助成金申請って難しい? 申請の代行は依頼できる? 今注目の助成金についてまるごと解説!

助成金申請って難しい? 申請の代行は依頼できる? 今注目の助成金についてまるごと解説!

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、毎日のように報道されたのが「公的助成金」でした。度重なる制度の拡充とともに、申請の煩雑さや受理数の少なさも注目されました。

助成金の申請は、誰に代行依頼すれば上手くいくのでしょうか。また助成金と補助金はどのように違い、それぞれどんな種類があるのでしょうか。

この記事ではそんな助成金に関する疑問と、誰に申請代行すべきかについて、明確にお答えします!

1 助成金とは?

新型コロナ禍で多くの企業が休業に追い込まれるなかで、これまでになく注目を浴びたのが「政府などによる貨幣の給付」である「助成金」です。

助成金の長所は、なんと言っても
・支給要件を満たしていれば基本的には100%受給できること
・返済不要なこと
です。

実は、助成金を受給することのメリットは、この他にもあるのです。

(1)助成金にはどんなものがある?

助成金は、厚生労働省が中心となり公募している「雇用」に関する支援金と、経済産業省から受給される「研究開発型」支援金の2つに分類されます。

①雇用系

雇用系の公的助成金は、主に厚生労働省が設立しており、ハローワーク等が公募をおこないます。雇用系の助成金の財源は、企業が支払っている雇用保険の一部であるため、厚生労働省管轄の支援になります。設立目的は雇用の維持に始まり、職業訓練、雇用環境整備など11の項目があります。

【雇用関係の助成金一覧】

1 雇用の維持 雇用調整助成金
2 再就職支援 労働移動支援助成金
3 中途採用 中途採用等支援助成金
4 起業
5 新規雇用 特定求職者雇用開発助成金
地域雇用開発助成金
6 一時雇用 トライアル雇用助成金
7 障害者職場定着支援 障害者雇用安定助成金
8 雇用環境の整備 人材確保等支援助成金
通年雇用助成金
65歳超雇用推進助成金
9 有期契約労働者等の処遇改善 キャリアアップ助成金
10 仕事と家庭の両立支援等 両立支援等助成金
11 職業能力の向上 人材開発支援助成金

②研究開発型

研究開発型の助成金は、主に経済産業省(またはその外郭団体などや都道府県)が中心となり公募しています。設立目的は「新製品や新技術、新サービスの研究開発のための研究開発費を補助すること」です。

当該助成金は、開発費や研究費などを補助するのが設立目的であるため、「補助金」とも呼ばれています。対象範囲は研究開発費だけでなく、新しいビジネスモデルの事業化にともなう広告宣伝費や、産業財産権取得のための費用を補助するものまで、広く設けられているので、いくつか例を挙げてみます。

・戦略的基盤技術高度化支援事業
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
・中小企業組合等活路開拓事業
・国内・海外販路開拓強化支援事業費補助金 など

(2)助成金と補助金の違いは?

雇用関係の助成金 研究開発・新規事業の助成金
関連省庁 厚生労働省が中心 経済産業省や外郭団体、他の省庁
財源 雇用保険の一部 法人税
助成金数 20~40種類 3,000種類以上
対象 新規雇用や雇用調整等 新技術・新製品・新サービス
公募時期 随時 年1回がほとんど
受給額 1~500万円 500~5000万円が中心
受給時期 申請認定後 開発実施後
倍率 対象であればほぼ受給可能 倍率5~20倍

上表は、助成金と補助金の違いについてまとめたものです。前述のとおり、経済産業省の助成金は補助金と呼ばれることが多いので、補助金に含めます。

助成金の財源が雇用保険であるのに対して、補助金の財源は「法人税」です。そのため、法人税の未納・滞納者は、補助金の申請はできません。法人税を支払っている事業者には補助金を活用する権利があるのですから、ぜひ応募して欲しいものです。

補助金は助成金よりも種類が豊富で、支給額が大きい場合が多いのも特徴です。また倍率が高いため合格率は40%と低く、申請してももらえない可能性もあります。支給は後払いで、約1年後など随分期間をあけてから支給に至ります。

また、助成金・補助金は課税対象になります(消費税は非課税)。会計上は「雑収入」として仕訳されますので、経常利益率が5%の会社なら、100万円の助成金を受給すると、2000万円の売上が立ったのと同じことになるのです。

2 助成金のメリット・デメリットとは?

