社会保険に関する一般常識を制するには?社労士(社会保険労務士)試験の得点源にできたら強い「社一」の出題傾向をチェック!

社会保険に関する一般常識を制するには?社労士(社会保険労務士)試験の得点源にできたら強い「社一」の出題傾向をチェック!

一般常識は、社会保険労務士(以下、社労士)試験の中でも最難関だといわれます。

特に「一般常識の労務管理その他の労働に関する一般常識」いわゆる「労一」の範囲があまりにも広範囲なため、もう一方の「社会保険に関する一般常識」いわゆる「社一」で点数を稼ぎましょうというアドバイスを良よく聞きます。

では、「社一」の出題科目とはどのような内容なのでしょうか。この記事では、社一の内容について具体的にまとめ、効率的な学習方法についても提案していきます。

1. 社労士(社会保険労務士)試験「社一」の基礎は社会保障

社一には、各社会保険をはじめとした社会保障の内容が出題されます。社労士は、その専門性をもって人びとの保険・年金に関する質問に答えていく職業というイメージが強いと思います。資格取得後も実務で必要な科目なので、しっかりと学習したいところです。

社会保障制度は、日本国憲法25条に基づいています。25条の条文を紹介しましょう。

第二十五条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

出典:衆議院

社会保障とは、この憲法25条に基づき国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しようとしています。

社会保障制度とは、具体的には

①社会保険
②公的扶助
③社会福祉
④公衆衛生

の4つを指します。

表:社会保障の具体的内容

社会保険 医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険
公的扶助 生活保護など
社会福祉 母子、児童、高齢者、障害者などへのサービスの提供
公衆衛生 上下水道整備、健康診断、感染症対策、予防接種の実施

「社会保険制度」は、社労士が実務で関わっていく制度ですのでしっかりと学習しましょう。また、社会保険労務士試験の基になっている社会保険労務士法も、社一の範囲に含まれます。

2. 社労士試験「社一」の頻出諸法令

選択式と択一式、それぞれについて見ていきましょう。

選択式
法令や社会保険制度の沿革からの出題の他に、厚生労働白書などの白書からの出題がポイントになります。また、各法律の目的条文や総則部分に関する出題する問題も見られます。目的条文が重要であることは他の科目においても同じです。

択一式
出題内容ですが、択一式では法令分野からの出題が多く、ここでしっかりと得点を稼ぐことが合格基準点クリアのカギとなります。労一からの出題は、法令よりも統計資料や白書などから出題されることが多く、得点の見込みが立ちづらいのです。その分、社一が得点源として大事になってきます。

択一式では、過去問学習が有効です。医療、介護、年金など、社会保険に関する幅広い知識を問われます。まずは社会保険諸法令の理解を優先しましょう。国民年金法、高齢医療確保法、介護保険法は出題が多い科目です。これらも過去問対策が大事ですのできちんと対策しましょう。

社一は、国民健康保険法、介護保険法などの法律から出題されることもあり、また社労士法、国民年金法、介護保険法など単一で一科目になるほどのボリュームがある科目もあります。社一対策は、まずは法律に力を入れましょう。

(1)国民健康保険法

国民健康保険の対象は主に無職の人や自営業者です。ご存知のように、国民健康保険の他には「健康保険」(会社員とその被扶養者が対象)、「共済組合」(公務員と私立学校の職員が対象)があります。

①沿革

平成30年4月まで:保険者は市町村と国民健康保険組合

都道府県も国民健康保険事業に加わる(広域化)

都道府県が財政責任を負う

市町村が徴収や給付に関する事務(資格の管理、保険料制定、通知)をおこなう

では、国民健康保険料を滞納した場合はどうなるのでしょうか。

滞納から1年経過後、被保険者証を返還しなくてはならない

「被保険者証明書」を交付される。

医療費は全額払いになり、後で「特別療養費」で自己負担分以外を受け取れる。

(2)高齢者医療確保法

高齢者の医療は財政を圧迫しており、その出所と対策のためのこの法律は、近年注目があつまるところです。高齢者医療確保法が規定する内容をまとめました。

①医療費適正化計画推進(高齢者医療による財政負担と、健康保険制度の不均衡を是正)

