人事・労務は未経験でも社労士(社会保険労務士)になれる?未経験者が独立開業せずに社労士(社会保険労務士)として働くには

人事・労務は未経験でも社労士(社会保険労務士)になれる?未経験者が独立開業せずに社労士(社会保険労務士)として働くには

国家資格は不安定な世の中にあっても、心強い武器となるため人気です。その中でも社会保険労務士(社労士)は、会社がある限り需要がある仕事だといわれ、会社勤めが長い人ほどその重要性が理解できる人気の資格です。しかし、そのような社労士に、未経験で転職することは可能なのでしょうか。もし新卒であればポテンシャルで採用され、経験値よりも将来性が買われますが、中途採用でも未経験で社労士に転職できるのでしょうか。

未経験の社労士は就職することができるのか、この記事でしっかりとお伝えします!

1 未経験で社労士(社会保険労務士)として働くことは可能?

社労士登録の区分には「勤務社労士」というものがあります。勤務社労士とは、一般企業に就職して社内で社労士業務に携わる社労士のことです。そのほかは「開業社労士」「社労士法人」になります。

しかしそもそも、未経験で社労士として就職する、または独立することは可能なのでしょうか。

⑴ 社労士(社会保険労務士)に求められる資質とは?

この点について触れる前に、まずは、社労士に求められる資質とはどのようなものかを挙げていきます。未経験から新しい仕事に挑戦しようとするならば、その仕事に自らの資質が合っていないと難しいといえます。それでは、社労士に合う資質とはどのようなものなのでしょうか。具体的に紹介します。

① 日本の労務問題や社会保険制度に興味がある

社労士といえば、労働社会保険のプロであり、労務問題の専門家です。大変専門的な分野を扱いますが、社労士でなくても会社組織に属したことがある人なら、労務管理や労働関係法令に関して考えたことがあるでしょう。例えば、「これは労働基準法から見たらセーフなのかな?」「在宅ワークでは、どこまでが残業になるのかな」といったようにです。

近年の働き方改革では、長時間労働の是正のための罰則付き法律が制定されるなど、革新的な改正がおこなわれました。また、働き方改革をもってしても進まなかった在宅ワークの導入が、今般の新型コロナウィルス感染拡大によって一挙に進み、同時に、在宅ワーク時の労務管理も課題として大きく取り沙汰されました。

このように、労務の専門家である社労士に対する需要は、年々高まっています。社労士にふさわしい資質を問われれば、何といっても労務問題、労働関係法令に関する強い興味があることが挙げられます。

② コミュニケーション能力が高い

社労士の顧客は、ほとんどが社長や事業主、人事・総務部の管理職になります。社労士は、日常的にそのような層の方々と接し、労務問題や労働社会保険についての相談を受けたりします。お分かりのように、それに相応しい高いコミュニケーション能力が必要になります。

また、社労士の3号業務「コンサルティング」は、将来的にAIの台頭によって職業淘汰の時代を迎えても、AIには代替できない将来性のある専門業務であるといわれています。コンサルタントには、顧客の課題を的確にすくい取る能力と、最適なソリューションを分かりやすく提案することのできる能力が必要です。つまり、高いコミュニケーション能力です。

ちなみに、社労士における女性の割合は他士業と比べて大変高く、2018年における女性社労士の割合は30.1%と、3割を超えました。コミュニケーション能力の高さは女性の強みの一つですが、社労士はそれを発揮できる職業だといえます。

⑵ 「なぜ社労士なのか」を明確にしよう

他の志望者との差別化を図るためには、あなたに「社労士として働きたい」という強い意志があることを、明確に伝える必要があります。

社労士資格を取る段階では「難関の社労士資格があれば、転職なんか簡単だ」と、思われたのではないでしょうか。しかし転職市場では、資格はポテンシャルの一要素としか考えられません。むしろ、選考に影響するのは、その資格を取得して「どんなことをやってみたいのか」という動機の部分です。

特に、未経験で転職をする場合は「その資格を取って何がやりたいのか」が重要視されます。未経験にも関わらず、社労士として就活する理由を明確にしないまま転職活動をすると、失敗につながってしまう恐れがあります。転職活動を始める前に、なぜ社労士として転職したいのかを明確にしましょう。まずは「志望動機」を徹底的に磨き上げることが大切です。

⑶ 未経験転職の場合、年代別には違いはあるか?

