働き方改革における有給休暇5日以上の取得義務について徹底解説!

働き方改革における有給休暇5日以上の取得義務について徹底解説!

「働き方改革」は、大企業、中小企業に関わらず全ての企業に求められる施策です。

企業の総務部、管理部、人事部などに所属する方は、働き方改革関連法の施行にともなう5日以上の有給休暇取得の義務について把握しておく必要があります。まだ働き方改革における概要を捉えていない企業は、労使トラブルになる可能性もゼロではありません。

この記事では、これから働き方改革による多くの法改正について知りたい労務担当者のためにポイントを解説していきます。働き方改革の目的、背景、企業が行うべき課題の概要が分かりますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

1、「働き方改革」とは

2018年6月29日、働き方改革実現会議が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が可決・成立しました。

これにより、2019年4月から働き方改革が施行されます。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」とは、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」、「多様な働き方の実現」などの措置を講ずる法律です。

働き方改革は、政府の重要政策のひとつに位置づけられており、この法律は多様な働き方を可能にする社会を目指すために制定されました。現状の日本企業の労働環境を大幅に見直すことを目的としており、企業がその内容を正しく理解し、適切な取り組みを行うことが求められています。

働き方改革関連法の施行は、企業の労働環境の改善、労務問題の解決に役立つはずです。

そもそも、なぜ国全体で働き方革命の取り組みが行われることになったのか、その背景をおさらいしておきましょう。

多くの日本企業は、長時間労働の常態化により過労死が増えており、非正規労働者に対する不合理な待遇差といった働き方に関する課題が深刻化しています。企業レベルで法令の基準を満たすために改善の取り組みをしても最善策とはならず、決して個々の企業だけが直面している問題ではありません。日本企業全体の問題として早急な対応が求められているのです。

そこで日本政府は、国レベルで「働き方改革」を強化し、働く個人にとって働きやすい環境を構築することを決定しました。

働き方改革を行う目的は、労働者一人ひとりの意思や能力、個々の事情に応じた、多様で柔軟な働き方を選択できる社会を追求していくことです。転職、出産、子育てなど人生におけるライフステージに合った仕事の仕方を選択しやすくなることで働きやすさを実感できるようになります。

働き方改革を取り入れることで、国にとっては、労働者の増加に伴い税収が増えるメリットが期待できます。労働人口の減少、社会保障費の膨張など、深刻な社会問題を解決するための第一歩となるでしょう。

企業にとっては人手不足の解消と労働力の確保、生産性向上により業績アップが見込めるのがメリット。働く意欲のある人が快適に働くことができる環境が整うことで、どんな状況にあっても無理なく働くことができるようになります。

国と企業が連携して働き方改革の推進に取り組むことで、社会全体にとって良い影響が現れるでしょう。

企業の労務担当者は2019年4月以降に施行される働き方改革関連法の必要性を正しく知り、「労働者にとっての働きやすさ」の実現を目指す必要があります。企業は法改正に対応した労務管理を行い、働く環境を変えていくことを目指しましょう。

 

2、有給休暇5日以上の取得義務について

年次有給休暇とは、正社員、パートタイム労働者などの区分に関係なく、法律で定められた労働者に与えられた権利です。労働基準法が改正され、2019年4月から、使用者は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対して毎年5日、年次有給休暇を確実に取得させる必要があります。

(1)有給休暇5日以上の取得義務の概要

労働基準法において、労働者は「半年間継続して雇われている」、「全労働日の8割以上を出勤している」という条件を満たしていれば、年次有給休暇を取得する権利があります。年次有給休暇は、労働者が請求して取得することとされていますが、現状は職場への配慮により全体的に取得率が低くなっています。

今回の働き方改革法案の成立により、年次有給休暇の取得を促進させるため、労働基準法が改正されました。労働基準法が改正されて、年10日以上有給休暇の権利がある従業員について、年5日以上の年次有給休暇の取得が義務付けられたというわけです。

すべての企業において、年間の有給休暇消化日数が5日未満の従業員については会社が有給休暇を取得するべき日を指定することも義務付けられています。有給休暇取得の義務化に対応できていない場合は、従業員とのトラブルに発生する可能性もあり、企業側の罰金の対象にもなるので注意しましょう。

