外国語が堪能ならぜひ!海外進出や外国人雇用をサポートする国際社労士とは?

外国語が堪能ならぜひ!海外進出や外国人雇用をサポートする国際社労士とは?

コロナ禍で出入国規制がしかれているものの、今や企業が海外展開をを視野に入れることはスタンダードになりました。すると疑問になってくるのが、海外での経営や人材雇用の仕方について。また、来日した外国人を雇用するケースも然り、です。

企業の国際化のなかで、社労士には何ができるのでしょうか? この記事を読めば、社労士が企業の海外進出や外国人雇用のために、いかに貢献できるかがお分かり頂けるでしょう。

1 社労士業務と海外

新型コロナウィルス感染拡大がまだまだ収まらず、諸外国との国交回復もままならない状態が続いています。しかし法務省によると、日本での起業が可能な在留資格である「経営・管理」を持つ外国人は、年々その数を増やしています。同資料によると2017年末には、2015年から32.7%も増加を見て、2万4,033人に到達しました。

海外展開も、日本の産業にとって重要な施策の一つです。もはや事業発展のためには是非とも検討すべき要素の一つになっています。

(1)国際化における社労士業務はブルーオーシャン

社労士は労働・社会保険関連法令の専門家ですが、これらは国内にしか通用しない法律です。しかし、あらゆるビジネスが海外展開に挑む現在、社労士の業務もおのずと国内外に広がりを見せます。社労士は企業の持つリソース「ヒト・カネ・モノ・情報」のうち、ヒューマン・リソース「ヒト」の専門家です。企業人材が海外に出て行ったり、外国人を迎え入れたりする場合は、常に社労士の労務知識が求められるのです。

ここに加えて、語学力、現地法に通じる人脈を持っている社労士は、鬼に金棒だといえるでしょう。

(2)海外展開と日本のビジネス

そもそも日本のビジネスは、資源の獲得、市場の拡大、労働力獲得(オフショア)等の観点から見ても、海外に活動を展開しないと大きな発展は難しいといえます。

お家芸であった製造業の歴史から見てもそうですし、IT業界においても、より安価な労働力の確保のためにオフショアを推進してきました。特に、ベトナムには多くのIT企業が進出し、それに伴い不動産など人材に付随する産業も追随しました。ですので、進出先での労務管理の需要はかなり大きいはずです。

今般はコロナ禍で出入国に規制をかけ、水際対策が叫ばれていますが、いつまでもこうではないはずです。コロナが収束に向かうと、企業の国際的な活動展開はより促進されるものとなるでしょう。

(3)海外進出のサポート

海外進出するのは、もはや大企業だけではなく、中小・零細企業もおこないます。企業数でも10年前の2倍となっており、そこで発生するのが「海外進出後の人事労務管理」です。

進出先では、その地の法律に従わなければなりません。現地で労働者を採用した場合は、以下のような疑問が出てきます。

・就業規則はどうするのか?
・労働契約書は必要なのか?
・勤務時間、休日はどうするのか?

社労士が、顧客企業の海外進出後の労務管理をサポートするためには、現地法に通じるために、労務管理のパートナーを探すところから始めなければいけないでしょう。海外業務の経験があったり、外国語が堪能な社労士にとっては、やりがいのある仕事でしょう。

2 国際社労士事務所の主な業務

海外進出や外国人雇用など、国際的な案件を取り扱う社労士事務所は、「国際社労士事務所」という看板を掲げています。初めはこういった事務所に「勤務社労士」として就職し、将来の独立開業を目指して経験を積ませて頂くのも良いでしょう。各国際社労士事務所によって最も強みとする業務は違うので、就職活動をおこなう際には、良く調べることが必要です。

下表には、国際社労士事務所の主な業務内容をまとめてみました。

日本企業の海外進出 ・現地の就業規則作成(現地法に基づく)
・起業コンサルティング
・労働契約書作成(現地法に基づく)
・社会保険手続き
・現地労働法研修
・現地の給与計算
海外企業の日本進出 ・子会社の設立
・社会保険、労働保険手続き
・駐在事務所の設置
・就業規則作成
・労働契約書作成
外国人雇用(行政書士との連携) ・就労ビザの申請
・在留資格の確認方法
・外国人の結婚等に伴う資格変更手続き
海外年金 社会保障協定締結・発効前に海外勤務していた場合
メンタルヘルス 働き方改革の一環である「健康経営」に基づく
外国人雇用による助成金申請 ※次章にて詳しく解説

(1)日本企業の海外進出

海外現地法人は、現地の雇用・就労ルールを遵守しなければなりません。このような場合は、現地の労務専門家との連携を図る必要があります。高い語学力を持つ社労士なら、上手く連携パートナーを探して進出企業を総合的にサポートしてあげることができるでしょう。

