在宅勤務を導入するなら、就業規則はどうする?就業規則改正や、新規程の作成手順・ポイントを解説!

在宅勤務を導入するなら、就業規則はどうする?就業規則改正や、新規程の作成手順・ポイントを解説!

在宅勤務をこれから始めることになったら、「休憩時間はどうするのだろう」「自宅のパソコンで作業していて事故が起こったらどうしよう」など、いろいろな不安を抱くことでしょう。

こういった不安については、基本的に全て就業規則に規定として収められていなければいけないのです。

この記事では、在宅勤務を始める場合の就業規則の改定手順や、在宅勤務者が事前に押さえておくべきポイントについて解説します。

1 在宅勤務とは?

2019年5月の調べで、上場企業の37.3%が在宅勤務制度を導入していることが明らかになりました。2020年には新型コロナウィルス感染症対策として、在宅勤務をはじめとするテレワーク支援が、政府から特例として拡充されました。

テレワークはそもそも、働き方改革への取り組みの一環として政府に推奨されています。

(1)テレワークの定義とは?

在宅勤務という呼称は、テレワークやモバイル勤務などと共に使用されることが多いため、意味を混同されがちです。

そもそもテレワークの定義とは何かといえば、「インターネットなどのICTを活用した場所にとらわれない柔軟な働き方で、勤務場所から離れて、自宅などで仕事をする働き方」を指します。なおかつ、テレワークは就業形態の違いでいくつかの種類に分かれます。

(2)在宅勤務の定義とは?

対象者の就業形態の違いによる分類 雇用型テレワーク 外勤型テレワーク モバイル勤務
内勤型テレワーク 在宅勤務
通勤困難型テレワーク
自営型テレワーク(SOHO ワーク、マイクロビジネス等を含む)
内職副業型テレワーク(在宅ワーク)

テレワーク相談センター資料を基に作表

上表は、テレワークの種類を就業形態別に分かりやすくしたものです。これによると在宅勤務は「内勤型テレワーク」になります。

内勤型テレワークとは、企画・人事・総務など、これまであらかじめ決められた勤務場所(オフィス等)を中心として仕事をする人達のテレワークです。これを実現するためには、お分かりのようにICTを活用した就労環境の整備が必須です。またそもそも、就業規則を設けて届出等の手順を踏んでおかなければなりません。

在宅勤務の実現までにはいくつかのハードルがありますが、テレワークが出来るようになれば、電話受けなどから開放されて「業務の効率化」が図れたり、「通勤時間の短縮」や「通勤疲労の軽減」につながったりといったメリットがもたらされます。

(3)在宅勤務導入の意図の違いによる2つの分類

また、テレワークは導入の意図によって2つに分類されます。

①BPRモデルのテレワーク導入

BPR とは、「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング(仕事のやり方の再構築)」という意味です。業績アップや生産性向上などを意図したテレワーク導入を指します。

②CSRモデルのテレワーク導入

CSRとは、「コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティ(企業の社会的責任)」という意味です。環境問題への配慮や、災害時の対応としてテレワークが導入されることを指します。テレワークが導入されると、育児や介護の役割を担うために退職する人を離職から引き留めることが出来る場合がありますが、このような福利厚生的な意味合いが強いのが「CSR モデル」です。

(3)在宅勤務の導入は増えている?

前述のように、在宅勤務はここ数年で大きな伸びを見せています。

日本生産性本部による「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査」によると、その状況がよく分かります。

下図は、「在宅勤務」「テレワーク」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の採用状況について企業に調査し、その結果の推移をグラフにしたものです。

出典:日本生産性本部「第16回日本的雇用・人事の変容に関する調査」

上図によると大きな伸びを示しているのは、在宅勤務制度の導入率で、37.3%まで上昇しています。

特に2016年から2018年の2年間で、急速に導入が進んでいることが分かります。在宅勤務制度以外のテレワーク制度を導入した企業も増加しています(21.6%)。

対して、個人の裁量度が高い働き方である「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」はさほど上昇しているわけではありません。これまで、ほぼ同水準の導入率で推移しているといえます。

2 在宅勤務を導入する場合の就業規則は?

就業規則が必要になるのは、法的には従業員が常時10名を超えている事業所の場合です。また、労働時間などの労働条件が、オフィス勤務者と在宅勤務者で違いが生じない場合は、従来の就業規則をそのまま利用できることになっています。

とはいうものの、いざ導入となると「通信費の負担はどうするのか」という問題が生じたり、「フレックスタイム制は導入できないか」という意見が出たりするでしょう。こういった場合は、就業規則に新たに規定を書き加えなければなりません。

(1)在宅勤務に関して就業規則が必要な場合は?

