働き方改革がパートに与える影響及びパートタイム労働法8・9条の均衡待遇について

働き方改革がパートに与える影響及びパートタイム労働法8・9条の均衡待遇について

働き方改革がパートやアルバイトの従業員に対しても影響を与えるということについてですが、実は多くの方々が見逃している論点となっています。

正社員の働き方改革による待遇の変化が解説された記事は多くありますが、パートやアルバイトの従業員の働き方改革による待遇の変化に特化して書いている記事は、あまり多くありません。

本記事では、日本の労働力を大きく担っている、パートやアルバイト従業員に焦点を絞って情報を発信しています。

労働人口が少なくなっている中で、パートやアルバイト従業員の方々の労働力は、大変重要であり、欠かすことがきません。

なぜ働き方改革が導入されることになったのか、パートやアルバイトに与える影響とは、均等待遇規定や有給休暇はどれくらいの範囲で適用になるのか、この3点について解説していきます。

1、働き方改革を導入する理由

2019年4月から導入が始まった働き方改革ですが、現在多くの会社では、導入のために既存の制度を根本から見直さなければならなかったり、実行した内容の実施状況に実情が合っていないところがあれば調整していかなければならなかったりと、まだ安定して運用できていない状況です。

では、そもそもなぜここまでして働き方改革を進めていく必要があったのでしょうか。

(1)労働者人口の減少で人材確保が困難

現在、日本が少子高齢化していることは誰もが知るところですが、労働人口の多くを占めていた団塊の世代がどんどん退職しているため、労働人口の減少が止まりません。

 

具体的な数値で見ていきましょう。

2013年の日本の人口は約1億2730万人でした。

2030年には約1億1662万人、2048年には1億人を下回り、2060年には8674万人の予想です。

 

次に、労働人口を見ていきます。労働人口とは、その名の通り「労働者の数」です。

15歳から64歳までを働く人口をした場合、2010年頃は約8000万人でした。

2030年頃には約7000万人、2060年頃には4000万人に迫るほど減少します。

 

人口の減少は、労働人口の減少と共にあります。労働人口が減少してしまうと、どこの企業も人手不足に陥ります。この人手不足はすでに色々なところで発生しており、2019年4月から施行された外国人の在留資格の拡大による特定技能制度(単純作業でも就労できようになる、新しい在留資格)の新設などからも、日本全体が人手不足である深刻な状況だということがわかります。

(2)有給休暇の未消化が経済活性化と雇用創出を妨げる

年次有給休暇は会社から与えられるものではなく、一定の期間仕事をしていると当然の権利として付与される休暇です。この後出てくる、見出し5の「パート・アルバイトにおける有給休暇取得義務化の対象の有無」で解説させていただいておりますが、パート・アルバイトの従業員でも、ある一定の期間、仕事を継続して働いていると、年次有給休暇を取得し、消化することが可能です。実は、この部分があまり世間一般に知られていません。

 

年次有給休暇を消化しないということは休む日が減ってしまうため、旅行へ行ったり、娯楽施設へ行ったり、飲食店へ行ったり、スポーツジムへ行ったり、英会話教室や資格の学校へ通学するといった、プライベートにおける様々な機会が減ってしまいます。そうすると、お金の循環が悪くなり、日本経済の活性化を妨げてしまう一要因になります。

 

さらに、社内での年次有給休暇の取得のしづらさや、人手不足による年次有給休暇の取得のしづらさによって、雇用の創出を妨げてしまいます。休みが少ないことで、労働者の心身のリフレッシュを図る機会が失われてしまうと、疲労の蓄積の状況や心身の状況によっては、副業の妨げや、退職後の復職に影響が出てしまいます。

(3)賃金格差が少子化を生む

 

子どもが欲しくても、もらえる賃金が低いことなどが影響し、子どもをもうけられない世帯が増えました。

とりわけ、90年代後半以降の少子化を加速させたのは、この「賃金格差問題」です。中でも「若年男性の収入の不安定化」が最大の原因とされています。90年代から非正規雇用者が増加しました。現在の若い男性は、不安定な雇用と上昇が見込めない賃金による将来への不安から、結婚・出産をためらう意識が強くなっています。