助成金と聞くと「手続きが面倒くさそう」「審査が厳しそう」といったイメージがあって、なかなか挑戦しづらいかもしれません。しかし、助成金申請には、お金を受け取ること以外にも大きなメリットがあることをご存知でしょうか。

(1)助成金を受給するメリットとは?

何事にもメリットとデメリットがありますが、まずはメリットから見ていきましょう。

①返済が不要

ほとんどの補助金もそうですが、助成金の一番のメリットは返済不要であることです。

事業資金が不足したら、銀行などから「融資」を受けて資金確保するという方法もあります。しかし融資はいずれ返済しなければなりません。

その点、助成金は返済の心配をする必要がないので、事業資金として思い切り活用することができます。

②労働環境を整備、改善できる

助成金申請を契機に、これまで取り組めなかった労働環境の整備・改善が進むことがあります。厚生労働省の助成金の支給要件には、「就職困難者の雇用」や「契約社員の正社員化」「評価制度の導入」など、改善の実績が求められるためです。

助成金には、以下のように社員のスキルアップや福利厚生の充実のために活用できるものもあります。今般の新型コロナ禍で特設されたテレワーク導入助成金も、就業規則の作成が要件の一つでした。

【労働環境の整備、改善な支給要件となる助成金】

社員に職業訓練などを実施する 人材開発支援助成金
胃がん検診や肺がん検診(法定外の検診)の制度を導入・実施する 人材確保等支援助成金
(雇用管理制度助成コース・健康づくり制度)
テレワーク勤務規程など就業規則・労使協定等の作成・変更など 時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

③企業としての信用度が高まる

助成金を受給できた実績は、労働環境が整備された企業であることの証明にもなります。

助成金を受給することで対外的な信用度は高まり、助成金の受給実績によって、公的機関や銀行から融資を受けるための審査で有利になる場合もあるのです。

(2)助成金を受給するデメリットとは?

これまで助成金のメリットを挙げてきましたが、次はデメリットについて触れましょう。

まず 、助成金申請代行の手数料がかかることです。

①手数料が生じる

助成金申請代行は然るべき専門家に依頼するので、当然キャッシュアウトが発生します。料金相場は以下の通りです。

成功報酬型の場合、受給できなくてもキャッシュアウトはありませんが、そもそも助成金は要件を満たしていればほとんどの場合が審査に通るため、着手金型でも損をすることはほぼありません。

着手金+成功報酬を払う場合 着手金として2~10万程度と、受給金額の10~15%ほどを支払う
成功報酬型 成功報酬20%程度
その他の経費 就業規則作成費、申請書類作成で費用が発生する可能性も

②就労規則などを整える手間がかかる

前述のように労働環境の整備が条件なので、未整備の会社にはそのための経費が発生する場合もあります。就業規則の作成や不備の修正などで追加料金がかかることもあるからです。

助成金は「ただでもらえるもの」というよりも、社員の労働環境整備や雇用創出といった企業努力をおこなった、きちんとした企業がもらえる支援金なのです。

助成金の申請に関してはお金だけでなく時間もかかり、数か月ほどの時間を要することもあります。しかし、初回の助成金申請にあたってきちんと書類を揃えておけば、その後の助成金申請はずっとスムーズになります。

このため、着手金が発生するのは初回のみという社会保険労務士(以下、社労士)事務所も多いのです。後述しますが、厚労省助成金の申請代行業務は、社労士の独占業務に定められています。

3 助成金の代理申請は誰に依頼すればよい?