繰り返しますが、就業規則が必要になるのは、従業員が常時10名を超えている事業所です。これに該当せず就業規則の作成・届出義務がない会社の場合は、在宅勤務について労使協定を結んだり、労働条件通知書で労働者に通知したりすることが必要になります。

もともと在宅勤務の就業規則がある場合は、従業員を採用した時に在宅勤務制度について、労働条件通知書や就業規則の規程等で明示します。合意があれば、労働者は通常の勤務から在宅勤務へ業務命令として変更が可能になります。

今回初めて在宅勤務を導入する場合は、従業員は採用時に、在宅勤務に関して全く説明されていない状態になります。在宅勤務は労働条件の変更にあたるため、在宅勤務を導入する際の労働条件を明示し、企業と従業員との間で合意することが必要です。

(2)テレワーク勤務規程の作成が必要

出典:テレワーク相談センター

「テレワーク勤務規程」を新たに作成する場合、その位置づけは上図の通り、就業規則の一部とされます。就業規則本体に直接規定しても、「テレワーク勤務規程」として個別の規程を設けても構いません。

付属の規程であっても作成・変更した際は、従業員が10人以上の事務所であれば所定の手続を経て、所轄労働基準監督署に届出ることが必要です。なお在宅勤務に関しては、次のような項目を定めることが必要です。

・在宅勤務を命じることに関する規定
・在宅勤務の労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定
・通信費などの負担に関する規定など

(3)「在宅勤務規程」や「モバイル勤務規程」の作成が必要な場合も

就業形態によっては、「在宅勤務規程」や「モバイル勤務規程」を作成した方が適切な場合もあります。

在宅勤務の場合、自宅で就労する際の労働時間管理や通信費用の負担について、あらかじめルールを設ける必要があります。また書類作成やメールの受発信などを、自宅、シェアオフィス、移動中、クライアント先など多様な場所でおこなう「モバイル勤務」にも、別個のルールが必要でしょう。

(4)規程を作成・変更したら所轄労働基準監督署への届出が必要

就業規則の変更・別規程の作成をおこなった場合には、以下の手順で届出をします。

従業員の過半数を代表する者の意見書を添付する

所轄労働基準監督署に届出する

これについて労働者に周知する

注意点としては、以下の通りです。

・テレワーク勤務者に新たな労働時間を設ける場合はその労働時間に関する規程も追記する
・就業規則の作成が不要な事業所も、勤務者の負担やトラブルを減らすために作成しておく必要がある

3 在宅勤務のための就業規則作成の手順とは

繰り返しますが、在宅勤務のためのルールは、就業規則の法的な作成義務の有無に関わらず作成した方が良いです。例えば、労働時間の取り決めは慎重におこない、在宅勤務者の始業時間や終業時間をどうやって記録するか、また勤務時間中の在籍確認をどうするかなどを、規定しておくことが大切です。

在宅勤務者は自宅勤務になるので、仕事とプライベートの区別がつきにくくなります。また在宅勤務には、通信費などの「費用」の問題も生じるため、これについても就業規則に規定しておかなくてはいけません。その他にも人事評価やセキュリティ問題などの規定も重要です。

(1)在宅勤務・テレワークに労働基準法は適応される?

在宅勤務をはじめとするテレワークにも、もちろん労働基準法は適用されます。就業規則を作成するときは、労働基準法を遵守しておこないましょう。

例えば労働基準法では、労働契約を締結時に、就業の場所を明示することが定められています(労働基準法施行規則5条2項)。そのため、就業の場所について就業規則に記載するだけでなく、労働契約書にも盛り込む必要があります。このような必要があるのを知らずに就業規則を作成してしまうと、あとで違法労働などのトラブルにもなりかねませんので注意しましょう。

(2)在宅勤務の就業規則策定のフロー

在宅勤務の就業規則を作成するためには、以下のようなフローを辿ります。

注視すべきは、「検証」という過程が入ることです。検証により、従来の就業規則でも対応可能で改正の必要なしと判断された場合は、「全社員に説明し要望を集約する」フェーズに移ることができます。

