社労士試験の概要を解説!~チェックしておくべき科目別の勉強法~

社労士試験の概要を解説!~チェックしておくべき科目別の勉強法~

年金問題、雇用問題、働き方改革、各種助成金などを専門に扱えるエキスパートといえば、社労士、正式には社会保険労務士です。社労士の試験に合格し、一定の要件を満たせば、開業して(個人)事業主になることも可能です。

これまで何らかの仕事をしてきた方であれば、社会経験を大いに社労士の実務に活かすことができます。注目の国家資格である社労士の試験概要と、社会保険労務士の魅力について解説します。

1 社労士試験の概要

はじめに、試験で取得できる資格を生かした社労士の仕事については、こちらの記事をご参照ください。

それでは、社労士を目指す方のために、まずは試験の概要から詳しく見ていきましょう。

(1)社労士試験の受験資格、受験の申し込み

社労士試験は誰もが受けられる試験ではなく、大学や短大を卒業していることや、社労士に通じるような実務経験があること、厚生労働大臣が認めた国家試験に合格していることなど、いくつかの受験資格があります。

勉強を始める前に、受験資格について「社会保険労務士試験オフィシャルサイト」でご確認ください。

受験の申し込みについては、厚生労働省から官報で公示(毎年4月中旬)されます。受験料は9,000円(別途、払込手数料200円)です。

(2)社労士試験の試験日、試験時間

試験は8月の第4日曜日に行われます。

午前(10:30~11:50)に選択式、午後(13:20~16:50)に択一式が実施されます。

丸1日かけて行われるため長く感じられますが、科目や問題のボリュームが大きいため、時間が足りなくなる可能性もあります。合格するためには、時間配分にも気を配らなければなりません。

(3)社労士試験の試験科目

社労士試験の試験科目は8つのカテゴリーに分かれています。

・労働基準法及び労働安全衛生法
・労働者災害保険補償法及び労働保険徴収法
・雇用保険法
・健康保険法
・国民年金法
・厚生年金保険法
・労務管理その他の労働に関する一般常識
・社会保険に関する一般常識

選択科目などはなく、すべてについて網羅的に勉強する必要があります。

(4)社労士試験の試験形式

試験は、選択式と択一式で構成されています。配点はすべて1点です。

選択式は1つのカテゴリーにつき1問ずつ、全部で8問あります。1問の問題文につき5つの空欄があります。空欄に入る語句を、原則として20個用意された選択肢の中から選んで解答します。

択一式は5肢択一式の形式で、合計70問あります。8カテゴリーのうち、「労務管理その他の労働に関する一般常識」と「社会保険に関する一般常識」を1つにまとめた、全7カテゴリーとなります。1つのカテゴリーにつき、10問の出題があります。

正しい(もしくは誤っている)選択肢を選ぶ問題、正しい(もしくは誤っている)選択肢の個数を選ぶ問題、正しい(もしくは誤っている)選択肢の組み合わせを選ぶ問題の3パターンです。

(5)社労士試験の基準点と合格率

社労士試験には、いわゆる「足きり」があります。第50回(平成30年度)社会保険労務士試験の合格基準は以下の通りでした。

選択式は、40点中23点以上で、各科目3点以上(ただし、社会保険に関する一般常識と国民年金法は2点以上。択一式は、70点中45点以上で、各科目4点以上

選択式の23点以上と、択一式の45点以上とは、合格基準点です。すなわち、合格点のことを指しています。
赤字部分が「足きり」のラインです。総合して合格基準点に達していたとしても、1科目でも基準点に達していない科目があれば、不合格となります。

毎年足きりで涙を飲む受験生がいるのは事実ですが、足切りばかりを気にしているよりは、合格基準点の突破を目指して勉強して、自然と足切りを突破できるよう網羅的に取り組めば、そこまで怖いものではなくなるでしょう。

社労士試験の合格率は、およそ3%~8%です。受験生の中には、本気で資格取得に挑んでいる人、「今回は練習、次回本気で受けよう」というお試し受験の人、試験勉強が間に合わなかった人など、さまざまな背景の人がいます。

合格率だけを見ると「難しくて手が出ないのではないか」と思うかもしれませんが、毎年必ず合格者は出ているわけですし、ニーズの高い国家資格ですから、挑む価値は大いにあるといえるでしょう。

