働き方改革 管理職の負担が増える?勤怠管理について徹底解説!

働き方改革 管理職の負担が増える?勤怠管理について徹底解説!

働き方改革の問題点の一つとして当初より懸念されるものに、管理職への仕事のしわ寄せや負担増があります。この改革によって、管理職の負担が増大してしまう理由は何でしょうか。また、生じた職務の変化に対応するうえで、管理職の負担を増やさないためにできる対策はあるのでしょうか。そして「管理職」には働き方改革がどのように適用されるのでしょうか。

この記事では、管理職が抱くであろう働き方改革への疑問を解決し、管理職の業務を遂行するために必要な認識や対策を紹介していきます。

1. 働き方改革で管理職の負担が増大する理由

(1)管理職の負担となる?「高度プロフェッショナル制度」

働き方改革に盛り込まれている制度のうち、管理職への負担増になりやすいのが「高度プロフェッショナル制度」です。平成28年4月に施行された「労働基準法等の一部を改正する法律案」により、以下の条件に該当する労働者には、高度プロフェッショナル制度が適用されることとなりました。

Ⅰ 「高度プロフェッショナル制度」とは

高度プロフェッショナル制度は、高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

出典:厚生労働省

高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の主な要件は次の3つです。

・職務範囲が明確であるもの

・高度で専門的な知識を要する業務に従事している

・基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること、つまり1,075万円以上であること 

高度プロフェッショナル制度を簡単に説明すると、賃金を「働いた時間」ではなく「成果」で決める制度だといえます。「成果」が賃金のベースとなるため、この制度が適用されると、企業は従業員の「時間外・休日・深夜労働に対する賃金」への支払い義務がなくなります。

高度プロフェッショナル制度は、政府が働き方改革で目指す「柔軟な働き方」の促進と「生産性の向上」という役割を担うとともに、新しい働き方を象徴する存在となるでしょう。このような制度を誕生させて政府が生産性の向上を目指す背景には、少子高齢化で労働人口が減少し続ける日本が、今まで通りの働き方では国際的な労働生産性を保てなくなるという実状があるのです。

Ⅱ 管理職の負担が増大する理由

高度プロフェッショナル制度
対象となる業務 ・金融商品の開発業務

・証券会社のディーラーといった「ディーリング業務」

・市場や株式などのアナリストの業務

・コンサルタントの業務

・医薬品などの研究開発業務の5つ

対象者の年収 1,075万円以上
労働時間の考え方 労働時間に関する規定は適用されない
時間外・休日・深夜労働に対しての賃金 支払われない

東京労働局資料を基に作表

高度プロフェッショナル制度が適用される労働者には、労働時間制限や休日、割増賃金など「労働時間に関する規定」が適用されません。最悪の場合、最低限の休日と有給休暇のみを付与して、労働者に長時間労働を「合法的」に強いる企業が出現する可能性があります。

高度プロフェッショナル制度の対象者に該当する割合は、管理職になるほど高くなるといえます。したがって、管理職の労働環境が悪くなるケースが予想されるのです。

(2)人事管理の手間増大と、裁量労働で賃金低下の懸念も

今回の働き方改革の大きな特徴は、有給取得の義務化や残業時間の上限規制を設けて法の監視下に置いたことです。これまで部下の勤務状況を正しく把握できていなかった会社は、体制の整備を急ぐことが求められます。勤務状況の管理や人事考課に関する方針が定まっていない会社の場合は、管理職の負担は大変なものになるでしょう。

今後懸念されるのは、有給取得の義務化が敷かれることで、繁忙期に有給を取得する部下が増えるであろうということです。また、現場の業務効率化が不十分なまま残業時間の規制が敷かれてしまう場合、これまでのような売上が立たなくなることもあるでしょう。

現場の現状を顧みずに改革だけが先行してしまった場合、賃金の面でも問題が発生するかもしれません。高度プロフェッショナル制度の導入により、「成果」が認められないことで賃金が低下する恐れが出てくるからです。

2. 管理監督者の勤怠管理も必須に

今回の改革では、長時間労働に対する健康確保措置として過労死ラインなど医師の視点から鑑み、労働安全衛生法第66条の面接指導について次のような改正がありました。

(現行)時間外・休日労働が1ヵ月あたり 100時間超の者からの申出により実施

  ↓ 

(今後)時間外・休日労働が1ヵ月あたり 【80時間】超の者からの申出により実施

つまり、労働安全衛生法の改正は、医師による面接指導の要件を「週の実労働時間が40時間を超えた時間が、1カ月当たり80時間を超えた労働者が、本人から面接の申出をおこなった場合」と定めました(変形労働時間制、フレックスタイム制導入時も同じ)。また、高度プロフェッショナル制度の対象者についての医師による面接指導の要件は「週の実労働時間が40時間を超えた時間が、100時間を超えた状況で、本人の申出の有無に関わらず」となります。

