところもありますが、中小企業はそういった人員を配置する余裕があるところは少数でしょう。だからといって社労士抜きに全ての手続きをするというのは難しいのでどこかと契約することになります。

さらに、厚生労働省がブラック企業撲滅に積極的なのも社労士にとっては追い風です。どの企業もイメージダウンを恐れ、クリーンな経営を目指すからです。つまり、今現在社労士の需要は日本という国が率先して支えてくれる状態にあるのです。そしてこの社労士需要は少なくとも10年は拡大していくものと考えられます。

また、「働き方改革」による労働の多様化が社労士の可能性を広げてくれています。それぞれの企業にあった就業規則や労働形態、賃金制度、評価制度、退職金制度、社会保険料の適正化など、社労士が必要とされる仕事は確実に拡大傾向にあります。

大切なのは一号業務、二号業務をきちんと行い、人脈を広げ、信頼を得て三号業務であるコンサルティングを中心に行っていけるように努力することです。

書類作成を中心に行っているよりも個人の能力が問われてしまいますが、その分高収入の可能性が広がったとも言えるのではないでしょうか。個人の能力や努力次第では高収入が期待でき、まだまだ発展の余地がある資格といえるでしょう。

6.サマリー

いかがだったでしょうか。社労士に限らず、弁護士、行政書士、税理士などの「士業」と呼ばれる仕事は昔に比べると厳しい立場になってきています。しかし、これからの時代に求められるのは「資格をどう活かすか」なのだと思います。「働き方改革」が行われ、労働形態が変化し続けている今こそ、社労士が必要とされているのではないでしょうか。

7.まとめ

・一号業務と二号業務はAIによる自動化によってなくなっていく
・社労士がこれから中心にしていくべき業務は三号業務のコンサルティング
・ダブルライセンスがおすすめなのは独立開業社労士。理由は差別化とリスクヘッジ
・社労士は企業内で求められる人材にもなれる
・社労士の需要は増えており、将来性がある

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