労働保険の保険料の徴収等に関する法律とは? 概要と社労士(社会保険労務士)試験の頻出問題をチェック

労働保険の保険料の徴収等に関する法律とは? 概要と社労士(社会保険労務士)試験の頻出問題をチェック

「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」は、攻略しやすい科目だと聞いたことはありますか? 社労士(社会保険労務士)試験の科目の中では、マニュアルの出題とも呼ばれ、とても実務的な内容です。

この記事では、将来あなたが社労士となってからも常に携わるであろう「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」の、頻出箇所などを紹介します。

1. 労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」

労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」のことを指します。

「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」(以下、「労働保険料徴収法」)は、この2つの保険の事務手続きや保険料徴収に関する内容が出題されます。実務的な内容がほとんどで、マニュアルのような法律ともいわれますが、保険料の計算などももちろん含まれます。

労働保険料徴収法は、昭和44年(1969年)に制定されました。

主な目的は、労災保険と雇用保険の徴収事務を一元的に処理することで、徴収事務の簡素化・効率化を図ることです。従来、労災保険と雇用保険(当時は失業保険)は、それぞれ別の方法により、徴収事務が行われていました。しかし、両保険制度の適用範囲が拡大されるにつれ、事業主にかかる事務負担は増えていく一方でした。そこで、効率的な事業運営を図るために、「労働保険料徴収法」が制定されました。

(1)労災保険とは

労働者が業務上の事由又は通勤によって負傷したり、病気になった場合、あるいは不幸にも死亡した場合に、被災労働者や遺族を保護するため必要な保険給付をおこなうものです。また、労働者の社会復帰の促進など、労働者の福祉の増進を図るための事業もおこなっています。

人を雇ったら10日以内に「保険関係成立届」を労働基準監督署か公共職業安定所(以下、職安)提出します。雇ったその日から保険は成立するので、従業員はその日から保険の対象になります。

(2)雇用保険とは

労働者が失業した場合や労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するため必要な給付をおこなうものです。また、失業の予防、労働者の能力開発や向上、その他労働者の福祉の増進を図るための事業もおこなっています。

人を雇ったら10日以内に「保険関係成立届」を労働基準監督署か公共職業安定所(以下、職安)提出します。雇ったその日から保険は成立するので、従業員はその日から保険の対象になります。

2. 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の頻出問題

徴収法は実務的かつ地味な科目ですが、得点源にできる可能性のある科目です。勉強を進めてみればわかるように、他の科目に比べて出題ポイントが絞られ、勉強が進めば進むほど得点しやすくなる科目です。

(1)保険料の徴収と保険関係

①保険料の徴収

「労働保険徴収料」(以下、徴収法)がベースとなっており、これが労働保険料の申告と納付の手続マニュアルとなっています。申告と納付の方法は「継続事業」「有期事業」で変わってきます。

継続事業:
年度初めに「概算保険料」の先払いをおこないます。次年度に「確定保険料」を算出し、概算保険料と確定保険料を比べて、足りない部分を追加で支払います。余った場合は還付、または次年度の概算保険料とします。

有期事業:
建設現場の場合は、工事の開始時に「概算保険料」を申告・納付します。工事が終了したら「確定保険料」を算出し、差し引きをおこないます。

②労働保険の保険関係

事業の種類によって、労災保険料と雇用保険料の徴収をまとめておこなうか、別々におこなうかが変わってきます。

継続事業:会社や商店などの仕事が継続していく事業
労災保険と雇用保険を、同じ申告用紙で一元的におこなうのが原則となります。
これを「一元適用事業」といいます。

有期事業:建設工事現場など、「期間」で終了する事業
労災保険と雇用保険を別々に申告・納付をおこなうのが原則です。
これを「二元適用事業」といいます。

二元適用事業の種類:(社労士試験の頻出問題)
①都道府県および市町村のおこなう事業
②6大港湾において、港湾運送をおこなう事業
③農林業・畜産業・養蚕業・水産業(船員を雇用する事業以外)
④建設の事業