さらに、現代は核家族化が多く、子育てや家計を支える人が夫婦の2人で行わなければならないことが多い状況です。昔よりも一層、現代の夫婦は、金銭面的にも子育てにも、かかってくる負担が大きくなっています。

 

このように、晩婚化や非婚化によって、2018年は出生率が1.42へと落ち込み、3年連続のマイナスとなりました。2005年に記録した1.26に比べると高い水準なのですが、女性人口そのものが減少しているため、出生数が91.8万人となる過去最少を記録しました。

 

この少子化は、東京、神奈川、大阪などの、地価の高い首都部に集中しています。

地価の高い首都部は、賃料などの生活費が高く、自分たちの家計を支えているだけでも大変だからです。さらに、子どもを保育園や幼稚園に預けようとした場合、待機児童の問題が重なります。

出生率を改善するためには、1つの原因を解決すれば上昇するという簡単な問題ではありません。

 

2、働き方改革がパートに与える影響

 

2019年4月から順次施行されている働き方改革の中に、「正規・非正規の不合理な待遇差をなくしましょう」という規定があります。この規定は、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から導入されます。この、待遇差をなくしましょうという規定を「同一労働・同一賃金制」と言います。

 

この、「同一労働・同一賃金制」には、2つの格差是正があります。

同一の企業で、同じ責任の下、同じ仕事をしたら、同じだけの給与を支払い、差別的取り扱いを禁止しましょうという「均等待遇規定」と、業務内容や責任などの違いに応じた範囲内で待遇を決定し、不合理な待遇差をなくしましょうという「均衡待遇規定」があります。

 

これらの規定はすべて、正規・非正規かどうかの別は関係なくすべての労働者へ適用されます。そこで、以下の4点についての影響が考えられます。

(1)パートの雇用が増えるのか

パートの雇用はますます増えていくと見込まれています。働き方改革では、「同一労働・同一賃金制」以外にも、様々な規定が設けられています。

 

その中に「残業時間の上限規制」というものがあります。この「残業時間の上限規制」は2019年4月からすでに実施されている規定です。

今まで細かく規定されていなかった残業時間の上限について、抜け道がないよう罰則付きで法律に明記されるようになり、以前よりも残業できる時間が短くなりました。そこで、長時間残業をしていた正社員やフルタイムの労働者は、今までよりも早く帰らなければなりません。

 

人手不足を正社員やフルタイムの雇用で解決するより、パートタイマーとして雇用した方が、繁忙期や閑散期の際に柔軟な人員の対応ができるよういう利点があります。

そのため、パートタイマーの雇用が大いに期待されています。

(2)パートの有給休暇に対する意識が向上する

冒頭にも触れましたが、パートやアルバイトの従業員にも、一定の期間仕事をすることで、有給休暇の権利を得ることができます。2019年4月からすでに実施されている「有給休暇の時季指定」という規定では、年次有給休暇が10日以上の労働者に対し年5日以上の有給休暇を与えないと、企業に罰金が課せられるという内容が明記されました。

 

このことにより、パートやアルバイトの従業員も、有給休暇を取得して権利を行使しようという意識の向上に繋がります。

(3)待遇面の改善

経験が豊富だったり、社員と同じくらい働いていたりするパートやアルバイト従業員に対しては、「同一労働・同一賃金制」により、社員と同じ待遇に改善されていくと見込まれています。また、見出し4にて詳しく解説いたしますが、パートタイム労働法の改正も、待遇面の改善に一役買うこととなります。

今まで低い時給で我慢していた場合、この制度の施行によって、今後もらえる給与がアップするかもしれません。

 

また、この「同一労働・同一賃金制」によると、時間外手当、休日手当、出張旅費なども、正社員と同じように支給しなければなりません。さらに、昇級についても不合理な差が出てしまわないよう配慮すべきとの方針のため、待遇が今よりも格段に改善されると見込まれています。

 