助成金の申請を専門家に代行してもらう場合、誰に依頼すればよいのでしょうか。”士業”と呼ばれる法律系の有資格者の中でも、誰が適任なのでしょうか。

結論からいえば、厚生労働省による雇用系助成金の申請業務は、社労士法によって社労士の「独占業務」に定められています。そのため、当該助成金の申請代行は、他の有資格者は法に抵触するため請け負うことができないのです。













社会保険労務士 社会保険・労務に関する専門家 受給要件である就業規則、雇用保険の加入、労働条件通知書や、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳等の整備などもおこなう。
弁護士 法律の専門家 法律の専門家なので「社労士」としても登録が可能。社労士登録がない場合は、雇用関係助成金の申請代行は不可。※
















行政書士 「街の法律家」行政手続きの専門家 就業規則作成などの相談を受けることができる。
司法書士 「くらしの中の法律家」司法手続きの専門家 会社の登記手続きの代行をおこなう。
中小企業診断士 経営コンサルタント唯一の国家資格。日本版MBAともいわれる 中小企業庁系の補助金、都道府県・政令指定都市がおこなう助成金補助金申請に必要な、「事業計画」の作成ができる。
税理士 税務に関する専門家 税理士に経理を依頼している場合は、支給された助成金を「雑収入」として仕訳し、適切な会計処理を依頼できる。

社労士が事務所に在籍していたり、業務提携する社労士事務所があったりする場合は、雇用関係助成金でも申請業務をおこなえます。

(1)厚労省の助成金は社労士か弁護士に依頼する

厚労省関連助成金に関する申請代行業務は社労士の独占業務であるため、社労士に依頼しましょう。または、社労士登録をしている弁護士にも申請代行を依頼できます。

①社労士

社労士は社労士法により、雇用保険を含む社会保険の専門家として規定され、厚労省関連の助成金の申請書作成や所轄官公署への提出などの業務は、社労士法により社労士の独占業務に定められています。そのため、当該業務を社労士以外の者がおこなうと法に抵触します。

しかし、助成金関連の業務に強い社労士もいれば、そうでない社労士もいるため、例えば就業規則作成にあたってもサンプルだけ渡して終わりの場合もあります。社労士に申請代行を依頼する際は、事前のヒアリングが重要になります。依頼先の候補を絞ったら、金額面のみならずどこまで関わってもらえるのかよく相談しておきましょう。

②弁護士

弁護士事務所の中には、助成金の申請代行をおこなっているところもあります。

法律の専門家である弁護士は、社労士としても登録することができるため、登録済みの場合は助成金の申請代行がおこなえます。もし顧問弁護士を雇っているなら、社労士登録をおこなっているか確認してみましょう。

(2)補助金や厚労省以外の助成金は社労士以外でも代行可能

繰り返しますが、独占業務として従事者が厳密に定められているのは厚生労働省関連の助成金のみです。それ以外の補助金・助成金は、誰でも申請代行をおこなうことができます。

①行政書士

行政書士は許認可申請の専門家で、「街の法律家」とも呼ばれています。なかでも権利義務や事実証明に係る書類作成は行政書士法で行政書士の独占業務に定められています。

許認可申請から就業規則作成の相談など、会社設立に関わることも多い行政書士は、経済産業省関連の補助金申請代行を積極的におこなっています。

②司法書士

司法書士は登記を独占業務とする専門家ですが、補助金申請であれば代行することができます。

③中小企業診断士

国内唯一の経営コンサルタント国家資格である中小企業診断士ですが、意外にも独占業務はありません。その分広い業務範囲で自由に活躍することができます。

中小企業庁系の補助金や都道府県・政令指定都市による助成事業は、そのほとんどが支給要件として「事業計画」の作成を求めています。この事業計画の作成は、中小企業診断士が強みを発揮できる業務ですので、機会があればぜひ依頼しましょう。