いずれにせよ、所轄の労働基準監督署に適宜相談しながら進めたら良いでしょう。

出典:テレワーク相談センター

(3)テレワーク勤務にかかる就業規則・諸規程改定項目一覧

以下の項目は、在宅勤務をはじめとするテレワーク導入に当たり、就業規則改定の必要があります。

項目 内容
労働時間 ①通常の労働時間制の適用が可能であり事業場(職場)と同じ勤務体系で在宅勤務を実施する場合 就業規則の変更は不要。
②就業規則に規定されていない勤務体系(フレックスタイム制など)を適用する場合 就業規則に規定の追加が必要。
③在宅勤務時のみなし労働時間制を適用する場合 (就業規則に事業場外みなし労働時間制の規定がない場合)

就業規則に規定の追加が必要(在宅勤務のみなし労働時間制の適用には一定のルールがあるので注意が必要)。

給与・手当 ①人事評価制度を新設あるいは改定したり、通勤手当を変更する場合や在宅勤務手当を新設する場合 就業規則に規定の追加が必要。
②業務内容の変更による給与の変更をおこなう場合 就業規則に賃金規程の追加が必要。
安全衛生

(作業環境)

労働基準法は、在宅勤務の場合、自宅の作業環境が安全衛生法上適した作業環境である事を、義務づけている。 就業規則に規定の追加が必要。
安全衛生

(健康診断)

常時型在宅勤務の場合、健康管理には自己に委ねることが多くなるが、導入時や、定期健康診断とは別に健康診断を実施したり、産業医による健康相談を義務づけたりする場合
安全衛生

(作業管理)

VDT 作業にかかるガイドラインあるように

①「連続作業」

②腰痛防止の健康体操などを示す場合で、新たに「 VDT 作業管理規程」等を作成する場合

服務規律

(セキュリティ)

既存の就業規則では、

①資料の持ち帰りルール

②漏洩防止のための情報管理の方法が不十分で、その内容を追加・変更したり、新たにテレワーク勤務規程等を作成したりする場合

費用負担 ①パソコン本体やその周辺機器は貸与か個人のものを使用するか

②通信回線費用や水道光熱費の費用負担をさせる場合

教育訓練・研修 ①OJT の機会が少なくなる等のことから、在宅勤務者に特別の教育・研修を実施する場合

②福利厚生在宅勤務者は企業内の福利厚生施設を利用する機会が少なくなることから、代償措置を講ずる場合

(4)在宅勤務での勤務時間の把握はどうする?

在宅勤務を導入する際にまず気になるのが、勤務時間をいかにして把握するかです。

①労働基準法に則る

在宅勤務の場合でも労働基準法に則り、通常勤務と同じように、1日の労働時間が8時間、1週間で40時間が原則です。

また事業者は、従業員の始業時刻や終業時刻を確認して記録する義務があります。労働時間に関しての注意点をまとめると、以下のようになります。

・休憩をはさむ必要もあるので、就業規則に盛り込む。
・許可なく在宅勤務者が夜間勤務や休日出勤をしないよう、事前に申請をするなどの規定を就業規則に盛り込んでおく
・業務開始時間を早めても良い場合は、その規定を就業規則に盛り込む
・業務の指示を待っている「待機時間」は勤務時間になる(在宅勤務者に業務指示をするのが夜間になってしまった場合、実際に業務をおこなうのが翌日でも、残業や夜間勤務とみなされる点に注意)

②労務管理ツールなどを使用する

在宅勤務において、どのような方法で在籍確認をするかは、労使で話し合って決めましょう。育児や介護の必要がある在宅勤務者には、勤務時間中に業務を中断することを認める必要も出てくるでしょう。その場合のルールも、労使であらかじめ決めておいた方が良いでしょう。

4 在宅勤務に関する他の就業規則改定の注意点とは?

労働時間の把握のほかにも、テレワーカーに対する人事評価など様々な注意点があります。

(1)在宅勤務での人事評価制度

働いている様子が見えない在宅勤務では、どのようにして適切な人事評価をおこなえば良いのでしょうか。

①「人物評価」重視から「成果」重視へ移行する

在宅勤務者をはじめとするテレワーカーには、成果主義を適用していきましょう。

成果が数値化できる「目標管理制度」は、もはや制度そのものが形骸化しつつあるといわれています。同制度は、営業のような売上高や顧客訪問件数で成果が数値化できる業務には適していますが、企画や開発などの業務の達成度は、目標管理制度では数値化自体が困難なため、成果が測れません。