(6)社労士試験の試験対策

社労士試験には、独学で挑む方もいれば、対策講座を実施している予備校に通って臨む方もいます。ライフスタイルによって差はありますが、社労士試験には、およそ1年くらいの学習期間が必要です。

社会人の受験割合が高い資格のため、予備校では仕事の後に通える講座や、週末に集中して学ぶ講座が多くあります。その他に、通信の講座も豊富です。受講料は幅広いため、かけられる予算と相談しながら選ぶとよいでしょう。

試験の2~3カ月前には、模擬試験が実施されます。予備校に通っていなくても、模擬試験だけを受験することは可能です。本試験への予行演習となる他、社労士試験を目指している受験生の中で、自分がどれくらいの順位なのか知ることができます。

2 社労士試験の勉強法、学習のポイント

社労士試験の科目は8つのカテゴリーにわたり、すべてを網羅するような勉強が必要であることは前述の通りです。とはいえ、科目ごとに効率の良い勉強方法があります。各科目ごとに学習のポイントを押さえて、ムダなく確実に合格点をクリアしましょう。

ここからは、比較的攻略しやすく得点を稼げる科目と、とにかく基準点をクリアして足切りを逃れたい科目に分けて解説していきます。

(1)社労士試験で点数を稼げる狙い目の科目

まずは、身近な内容のため覚えやすい、他科目と重なるので勉強しやすい、過去問対策が功を奏しやすいなど、点数を稼げる「狙い目の科目」です。学習のポイントと合わせて見てみましょう。

◆労働基準法

労働分野の基本となる法律であるため、過去の本試験では深く切り込んだ内容の問題が出題され、点数が伸びにくい科目でした。近年は難易度が低くなってきており、苦手意識を持たなければ比較的点数が稼ぎやすくなったようです。過去問で出題傾向を確認して、頻出箇所を押さえておきましょう。

◆労働者災害補償保険法

労働者のけがや病気の補償に関する法律ですので、社会人の方にとっては身近に感じられる問題が出題されるといえるでしょう。似たような問題が繰り返し出題されるという特徴がありますので、他科目で足りない分をフォローするつもりで、確実に得点を稼いでおきたい科目です。

◆労働保険の保険料の徴収等に関する法律

省略して「徴収法」と呼ばれる、労働者災害補償保険法と雇用保険法の手続きをまとめたような法律です。出題範囲が狭いにもかかわらず出題数が多いため、高得点が狙えます。法律の内容についての深い理解や解釈はほぼ不要で、ひとたび解法を覚えれば簡単に問題を解けるでしょう。

◆雇用保険法

基礎的な知識を問う問題が多く出題されるため、特に択一式問題では満点を狙える科目です。改正が行われた場合は、必ずといっていいほどその部分からの出題があるので、雇用保険法の改正に関しては確実にチェックを怠らないようにしましょう。

◆社会保険に関する一般常識

出題範囲も広すぎず、ほぼ決まった法律から出題される傾向にあります。他の科目で勉強してきた内容も多く含まれているので、理解がスムーズで勉強しやすい科目といえるでしょう。他の科目での得点不足を補えるように、点数を稼いでおける科目です。

(2)社労士試験で基準点を目標にすべき科目

続いて、完璧を求めずとにかく基準点をクリアすることを目指すべき「手ごわい科目」はこちら。足きりで不合格とならないよう、確実に得点するためのポイントをおさえた勉強法を、ぜひ参考にしてください。

◆労働安全衛生法

試験範囲の広さに加えて詳細な内容を問う問題も多いので、基準点に届かず足きりとなる受験者が生まれやすい科目です。

一口に「労働に関する『安全衛生』に対する措置」といっても、組織に関する問題(安全衛生管理体制)から、工場の機械にまつわる問題、有害物質について問う問題まで、その内容は多岐にわたります。

何をどこまで学習すべきか判断がつきにくいですが、過去問を頼りにとにかく基準点(合格ライン)をクリアしましょう。

◆健康保険法

最も簡単な科目とされていた時期もありますが、難易度は上がってきています。ただ、実施年によって難易度は上下しているため、難しい科目だと思い込まず、解ける問題は確実に得点できるようにしましょう。労働者災害補償保険法と比較しながら学習すると、覚えやすいのが特徴です。出題傾向としては、詳細な組織名や数字を問うものが増えているようです。