・計画目標の作成と実績検証
・生活習慣病予防対策
・長期入院の是正

②高齢者医療制度

・前期高齢者保健者間費用調整(65歳~75歳未満の医療保険加入者)
・後期高齢者医療制度:
(75歳から被保険者に。すべての国民の義務)
(65歳~75歳未満で、障害で認定を受けたもの)
・後期高齢者医療費用の内訳:
5割公費(国、都道府県、市町村)
4割後期高齢者支援金(保険者から)
1割保険料

 ③都道府県を単位とする運営(後期高齢者医療広域連合の設立)

(3)国民年金法

国民年金法の対策には、膨大な知識量が要求されます。日本の年金制度の特徴も大事ですので押さえておきましょう。①国民皆年金②社会保険方式③世代間扶養となります。

①国民年金の歴史

昭和17年 労働者年金設立
昭和19年 厚生年金保険設立
昭和34年 国民年金・無拠出制に
昭和36年 「国民皆年金」国民年金・拠出制
昭和61年 「基礎年金制度」開始・年金の大改正
(2回立て年金スタート)
平成27年 公務員の共済年金が厚生年金保険に一元化

②基礎年金制度

日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。

図:基礎年金制度

出典:独学合格!FP3級

国民年金の被保険者は、「強制被保険者と「任意加入被保険者」に分かれています。また、国民年金の支給においては「年金を受けとるために必要な期間を25年から10年とする」大きな改正があったので、押さえが必要です。

無年金者の問題はかねてから年金制度の課題の一つでしたが、社会保障・税一体改革において年金を受けとれる方を増やし、納めて頂いた年金保険料をなるべく年金のお支払いにつなげる観点から年金を受けとるために必要な期間(保険料納付済等期間)を、25年から10年とすることになっていました。今般、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第84号)が平成28年11月24日に公布され、平成29年8月1日に施行されました。

出典:厚生労働省

表:国民年金被保険者

強制被保険者 第一号被保険者 日本国内に住所がある

20歳~60歳未満のもの

第二、第三号被保険者に外用しないもの

(60歳前に老齢厚生年金などを受けられるものを除く)

第二号被保険者 会社員や公務員の厚生年金保険の被保険者であるもの

(65歳以上で老齢厚生年金などを受けられるものを除く)

第三号被保険者 第二号被保険者の被扶養配偶者

(20~60歳未満)

任意加入被保険者 任意加入被保険者 65歳まで
特例による任意加入 65~70歳まで

(4)国民年金の用語について

国民年金の頻出用語の数自体はとても多いのですが、本記事では老齢、障害、遺族年金についてと「税制適格退職年金」「特別障害給付金法」のみについて解説しておきます。

①老齢基礎年金

20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。保険料を全額免除された期間の年金額は1/2(平成21年3月分までは1/3)となりますが、保険料の未納期間は年金額の計算の対象期間になりません。
平成31年4月分からの年金額 780,100円(満額)

②障害基礎年金

国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日(障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日)のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。

③遺族基礎年金

国民年金の被保険者等であった方が、受給要件を満たしている場合、亡くなられた方によって生計を維持されていた「子※のある配偶者」または「子※」が、遺族基礎年金を受け取ることができます。
出典:日本年金機構

④税制適格退職年金

従来の企業年金の1つであった制度で、略称「適年」。
平成14年4月から、確定給付企業年金法の成立により新規発足はできなくなりました。
平成24年4月以降は、既存の制度も税制上の優遇措置が受けられなくなりました。
このため、全ての適格退職年金(一部特例を除く)は、確定給付企業年金等、他制度への移行等が求められることとなり、実質的に制度は廃止となりました。
出典:企業年金連合会

⑤特別障害給付金法

国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金等を受給していない障害者の方について、国民年金制度の発展過程において生じた特別な事情にかんがみ、福祉的措置として創設された制度です。

(5)介護保険法

介護保険法は、平成12年に施行されました。平成27年4月の改正点は、以下の通りです。

①地域包括ケアシステムの構築

地域包括ケアシステムとは、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービスを提供する体制のことです。(「住まい」「医療」「生活支援」「介護」「介護予防」に関する支援・サービス)