(2)海外企業の日本進出

海外の企業や起業家が日本でビジネス展開する場合は、反対に日本のルールに従って就労することになります。この場合、日本の労働・社会保険関連法令を外国語で説明する能力が求められます。

(3)外国人雇用

外国人雇用に対する社労士の知識にも、高いニーズがあります。2019年4月1日には、改正出入国管理法施行により、新在留資格「特定技能」が創設されるなど外国人材の受け入れが拡大されました。

行政書士の業務範囲ではありますが、今般のコロナ禍には、外国人の在留資格申請の期限延長などの動きがありました。外国人を雇用している事業者には関わってくる問題です。

いずれにせよ、外国語対応が可能な社労士なら、事業者が外国人を雇用する間は、新規雇用時から長期的なサポートを提供して、労使トラブルを回避できるようにしてあげることができます。

(4)海外年金

日本だけでなく、海外にも年金制度はあります。そして驚くべきことに、日本人の海外赴任者でも、一定の条件を満たせば海外年金が受給できます。ただし、該当するのは「社会保障協定」締結・発効前に、海外赴任して社会保険料を支払っていた人のみです。

「社会保障協定」とは、日本が海外主要国と締結した協定で、負担の大きい社会保険料の二重払いの義務を免除できるというものです。当協定が締結される前は、海外赴任者にも相手国の社会保険制度への加入が義務付けられていました。

このことはアメリカの年金についてを除き、あまり知られていません。一定の条件を満たせば受給できる海外年金は、アメリカの他にはイギリス、ドイツ、フランス、スペインなどがあります。

(5)メンタルヘルス(健康経営)

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。 企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

出典:経済産業省

健康経営も、働き方改革の一翼を担う考え方です。勤勉や自己犠牲が美徳とされてきた日本の労働環境は、会社ぐるみの健康管理で活力向上・生産性向上を目指す時代になりました。外国人労働者の雇用においても同様です。

働き方改革では、産業医の強化をもって、事業者は労働者のメンタルヘルスにも責任を持つべしとしました。外国語が堪能な社労士ならば、健康経営のサポートも十分におこなえるでしょう。

3 外国人雇用と助成金申請

社労士といえば、厚生労働省系の助成金申請を独占業務に定められた国家資格です。それでは、外国人雇用企業の助成金申請作業も代行できるのでしょうか。

(1)助成金申請には労務全般が関わってくる

答えはもちろん「イエス」です。実は、ここ数年で助成金の審査は非常に厳格化しており、助成金を申請しようと思ったら、労務を丸ごと見直さなければいけない時代になりました。

助成金申請には、会社の労務管理を整備できるという効果があります。助成金を受給できる会社は「就業規則・労務管理がきちんとした会社」と看板を下げるようなものだといわれるのは、未整備では審査に受からないからです。

かつては、助成金の申請対象者である外国人労働者しかチェックされませんでした。しかし、数年前から以下の項目もチェックされるようになったのです。

・36協定の提出
・36協定などの労使協定の遵守
・フルタイム従業員に対する年次有給休暇の取得(5日間)
・求人票の実際の勤務の差異
・雇用契約書の実際の勤務の差異

(2)外国人を雇用した際にもらえる助成金

まず、既に外国人を雇用している事業主は、「雇用調整助成金 新型コロナ特例」が受給できるかも知れません。厚生労働省によると、対象となるのは、

①新型コロナウイルス感染症の影響で
②事業活動の縮小を余儀なくされた場合に
③労使間の協定に基づき休業を実施する事業主

です。

次に、外国人を雇用した際に申請できる助成金を紹介します(会社の状況によって、可能性は変わってきます)。

キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース 契約社員と正社員の格差是正を応援する制度
正社員転換コース 正社員転換を助成する制度
時間外労働改善助成金 勤務間インターバルコース 退勤後9時間は出勤を禁じる制度
人材確保等支援助成金・
働き方改革支援コース
新人材支援、業務量改善支援制度

※社会保険に加入していることが前提。会社の状況によっては全て適用することが可能。

①キャリアアップ助成金の諸手当共通化コース

有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合に助成する制度です(少なくとも6か月の支給実績が必要)。諸手当制度は、以下から選んで設けます。

賞与、役職手当、特殊作業手当・特殊勤務手当、精皆勤手当、食事手当、単身赴任手当、地域手当、
家族手当、住宅手当、時間外労働手当、深夜・休日労働手当

まずキャリアアップ計画を作成・提出し、その結果で支給額が変わります。

【支給額】

事業所あたり:38万円
生産性の向上が認められる場合:48万円
中小企業以外の場合:28万5,000円
生産性の向上が認められる場合:36万円

外国人を契約社員として雇用することが前提ですが、ビザの種類によっては助成金に関係なく、初めから正社員採用が必要な場合もあります。

②正社員転換コース

外国人労働者を初めは契約社員として雇用し、諸手当共通化制度を実施して助成金を受けた後、見込みがある労働者は半年から1年後に正社員転換します。すると、諸手当制度共通化コースに続けて「正社員転換コース」の助成金を受給できます。