④税理士

税理士の独占業務は税務であり、助成金や補助金の申請をおこなうことはあまりありません。

しかし、助成金や補助金には、申請書類として就業規則や出勤簿と共に、賃金台帳などの法定帳簿を求めるものもあるため、その場合の相談を申し込むことができます。

また、助成金や補助金の受給後の会計処理を相談することもできます。いずれも「雑収入」として利益に計上しますが、申請・受理・受給にはタイムラグが発生するため、素人にはどのように帳簿に記入するのか見当がつきません。

助成金・補助金の会計処理で困ったら、税理士に相談しましょう。

⑤本人申請も可

助成金の代理申請は、絶対に社労士に依頼しなければならないわけではありません。本人申請も可能ですし、社内で申請書類を作成することもできます。

4 違法業者に気を付けよう

助成金の申請に関しては法規定があるにも関わらず、虚偽の助成金申請代行を持ちかける違法業者が存在します。厚生労働省からの業務委託を騙った違法勧誘も頻繁におこなわれるため、注意喚起がおこなわれています。

社労士資格がないにも関わらず、助成対象かどうかの無料診断や支給額の無料査定を持ちかけて、最終的には助成金申請を勧誘するという手口です。

出典:厚生労働省

①不正受給

もし不正受給がおこなわれた場合、事業者が責任を問われることになります。違法業者の勧誘によって助成金の支給がおこなわれた場合でも、受給者である事業者の不正受給になってしまい、助成金の返還、違反金の支払い、企業名の公表といったペナルティが科せられるのです。

偽社労士や偽コンサルタントは、助成金が比較的簡単に受給できるところにつけこんできます。そして、申請者が受給要件を満たしていない場合は、虚偽や架空の書類で申請をおこなうように勧めてくるのです。着手金だけを盗られる詐欺もあるのですが、無知ゆえに違法業者の助言に従い不正受給をおこなった場合でも、事業者が詐欺罪に問われてしまいます。

助成金申請に関する疑わしい勧誘を受けた場合は、所轄の社労士会に相談しましょう。

②不正受給のペナルティは?

不正受給が判明した場合…

Ⅰ、不正発⽣⽇を含む判定基礎期間以降に受けた助成⾦は、全額返還を命じます。

Ⅱ、⼀度でも不正受給すると、以後3年間は雇⽤保険2事業を財源とする助成⾦(ハローワークで扱うほぼすべての助成⾦)が受給できません。

Ⅲ、平成22年11⽉以降の申請に不正があった場合事業主・事業所の名称などを公表しています。

Ⅳ、特に悪質な場合などは、刑事告発をおこないます。

※ 実際には教育訓練を⾏っていないにもかかわらず、実施したように偽り、中⼩企業緊急雇⽤安定助成⾦約370万円を不正に受け取った事業主が、詐欺罪で懲役1年6か⽉(執⾏猶予3年)の有罪判決を受けたケースもあります。

出典:厚生労働省

助成金の不正受給が発覚すると、このように罰則を科されるだけでなく、会社の社会的地位の失墜に繋がりますので、注意が必要です。

5 サマリー

助成金申請を考えているなら、違法業者の勧誘に惑わされないように、まず助成金い関する知識を得ましょう。雇用系助成金に申請する場合、代行を依頼すべきは社労士です。

助成金・補助金ともに、然るべき有資格者に代行を依頼するようにしましょう。

6 まとめ

・助成金の長所は、支給要件を満たせば100%受給できることと、返済不要なことである。

・助成金には、厚生労働省の雇用系助成金と、経済産業省の研究開発型助成金がある。

・助成金の財源は雇用保険で、補助金の財源は法人税である。

・助成金を受給するメリットには、労働環境を整備、改善できることも挙げられる。

・厚生労働省の雇用系助成金の申請業務は、社労士の「独占業務」に定められる。

・補助金や厚労省以外の助成金は誰でも代行可能である。

・違法業者にそそのかされての不正受給でも、処罰されるのは事業主である。

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