(2)保険関係の成立と消滅

会社が起業すれば保険関係は成立し、廃業すれば保険関係は消滅します。

保険関係は本来別々ですが、条件によっては一元化できます。そのための条件も確認ポイントです。

(3)保険料の算出と支払い

徴収法では、労働保険の保険料がキーとなります。

表:労働保険料の計算方法

※社員4人(1名パートの場合)の小売業の場合

・労災保険の適用となる者の1年度間の賃金総額:1,000万円

・雇用保険の適用となる者の1年度間の賃金総額:800万・労災保険率:1,000分の3

・雇用保険率:1,000分の9

 

労災保険料

1,000 × 3/1,000 = 30,000円

雇用保険料

800 × 9/1,000 = 72,000円

合計

102,000円

労働保険の場合、原則として会社が社員に支払った賃金の1年分の総額に、業種に応じた労災の保険料率、雇用保険の保険料率をかけて、会社が算出します。会社はまず、社員に支払う予定の年間賃金の合計額を見込み額として概算保険料を算出し、支払います。そして翌年度に、確定した賃金総額を元に確定保険料の精算を行います。これを年度更新といいます。

(4)労災の保険料率の上下(メリット制)

労災保険には「メリット制」というものがあります。(継続事業で従業員が1,000人以下だと、その制度の対象外なので注意が必要です。)これは自動車保険の「無事故割引制度」のようなものです。労災保険料の納付金額に比べて支払われた保健給付額が少ない会社は、労災保険料が安くなる制度のことです。反対に、保険給付額が高い会社は、保険料が高くなってしまいます。

①継続事業の適用事業とメリット収支率

適用事業

連続する3保険年度中の各保険年度において、次の(1)~(3)の要件のいずれかを満たしている事業で、当該連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日現在において、労災保険に係る保険関係が成立した後3年以上経過している事業。

(1) 常時100人以上の労働者を使用する事業

(2) 常時20人以上100人未満の労働者を使用し、その使用労働者数に、事業の種類ごとに定められている労災保険率から非業務災害率(通災及び二次健診給付に係る率:0.9厘)を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの

(3) 一括有期事業における建設の事業及び立木の伐採の事業であって、確定保険料の額が100万円以上であるもの

・メリット収支率

労災保険率を上げ下げする基準は、基準となる3月31日において当該連続する三保険年度の間における当該事業の一般保険料の額から非業務災害率に応ずる部分の額を減じた額に調整率を乗じて得た額と、業務災害に係る保険給付及び特別支給金の額との割合により算出される収支率(メリット収支率)による。

メリット収支率(考え方)=

当該連続する三保険年度間における業務災害に

対して支払われた保険給付及び特別支給金の額

─────────────────────────   × 100

当該連続する三保険年度間における    × 第1種調整率

保険料額(非業務災害分を除く) 

②有期事業の適用事業とメリット収支率

・適用事業 

(1) 建設の事業であって、確定保険料の額が100万円以上又は請負金額が1億2,000万円以上のもの

(2) 立木の伐採の事業であって、確定保険料の額が100万円以上又は素材生産量が1,000立方メートル以上のもの

・メリット収支率

保険料の額を上げ下げする基準は、当該事業の一般保険料に係る確定保険料の額から非業務災害率に応ずる部分の額を減じた額に調整率を乗じて得た額と、事業終了日から3か月又は9か月を経過した日前までの業務災害に係る保険給付及び特別支給金の額との割合により算出される収支率(メリット収支率)による。

メリット収支率(考え方)=

事業終了日から3か月又は9か月を経過した日前まで

の業務災害に係る保険給付及び特別支給金の額

──────────────────────────  ×100

確定保険料の額(非業務災害分を除く) × 調整率

(5)労働保険事務組合

中小企業の委託で、労働保険料の申告・納付その他労働保険に関する各種の届出等の事務手続をおこなうのが労働保険事務組合です。中小企業が労災組合に特別加入する場合は、労働保険事務組合に労働保険事務を委託しなければなりません。