②費用負担の公平化

介護保険制度について要点をまとめます。
保険者:市町村
被保険者:(第1号被保険者)市町村に住所を持つ65歳以上のひと
(第2号被保険者)市町村区域内住所を持つ40歳以上65歳未満の医療保険加入者給付:
①介護給付(被保険者が要介護の状態であるときの保険給付)
②予防給付(被保険者が要支援の状態であるときの保険給付)
③市町村特別給付(①②以外で倒壊後状態の軽減、悪化の防止に資する状態、条例による)
④居宅介護サービス費
⑤居宅介護福祉用具購入費
介護認定:「要支援」「要介護」「不該当」などの認定は監護認定審査会がおこないます。

被保険者が市町村に申請(事業者、地域包括支援センターが代行可)

市町村による訪問調査、医師による意見聴取

介護認定審査会による審査、判定を行い市町村に通知

(6)確定拠出年金法

「iDeCo」などで、耳にすることが多い確定拠出年金法。その設立の背景には、バブル景気が弾けたのちの景気悪化で、各基金の財政が悪化し、確定給付企業年金に移行し、解散する基金が相次いだことがあります。より具体的には以下の理由がありました。

①平成26年4月以降、厚生年金基金の新設が認められなくなったため。
(公的年金制度の健全性および信頼性の確保のための厚生年金保険制度法等の一部を改正する法律による)
②運営が厳しい既存の厚生年金基金はほかの企業年金への移行が進められているため。

表:確定給付企業年金と確定拠出年金

確定給付企業年金 ・将来の年金給付額が確定している

・掛金は企業が拠出

・加入者も一部負担できる

規約型 会社の一存で制度運営がおこなわれる危険があるため、労働組合の積極的な取組みが必要
基金型 企業年金基金の制度運営には労使双方から同数を選出することにより、予算・決算の審議や運用方針の決定(変更)などについて労働組合側も意見を述べる機会が与えられる
確定拠出年金 ・個人別管理資産、個人による自己責任で運用

・運用リスクありで、増えることもあるが元本割れの可能性も

企業型 ・厚生年金保険の運用事務所において導入可能

・ただし公務員は対象外になる

個人型 ・通称「iDeCo」

・国民年金基金連合会の実施

・自営業者、被扶養配偶者、会社員、公務員も加入可

(7)社会保険労務士法

一般常識の労一か社一のいずれかで、一題出題されることが予想されます。社会保険労務士法は、社労士の業務範囲や、社労士になるための社会保険労務士試験や登録についても規定する法律です。業務上の禁止行為や懲戒処分、罰則についても然りです。

社労士の業務:

①労働社会保険手続き業務
複雑・多岐にわたる労働社会保険の諸手続きを皆様に代わって円滑かつ的確におこないます。雇用継続給付申請の代行、助成金の申請もおこないます。

②労務管理の相談指導業務
良好な労使関係を維持するためや、労働者の皆様が納得して能力を発揮できるようにするため、職場に合ったきめ細やかなアドバイスをおこないます。賃金制度、評価制度の構築や社内規定作成などもおこないます。

③年金相談業務
複雑な年金制度をどなたにも分かりやすく説明し、必要に応じて各種事務手続きをお手伝いいたします。

④紛争解決手続き代理業務
裁判ではなく、「あっせん」という手続きにより、簡易、迅速、低廉に解決します。

⑤補佐人の業務
相談の段階からお手伝いしていた社労士が、補佐人として弁護士とともに訴訟の対応に当たることで、安心して訴訟による解決を選択することができます。

出典:全国社会保険労務士連合会

また、申請や行政の調査・処分について、主張・陳述の代行もおこないます。

例えば社会保険調査の代行出頭、労働基準監督署による調査の立ち合いなどです。基本的な業務となるのは、企業の労働・社会保険に関する手続代行です。社労士は一人の社員の入社から退職にいたるまでの手続に関わるといわれますが、代表的な手続き代行としては、
「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」
「雇用保険の被保険者資格取得届」
「離職証明書」
などがあります。また、退職した労働者にも年金で関わります。