(2)有給休暇5日以上の取得の条件

年次有給休暇の義務化は大企業・中小企業など企業の規模や業種に関わらず、すべての事業場が対象です。法改正のポイントとしては、対象者は法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者(管理監督者を含む)に限る点です。

年次有給休暇の権利は、労働者が以下の要件を満たすことにより法律上発生します。

  • 雇い入れの日から起算して6ヶ月継続勤務していること
  • 全所定労働日の8割以上を出勤していること

上記の条件を満たす限り、パートやアルバイトといった非正規の従業員にも年次有給休暇は付与されます。

条件を満たした労働者に対して、まず最初の6か月経過日に10労働日の年次有給休暇が与えられます。その後、継続勤務年数1年ごとに必要な年次有給休暇が付与されます。勤続年数が増えるほど少しずつ増えていき、6年6か月以上勤務している労働者は1年おきに20日付与されます。

週所定労働時間が30時間未満の労働者については以下の通りです。

  • 週所定労働日数が4日→継続勤務3年6か月以上の者は全員対象
  • 週所定労働日数3が日→継続勤務5年6か月以上の者は全員対象
  • 週所定労働日数が2日→最大年7日の付与のため、対象外

(3)有給休暇5日以上の取得は基準日から1年以内

使用者は、2019年4月から新設された「使用者による時季指定」または「労働者自らの請求・取得」、「計画年休」により、年5日以上の年次有給休暇を取得させる必要があります。

労働者ごとに年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日以上の取得が義務となります。基準日から1年間とは、従業員の入社日の6か月後から数えて1年ごとの以下の期間です。

  • 入社日の6か月後の日~入社日の1年6か月後の日の前日の1年間
  • 入社日の1年6か月後の日~入社日の2年6か月後の日の前日の1年間
  • 入社日の2年6か月後の日~入社日の3年6か月後の日の前日の1年間  
  • 入社日の3年6か月後の日~入社日の4年6か月後の日の前日の1年間
  • 入社日の4年6か月後の日~入社日の5年6か月後の日の前日の1年間

(4)「有給休暇5日以上の取得」法改正の背景

有給休暇5日以上の取得についての法改正は、政府が進める働き方改革をスムーズ実施するためです。その背景にあるのは現状の有給取得率の低さです。

働く側の心理として、特に協調性を重んじる日本人は、周囲の従業員が働いているのに自分だけ休むのは申し訳ない、職場に休める空気がない、同僚に負担をかけてしまうと考えてしまいがちです。有給休暇は法律で定められた労働者に与えられた権利ですが、多くの人が権利を行使できずに働いているというのが現状です。

有給休暇の取得率50%にも満たない日本。政府は危機感を感じており、2020年までに70%以上に引き上げることを目標としています。働き方改革の狙いは、過労死に繋がる過重労働の防止、そして仕事の生産性を高めることです。休暇を増やすことで負担を減らし、生産性を高めて労働者に働きやすさを実感してもらうことが期待できます。

今回の改正では、有給休暇5日以上の取得を雇う側の義務にすれば有給の取得がスムーズになると考えられているのがポイントです。

3、時季指定とは?

基準日から1年間に有給休暇消化日数が5日未満の従業員に対して、企業側から日にちを決めて有給休暇を取得させることが義務付けられました。

2019年4月から新設された、この「使用者による時季指定」は、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対して、年5日までは使用者が労働者の意見を聴取した上で、時季を指定して取得させるものです。

年休を5日以上取得済みの労働者に対しては、時季指定を行う必要はありません。労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数、労使協定で計画的に取得日を定めて与えた年次有給休暇の日数については、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除する必要があります。

つまり、改正前は有給休暇は労働者から使用者へ申し出ることで取得可能だったものが、2019年4月の改正後は義務化されたことになります。

労働者から申し出がなければ、使用者が本人の希望を聞いて最低5日は休ませなければなりません。取得数が年5日に満たない場合は、5日に達するまでの日数分を使用者が労働者と相談して取得させます。使用者は、時季指定に当たり、労働者の意見を聴取して意見を尊重することが大切です。

