社会保険労務士(社労士)の稼ぎ方とは? 勤労社労士・開業社労士の収入と働き方を徹底解説!

社会保険労務士(社労士)の稼ぎ方とは? 勤労社労士・開業社労士の収入と働き方を徹底解説!

社会保険労務士(以下、社労士)は、弁護士や税理士などと比べると、取得しやすい資格です。このため、人事・労務管理系の職種に就いているような方であれば、一度は社労士になることを検討するのではないでしょうか。

ただ、社労士は実際にどのような仕事をして、どれくらいの収入になるのかは気になるところだと思います。この記事では、社労士の働き方や開業社労士としての稼ぎ方などについて解説しています。

1 社労士の働き方

社労士試験に合格し、社労士として仕事をするためには、まずは、全国社会保険労務士会連合会に備えられている社労士名簿に登録し、勤務地か居住地(開業する場合は事務所の所在地)の都道府県社会保険労務士会に入会しなければなりません。この手続きをしないと、社労士試験に合格していても、「社労士」と名乗って働くことはできません。

そして、この社労士登録の際には、次のとおり、開業するのかあるいは企業の中で働くのかを選択することになります。
※厳密には、下記以外にも「その他登録」という区分がありますが、社労士としての業務はできないため、ここでは説明していません。

(1)開業型

文字どおり、自身で事務所を立ち上げて開業するいわゆる「開業社労士」として働くための登録区分です。

登録上は、社会保険労務士法人の社員もここに含まれます。社会保険労務士法人の社員である社会保険労務士は、社会保険労務士法人に雇用されている従業員ではなく、法人の出資者という位置付けであるためです。

(2)勤務型

こちらは、企業の中でいわゆる「勤務社労士」として働くための登録区分です。

そもそも、自社だけの社会保険・労働保険関係業務を行っていくうえでは、社労士資格も登録も必要ありません。社労士登録をすることで、社会保険労務士会から資料が送られてきたり、研修会などに参加することができるようになりますが、次で説明する高額な費用を自分で払ってまで登録することにあまり意味はないかもしれません。

2 社労士として働くためにかかる費用

上記の開業型あるいは勤務型として社労士登録をするためには、登録費用や入会金が必要になり、継続的に年会費の支払いも必要になってきます。それぞれの具体的な額については次のとおりです。

(1)登録に必要な費用

・登録免許税(収入印紙)…30,000円
・登録手数料…30,000円

(2)入会金

※入会金は都道府県によって異なります。ここでは東京都社会保険労務士会の場合について記載しています。

・開業会員(法人社員含む)…50,000円
・勤務等会員…30,000円

【参考】[登録・入会について/東京都社会保険労務士会]

(3)年会費

※年会費も都道府県によって異なります。同じく東京都社会保険労務士会の場合について記載しています。

・開業会員(法人社員含む)…96,000円
・勤務等会員…42,000円

【参考】[登録・入会について/東京都社会保険労務士会]

3 勤務社労士と一般会社員の平均年収の比較

勤務社労士とは、上記で説明したとおり、企業に所属する社労士のことで立場的には会社員です。
この勤務社労士と一般会社員とで、どのくらいの年収の差があるのかを各調査結果で比較してみます。

(1)勤務社労士の平均年収

厚生労働省では、毎年、「賃金構造基本統計調査」というものを実施しており、主要産業に雇用される労働者の賃金などを公表しています。この2018年の調査結果から、社労士、弁護士、公認会計士・税理士(あわせて集計されている。)の毎月の平均給与額と平均賞与額などを拾い上げて年収を計算してみると、企業規模別に次のとおりになります。

【全企業(10人以上)計:主な士業の平均年収】
社会保険労務士 499.7万円、弁護士 765.7万円、公認会計士・税理士 891.8万円

【10人~99人の企業:主な士業の平均年収】
社会保険労務士 512.3万円、弁護士 682.0万円、公認会計士・税理士 675.4万円

【100人~999人の企業:主な士業の平均年収】
社会保険労務士 398.7万円、弁護士 888.5万円、公認会計士・税理士 767.1万円

【1,000人以上の企業:主な士業の平均年収】
社会保険労務士 573.3万円、弁護士 データなし、公認会計士・税理士 939.0万円

上記の結果をみると、主な士業の中では、当然というべきか最も低い平均年収です。

【参考】[平成30年賃金構造基本統計調査 職種/e-Stat政府統計の総合窓口]

(2)一般会社員の平均年収

国税庁では、毎年、「民間給与実態統計調査」というものを実施しており、民間の事業所における年間給与の実態などを公表しています。この2018年の調査結果によると、1年を通じて勤務した給与所得者の年間の平均給与は441万円とされています。