(1)改正を機に管理監督者の勤怠管理の見直しを

注目すべきは、労働時間の把握の対象は従業員だけでなく「管理監督者」も含まれる点です。実は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者は、労働時間の正確な把握を要する従業員の対象外となっています。

しかし、今回の法改正で、管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者についても、労働時間を把握しなければならなくなりました。長時間労働者に対する医師の面接指導を実施するためです。管理監督者の勤怠管理については野放しにされ、長時間労働が常態化しているケースも多いのではないでしょうか。今回の改正を機に見直しが必要です。

(2)管理監督者は必ずしも管理職ではない

さらに「管理監督者」に該当する人物の定義についても確認する必要があります。一般的には、管理職である「課長」や「部長」以上を管理監督者とする場合が多いようですが、果たしてその認識は正しいのでしょうか。

労働基準法では「管理監督者」とは、“労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者”とされています。すなわち、必ずしも「管理監督者=管理職」となるわけではないのです。ここは、労使トラブルに発展しかねない解釈のポイントであるため、注意が必要です。

以前、「名ばかり店長」の超過労働問題が世間を騒がせたことがありました。店長とはいうものの実際には管理監督者の権限を持っていなかったことが認められ、未払い残業代の支払い命令が下されたケースとして記憶に新しいのではないでしょうか。

管理監督者として適切なのは誰であるかを明確にしておきましょう。

3. 働き方改革時代の管理職はどうあるべきか?

働き方改革による現場の混乱は必至である状況の中、管理職は何を見据えて今回の変革に向き合っていくべきなのでしょうか。

(1)管理職が負う重責

今回の改正労働法を遵守するために、多くの企業は管理職向けに研修を実施しています。それに参加しながら、現場の業務の監督も務める管理職の多くは、いま大変疲弊しているであろうことは想像に難くありません。

働き方改革が推進される背景には、日本が直面するさまざまな問題があります。例えば、少子高齢化による労働人口の減少による日本企業の海外進出や、国内における外国人労働者の採用など、グローバル化が進んでいます。加えて、AI化などの急速なICTにおけるイノベーション、「柔軟な働き方」を目指すうえで必要とされるダイバーシティーマネジメントやワークライフバランスなど、管理職が対峙すべき変化は増え続ける一方なのです。環境変化が起こるたびに、管理職の重責は増しています。

しかも、現実的にはマネジメント専任の管理職は稀であり、管理職がプレイヤー業務も兼務する「プレイングマネージャー」が、もはや管理職の一般的な姿となりつつあります。今回の働き方改革で、社員の残業は減るでしょう。すると、部下やチームのメンバーがやり残した仕事は管理職にまわってくることになります。管理監督者の労働時間の把握が義務化されてはいますが、当面は残業と休日出勤で管理職がやり残しをこなすことになるのではないでしょうか。

(2)進むべき方向へのビジョンを明示する

このように、そもそも困難な状況にあるのが管理職なのです。それでも、管理職は進むべき方向性についてのビジョンを明示しなければなりません。チームにとって何を優先すべきか明らかにすることで、メンバーの動機づけもされるからです。

本来「働き方改革」の目的は、社員のやりがいや幸せを実現して日本の労働の質を向上させることです。働きやすさ、やりがい、幸せを実現するためには、ITツールの積極的な導入や、多様な働き方が可能となる制度の整備が有効でしょう。管理職はこういった根本的な部分に取り組むことこそが必要です。

4. 管理職への負担を軽減するために

今回の改正で、これまでは努力義務であったものが法律に格上げされたものもありました。管理職にとって勤怠管理は重責の一つですが、働き方改革の導入による負担で職務に支障をきたし、過労で倒れることなどは避けなくてはなりません。

経営陣のサポートによっても、管理職の負担増は避けられます。例えば、人事管理の負担が大きくなると予測される場合は、管理職の仕事を分散して「業務量の平準化」を推進したり、事前に企業全体の業務把握を行いましょう。

業務のムリ・ムラ・ムダの排除や、アウトソーシングの採用、社員の裁量権拡大など、管理職の管理負担を軽減する施策はたくさんあります。

5. サマリー

いかがでしたでしょうか。

働き方改革による管理職の負担増は、当初は避けられないものであると思われます。

しかし、働き方改革の本質が本来「労働の質の向上」と「企業全体の意識改革」であることに立ち返れば、管理職へのしわ寄せは放置したままにはできないはずです。

働き方改革により管理職こそ高いビジョンを持つべきなのですから、社員は一丸となって現状と向き合い、問題解決の努力をすることが大切です。

6. まとめ

・働き方改革で管理職の負担が増大している理由として「高度プロフェッショナル制度」や人事管理の手間の増大などが挙げられる。

・改正後は、これまで対象外だった「管理監督者」も労働時間把握の対象に含まれる。

・働き方改革時代の管理職は、進むべき方向性の明確なビジョンを持つ必要がある。

・管理職の負担軽減のためにできる施策は多くある。まずは経営陣のサポートから。

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