労働者の権利が行使されない場合は使用者に時季指定義務が生じます。対象は年次有給休暇が年10日以上付与される労働者となり、フルタイムの大半が該当します。有給休暇5日取得の義務化のポイントは、有給休暇が10日以上あるにも関わらず5日以上休んでいない労働者には、使用者が休むよう促して日を決めて休ませる「使用者による時季指定」の新設です。

また、今回の改正で「年次有給休暇管理簿」の作成が使用者に義務付けられているので注意しましょう。年次有給休暇管理簿は当該期間満了後3年間の保存義務があります。使用者は有給休暇付与日(基準日)や付与日数、有給休暇取得の日付等を記録することが義務付けられているので忘れずに行いましょう。

(1)有給休暇5日取得義務2つの注意点

ここからは、有給休暇5日取得義務2つの注意点を見ていきましょう。

①「時間単位での有給休暇取得」は可能か

有給休暇5日取得義務において、半日単位や時間単位での取得は可能なのでしょうか。

労働者が希望し、使用者が同意した場合であれば、労使協定が締結されていない場合でも半日単位で取得させることが可能です。

また、労使協定を締結すれば、年に5日を限度として時間単位で有給休暇を取得させることができます。時間単位有給休暇については、平成22年の労働基準法改正によって定められたものです。

これについては、労使協定で以下のものを定める必要があります。

  • 時間単位有給休暇の対象労働者
  • 時間単位有給休暇の日数(年5日以内)
  • 時間単位有給休暇1日の時間数
  • 1時間以外の時間を単位とする場合の時間数

労使協定は、個々の従業員に対して時間単位による取得を義務付けるものではありません。時間単位で取得するか、日単位で取得するかは個々の従業員の意思に委ねられます。

②フルタイムでなくても「年10日以上有給休暇が付与される場合」に注意

年5日の有給休暇を取得させなければならない労働者とは、有給休暇が10日以上付与される労働者です。週の所定労働日数や勤続年数が短いパートタイム従業員などで付与日数が年10日未満の方は対象外です。

フルタイムではなくても以下のいずれかに該当する場合は有給休暇付与日数が10日以上となります。有給休暇の取得義務の対象となるので確認しておきましょう。

  • 週30時間以上勤務している
  • 週5日以上勤務している
  • 年間217日以上勤務している
  • 入社後3年半以上経過していて週4日(または年間169日〜216日)勤務している
  • 入社後5年半以上経過していて週3日(または年間121日〜168日)勤務している

4、有給休暇5日以上の取得をさせなかった場合のペナルティ

今回の法改正による義務に違反して対象となる従業員に有給休暇の指定をしなかった場合、有給休暇を5日取得していない労働者1人当たり最大30万円以下の罰金が課されます。

例えば、仕事が終わらないなどの理由で従業員が有給休暇を取得しない、従業員が有給休暇を取得したにもかかわらず出勤して働いてしまう時に該当します。有給休暇を取得できなかった対象者が10人いた場合は300万円の罰金になる可能性もあるのです。

5、労務担当者、労働者双方が準備を!

ここからは、働き方改革において管理職がやらなければならないことを見ていきましょう。

従来は、有給休暇取得の相談や申請があったときだけ対応していた管理者も今後は計画的に対応する必要があります。まずは、部下の有給休暇消化日数を把握して計画的な有給休暇取得期間を設定しましょう。年間の業務時間見積りと繁忙期の把握、そして有給休暇取得の促進と指示を行います。早めに取り掛からないと、年度末の繁忙期に部内の有給休暇取得が重なって業務に対応できなくなります。

今回の法改正による有給休暇の取得義務化は、業務環境の中で大きな負荷となりますが、これを機会に働き方を見直すことで労働生産性の向上を目指せるでしょう。

適切な休暇の取得は従業員のモチベーションを高め、心身ともに健康的かつ継続的に仕事に取り組ませることに繋がります。予期せぬ欠勤、病欠などが減り、計画的に業務を行えるようになるのがメリットです。

確実に有給休暇を取得するために、業務内容を見直して効率の悪い業務は別の方法に変えたり、付加価値の高い業務に集中するといった工夫が求められます。

管理職や労務担当者は、働き方改革を取り入れて、継続的な改善を日常業務の中に組み込むことが重要です。

 