それでは、未経験であることは、社労士としての転職活動においてどれくらいハンデになるのでしょうか。年代によって、未経験であることの影響が違ってくると思われます。

下表では、志望者が20代、30代、40代において、面接官はそれぞれどのような反応をするのかをまとめてみました。

年代が高くなると、社労士の有資格者であることだけでは、アピールが足りなくなることが分かります。年代が高くなったら、その資格をもってやりたい「何か」を的確に伝えることが必要です。

 

志望者の年代 ポジティブな反応 ネガティブな反応
20代 ・「若さ」が武器となり、ポテンシャルで採用される可能性が高い。

・若いと柔軟性があるので、実務未経験であっても採用されやすい。

・社労士試験は数ある国家資格の中でも受験生の年齢層が高いため、若いだけで差別化できる。

・会社勤務の経験が乏しく、労務管理についての知識が乏しい。
30代 ・20代志望者と同様のポジティブな反応を期待できる場合も。

・社労士資格と併せてこれまで培ったスキルも評価の対象になる。

・自分では予期せぬ部分が他の応募者との差別化につながる可能性も。

・これまでの社会経験から「経験者」と想定されることが多い。

・ある程度の実務経験を有する転職者の割合が大きくなるため、未経験者であることのハンデが大きくなる。

・まず自分の持つスキルの棚卸をおこない、アピールポイントを把握してから面接に望んだ方が良い。

40代以上

(50、60代も含む)

・社労士なら高齢・未経験で開業できるため、将来は開業するつもりだろうと思われることが多い。 ・この年代は全く異業種から、未経験で社労士業界に飛び込むのは不可能。

・シニアの社労士試験受験生の多くは、将来は退職して独立開業すると思われている。

・社労士資格だけでは全く足りず、加えて特定の専門知識や高度なスキルを保有していないと転職は不可能。

 

上表でお分かりのように、年代が上がるほど面接官のネガティブな反応が多くなります。社労士に限らずどんな業界でも共通ですが、40代以上になると転職活動が難航するものです。

また、年代が上がると、これまで培ってきたスキルについて、面接官に上手くPRできるかどうかもポイントになります。

⑷ 営業経験も重宝される

転職する場合は、これまでの経験で何を培ってきたのかが問われますが、それも加味して採用されるケースがほとんどです。ですので、社労士としては未経験でも、他に即戦力になれるようなスキルを持っているなら、スムーズに採用されることがあります。

例えば、営業の経験が豊かであれば、社労士法人の営業もできるのではと思われ、採用されるケースが多いです。

大手の社労士法人は多くの企業を顧客とし、労務のアウトソーシングを請け負います。ですので、新たな顧客を開拓するための営業も、実に重要な業務なのです。わざわざ「営業職」の募集をかけることもあるくらいです。

ただし、社労士として働きたかったのに、営業の即戦力として採用された場合は「こんなはずではなかった」と悩んでしまう可能性もあります。社労士として働くはずが、毎日新規開拓などで外回りをすることにならないように、採用面接時にしっかり確認しましょう。

2 社労士(社会保険労務士)資格保有者の転職先の候補とは?

勤務社労士として転職する場合は、どのような転職先が考えられるでしょうか。詳しく見ていきましょう。

⑴ 「勤務社労士」として企業の人事部や総務部に

先述の「勤務社労士」の場合、企業の人事・総務部に配属されるケースが大多数です。勤務社労士がいることで企業が享受できるメリットは、できれば外に出したくない労務問題を社内で解決できること、アウトソーシングすることで発生するコンサルティング費用をコストカットできることなどです。

民間企業の人事・総務部の募集要綱には、「社労士資格」が掲げられている場合があります。社労士の専門分野である人事・労務関連業務は、会社であれば生じる業務なので、当然といえます。しかし、この場合は、労務における豊かな実務経験を持つ人が求められています。社労士試験には合格したものの、実務で即戦力に慣れないようでは、採用されるのは難しいかもしれません。

⑵ 社労士(社会保険労務士)事務所

未経験者は社労士資格を取得した後、まずは企業ではなく、社労士事務所に就職するケースが多いとのことです。この流れは王道といっても過言ではないでしょう。なぜなら、将来的に独立開業を目指す場合、社労士事務所に転職すれば、実務や運営を学ぶことができるからです。

未経験者にとっても転職しやすい職場です。社労士事務所には、資格の有無を問わない事務職の求人もあります。社労士試験にはまだ合格していないものの、社労士の仕事とはどんなものかを知りたい場合は、まず事務職として社労士事務所に転職するのも手です。そして職場で社労士実務を身近に見ながら、社労士資格取得を目指すのも良いでしょう。

社労士事務所には、実は様々な形態があります。個人事務所もあれば社労士法人もあります。事務所の規模もまちまちで、それによって業務の幅も変わってきます。1号・2号業務といった手続き業務だけに限らず、労務の指導・相談(コンサルティング)を請け負うかどうかによっても変わってきます。ですので、社労士事務所に応募する場合は、業務内容について事前に良く調べましょう。それによって、転職先のミスマッチを防ぐことができます。

⑶ 他士業事務所

社労士事務所だけでなく、弁護士事務所や税理士事務所といった他士業の事務所も、転職先の候補のひとつです。社労士がなぜこれらの事務所に就職するのだろうと、不思議に思われるかもしれません。この動きは、近年増えている「ワンストップサービス」という、複数の士業が連携して業務の幅を広げるサービスの影響です。