上記の厚生労働省の数字は一般労働者のみを整理(短時間労働者を含まず)したものですが、この国税庁の数字には非正規労働者も含まれています。このため、一概には比較できませんが、441万円を全平均の年収と捉えると、勤務社労士の平均年収は一般会社員よりは高めであると言うことができます。

【参考】[平成30年分民間給与実態統計調査結果について/国税庁]

4 開業社労士の収入

開業社労士の年収については公的なデータがありませんので何とも言えませんが、勤務社労士のように一会社員ではないため、頑張れば頑張るほど収入に反映されることは言うまでもありません。

ただし、軽く1,000万円を超えている者がいる一方で、勤務社労士の平均年収を大きく下回る者も数多く存在するなど、非常に格差が大きいのも事実です。そのほかの士業もそうですが、その人にいかに営業力や人脈があるか、また、やる気があるかによって大きく変わってくるということです。

また、開業して安定した収入を得るまでには、一般的に1~2年はかかります。この間は自身の貯蓄を切り崩すことになる覚悟も必要になります。

5 開業社労士として稼いでいく方法とは?

開業社労士として稼いでいく方法には、例えば、各種セミナーの講師をするなど様々な方法がありますが、開業社労士として力を入れるべきは、基本的に次の(1)と(2)です。最後の(3)は番外編とお考えください。

(1)スポット(単発)契約を取る

この場合の業務は、就業規則の作成・変更や各種社会保険・労働保険の届出書類の作成や提出代行、コンサルティング業務、助成金の申請など、1回限りで行うもので、報酬はその都度支払われます。

報酬は社労士によって異なりますが、例えば、就業規則の新規作成であれば、100,000円からというところが相場であると思われます。

社労士としては、継続的に報酬を得ることができないものですが、コネがなければ、まずはこれを地道に引き受けていくしかありません。

(2)顧問契約を取る

この場合の業務は、各種社会保険・労働保険の届出書類の作成や提出を代行し、必要に応じてコンサルティング業務を行うというもので、報酬は月額または年額として支払われます(この顧問契約を締結する場合でも、労働保険の年度更新や算定基礎届の作成、提出など、手間のかかるものは別料金とすることが一般的です)。

報酬は社労士によって異なりますが、顧客である企業の従業員数で整理していることが多く、10人の企業で月額30,000円から、100人の企業で月額100,000円からというところが相場であると思われます。

上記は、一般的な顧問契約の業務内容ですが、さらに給与計算までセットにして契約する場合や、コンサルティングだけを行うような顧問契約もあり、その内容は社労士によって様々ですし、顧問のニーズに合わせて随時変えていく場合もあります。

いずれにせよ、社労士として継続的に収入を得るためには、いかにこの顧問契約を増やしていくかが鍵になります。

(3)行政協力に参加する

「行政協力」とは、各都道府県の社会保険労務士会から紹介されるもので、年金事務所で相談員として業務を行ったり、労働局で年度更新の業務を行ったりするようなものです(応募者が多ければ参加できない場合もあります)。

報酬は、業務内容にもよりますが、1日当たり10,000万円前後です。
この「行政協力」も開業社労士として稼ぐ方法であることに誤りはありませんが、ある意味、アルバイト的な業務になります。開業直後はともかくとして、高収入を目指す開業社労士が継続してやっていくことではないと言えます。

6 開業社労士として確実に稼いでいくためには

(1)まず、開業社労士としての心構えを学ぶ

開業社労士としてまず何をすればいいのかわからないという方もいると思いますが、そのような場合には、新人開業社労士を対象にしたセミナーなどに参加してみるべきですし、親しい先輩社労士がいれば、話を聞いてみることも必要です。

ここで認識しておきたいのは、セミナーの講師を務めるベテラン社労士や先輩社労士が顧客を獲得できる方法を教えてくれるわけがないということです。仮に教えてくれたとしても、それと同じ方法を自分がやって必ず成功するものでもありません。誰もが成功する営業方法はないということです。

あくまで一般論として自分の中に取り入れ、自分であればこうすべきと考えていくことが必要になります。

(2)自分が得意な分野をつくる

新人の開業社労士としてある程度軌道に乗せている方の中には、助成金の申請や障害年金の申請などに特化している方も少なくありません。

何かに特化することで当面の営業活動はシンプルになりますし、努力次第で一定量の顧客を獲得しやすくなります。取りあえず、顧客を獲得することで、ほかの仕事を得る可能性も広がります。