特定社労士とは:
裁判ではなく、「あっせん」という手続きで和解を目指す④紛争解決手続き代理業務をおこなう社労士のことです。特定社労士になるためには、全国社会保険労務士連合会がおこなう「紛争解決手続き代理業務試験」に合格しなければなりません。特筆すべきは、この試験は全て記述式でおこなわれますので、文章力アップなどの対策も求められます。

※社労士が故意に不正を犯した場合の規定についても触れておきましょう。
罰則:3年以下の懲役または200慢以下の罰金(社労士法の最高罰)
懲戒処分:1年以内の業務停止または失格

3. 社労士試験「社一」の対策ポイントとは?

これまでは頻出法令科目をチェックして参りましたが、今度は対策のポイントについてまとめていきます。

社一は、労一よりも出題される法律がやや難解なのが特徴です。法令の主要科目として既に取り上げた国民年金法、介護保険法などは、難解な部分も多いのでよく理解しておきましょう。

一般常識の択一式の場合は、同じ法律からは大抵出題されません。そう考えると、一般常識の場合、詳細までは押さえなくてもまんべんなく各法律を勉強しておく必要があります。

以下、各法令の学習の他に必要な対策について紹介します。

(1)社会保険の変遷

年金制度や医療保険の変遷についても、押さえておきましょう。年金の歴史については、既に時系列でまとめてみました。このような沿革に加えて、最新の動向ももちろん押さえておくべきです。

(2)横断的な学習を意識

過去問を学習すると、社会保険に関する他科目との比較問題が出題されていることに気付くでしょう。似ているような制度は、比較しながら押さえることを心掛けましょう。

例を挙げれば、「健康保険法」や「年金2法(国民年金法、厚生年金保険法)」です。これらとの共通部分、変遷の歴史を追う制度の沿革なども頻出されますので、「横断的な学習」を意識して進めていきましょう。

(3)白書対策

統計資料としては、厚生労働省が毎年発表している「厚生労働白書」などから出題されます。このような資料も膨大な数に及びますので、すべてに目を通していると時間が足りません。

選択式は、「各科目3点以上」という基準点に及ばず足切りに合って不合格になってしまう受験生が多い科目です。「選択式の足切りが、社労士試験を難しくしている」ということもできるほどです。その選択式には、統計資料として白書が用いられてきますので、選択式を突破して合格を手にするためには白書は鬼門ともいえます。

傾向としては、時の社会情勢にスポットが当てられることが多いので、ニュースや新聞を見ておくのが対策になるといわれます。しかしそれだけで選択式を突破できるかというと、難しいといえます。

また、社一にも、白書からの出題はあります。厚生労働白書を見てみると、少子高齢化、雇用、年金問題など、日本が抱えている問題の深刻さを捉えたものが多くあるのです。

(4)法改正

社一は、法改正が多い科目でもあります。国民健康保険法、高齢者医療確保法、介護保険法は、高齢化社会を反映した医療・介護関連法として出題頻度が高くなっています。また、確定給付企業年金法、確定拠出年金法などの近年注目があつまっており、改正部分を中心とした複合問題として出題される可能性があるので注意が必要です。

4. 社労士試験「社一」に関するおすすめの勉強方法

社一には法改正が多いと述べました。

法改正対策としては、予備校がその年の社労士試験対策としておこなうことが多いです。そのような講座をまとめた書籍も書店で見つかります。

また、社一対策に限らず、模試を受けるのもおすすめです。

5. サマリー

社一の科目には難解なものが多いといわれます。国民年金法をはじめとする諸法令に、押さえるべきポイントが多くありますので、過去問もこなしながら理解を深めていきましょう

6. まとめ

・社労士試験「社一」の基礎は社会保障である

・「社一」の頻出諸法令には国民健康保険法、国民年金法、介護保険法等がある

・社会保険労務士法も「社一」に含まれる

・社会保険や年金制度の変遷の確認、科目の横断的な知識も必要になるため、共通要素があれば比較学習すべき

・国民年金法をはじめ法改正も多く発生する科目なので、法改正は本などで個別に対策すべきである

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