「同じ仕事をしてるのに、なぜこれだけしかもらえないのだろう」という不合理な差別がなくなっていきます。ただし、これは逆に、正社員やフルタイムだけではなく、パートタイマーの人たちにも実力主義的な状況となっていく可能性があるということにも繋がります。

経験者であれば、時給や採用で優遇されることが増えていき、未経験であれば、最初のうちは時給が低くなってしまうということが起きないとも限りません。

また、ただ仕事をしていればいいということでは昇級せず、社員やフルタイムの人たちと同じように評価された上で昇級されていくという可能性もあります。

 

同一労働・同一賃金制は、日本が古くから根付いていた年功序列制度を破壊する制度だと言われています。パート・アルバイトの従業員も、この考え方を理解しておくことが必要です。

(4)残業時間の短縮で賃金面にデメリットも

正社員やフルタイム、パートやアルバイトの形態に関わりなく、「残業時間の上限規制」によって、今までよりも残業できない人が多く出てくる恐れがあります。

残業代を生活費に充てていた場合は、家計に影響が出てしまうかもしれません。

 

また、半強制的になってしまうような「残業禁止」という風潮が起こってしまった場合、自宅へ仕事を持って帰ってしまうことに繋がりかねません。そうなってしまうと、本来であれば残業で割増賃金がもらえていたところ、サービス残業で1円ももらえないということになってしまいます。

 

3、有期雇用労働者もパートタイム労働法の対象に

 

働き方改革法案を受け、パートタイム労働法が改正され、2020年4月に施行が予定されています。その中で最も大きいのが、パートタイム労働法の対象労働者に、期間の定めのある雇用を結ぶ労働者、すなわち有期雇用労働者をパートタイム労働法に含めるようになったということです。

 

この有期雇用労働者とは、契約社員や定年退職後の嘱託社員を想像するとわかりやすいでしょう。

 

この改正により、今まで有期雇用労働者にはなかった「雇入の際の、処遇の説明義務」、「求めがあった際に、待遇決定についての考慮事項の説明義務」、「求めがあった際に、待遇差の内容・理由の説明義務」、「不利益取り扱いの禁止」を企業側に求めることができるようになります。

 

定年退職後の再雇用で嘱託社員となった場合、賃金が下がるというお話を聞いたことはありませんか。同じ責任で同じ仕事内容にも関わらず、嘱託社員になった途端に賃金が下がってしまっては、2020年に予定されている「同一労働・同一賃金制」に違反することはもちろんのこと、2020年4月に施行予定の改正パートタイム労働法である、8条と9条に違反する恐れがあります。

 

企業側は、違反とならないよう、早急に社内ルールを整える必要があります。

次項で、8条と9条の内容について、詳しく見ていきましょう。

 

4、パートタイム労働法8・9条の均衡待遇と均等待遇とは?

 

正社員と比較して、「不合理な待遇になっていないか」、「同じ責任下で同じ仕事をしたときに同等の処遇になっているかどうか」が書かれている条文です。

有期雇用労働者がこれらの内容にそぐわない状態になった場合、8条違反、あるいは9条違反として労働者が企業を訴え、労使間の争いになってしまう恐れがあります。

 

企業側においては、そのようなことが起きてしまわないよう、施行前に十分議論をし、きめ細かな検討をしておく必要があります。

(1)パートタイム労働法8条の均衡待遇

8条には、「不合理な待遇差の禁止」が書かれています。

「職務内容(業務内容・責任の程度)」、「職務内容・配置の変更の範囲等の違い」、「その他の事情(成果、能力、経験など)」の3点の要素から、個々の待遇の性質・目的に照らして、正社員と有期雇用労働者で待遇のバランスが取れているかという内容です。

 

正社員と有期雇用労働者の職務内容等が同じにもかかわらず、賃金に大きな差があったり、福利厚生や教育訓練が受けられなかったりした場合、法8条の違反となります。

(2)パートタイム労働法9条の均等待遇

9条には、「差別取り扱いの禁止」が書かれています。

「職務内容(業務内容・責任の程度)」と「職務内容・配置の変更の範囲等」が同じなら、差別的取り扱いを禁止するという規定です。

8条とは違い、人やケースによって異なる「バランス」という曖昧な部分がなく、2つをすべて満たさず違反すれば即違法となります。

 