ただし、さらにその上を目指していくためには、やはりトータルでレベルの高い対応を事務所として可能にしていく必要があります。

(3)顧客に寄り添った対応を心がける

社労士として働いていると、「先生」と呼んでくださる顧客もいます。ここで勘違いしてはいけないのは、社労士はサービス業であるということです。専門家として自分のスタンスを持つことも必要ですが、やはり、顧客第一でなければなりません。

法律で決まっていることだけを杓子定規に説明、対応しているだけでは、せっかく獲得した顧問契約も更新してもらえないでしょう。顧客からの要望に応じて、いかに柔軟に、かつ、法律の範囲内で対応していくかがポイントになります。

(4)ITに強くなる

「足で稼ぐ」という言葉がありますが、ご多聞に漏れずひと昔前の社労士も営業活動や顧客対応は、実際に現場に行くことがある意味、正義とされていました。

しかしながら、現在はインターネット社会です。営業活動の一環としても少なくともホームページは必要ですし、相談受付の窓口となる公式メールも必要です。ホームページに自分が得意な分野を記載しておけば、その分野の依頼を検討している経営者などから問い合わせがくるかもしれません。

また、官公庁の手続きはほぼ電子申請が導入されているため、これを活用することで頻繁にハローワークに行く必要もなくなってきています。そのほか、労務管理や給与計算に関するデータなどは、顧客の利便性を考えて、クラウドで共有するなどが一般化しています。

このように、いまの社労士にはITに関する知識は欠かせません。もし、コンピューターやインターネットに弱いということであれば、そのあたりの勉強も必要になります。

7 社労士業務の将来性は?

社労士としてできる業務は、社会保険労務士法により、次のように定められています。

【1号業務】
労働社会保険諸法令に基づく申請書等の作成、提出に関する手続き代行、事務代理(申請書類について、または、行政官庁などの調査や処分に関して事業主の依頼を受けて代理人として主張や陳述を行うこと。)

【2号業務】
就業規則や労働者名簿、賃金台帳などの会社で備えておくべき労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類等の作成

【3号業務】
事業における労務管理その他の労働に関する事項および社会保険に関する事項について相談に応じ、指導すること(いわゆる「コンサルティング業務」のことを言います)。

なお、1号業務と2号業務は社労士にしかできない「独占業務」ですが、3号業務については社労士でなくでもできる業務です。各業務の将来性について考えてみます。

(1)1号業務(申請書作成・提出代行等)の将来性

申請書の作成や提出代行などの業務については、今後の伸びはあまり期待できません。

顧客となる企業は、入退社などの手続きや算定基礎届の作成、提出などについて、労務管理ソフトがあれば、電子申請まで簡単にできます。単純にマンパワーがないなどの理由がない限り、わざわざアウトソーシングする必要性がなくなりつつあるということです。

(2)2号業務(帳簿書類等作成業務)の将来性

就業規則については、新規作成や見直しなどに一定の需要はあるかもしれませんが、次の3号業務とセットで行うことが多いと言えます。

作成すべき帳簿書類としては、ほかに労働者名簿や賃金台帳などがありますが、ワードやエクセルで簡単に作成できますし、これも労務管理ソフトを活用すれば自動で作成できます。就業規則の作成や見直し以外は、ほぼ需要はないと言っても過言ではありません。

(3)3号業務(コンサルティング業務)の将来性

コンサルティング業務については、ますます需要が高まっています。

高齢化が進んでいることで人事評価制度をどう見直していけばよいのか、また、働き方改革として求められている「同一労働同一賃金」にどう対応していけばよいのかなど、経営者が相談したいことは山のようにあるはずです。

要は、最後に求められるのは、コンピューターで代わりができる業務ではなく、人でなければできない業務ということです。

ただし、この業務は、社労士の独占業務ではないため、社労士でない者も競争相手になります。そのような状況で仕事を獲得していくためには社労士として深い知識と経験が必要になりますが、この業務を軸にできるかどうかが社労士として稼いていくためのポイントになっていくと言えます。

8 まとめ

・開業して安定した収入を得るまでには、概ね1~2年はかかるため、その間は貯金を切り崩していくなどの覚悟が必要である。

・勤務社労士の平均年収は500万円前後であり、一般の会社員よりは多い。

・開業社労士の年収については、軽く1,000万円を超えている者がいる一方、勤務社労士の平均年収を大きく下回る者も数多く存在するなど格差が大きい。

・今後、開業社労士として稼げるかどうかは、コンサルティング業務ができるかどうかにかかっている。

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