【支給額】は生産性の向上が認められる場合

雇用形態 中小企業 中小企業以外
有期 → 正規 1人当たり57万円 72万円 42万7,500円 54万円
有期 → 無期 1人当たり28万5,000円 36万円 21万3,750円 27万円
無期 → 正規

③勤務間インターバルコース

「時間外労働改善助成金の勤務間インターバルコース」とは、退勤後9時間は出勤してはいけないという制度「勤務インターバル」を奨励する助成金コースです。対象となる取り組みは以下の通りです。

・労働生産性を向上させる機械等の購入
・勤怠管理クラウドサービスなど勤怠管理の厳格化に繋がるソフト等の購入
・社労士による担当者向け労務管理説明会・就業規則セミナー

取り組み目標の達成状況に応じて、助成金が支給されます。

④働き方改革支援コース

「時間外労働改善助成金の人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)」は、人材確保が必要な中小企業が、新たに労働者を雇い入れ、一定の雇用管理改善を図る場合に助成するコースです。1人あたりの業務量を改善するのが目的で、新たに人を採用した場合、1人につき60万円が支給されます。

なお、勤務間インターバル助成金の交付決定か支給決定を受けていることが、申請条件になります。

4 海外業務に携わる社労士の今後

日本企業の海外進出における社労士の役割は、とても大きいことをお分かり頂けたことでしょう。働き方改革や、新型コロナウィルス感染拡大で創設された助成金の申請業務で、日々活躍を続ける社労士。

コロナ禍が収束に向かい出入国規制がなくなれば、ビジネスにおける国際化の波は更に大きくなって戻ってくるでしょう。その時にはより社労士への需要が高まるでしょう。そのような時代を迎える前に、国際社労士がやっておくべき準備があります。

(1)働き方改革実現のためのソリューションを持つ

働き方改革は日本の労働環境の改善がテーマですが、なかなか進まないため国が法的整備をもって推し進めました。

今般のコロナ禍では失業問題が台頭してしまいましたが、それ以前は日本の労働力不足、人手不足は深刻だったのです。人手不足を打開するためには「多様な働き方」で外国人や女性、シニアの雇用促進も重要なカギとなります。そのために、企業が助成金を受給できるようにしたり、外国人の在留資格問題で行政書士と連携したりと、社労士にできることは様々あります。

コロナ禍では、政府は感染拡大対策として「テレワーク導入」を掲げ、設備投資などに活用できる助成金を設けました。申請条件もかなり緩和されましたが、中小企業の中にはそもそも、「テレワークに必要な機器って何?」「セキュリティーはどうすればいい?」などの初歩的な疑問を、解決できずにいる企業が多かったのです。もし社労士が、助成金申請業と合わせてテレワーク導入セミナーなどを紹介したら、どんなに感謝されたでしょうか。

このように専門知識に合わせて、顧客の就労環境を解決できるソリューションを持ち合わせる社労士は、これからの時代により求められていくでしょう。

(2)行政書士とのワンストップサービス

行政書士は、出入国関係申請取次業務「在留資格取得」を依頼人に代行できます(弁護士も同様)。また、行政書士は会社設立に携わることができるので、社労士が外国人起業の案件で連携すべき存在です。外国人が無事起業した後は、今度は社労士が労務管理や給与計算業務といったサポートをおこないます。

このように、顧客が一箇所で社労士と行政書士のサービスを享受できるような運営を「ワンストップサービス」といいます。これは顧客目線に立ったサービスで、この姿を目指す事務所は多いのですが、こと国際社労士事務所は、行政書士と協働すべきでしょう。国際社労士事務所の開業を目指すなら、在留資格を取り扱う行政書士との連携を視野に入れましょう。

5 サマリー

社労士試験の受験生のほとんどは社会人です。ですので中には、国家試験に合格する前は、海外業務を担当し語学力をフル活用して働いていたような方もいるでしょう。そんな方はこの記事を参考にして、将来的には、是非国際社労士を志して頂きたいものです。

6 まとめ

・日本での起業が可能な在留資格「経営・管理」を持つ外国人は2015年から32.7%増加し、2万4,033人に到達。

・企業人材が海外に出て行くと、現地の労務労務知識が求められる。

・語学力、現地法に通じる人脈を持つ社労士は、国際労務において鬼に金棒だといえる。

・海外進出企業の労務管理をサポートするには、現地の労務管理のパートナーを探すところから始めなければいけない。

・外国人雇用は、2019年4月1日改正出入国管理法施行で新在留資格「特定技能」が創設され、受け入れが拡大した。

・助成金申請は厳格化し、近年は対象者の外国人労働者だけでなく、36協定の提出など労務管理もチェックされる。

・国際社労士事務所の開業を目指すなら、在留資格を扱う行政書士とのワンストップを視野に入れよう。

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