(1)労務担当者の具体的な準備の手順

ここからは、労務担当者が準備できる具体的な準備の手順について見ていきましょう。

まずは、有給休暇の利用実態を調査して、年間5日の取得ができていない従業員がどの程度いるかを把握します。有給休暇の取得実態は業態や勤務形態によっても異なり、シフト勤務者の場合は有給休暇の取得率が低い傾向にあります。有給休暇を5日取得できている場合は、当年度の使用日数を定期的に確認していきましょう。

有給休暇の取得実績が少ない場合は、有給休暇を取得できる仕組みづくりが早急に必要となります。まずは業務改善、人員の補充、従業員自身が時季を指定して有給休暇を取得できる環境を用意しましょう。週30時間以上働くパートやアルバイトの従業員も正社員同様に対象になるので、会社全体で有給休暇を取りやすい制度を整えておく取り組みが求められます。

また、労働者ごとの取得状況のカレンダーをチェックして、5日未満の従業員に対して個別に有給休暇の取得を呼びかけることも役立つでしょう。5日取得できていない社員のリストは上長に通知して確認漏れを防ぎましょう。

さらに、従業員へ分かりやすく法改正について知らせることも大切です。有給休暇取得率を増やすためには、就業規則による明文化と労使協定の締結が必要になります。労使協定により全社・部署ごとに「計画的付与」を作り、有給休暇とする特定の日を決めて、強制的に休みを作ると効果的です。

なお、労働契約の不利益変更は、就業規則の変更によるものだとしても無効となるので注意しましょう。

(2)労働者の準備

法改正により、年次有給休暇の取得について従来のように何もしないでいるのはNGです。

年次有給休暇を取得するには、労働者がその有する休暇日数の範囲内で「何月何日に休みたいです」と具体的な休暇の時季を特定する必要があります。この「時季指定」を行うことによって年次有給休暇が成立して、当該労働日における就労義務が消滅するという流れになります。

労働者の具体的な「時季指定」がない限りは、使用者は年次有給休暇がいつになるのか分からないので、忘れないように報告しましょう。

労働者の指定する時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者は休む日をずらす「時季変更権」を使えます。労使協定で定めをした場合は、年次有給休暇のうち5日を超える部分について「計画的付与」が認められています。 

年次有給休暇を取得した日をどのように使うかは原則として労働者の自由です。病気で休む日に年次有給休暇を使うことがありますが、長期の旅行などの理由で使うのも基本的には自由です。

労働者からの年休の請求に対して拒否したり、内容によって年休を与えないのは法違反となるので注意しましょう。

6、サマリー

今回は、2019年4月から働き方改革が施行される「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」について要点を解説しました。

その背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、育児や介護との両立など働く方のニーズの多様化が挙げられます。労働力の確保、ライフスタイルに合わせて働く意欲や能力を存分に発揮できる環境を作ることが、今後の課題と言えます。

働き方改革は、働く意欲がある人が自由な働き方を選択できる社会を実現するために、明るい将来の展望を持てるように目指しています。

7、まとめ

  • 2019年4月に施行された働き方改革関連法は「労働者にとっての働きやすさ」の実現を目指すものである
  • 労働基準法の改正で、年次有給休暇5日以上の取得が義務付けられた
  • 対象は年次有給休暇の付与日数が10日以上のすべての労働者(管理監督者を含む)
  • 使用者は「労働者自らの請求・取得」「計画年休」および、新設された「使用者による時季指定」によって、労働者に年次有給休暇を5日以上取得させる義務が生じた
  • 労働者ごとに年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日以上の取得、また、年次有給休暇管理簿を作成して3年間の保存も義務化
  • 「使用者による時季指定」とは、使用者が労働者の意見を聴取した上で、年5日まで時季を指定して取得させるものである
  • 有給取得は半日単位でも可能。労使協定を締結すれば、年5日を限度として時間単位での取得も可能
  • 今回の法改正による義務に違反した場合は、有給休暇を5日取得していない労働者1人当たり最大30万円以下の罰金が課される

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