5、パート・アルバイトにおける有給休暇取得義務化の対象の有無

 

正社員は、入社して最初の6ヶ月間継続勤務すると、10労働日分の年次有給休暇の権利を得ることができます。勤続年数を重ねるに従い、この付与される日数は多くなっていきます。

また、時効が定められており、2年で消滅します。したがって、年次有給休暇のうち、その年度内に取得しなかった未消化日数については、翌年度にのみ繰り越すことができます。

 

この正社員の規定は、フルタイムで働く契約社員や嘱託社員にも適用され、正社員と同じ日数を付与しなければなりません。

 

また、パート・アルバイトについては、付与される日数の部分に関してのみ規定が変わります。これを比例付与といいます。

 

例えば、週に4日(1年間で169日から216日)出勤で、週に30時間未満のパート・アルバイトは、基準日(入社から半年後)から1年の間に、7労働日分の年次有給休暇を取得します。

週に1日(1年間で48日から72日)出勤で、週に30時間未満のパート・アルバイトは、基準日(入社から半年後)から1年の間に、1労働日分の年次有給休暇を取得します。

 

この比例付与の最大値は、週4日(1年で169日から216日)出勤で、週に30時間未満のパート・アルバイトを6.5年以上続けた場合、15労働日分付与されます。

パート・アルバイトも正社員やフルタイムと同様に、2年間の時効があります。

 

年次有給休暇は、一日単位で権利を行使することができるのはもちろんのこと、会社によっては半日休暇や時間単位でも取得することが可能です。

働いている会社が、一日単位での権利行使だけなのか、時間単位でも権利行使することができるのかを確認しましょう。

 

年次有給休暇を取りたいと企業に申し出た時季が、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、請求した希望の日に取らせてあげなければなりません。この「年次有給休暇の時季指定」規定に違反した場合、30万円以下の罰金となります。

 

但し、この年次有給休暇は、退職日を超えて時季を変更することはできません。そのため、退職予定者が退職直前の全日数について時季指定した場合、会社側は変更するようお願いすることはできません。

 

サマリー

いかがだったでしょうか。パート・アルバイト従業員でも、思っていたよりも待遇が良くなっていくと感じた方が多かったのではないでしょうか。ただし、実力主義的な状況に変化していく可能性も視野に入れておかなければなりません。

 

年次有給休暇については既に実施されていますので、条件さえ合えば、すぐにでも権利を行使することが可能です。もしパート・アルバイトの従業員の方であれば、会社に確認するといいでしょう。

 

待遇面の改善については、2020年4月からの実施になります。具体的には、大企業は2020年4月からの実施、中小企業は2020年4月からの実施です。そのため、事前に待遇面について知っておき、心構えをしておきましょう。

 

パート・アルバイト従業員の需要は、少子高齢化や残業時間の上限規制などの影響により、これからどんどん需要が高まっていく見込みです。需要が高まると、市場の原理で時給は底上げされます。

本サイトで、働き方改革がパート・アルバイト従業員に与える影響を知っていただき、事前に対応しておきましょう。

 

まとめ

・労働人口の多くを占めていた団塊の世代が退職しているため、労働人口の減少が止まらず、パートタイマーの雇用は増えると見込まれている

・年次有給休暇の未消化や長時間労働は、お金の循環が悪くなって日本経済の活性化を妨げてしまったり、副業の妨げや退職後の復職に影響が出てしまったりする

・年次有給休暇を与えないと企業に罰金が課せられるという内容が明記されたことにより、パートやアルバイトの従業員も、有給休暇を取得して権利を行使しようという意識の向上に繋げられるようになる

・社員と同じくらい働いていたりするパートやアルバイト従業員に対しては、「同一労働・同一賃金制」や「パートタイム労働法の改正」により、待遇が改善されていくと見込まれている

・有期雇用労働者が均衡待遇や均等待遇にそぐわない状態となった場合、8条または9条違反として労働者が企業を訴えるような、労使間の争いになってしまう恐れがある

 

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