◆国民年金法

年金制度の基礎部分となるのが国民年金です。応用である厚生年金を理解するためにも、まず国民年金の理解が必要であることは当然といえるでしょう。応用よりは基礎の方が簡単であるように考えがちですが、近年は国民年金法で得点することの方が難しい傾向にあるようです。基礎問題の出題が多かった数年前に比べると、詳細な内容を問う出題が増え、出題傾向も掴みにくくなっています。

後述する厚生年金保険法についても言えることですが、年金にまつわる法律は頻繁な改正が行われます。旧制度は新制度と併用される場合もあるため、知識は更新するよりも追加していく必要があります。法改正のたびに問題の難易度は上がると考えた方がよさそうです。

◆厚生年金保険法

国民年金の応用である厚生年金の制度。試験範囲が広く、法律そのものや制度に関して国民年金より難解です。一方で、国民年金法より出題傾向が把握しやすく、具体的な対策を立てられるのがポイントといえます。学習によって理解が深まるほど解答できる問題が多いため、各項目について「量より質」の勉強を積み重ねると結果が出るでしょう。

◆労務管理その他の労働に関する一般常識

何をどこまで勉強すべきか判断できない科目の最たるものです。試験範囲が広く、細かい知識を問うような出題が特徴です。社労士試験の最難関科目なので、とにかく基準点(合格ライン)に達することを目標にしましょう。対策としては、数年分の過去問から頻出問題を絞り込んで勉強することが挙げられます。

勉強の際はもちろんですが、試験当日も基準点(合格ライン)を超えた自信を持てたら、あまり悩みすぎずに他の科目へ進みましょう。この科目は何よりも、足きりを回避することが第一です。

4 社労士資格の魅力

最後に、社労士の資格を取得することの魅力を考えていきましょう。

(1)短期間での取得も可能

社労士は、法律系資格の中でも比較的短期間の学習で合格を目指すことができる資格です。
仕事をしながら勉強して資格取得する人も多く、時間のある学生に限らず、社会人になってからでも目指せるのが社労士資格だといえるでしょう。

(2)「自分事」として理解し、役立てられる

健康保険や年金、労働基準法など、人のためだけではなく自分自身にも大きく関わる事柄について、試験勉強をしたのち、社労士として実務を行うことになります。働き方改革にともなう厳しい労務管理が求められるなか、社労士資格と専門知識を生かすフィールドは増えています。働くことにまつわる深い法律知識を持つことは強みになるでしょう。

(3)企業内で高評価が得られる

人事、総務、労務といった「ヒト」に関わる部門で、社労士はスペシャリストとして重用されることは間違いありません。現在は働き方改革のもと、企業ではさまざまな雇用管理体制の見直しが行われています。働き方改革に関しても、社労士によるコンサルティングが求められるケースなどが考えられます。

(4)独占業務がある、独立開業できる

試験に合格して資格取得した社労士だけに認められている独占業務があります。これは社労士の大きな魅力のひとつです。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

資格取得後は、独立開業を目指す方も多いです。企業内の従業員としてではなく、独立した社労士という立場で企業のコンサルタントとして活躍する人もいます。複数の中小企業などと顧問契約を結ぶことによって、顧問料から収入を安定させることが可能となります。

(5)活躍の場、キャリアの可能性が広がる

社労士のなかには、ひとつの専門分野に特化して業務にあたっている人もいます。一方で、関連性の高い資格をさらに取得することで、活躍の場を広げていく社労士もいます。行政書士、税理士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士などと、ダブルライセンスやトリプルライセンスにすることでキャリアアップを図れるのも魅力のひとつでしょう。

5 サマリー

いかがだったでしょうか?
社労士は、今もっとも注目が集まっていると言っても過言ではない法律系の国家資格です。

試験科目と学習のポイントを見ていくと、社会人として仕事をしていく中で接点の多い法律ばかりであることがわかります。初学者でも親しみやすく、興味を持って勉強に取り組めるのではないでしょうか。

働き方改革に関わる部分を中心として、社労士に対する社会からのニーズは高まっています。社労士資格の取得は、将来的に大きく役立つことになるはずです。

6 まとめ

・社労士試験には受験資格があり、8月の第4日曜日に実施される
・試験科目である8つのカテゴリーを網羅的に勉強する必要がある
・科目ごとに基準点が設けられ、足きりが行われる
・合格率は3~8%程度
・科目ごとの学習ポイントを参考に、効率良く勉強すること
・社労士は社会的ニーズが高く、将来性のある職業である

社会保険労務士カテゴリの最新記事