例えば、税理士事務所には、事務所内で社労士を開業させる場合もあります。そうすれば、企業と税務だけでなく労務、労働・社会保険関連手続きの顧問契約も結ぶことができ、顧客の満足度を高めることができるのです。社労士の独占業務である、雇用保険関連の助成金申請業務も請け負うことができます。

しかし、この場合も高い実務能力や、豊かな経験が求められます。

⑷ 独立開業

最後は、未経験でも思い切って独立開業してしまうというケースについて紹介します。ご存知のように、独立開業して事務所の主となれば、顧客獲得のための営業活動も精力的にしなくてはなりません。実務もまだままならない未経験者にとっては、独立開業はハードルがなかなか高いはずです。しかし、社労士業界においては、実務未経験で独立開業したにも関わらず、第一線で活躍できるまでに成長するケースは、決して珍しくはないのです。

未経験者が社労士事務所を独立開業する場合、社労士試験合格後に、全国社会保険労務士会連合会が実施する「事務指定講習」を修了しておくことをおすすめします。そうすれば、思い立って独立開業してみたくなった場合でも、柔軟に独立開業できるようになるからです。

3 未経験で社労士(社会保険労務士)として就職するコツとは?

最後に、先輩の体験記から、未経験でも社労士になるために就活をするコツを抽出してご紹介します。社労士資格の保有者は、採用面接で「難関国家資格の保有者」として一定の評価を受けるものです。しかし、ミスマッチを犯さずにふさわしい転職先に就職するためには、次の点に注意する必要があります。

⑴ 未経験で社労士として就活する場合に必要なマインドとは?

労務に関する求人では、資格よりも実務経験が重視されます。しかし、実務経験を必須としない求人もあるし、個人事務所や社労士法人など会社規模によっても、業務内容が違ってきます。

つまり、社労士の転職活動は幅広くおこなう必要があるということです。案件によっては未経験でも応募可能なものもありますので、そういった案件に絞りましょう。また、社労士資格は「歓迎条件」に過ぎない場合もあります。あなたが、他の実務において卓越したスキルを持っている場合は、それが決定打となり採用されるケースもあります。

⑵ 前職の「退職理由」と社労士の「志望動機」が特に重要

どの転職でもそうですが、前職の「退職理由」と応募先の「志望動機」は、面接官が注目する部分です。

① 前職の「退職理由」

社労士資格取得のために前職を退職した場合は、面接官から、前職においても社労士資格をそのまま活用できたのではないかと、いぶかしがられるケースがあります。前職に在籍したままでも、社労士資格を用いて更にキャリアアップできたのではないか、と考えられる場合です。この場合、社労士業務に携わりたいという理由以外に、何か他に退職理由があったのではないかと勘ぐられてしまいます。

多くの受験生は、社労士試験の勉強を働きながらしています。受験勉強に専念したくて前職を退職した場合は、面接官から、ほかに退職理由があるのではないかと疑われてしまうこともあるでしょう。「本当に勉強するためだけに退職したのだろうか、会社への帰属意識が薄かったのではないか。」と思われてしまうかもしれません。

② 社労士としての「志望動機」

また、今回の転職に関する志望動機も、面接官が注目するところです。社労士事務所ではなく、一般企業に就活する場合は、特にそうです。面接官は、あなたが社労士試験で得た知識を活かしたいと考えて、自分の会社に応募してきたのかどうかをチェックするでしょう。

⑶ 未経験を補うための努力をアピールしよう

社労士試験には合格しても、人事・労務の実務について未経験の場合は、それを補う意欲がどれくらいあるかも注目されます。採用面接では、あなたがキャリア不足を補うために、どのような努力をしているかを尋ねるかもしれません。

2020年は、新型コロナウィルス感染拡大でこれまでになくテレワークの導入が促進された年でした。それにともない「テレワーク勤務規程」作成の必要性など、新たな労務問題が浮上してきました。このような労務問題も、社労士としての視点で見つめているかを問われるかもしれません。働き方改革の施行で変革を突きつけられた、労務管理についても然りです。

労務は未経験でも、社労士としての観点を持ち合わせていることをアピールできるように、日頃からよくアンテナを立てて労務の問題について勉強しておくことが大事です。

4 サマリー

社労士試験のような難関試験に合格していても、未経験では転職できない場合もあるのです。その場合は、経験不問の求人に絞って根気よく探していきましょう。

5 まとめ

・未経験から新しい仕事に転職する場合、自らの資質がその仕事に合っていないと難しい。

社労士に合う資質は、労務問題や社会保険制度への興味、コミュニケーション能力が高いなどである。

・未経験者の転職は、年代が上がるほど難航する。

これまで培ってきたスキルについて、面接官に上手くPRできるかもポイントになる。

・社労士事務所や法人は新規獲得が必須なので、営業経験があれば重宝される。

中途採用の面接では、前職の「退職理由」と社労士への「志望動機」が特に重要。

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