企画や開発などの業務の評価については、今後も研究が必要です。

②管理職の人事評価ノウハウやスキルを向上させる

これまで在宅勤務者に対する人事評価においては、目標設定や成果報告の際、上司と在宅勤務者でじっくり面談するといったプロセスがおこなわれてこなかったという反省点があります。また、評価する側の上司に、どんな在宅業務でも評価できるスキルがないという指摘もあります。

この問題には会社全体で取り組むべきで、在宅勤務でも通常勤務でも適正な評価がおこなえるような仕組みを敷き、上司の評価スキルを向上させる教育をおこなうといった組織的な努力が必要といえます。

③在宅勤務者と通常勤務者を平等に評価する

評価をするにあたり、在宅勤務者と通常勤務者の間で、在宅勤務者がその就労形態のために不利に評価されることはあってはなりません。事前に在宅勤務の業務内容とその成果について共有し、成果の報告の仕方などを決めておくことが重要です。

もし在宅勤務者の評価や人事管理について、通常勤務者とは違った制度を用いる場合は、評価の方法を就業規則に明記しておかなくてはいけません。そしてその内容を、在宅勤務者に説明しておく必要があります。

(2)在宅勤務での労働災害は?

在宅勤務者も、通常勤務者と同様に労働者災害補償保険法(労災保険法)の適用を受けます。しかし、業務上災害と認定されるためには①業務遂行性②業務起因性の2つの要件を満たさなければなりません。

①業務遂行性:労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態
②業務起因性:業務または業務行為を含めて“労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態”に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること

つまり、在宅勤務中に洗濯物を取り込むためにベランダに出て転んで、ケガをした場合は業務上災害と認定されないことになります。

(3)在宅勤務での経費負担はどうなる?

在宅勤務の経費精算でもっとも難しいのは、プライベートとの線引きです。

①インターネット回線等の通信費

インターネット回線の工事費や基本料金、また、パソコンなどの端末の購入費用の発生は、通常は業務のために使用するのであれば会社が負担します。

在宅勤務では、どうしてもインターネット回線などをプライベートで使用することがあるため、仕事とプライベートの経費の切り分けが難しいのです。従業員に手当を支給したり、それらについての経費の一定額を会社が負担したりするのが現実的でしょう。いずれにしても、あらかじめ通信関連費用の規定を決めておき、就業規則に盛り込んで誤解が生じないようにしておきましょう。

②文房具購入費、郵送費、水道光熱費

在宅勤務においては、文房具購入費、郵送費を一時的に立て替えるケースも発生するでしょう。その場合の精算方法を就業規則に記載しておくことが必要です。

水道光熱費も仕事とプライベートの切り分けが難しい経費です。いずれにしても、トラブルが起きないように明確にルールを決めて就業規則に記載しておく必要があります。

(4)在宅勤務での情報セキュリティ

在宅勤務者は、勤務者自身がその場所における管理責任者になります。会社の情報資産を持ち出して、自宅で仕事をする場合は、その情報資産に関する管理責任は、在宅勤務者にあります。

しかし重要情報の暗号化、安全な通信経路の利用等、就業規則に決められたルールを守っていれば、仮に事故が発生して情報が漏洩したり情報が失われても、在宅勤務者に責任が問われることはありません。反対にルールを守っていなかったり重大な過失があった場合は、在宅勤務者に事故の責任が問われます。情報セキュリティに関するルールに関しては、在宅勤務開始前に特によく確認すべきです。

5 サマリー

在宅勤務には、さまざまなメリットがあります。その半面、開始する際に慎重にルールを策定しておかないと、思わぬトラブルが発生することもあるでしょう。

本記事で紹介した在宅勤務導入にともなう就業規則改正のフローを活用し、導入前のプロセスを、より慎重におこないましょう。

6 まとめ

・在宅勤務は、2019年5月の調べで上場企業の37.3%に導入されたことがわかった

・特に、2016~2018年の2年間で、急速に導入が進んだ

・テレワークはそもそも、働き方改革への取り組みの一環として政府に推奨されている

・在宅勤務は政府により「内勤型テレワーク」に分類される

・就業規則の作成が必要になるのは、従業員が常時10名を超えている事業所で、所轄の労働基準監督署に届出る

・就業規則の作成・届出義務がない場合は、在宅勤務について労使協定締結、労働条件通知書での労働者への通知が必要になる

・在宅勤務をはじめとするテレワークにも労働基準法は適用される

・休憩や、許可なく夜間勤務や休日出勤をおこなわない、事前に申請する等の規定を就業規則に盛り込んでおく

・在宅勤務はの評価制度は「人物評価」重視から「成果」重視へ移行すべきである

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