労働保険事務組合

中小企業の事業主団体が、その構成員である事業主等の委託を受けて、事業主に代わって労働保険料の申告・納付その他労働保険に関する各種の届出等の事務手続をおこなうことにより、中小事業主の事務処理の負担を軽減し、労働保険の適用促進及び労働保険料の適正な徴収を図る制度です。労働保険事務組合とは、事業協同組合、商工会議所、商工会その他の事業主の団体またはその連合団体が、その団体の事業の一環として、事業主から委託された労働保険事務の処理をおこなうために、厚生労働大臣の認可を受けた場合に呼称される名称です。

したがって、既存の事業主団体と同一の組織であり、新たに労働保険事務組合という団体を設立するものではありません。

出典:全国労働保険事務組合連合会

表:上記の中小企業の特別加入(第1種特別加入)の人数要件

金融業、保険業、不動産業、小売業 常時50人以下
卸売業、サービス業 常時100人以下
上記以外の事業所 常時300人以下

3. 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の攻略ポイント

(1)選択式からは出題されない

社会保険労務士オフィシャルサイトには、出題数と配点とともに以下の説明が添えられています。

労働者災害補償保険法
(労働保険の保険料の徴収等に関する法律を含む。)
10問(10点) 1問(5点)

択一式試験の「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」は、それぞれの問題10問のうち3問が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」から出題されます。

具体的には、択一式試験の「労働者災害補償保険法」は、問1~問7が「労働者災害補償保険法」、問8~問10が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」です。「雇用保険法」は、問1~問7が「雇用保険法」、問8~問10が「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」です。

選択式試験の「労働者災害補償保険法」及び「雇用保険法」は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」からの出題はありません。実際に、平成22年以降は選択式からは出題されていません。

(2)すべて労働徴収法の規定である

いってみれば、労働保険料の徴収システムの規定を扱っているに過ぎない科目です。労働保険料の徴収の仕組みをしっかりと理解するのがポイントです。徴収法は、勉強量に比例して理解が深まる科目です。徴収法を得点源とできれば、労災や雇用保険の科目最低点のクリアにつながりますので、しっかり学習しましょう。

(3)「労災保険法」と「雇用保険法」を学習した後に取り組む

労働保険料徴収法は、労災保険と、雇用保険の手続と保険料の規定に関する法律です。労災法と雇用保険法がたとえ不出来でも、それを補う科目となりえます。雇用保険法は、暗記要素が強い科目であるため、ある程度勉強が進まないとなかなか得点ができにくい科目です。労災法も難解な科目です。

そんな時に重要となるのは、この徴収法なのです。労災法、雇用保険法を、得点しやすい徴収法科目でカバーできるのですから、徴収法がいかに重要な科目であるかがわかるでしょう。

4. その他の注意点

今まで紹介した内容の他にも、日雇い労働者の雇用保険制度である「印紙保険料」も重要です。

日雇い労働者が雇用保険の給付を受けるためには、「日雇い労働被保険者手帳」に「雇用保険印紙」が貼られて消印されている必要性があるのです。事業主は職安で、「雇用保険印紙購入通帳」の交付を受けます。雇用保険印紙は、日本郵便株式会社の営業所で購入します。日雇い労働者は働く都度(日ごと)に日雇い手帳を出し、事業主は賃金を払う都度、雇用保険印紙を貼り、職安に登録した印鑑を押印して消印します。

この他にも、会社が従業員の雇用保険資格届出を忘れていた時に支払う「特例納付保険料」、保険料を延滞した場合の追徴金など、頻出事項はまだあります。

お気付きのように、労働保険徴収法は社労士実務の基本を網羅しています。届出期限など、将来の実務的内容にあふれていますので、しっかり覚えましょう。

5. サマリー

暗記作業は要しますが、労働保険の取り決めと実務作業に対する理解を深めるのは、楽しくもあるのではないでしょうか。この科目を確固たる得点源とできたら良いですね。

6. まとめ

・労働保険徴収法は社労士実務の基本であり、社労士試験の得点源となる重要な科目である。

・労働保険とは「労災保険」と「雇用保険」のことである。

・労働保険料の徴収と保険関係、保険関係の成立と消滅、保険料の算出方法と支払いの仕方は頻出問題である。

・メリット制、労働保険事務組合の役割などもポイントである。

・選択式からは出題なし。「労災保険法」と「雇用保険法」を学習した後に取り組むべきである。

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